読書録 2002年12月  2002年読書録一覧  ホーム

No. 題名

感想

1

資本主義・社会主義・民主主義 

シュムペーター

中山伊知郎、東畑精一訳

東洋経済新報社
初版1995年6月8日

 Joseph Alois Shumpeter Capitarism, Socialism and Democracy

初版は1942年。

 ドラッカーの著書、竹中平蔵氏の著書・発言に触発されて、読んでみました。

 読みたかった内容は序盤に集中していた。後半は、シュムペーターの思想というより、マルクス主義を中心とした経済学史について述べてあった。

 経済発展のためには、今あるものを消費していくのではなく、新しいものを造るために、投資をしなければいけないんですね。

第1部 マルクス学説

  • おおざっぱにいえば、社会階級なるものがはじめて登場したのは、社会の歴史は階級闘争の歴史である、との『共産党宣言』のかの有名な叙述をもって最初とするであろう。(21頁)
  • ある人が資本家たりえたのは、彼が労働においても貯蓄においても他の人々よりはるかに聰明かつ精力的であったからであり、このことは今日でもそうである、というブルジョワ発生の物語を、マルクスは軽蔑して否定する。(24頁)
  • マルクスが立証しようとしたものは、搾取が、個々人の立場からみて時たま偶然に生じたものではなくて、不可避的に、かつ個々人の意志とは全く無関係に、資本主義の論理そのものによってもたらされるということであった。(41頁)
  • 事実上資本主義経済は静態的ではないし、また静態的でもありえない。それはまたただ単に着実な歩みで拡大しているものでもない。それは新しい企業により、すなわち、新商品や新生産方法や新商業機会をその時々に存在する産業構造へ導入することにより、内部からたえず革新されている。すべての現存の産業構造や実業取り引きを行なういっさいの条件は、つねに変化の過程にある。あらゆる事態は自己を成就しつくすのに十分な時をまたずしてくつがえされる。かくて資本主義社会での経済進歩は動乱を意味する。やがて第二部でみるごとく、この動乱のなかでは、競争というものは、たとえそれが完全に行なわれたとしても、なお静態的過程で作用すると思われる仕方とはまったく異なった仕方で作用する。新しい物をつくることや古い物をいっそう安くつくることにより得られる利潤の可能性は、たえず実体化して新投資を要求している。この新生産物や新方法は旧生産物や旧方法と競争するのであるが、この競争たるや、同等の条件で行なわれるのではなくて、古いものには死をもたらすがごとき決定的に有利な条件のもとで行なわれるのである。これこそが、資本主義社会における「進歩」の実現方式である。売りくずすのを避けんとすれば、あらゆる企業は、結局他の企業と歩調をそろえ、必要に応じてつぎつぎに投資することを余儀なくされ、したがってまた、そうしうるために自己の利潤の一部を控除すること、すなわち蓄積することを余儀なくされる。かくして、他のすべての人々も蓄積することになるのである。(50-51頁)
  • 資本主義発展がいつの日にか資本主義社会の制度的骨組みを瓦解せしめるであろうことを確信していたマルクスは、実際の崩壊が起こるまえに、資本主義は増大する摩擦のなかで作用しはじめ、致命的疾患の徴候を露呈するにいたるであろうと考えた。(66頁)
  • マルクス自身は、はなはだ賢明にも社会主義社会を詳細に論ずることを差し控えて、その出現の諸条件を強調するにとどめた。(91頁)

第2部 資本主義は生き延びうるか

  • すなわち、資本主義体制の現実的かつ展望的な成果は、資本主義が経済上の失敗の圧力に耐えかねて崩壊するとの考え方を否定するほどのものであり、むしろ資本主義の非常な成功こそがそれを擁護している社会制度をくつがえし、かつ、「不可避的に」その存続を不可能ならしめ、その後継者として社会主義を強く志向するような事態をつくり出すということである。(98頁)
  • 内外の新市場の開拓および手工場の店舗や工場からU・S・スチールのごとき企業にいたる組織上の発展は、不断に古きものを破壊し新しきものを創造して、たえず内部から経済構造を革命化する産業上の突然変異―生物学的用語を用いることが許されるとすれば―の同じ過程を例証する。この創造的破壊(Creative Destruction)の過程こそ資本主義についての本質的事実である。それはまさに資本主義を形づくるものであり、すべての資本主義的企業がこのなかに生きねばならぬものでる。(130頁)
  • 創造的破壊の過程には、たとえ特定の嵐に耐えた企業が元気旺盛にかつ有効に生き延びえたとしても、なお多数の企業が壊滅せざるをえないような事態が発生する。(140頁)
  • マルクスとケインズの間には、マルクスとマーシァルまたはヴィクセルの間にあったほどの隔たりが存在しないことは確かである。マルクス主義学説も、その非マルクス的対応物(ケインズ理論)もともに、われわれが用いようとする次の自明の語句によってうまく表現せられる。投資機会消滅の理論これである。(174頁)

第3部 社会主義は作用しうるか

第4部 社会主義と民主主義

第5部 社会主義政党の歴史的概観

2

日本の盛衰

堺屋太一

PHP新書
初版2002年10月29日

 20世紀を振り返って日本の盛衰について述べた本。「盛衰」は「じょうすい」と読むんでしょう、「源平盛衰記」のように。

 経済企画庁長官在任中と退任後は、あまりパッとした活躍がないように思える堺屋さん。
 しかし、歴史を分かりやすく伝える表現力は、堺屋さんが一番。

 知価革命とか知価社会という言葉は、堺屋さんの新しい読者である私も聞き飽きたんで、違う言葉を考えて下さいな。
 『時代末』とか『大変な時代』というのがいいと思いますが。
 「知価」などと言われると、インテリの時代かと思ってしまうので、「大風おこりて雲飛揚す」というような、麻のように乱れた社会に乗じてひたすら上昇してゆく、という感じの言葉をお願いします。

■建設国債
 後に国有財産が残るからよい借金だと思われていたんですね。

■戦前の政治家
 政治家は金に汚いとされていたので、軍人が頼りにされていた。

3

論理的に考えない方がうまくいく!

中島孝志

講談社
初版2002年11月22日

 中島氏の著作は本屋さんでよく見かけますが、実際読んでみたのはこれが初めてです。

 『論理的に考えない方がうまくいく!』と言われたら、ふっと気楽になります。

4

日本システムの神話

猪瀬直樹

角川oneテーマ21
初版2002年10月10日

 道路公団について、かなり前から苦情を言い続けてきた猪瀬氏の著書。

 東ちずるが出演していたころのTVタックルで、道路公団の不正に怒りまくっていた記憶がある。言ったってどうせ無駄だろう、などと私は思っていたが、まさか、道路公団改革の旗手になろうとは、、、

5

日本の競争戦略

マイケル・E・ポーター、竹内弘高

ダイヤモンド社
初版2000年4月13日

Can Japan compete?というが英語でのタイトルです。

 断定的で少し大げさな表現がしてある。読者としては、著者の伝えたいことが分かり易くてとても良い。あの分厚い『競争の戦略』も読まねば。

■日本の資本生産性は低い(9頁)
 1960年代から80年代を通じて、日本の労働生産性は急上昇したが、資本生産性は低いままであった。低い資本生産性が、高い労働生産性を相殺していた。

■日本政府は新規製品に対する初期需要を刺激することで、産業競争力の向上に貢献した(56頁)

■企業が卓越した業績を追及する二つの方法
(1)オペレーション効率(138頁)
 同じかあるいは似通った活動を競合他社よりもうまく行うことを意味する。
(2)戦略(139頁)
 戦略とは、顧客に価値を提供する上で、トレードオフ(二者択一)を行うことである。何をしないかという選択が、戦略の核心である。

■労働力不足(244頁)
 短期的には、失業問題が深刻化することが見込まれるが、数年もすれば、むしろ労働力不足が真の問題であることが明らかになるであろう。

■今や、日本は品質を軸にした競争から、戦略やイノベーションを軸にした競争へと転換しなければならない。(301頁)

  • 日本の産業は、政府が競争を管理した場合に成功したのではなく、政府が自由な競争を許した場合に成功してきたのである。(B頁)
  • 1974年にモトローラが松下電器にテレビ部門のクウェーザーを売却した際、松下は驚くべきことに、同じ生産施設と労働者を用いて数年以内に欠陥率を1%に引き下げされることを発見した。(121頁)
  • 日本企業は、品質をコストを同時に改善するというオペレーション効率の視点からのみ競争をとらえているため、競争において持続的な成功を収めることを自ら極めて難しいものにしてしまっている。(123頁)
  • 継続的改善の積み重ねは、戦略ではない。競合他社の模倣や同じ手法を少し上手に行うことも、戦略とは呼べない。(126頁)
  • 市場シェアに固執することで、日本企業は模倣戦略を遂行し、互いに同質化するようになる。(263頁)
6

問題上司

ハーヴィー・ホーンスタイン著
齋藤勇訳

プレジデント社
初版2000年11月15日

 組織人事コンサルタントの永井隆雄さんの著書にたびたび引用される『問題上司』-BRUTAL BOSSES-

 問題上司には責任回避という習癖がある、という問題上司について述べた本。

  • 人間は、プレッシャーを受けると、わが身を守るために本能的に攻撃に転じる。(16頁)
  • 人間は、自分が自信をなくすような状況に追い込まれると、何とかして自尊心を守ろうとして、なりふりかまわず利己的な行動に出る。(22頁)
  • ビジネス組織論の第一人者であるC・K・プラハラッド教授は、上司が「絶対君主」として職場に君臨し、部下を「家来」のごとくあしらう「専制的なタテ型社会」は、あっけなく終わりを迎えると主張している。(28頁)
  • 上司として大切なことは、第一には「戦略性」だが、それと負けず劣らず大切なことは「部下の話に耳を傾ける」ことである。(109頁)
  • 社員の心と健康に最も大きな影響を及ぼすのは、業績へのプレッシャーよりも「上司との人間関係」である。(117頁)
  • 上司は「鬼」となる前に、まず第一には部下を励ますことのできる「情」を持つことが大切である。(133頁)
  • アメリカ労働統計局によると、アメリカの職場では、そこで働く者の死因の第二位が、驚くなかれ、「殺人」なのである。(137頁)
7

日本よ

石原慎太郎

産経新聞社
初版2002年11月10日

 産経新聞に月一回連載している随筆を単行本化したもの。

■そこに山があるからだ
 これは、1924年にエベレストで消息不明になったイギリスのジョージ・マロリーの言葉とのこと。

■動物行動学者コンラッド・ローレンツの言葉 
 「幼い頃肉体的な苦痛を味わったことのないような子供は、成長しても必ず不幸な人間になる」(49頁)

■ドラッカーは数年前にすでにアメリカ経済の衰退を予言していた。そしてそれがようやく現実のものとなりつつある。(135頁)

■私が都議会で災害対策の大演習について参加する自衛隊を軍と呼ぶ度に、共産党席からは悲鳴に似た非難の声がわき起こるが、彼等を軍とみなさずにいれば、いったん戦闘の際に傷つき捕虜となった隊員は、ジュネーブ条約による軍人とみなされず、ゲリラとしてリンチの対象となり得る。(166頁)

8

ビジネス・ウエポン

大前研一

小学館
初版2002年12月20日

 『サラリーマン・サバイバル』シリーズの第4弾。

■株を持っている人
 日本の場合、株を持っているのは、銀行、生保、外国人の機関投資家。個人金融資産に占める株の割合は5%に過ぎない。(24頁)

■21世紀のサラリーマンの三種の神器(54頁)
 英語、IT、財務

■問題解決法(68頁〜
 大前研一さんの問題解決法は下記のようになる;
(1)事実に基づいて質問し、問題を狭めていく左脳のロジカルシンキングから始める。
(2)戦略的自由度のプロセスで右脳側に開放し、直観や想像力で幅広く答えの可能性を見つけていく。
(3)そこから出てきたものを再び事実に基づいて検証・評価し利害、実行可能性、適任者について検討して答えの幅を狭め、最終的に一つの案にまとめる。
(4)行動計画を立て、人員を配置し、予算を計上して実行段階に入る。このプロセスでは、その気にならない人をその気にさせるための説得や交渉が必要になる。いわゆるEQである。

■ソニーは技術を抱え込みたがる(197頁)
 ソニーはベータの技術を抱え込んでしまったがために、VHSに敗れた。PS2も同じ戦略とのこと。

■高速道路をどうするか
 高速道路をただちに廃止し「国道0号線」として道路関係予算のなかですべてやってしまう。そして借金部分には「ナンバープレート課金」する。(202頁)

■デジタルテレビが流行らない理由(217頁)
 誰がリモコンであれこれ付帯情報を見るだろうか?

  • 銀行は経済の血管だというが、日本の銀行はこの10年間、血液の循環機能を全く果たしていない。それでも日本経済が破綻していないといういうことは、銀行が潰れても何の影響もない、ということである。(23頁)
  • 前例のない問題を解決するためにはロジカル・シンキングだけでなく、問題解決法の全プロセスを身につけなければならない。(68頁)
9

巨象も踊る

ルイス・ガースナー著、山岡洋一、高遠裕子訳

日本経済新聞社
初版2002年12月2日

 Who Says Elephants Can't Dance?

 ガースナーが取り組んだと思っていたリストラは、前のCEOの時代から行われていたんですね。

■ガースナー就任直後、研究者へのメッセージ
 IBMの将来にとって研究開発が重要だが、研究者と顧客の関係をもっと密接にして、IBMの技術革新を支える偉大な研究所が、顧客の抱える切実な問題の解決を目指すようにする方法を考える必要がある。(60頁)

■IBM再生の戦略
 ワトソンの原点に回帰する事項が多かった。(104頁)

■IBMは国の宝
 ジョンソン&ジョンソンの経営者ジム・バーグ、遺伝学者でノーベル賞の受賞したジョシュア・レーダーバーグなどから言われた言葉。

■賭け
 今後十年の間に、顧客はソリューションを提供できる企業を高く評価するようになる。(169頁)

■サービス事業(181頁)
 労働集約的なサービス事業において、売り物は能力であり、知識である。

■OS/2
 IBMは今でもOS/2を使い続けている顧客にサポートを提供している。(189頁)

■ロータス買収
 買収が成立した95年7月時点で、顧客企業で使われていたノーツは約200万本。2001年末現在で9000万本。(196頁)

■成功を収めている組織、成功を収めている経営者の性格
 ・焦点を絞り込んでいる
 ・実行面で秀でている
 ・顔の見える指導がすみずみまで行き渡っている(288頁)

■優れた戦略は大量の数量分析から始まる。(295頁)

  • 「競争相手が溺れていたら、消化ホースをつかんで、それを相手の口につっこむべきだ」(マクドナルドの創業者、レイ・クロックの主張 29頁)
  • 重要なのはマーケティングと商品企画。(217頁)
  • 外部から加わった者にとって、IBMは温室のような雰囲気があった。長期にわたって外部世界から隔離されてきた熱帯の生態系のようだった。(251頁)

 

 

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