無理やりは、いや〜ん!


「最近は特に増えてきているようだね」

「え? 何が?」

「レイプ願望を持った男だよ」

「ええ、今のクランケもそうですし、私がここに来てからだけでも、かなりの 数の方がそういう相談をされてますね」

美貴はカルテを棚の下段に片付けようとして、前屈みになりながら言った。椅子に 腰掛けた私の視線の真正面に、いつもながら見事なヒップラインがある。でも、 白衣をとおして下着の線が見えないのは何故だろう。Tバックかあるいはノーパンか? 美貴の場合、ノーパンというのは、ありえないことではないように思える。今度 聞いてみよう。「そうよ、だって下着の線が出るのいやだもん」なんて言いそうだ。

この間の「慰謝としてのセックス」のときの、最後の逆襲「美貴のパンツの中も 濡れてるんだろう?」は、言わなくて正解だったかもしれない。「パンツなんて はいてないもん」なんて言われたら、さらに立ち直れなくなるところだった。

「どうやら、低血糖症候群にも関係していて、彼女や奥さんがいるいないとは、 関係なさそうだね。つまり、セックスをしたいのではなくて、純粋にレイプを したいってこと」

「彼女や奥さんがいるなら、レイプごっこをすればいいのに」

「そうだな、そうやって発散できればいいんだけど、嫌がられることが多い んじゃないか?」

「あら、そうかしら。私は好きよ」

美貴はこちらを振り向いて言った。ヒップラインが隠れたのは悲しいが、かわりに 私のすぐ前の椅子に腰掛けて、脚を組んだのでよしとしよう。ノーパンかどうか チェックするチャンスだが、視線を悟られないように注意、注意。

「どうなんだろう、そういうプレイが好きな女性は多数派なんだろうか?」

「私は多いと思うわ。もちろん、愛情と信頼関係があればこそですけど」

「愛情と信頼関係があれば、レイプもどきの無理やりなセックスでも、嫌じゃない ということかい?」

「ええ、嫌じゃないわ。いや〜ん、です」

「いや〜ん」に感情込め過ぎだ!

「本当のレイプはもちろん願い下げだけど、愛しているひとに乱暴に扱われる のって素敵よ。SM にも通じることだけど、愛情と信頼関係があれば、何でも 出来るし、普通じゃない状況に興奮するものよ。でもね、優しくされるのが 嫌ってわけでもないのよ」

「要するに、何でもいいんだ?」

「何でもいいと言われれば、その通りかもしれないけど、普段との落差が いいのよ。普段は温厚で優しい人が、ある日突然荒々しくなって、獣のような セックスをするってのがたまらないわ」

「ケモノねぇ・・・」

「高樹センセは嫌い?」

「いや、好きだよ。普段からレイプ・プレイのことを考えてたりはしないけど、 時にはそういうこともやりたくなるねぇ」

「あら、私たち好みが合うみたいね」

こらこら、そんなこと言ってても、こっちから誘うとうまく逃げるくせに。 とりあえず無視して・・・

「女性でも、普段は上品で純情でエッチな話なんかしそうもない人が、いざ となると、燃えて乱れて、そりゃーもう大騒ぎ、なんてパターンだと男も 興奮するよ」

「あら、ごめんなさい。純情じゃなくて・・・」

美貴は組んでいた脚をゆっくりと組み変えた。きわどいところだが、中は覗けない。 絶妙な計算があるに違いない。確かに純情じゃない。私の視線を観察して楽しんで いるのかもしれない。いずれにしろ、ノーパンかどうかはまだ分からない。

「何故あやまるんだい? それより、逆に、すごく積極的にみえる女性が、そのときに なると恥ずかしがりやさんで、というのもいいよ」

「それでも、私とは違うわ。センセの意地悪!」

「あのなあ、そうやって誘惑しちゃいかんよ、その気もないくせに」

「そんなことないわよ。センセったら女心を分かってないんだから」

「まあ、男と女だからどうなっても不思議はないけどね。男に過剰に期待させちゃ ダメだよ。美貴は普通にしてても色っぽすぎるんだから、それっぽいこと言われたら、 男はみんな勘違いして、いい気になってしまうよ」

「誰にでもこんなこと言ってるわけじゃないわよ、センセは特別!」

「それは光栄だな、今度レイプ・プレイでもしようか?」

「センセ、そんな誘い方じゃいくらその気があっても、OK出来ません!」

その気あるのか?

「それじゃ、今夜は東京湾ナイトクルーズなんかどうだい?」

「素敵! でも、最初からそう言ってくれなきゃ。それに今日はお友達と会う約束 があるから・・・ また、誘って下さいね」

うーん、わからん。本当に誘って欲しいのか? どうせまた色々と理由をつけて 断わるんじゃなかろうか? 本当に都合が悪いんだとしても、断られると心理的 ダメージが大きいんだよな。断られることにメゲない奴がモテる奴なのかも しれないなぁ。

「じゃあ、来週はどうだい?」

「うーんと・・・、まだわからないわ。来週になったらまた誘って」

やっぱりこうなるんだよな。改めて誘うのはパワーいるんだぞ。そこんとこ、 わかってるのか、え? せめて、○○なら空いてるわ、くらい言えないのか?

ここでタイミング良く(悪くか?)、外来の患者がやってきて、私たちの会話は 中断を余儀なくされ、美貴は組んでいた脚をおろして、椅子から立ち上がった。 そこで、私の心臓は喉元まで飛び上がってしまった。

美貴は患者に気をとられ、先ほどとは違い、私の視線のことなど考えていなかった のだろう。脚を下ろすときの、ガードが甘くなっていた。すなわち、中が覗けた のだ。一瞬のことなので、はっきりとは視認出来なかったのだが、なにやら 黒っぽいものが・・・

ノーパンか、もしくは黒のTバックである。

来週になったら改めて誘うぞ、というパワーが沸々と盛り上がってきた。しかし、 そんな私に美貴は、

「ねえセンセ、ナイトクルーズにはお友達も誘っていい?」

という言葉を残して、受付に向かったのであった。

あーーー、疲れる。





ここを押すと、筆者宛てにメールが届きます。

HOME