読書録 1999年7月

                        読書録1999年 ホーム

 

題名
著者
初版発行日

感想

1

日本再生・アジア新生

マハティール・ビン・モハマッド

たちばな出版
初版1999年3月30日

 マレーシアのマハティール首相がアジアについて語る。金融危機を引き起こしたグローバル資本主義への批判は、1997年当時と比べれば、感情をやや抑え冷静になっているが、やはり、その悔しさは文面からにじみ出ている。しかし、小さな過去より大きな未来を見据えていることも読み取ることができる。日本に対しても大きく期待しておられる。

2

背筋を伸ばせ日本人

西澤潤一

PHP
初版1999年6月25日

 西澤先生もかなりの年を召されたと思うのだが、言葉の切れ味、未だ衰えず。「日本人は独創力がなく、ものまねしかできない民族だ」という考えを甘受してしまう日本人をひたすら叱咤激励されている。日本人の欧米崇拝、やっかみ根性、傲慢さなどを自身の経験を交えて、痛烈に批判されている。西澤先生は記憶力の良い方で、昔受けた恨みをしっかり覚えておられるようだ。
 西澤先生が宮沢賢治の描く世界をひとつのよりどころに生きてこられた、という話は意外だった。鬼の口から「みんなのほんとうのさいわい」「全世界の人たち一人残らず幸せでなければ 個人の幸福はありえない」という言葉がはかれようとは。

3

会津士魂

早乙女貢

集英社文庫全13巻

 幕末、会津藩主松平容保が京都守護職に任命されたことから始まる会津の悲劇を、会津藩士を祖先にもつ早乙女貢が、劇的に、そして怨念を込めて小説化した。昨年から単行本が出版されだし、1999年7月で全13巻そろった。物語はまだ完結しておらず、さらに「続会津士魂」へと続いていく。
 この小説には、会津ではこんなにも薩長土が憎まれているのか、と驚嘆してしまう個所が多々見られる。長州の高杉晋作や伊藤博文のみならず、土佐の坂本竜馬までもが非難の対象となっている。坂本竜馬が、拳銃や万国法を携帯していたのは、その先進性を評価されこそすれ、非難されるものではなかったが、会津士魂では、武士の魂の分からぬ輩と酷評されている。さらに非難は進んで行き、東北人に比べ西国人は軽薄な性格で謀略好きで…、というようなことも言われている。
 物語が進むにつれ、なぜここまで西国人を憎むのか、その理由が分かってくる。会津藩は朝敵の汚名を着せられるような行為はいっさい行っていない。にもかかわらず、長州藩、薩摩藩の陰謀によりいつの間にか賊軍の汚名を着せられ、さらには、慶喜の恭順により、薩長を中心とした東軍を一手に引き受けなければならなくなった。一方的に賊軍呼ばわりされ、故郷を蹂躙された会津の気持ちはどういうものだったのだろう。

4

台湾の主張

李登輝

PHP
初版1999年6月17日

 台湾の李登輝総統が自己の思想遍歴、政治哲学、そして、日本、アメリカ、中国について台湾の立場から語る。かつて日本人であっただけに、日本について語る際、長所短所を的確に見分けられている。マレーシアのマハティール首相は日本に対して熱く期待しておられたが、李登輝総統は客観的な立場で冷静に、どちらかと言えば指導する立場から日本を見ておられる。文面には「私が日本の首相だったら…」という気持ちが見え隠れしている。台湾から見れば大国である日本が、あまりにも情けない態度をとるのが歯痒く思えるらしい。

5

長城のかげ

宮城谷昌光

文春文庫

楚漢攻防戦を題材にした五つの小説を集めた短編集。

6

「大差」の時代

落合信彦

マサダ
初版1999年7月28日

 官僚批判、銀行批判を繰り広げながら、それらに対してもっと怒れと若者を叱咤激励するいつもの論調が展開されている。「大差」の時代といいながら、最近出版される落合さんの著書で、述べられていることはどれも大差ない。今までの横並びの時代は終焉し、「大差」の時代がやってくる。5年後、10年後のために今成すべきことを考えよ。

7

グローバル資本主義の危機

ジョージ・ソロス

日本経済新聞社
初版1999年1月18日

 金融市場を物理学の体系と比較しながら説明してあるので、分かりやすくなっている。物理学についてはソロスは専門ではないので、多少おかしな解釈があるような気がする。
 科学者の理論が実験結果に影響を与えることはないが、金融市場では相互作用性によって、投資者の考えが市場に影響をもたらす。このように自分の意見を述べておられるが、ソロスほどの人物の考えであれば、市場も大きな影響を受けるだろう。

読書録1999年 ホーム