読書録 2000年6月         ホーム     読書録2000年一覧

 

題名
著者
初版発行日

感想

・印象的な内容(一部要約したものあり)

1

石原慎太郎 日本を変えるリーダーシップ

竹村健一

PHP研究所
初版2000年6月5日

 竹村健一とその親友石原慎太郎の対談、そして石原慎太郎のリーダーシップと知事職についての竹村さんの解説が収録されている。

 仲のいい竹村健一との対談ということであってか、石原慎太郎の語り口調もやわらかだったように感じられた。

 石原慎太郎は厚底靴をはいてものすごいメイクをした若い女性と話をして楽しかったそうだ。結構若い人に理解のある人だったようだ。

  • 東京都内、日中の自動車の平均時速は18キロ。(石原 32頁)
  • 中国の李鵬前首相は「20年経ったら日本なんてなくっている」と放言している。そう言ったのは5年前だから、もう15年しかないことになる。(石原 41頁)
  • 公務員の給料は税金で支えられているのです。その税金を払っている人が、払いきれずにばたばた自殺して、不幸な子どもが残されているのです。(石原 49頁)
  • アメリカの心理学者の説:言葉の与えるインパクトはたったの7パーセントだという。残る93パーセントのうち、45パーセントが、どんな声をしているか、そんな顔をしているか。そして最大の48パーセントはどんな服装をしているかが視聴者に印象づけられる。(竹村 106頁)

2

上司が「鬼」とならねば部下は動かず

染谷和巳

プレジデント社
初版2000年2月9日

 この本がよく売れているというので、手にとってみた。管理職を叱咤するためにかかれた本だが、ヒラが読んでも背筋が寒くなる思いがした。松下幸之助の経営方法を理想としているような内容だった。

 社長の視点から見た会社と会社員は、どのようなものかがよく分かる一冊であった。会社で一番大変なのは社長である、とくに会社が危ないときは尚一層、ということが強調されていた。

3

逆境とたたかう技術 

大上和博

PHP文庫

 スポーツ選手や経営者など19人を例にとり、彼らがいかにして逆境とたたかったか述べてある。

 スポーツ選手では、/スキージャンプの原田雅彦/相撲の千代の富士と琴錦/マラソンの浅利純子と有森裕子/F1のニキ・ラウダ/ボクシングの輪島功一/野球のマグワイア/ゴルフの尾崎将司/水泳の鈴木大地/フィギュアスケートの伊藤みどり/陸上の人見絹枝/バレーボール監督の大松博文/高校野球監督の蔦文也。
 
経営者では、/アサヒビールの樋口寛太郎/マツモトキヨシの松本清/三越の三井高利、その他天風会の中村天風/将棋の大山康晴。 
 
以上、有名な人、知る人ぞ知る人の逆境について述べられている。ちなみに僕は、陸上の人見絹枝、バレーの大松博文、三越の三井高利の三人の名をこの本を読むまで知らなかった。

 それぞれの人生の印象的な出来事について完結に述べてあり、非常に読みやすかった。

  • 「会社のマネジメントについてはなにも考えるな。社長以下経営陣がそのことについては責任を持つから、自分の持ち場の仕事に専念してもらいたい」樋口寛太郎は全社員にこの考え方を徹底させた。(28頁)
  • 樋口寛太郎は「よい製品は金さえかければ作ることはできるが、よい商品は消費者の意見を聞かなければ作れない」と言っている。(31頁)
  • 松本清は後に「人のふんどしで相撲を取れ」と自分の座右の銘にしている。(56頁)
  • 「落としたお金ならあきらめればそれで済む。だが、落とした意地は永久にあきらめ切れない」(輪島功一 83頁)
  • 徳川家康の座右の銘に次のようなものがある。「われいまだ志を得ざるとき、二文字を守れり。忍耐これなり」(103頁)
  • オリンピックはその瞬間に強かった者が勝つ。(159頁)

4

ラッキーで行こう

柴門ふみ

新潮文庫

 漫画家柴門ふみのエッセイ集。柴門ふみは本業の漫画の方ではやたらドロドロしたストーリーが多いのだが、エッセイとなると明るく楽しい話題が多くなる。歌が暗くて喋りが明るい中島みゆきと合い通じるものがある。

5

人生余熱あり

城山三郎

光文社 知恵の森文庫

 さまざま老後の過ごし方について城山三郎さんが描いた作品。

 名古屋の24時間営業銭湯で暮らす老人の話からはじまる。居心地のよい場所を求めて、銭湯に集う老人たち。三食銭湯の食堂で済ませ、睡眠も休憩室でとるその姿には、なんともいえないものがある。

 うつむき加減の話はそこまでで、後の話はすべて熱い老後について書いてある。発展途上国で技術指導にあたる人たち、それも70、80という高齢で。ボランティア活動をしているにも関わらず、現地の人に第2次大戦中の出来事の謝罪を求められたりと苦難は多い。しかしそのような苦難をものともしない熱い老後を送っている人たちがそこに描かれている。

 知識労働者は定年後も労働意欲にあふれている、とドラッカーが言っている。この本に描かれている熱い老後を送っている人たちは、自分自身がその人生で得た知識をより多くの人たちに伝えようとしている知識労働者である。

  • 一度しかない人生。そのまま惰性的な暮らしを延々と続けるより、一家をあげて海外へ打って出て、新しい生活を試みてみよう。(62頁)
  • 人生は挑まなければ、応えてくれない。うつろに叩けば、うつろにしか応えない。(171頁)
  • 一日の中に天国と地獄がある。(171頁)
  • 老後には自由が満ちている。会社からも自由、時間も自由。世評からの自由もあれば、他人の目からも自由もある。(182頁)

6

パラサイト・シングルの時代

山田昌弘

ちくま新書
初版1999年10月20日

 親と同居している未婚者を面白おかしく揶揄している内容かと思っていたが、そんなことはなかった。若者の生活スタイルを憂い、日本の将来を真剣に考える本であった。

 著者の山田昌弘氏は東京学芸大学助教授で著書に「近代家族のゆくえ」「結婚の社会学」などがある。パラサイト・シングルについては、この本を書く前からいろいろなところで言ったり書いたりしているそうだ。

 よく少子化対策で育児設備の充実とか子育てと仕事の両立が云々と言われるが、結婚した女性が生涯に産む子どもの数はここ30年変わってないそうだ。少子化(合計特殊出生率の低下)の真の原因は、結婚しない女性が増えたことにある。その原因は、結婚したくない女性が増えたのではなく、結婚はしたいのだが理想が高かったり、「結婚は貧乏のはじまり」という社会に日本が変わってしまったことにあるそうだ。結婚するより親と同居している方がはるかにいい生活ができる。

 旦那の収入の高い家庭では妻は専業主婦になり、旦那の収入が低い家庭は共働きとなっていた。これにより各家庭の所得格差がなくなり、日本人が総中流意識をもつ結果となった。

  • 学卒後もなお、親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者を、日経新聞紙上で「パラサイト・シングル」と呼んだ(1997年2月8日夕刊)。(11頁)
  • 金銭的コストだけでなく、家事労働のコストもほとんど負担しないのがパラサイト・シングルなのである。(37頁)
  • パラサイト・シングル(親同居未婚者)が増えているということは、その前提として、結婚しない若者が増大していなければならない。つまり、日本の若者が未婚化、晩婚化した結果生じた現象である。(56頁)
  • アメリカなど欧米諸国では、成人したら「同居する特別の理由がない限り、別居する」のが原則である。(66頁)
  • 高度成長期の若者には、結婚に対して「夢」があった。(73頁)
  • 女性の結婚に対する要求水準が高くなっている。(81頁)
  • ここ30年間、結婚した夫婦が産む子どもの数は、ほとんど変化がない(2.2人前後)。ということは、日本で少子化が進んでいる「直接の原因」は、未婚者が増え、その未婚者が子どもを産んでいないことにある。(99頁)
  • 個人を富ますパラサイト生活は、社会全体を貧しくする。(103頁)
  • 若者における自立意識の減退と依存主義の台頭、パラサイト・シングル増大の最大の影響は、この点にあると、私は憂慮する。(132頁)
  • パラサイト・シングルたち、それを作り出している親たちが、現実に、日本社会を除々に衰退に向かわせている。(184頁)

7

秀吉私記

津本陽

講談社文庫

 「夢のまた夢」で秀吉を描いた津本陽が秀吉の人生について解説した本。「下天は夢か」は信長を、「夢のまた夢」は本能寺の変後の秀吉を描いた作品なので、秀吉が信長のもとで出世していく過程はあまり詳しく描かれていない。この「秀吉私記」はそこを補い、どのように立身出世していったかが述べられている。

 秀吉出世の一番の要因は、決して誰かを追い落とすような真似をしたのではなく、ひたすら主人のために働き、進んで死地に赴いたことによる。

  • 秀吉が出世している過程を見てみると、主人の望んでいることを、先へ先へを気ばたらきしていく鋭敏さが大きな力となっている。(18頁)
  • 秀吉の戦略、戦術の特色は、信長が大量虐殺をおこなって絶滅させたり、平然と斬殺したのとは対照的に、流血を避けて兵糧攻め、水攻めなどによって、相手を降伏させるようにつとめたことである。(61頁)
  • 現代の日本がチップを必要としない社会であるのは、世界でも希な例だが、その根源は秀吉の庶役召しあげにゆきつく。(83頁)
  • 信長がもし70歳位まで長生きしていれば、呂宋、アメリカ大陸まで進出していたことが考えられる。(138頁)

8

経済・情報・生命の臨界ゆらぎ

高安秀樹、高安美佐子

ダイヤモンド社
初版2000年4月6日

 フラクタルについて研究されている高安夫妻が、その基本から応用まで述べた本。「複雑系科学で近未来を読む」という副題がついている。ワールドロップの「複雑系」を読んで以来、複雑系関連の本を何冊も読んできたが、この本が最もいい内容だと思う。フラクタル分布と経済の関連を言葉だけでなく、データで具体的に示してあるのがよい。

 第1章で臨界ゆらぎについて物理学的な説明があるのだが、これが結構難しい内容である。カオスとかフラクタルという言葉ならまだしも、相転移や散逸構造といった言葉がでてくる。物理学を学んでない人にとっては、訳分からない内容になっているのではないだろうか。

 第2章第3章で、第1章で紹介した内容がいかに、経済・情報・生命に適用できるかが述べてある。これが非常に興味深い内容となっている。フラクタル分布に従う系として、
会社の所得
コンピュータ中のディレクトリの大きさ
コンピュータ中のジョブごとの処理時間
論文の引用件数
魚の群の大きさ
戦争ごとの戦死者
などが示されている。一見無関係の現象が同じ法則に支配されているのが興味深い。

 第4章で複雑系科学の近未来として、主に多様化について述べてある。

 第5章は複雑系やゆらぎとは少し話がそれて、日本の教育システムや研究者の育成方法について意見を述べられている。

  • 複雑系の科学が最終的に目指すのは、物質、生命、情報、人間社会、そして環境や宇宙までも含めたあらゆるものの関連の解明です。(14頁)
  • 相転移現象、フラクタル分布、カオス、自己組織化臨界現象などが複雑系のエッセンスとしてぼんやり見えてきた。(20頁)
  • 需要と供給が平均的に均衡するという戦略では、ゆらぎがあると実際にはかなりのロスが生じ、期待するほどの増収にはならない。(72頁)
  • これまでの経済学の考え方に従えば、価格は需要と供給の均衡で適正な価格に収束するはずであり、そうならないのは市場が十分解放されていないためであると考えます。その信念に基づいて、市場が開放され、外国為替は誰でもいつでも自由に参加できるという究極の開放状態にまで規制が緩められたのです。しかし、その結果外国為替の変動はむしろ激しくなっているように見えるのです。(76頁)
  • 脈拍のゆらぎは誰にでもあり、健康な人のゆらぎのほうが病気の人のゆらぎよりも大きいことがわかってきました。心臓に疾患のある人の場合にはゆらぎが一般的に小さい。自発的なゆらぎの大きいことが健康の証ともいえるのです。(129頁)
  • 自由経済は人間の欲望が渦巻く世界で、みんな自分勝手にあの手この手で利益をあげようと一喜一憂し、ときには命がけの勝負までしているにもかかわらず、社会全体としてみるときれいな法則性(ジップの法則)に縛られている。(140頁)
  • 一般に複雑系に対しては、いっけん無駄や不合理と思えるような多様性を維持しておくことが、ローリスク・ローリターンの安定した戦略に対応します。(216頁)
  • 最近大学生や大学院生に、これからやりたいことや目標は何かということを聞いたとき、はっきりとした返事のできる人にめったに出会えません。(228頁)

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