| 家に帰るまでが遠足 |
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「ねね、センセ」 例によって暇な高樹メンタル・クリニックの昼下がり、美貴が話しかけてきた。 きっとまた、しょうもないスケベ話に違いない。 「ん?」 「家に帰るまでが遠足です、って知ってるでしょ?」 「ああ、小学校の先生がよく言うセリフだろ? 今時、本当にそんなことを 言うかどうかは知らないけど」 「でね、私、その言葉のふかーい意味を教えてもらっちゃったの」 「どーせ、スケベ方面の意味だろ?」 「わ、センセするどい!」 美貴がスケベな話をするときには、身を乗り出して来て目がキラキラ輝くから、 すぐに分かってしまうのだった。私も人のことは言えないだろうが。 「ふかーい意味って何?」 「セックスは後戯も含めてセックスってこと」 不覚にも「ぶはははは」と吹き出してしまった。なかなか秀逸な例え話である。 「誰から聞いたんだ? 面白すぎる!」 「高校時代のオトモダチに瑞希ちゃんって娘がいるんだけど、 こないだ彼女と飲んでいたら、お互いのオトコ遍歴の話になって、 瑞希ちゃんが言うには、家に帰るまでが遠足です、ってことが分かってない オトコはさいてーだって。私も吹き出しちゃったけど、確かに彼女の 言う通りね。家に帰るまでが遠足です、ほんと」 「確かに当たってると思うけど、後戯をしないオトコってそんなに多いのか?」 私はオトコとの経験はないので、そのあたりの事情は分かるはずがない。 「うーん、結構いると思うわ。良く言われることだけど、終わって 10 秒後には タバコふかして背中向けてる奴は、ほんっとさいてー! ねえセンセ、何でオトコは そんなことが出来るの?」 「うーん、これは女には分からないだろうけど、出すものを出しちゃうと、 男はしらけちゃうんだよな。仏様になったようなもんだな。俗界のことには 興味なし、って感じかな」 「だからって、背中向けることないじゃない。まさか、センセもそうなの?」 「さすがに背中を向けてタバコを吸ったことはないよ。それから、後戯については、 人と比べたことはないけど、まあまあちゃんとするほうじゃないかな。 確かにしらけちゃうんだけど、直前まであれだけ乱れていた相手が、 ぐったりと横たわっていたら、とても愛しく見えてくるから、 なにかしてあげたくなるんだよなぁ。終わったあとの、恥ずかしそうな表情も かわいいし」 「でしょでしょ、オンナだって何かしらの接触とか一言が欲しいのよ。 置いてきぼりにされるのはイヤ!」 「背中を向けてタバコをふかしてしまう気持ちも、男としてはわからなくも なんだけど、後戯なんて簡単なんだし、そうすることでさらに愛を確かめ合う、 みたいなところもあるし、面倒がらずにすればいいのに。でも、 私は面倒とは思わないよ、あの時間は好きだからね」 「ねえ、後戯って簡単なの?」 「ああ、簡単簡単、技とか順序とかタイミングとか、そういうのはなーーんも必要なし。 三種の神器だけ覚えていれば、それでエビシンオッケー!」 「三種の神器って??」 「腕枕、軽めのキス、髪を撫でる。以上」 |