読書録 日下公人  ホーム

No. 題名

感想

11

5年後こうなる

日下公人

PHP研究所
初版2003年1月29日

 5年後は明るいよ、今が悩みすぎなだけだよ、ということが書いてある本。

 日下さんには1997年刊の『これからの10年』というのがある。そこでも未来は明るい、ということが書いてあったが、まだまだ暗そうに思えます。

■有事のドル高からドル安へ(25頁)
 今までは、戦争が始まりそうになると、軍事力の強いアメリカが安心だからと「有事のドル高」になったが、2002年6月下旬以降「有事のドル安」となった。

■アメリカは攻勢週末点に来ている?(30頁)

■国際政治学者ハンス・モーゲンソーの言葉(35頁)
 「一国の指導者は、自分の国を、進めば著しく困難が増加し、退けば著しく不名誉になるような場所へ引っ張っていってはならない」

■ケインズの言った経済学が死ぬとき(45頁)
 「そのときは経済学が死ぬときだ。それは金利が1パーセントにまで下がるので分かる」

■アメリカでは理論経済学、数量経済学、マクロ経済学の人気が高い。歴史の短い国だから、歴史に学ぶのは自分が不利である。それでなんでも理論化して、それを正しいというクセがある。(55頁)

■昭和20〜30年代のころは、銀行が貸しているお金は全部「不良債権」だった。(62頁)

■郵便貯金は不良債権のこげつきでもう半分ない。しかし誰も郵便貯金をおろそうとしない。(67頁)

■5年後は株価そのものが話題にならなく可能性の方が高い。少なくとも今よりはずっとそうなる。今までが騒ぎすぎである。その昔どんどん値上がりしたから関心を集めただけである。(84頁)

■経済を良くする根本(99頁)
 自分が働く。人を働かせてピンハネしようというのは、うまくいく時はいく。しかし、いかない時はひどい。

■シルバー商品はシルバーの人たちが考えないとダメ。(111頁)

■忠誠心のない人の仕事のやり方(145頁)
 「指示どおりやったぞ、文句あるか」

■ニューヨークの前ジュリアーニ市長の方法(160頁)
 落書きをするな、道端に寝転ぶな。それを片っ端から検挙した。そして凶悪犯罪をなくした。

■中国の秘密兵器(249頁)
 相手を腐敗・堕落させる

10

大東亜戦争、こうすれば勝てた

小室直樹、日下公人

講談社+α文庫
文庫版初版
2000年11月20日

 1995年7月に出版された『太平洋戦争、こうすれば勝てた』を改題し、再編集し文庫化したもの。

 小室直樹と日下公人の対談。戦略や兵器の話がされている。

  • 第1次大戦のとき、ドイツのモルトケ二世の言葉「将軍というものは、なるものではありません。生まれるものです」(108頁)
  • 大本営参謀というのは、いい商売ですよ。うまく行ったときは「私の指導です」と言って自慢し、失敗したときは「あいつが悪い」と人を責めればいいんだから。(日下 129頁)
  • 日本とドイツは劣等感のためホームラン狙いの大振りが多かった。たとえば、ドイツはジェット戦闘機とかロケットとか、いろいろ作ったけれども、戦力として間に合わなかった。そんな力があるなら、メッサーシュミットやフォッケウルフでいいから、数をもう三倍作っていれば、もう少しマシな戦争ができた。(日下 168頁)
  • 公開情報を緻密に分析したほうが、最高のスパイ情報よりも正しい情報が得られる、ということはある。(小室 182頁)
  • ハル・ノートの内容を世界中に公開すべきでした。戦争をするのならなおさらです。ところがそれをしていませんから、いまだにアメリカ人はそういうものがあったことを知りません。(日下 191頁)
  • ほとんど国々が日独に宣戦布告した中、トルコだけは中立を守りました。(小室 225頁)
  • よくテレビに「軍事評論家」という肩書の人が出てきていろいろ質問を受けたり、自分からしゃべったりしているけれども、あれはだいたいが「武器評論家」だった。(日下 238頁)
  • 明治政府が廃藩置県をやって琉球の尚王を東京に拉致して幽閉した。それで「日本はひどいことをした」と、いまはそう伝えられているけれども、あのときの沖縄の庶民は「尚さんとその下の貴族がいなくなったら、後はだれが来ても幸せだ」って歓迎した。(小室 272頁)
9 私が「この国」を好きな理由

日下公人

PHP研究所
初版2001年4月10日

 日下公人氏は、このままでも日本の未来は明るい、という内容の著書を多く書かれている。

 やたら未来を悲観する人が多い中で、日下さんの存在はもっと注目されてよいのではないだろうか。「短所を克服するよりも長所を伸ばすべきだ」と誰もが言うが、実際は日本はここが悪いあそこも悪いとなってしまい、すべてが悪いように言う人が多い。高齢化社会を長寿社会と言い換えただけで、日本は世界に誇れる長寿社会を作り上げた国ということになる。

  • 三十歳代、四十歳代の生活が苦しいのは古今東西の常識でべつに不景気のためではない。(30頁)
  • 日本人の信仰の中味は、どうやら先祖崇拝と自然崇拝だけである。(48頁)
  • もしかしたら日本の謝罪外交が世界に広がりつつあるのかもしれない。(107頁)
  • アメリカ人は子ども、日本人は大人である。もっとも最近は、アメリカかぶれして子どもになったような日本人が多い。(117頁)
  • 故本田宗一郎は基礎と称されるものの大半は、それが必要になってから振り返って勉強すれば簡単にわかるし、それで済むものだといっている。(122頁)
  • 2000年6月に発表されたアメリカ商務省のレポートによれば、この7年間、ITを売る会社の生産性向上はプラス10.4%だったが、購入して利用した会社の生産性はむしろマイナス0.1%だったという。(130頁)
  • ソフト化とは、先端に出ることで、そのために硬直化した過去を捨てることだ。(138頁)
  • 夜考えるとノイローゼになる。朝考えれば大丈夫。(164頁)
8

裏と表から考えなさい

日下公人

PHP文庫

  本書は、1999年3月にPHP研究所より出版された「一問に百答」を文庫版にあたり改題したもの。編集者からの質問に、日下さんが答えるという形をとっている。

 人にはそれぞれ立場があり、しかもこの多様化した社会では、なにしろ立場の数が多い。だから、いろいろな立場から物事を見ましょう、そうしたらこのような見方ができますよ、ということが本書のテーマになっている。

 日本人が独創性を必要としたのは、戦時中だけだと日下さんは言われている。明治〜平成にいたる間、太平洋戦中だけ日本は世界から孤立したため、技術開発を自前で行うしかなく、突如として日本人に独創性が要求されたということだそうだ。

 銀行員が中小企業に天下りができる理由として、銀行員は悪いことをしない、そして取り替えがきく、という2点を挙げられている。銀行員が悪いことをしないというのは、悪い事をするほどの能力がないと言っているようだ。銀行は悪いことをするが、銀行員個人では悪いことはしないということだろうか。

  • 菊地寛が文藝春秋社をつくったときは、「三ヶ月の貯金をしたまえ」と言った。なぜかというと、「三ヶ月分の貯金がある人は、当分生活できるから信念を持って編集する。編集長と喧嘩する度胸ができる」という説明だった。(42頁)
  • 社会党の人が中国で日中戦争について詫びると、周恩来は「とんでもない。日本が中華民国と戦ってくれたおかげで、中華人民共和国が誕生したのです」と答えたという話もある。(169頁)
7 人間はなぜ戦争をするのか

日下公人

三笠書房 知的生きかた文庫

 日下公人が書いた戦争論。第二次大戦を例に、定説を打破し真実を探求し、国家戦略の一部である戦争について述べた本。日本について悪かったところは批判し、汚名を着せられたところはしっかりそのことを主張している。

 ミッドウェー海戦ののとき、空母を甲板で航空機の爆弾を魚雷を入れ替えているとき、米軍に攻撃され、瞬く間に空母は沈んでしまった、というのが僕にとって常識だったが、それは後からでっち上げられた話だということだ。

  • 多くの日本人は、戦争を「道徳」や「個人の良心」のレベルで考えてしまう。これはもう、ほとんど宗教に近い。(4頁)
  • 戦争が始まると、アメリカの大学生は続々と軍隊を志願した。一方、日本の大学生はまったく志願しなかった。だから、学徒動員が必要だった。(65頁)
  • 閉鎖集団の結束は固い。新興宗教を見ればすぐに分かるが、内部結束を固めて異質集団をつくれば、外で通用しない人間が出来上がり、よりいっそう内部結束が強まる。(111頁)
  • 社外で通用しない人間のほうがいい社員になってしまう。社外で通用しない人ほど中では忠勤を励み、愛社精神が強くなって、まわりの人を「あいつは愛社精神が足りない」と言いふらして歩くのが点数稼ぎになる。(111頁)
  • 戦後、高級軍人の回顧録に「胸中を察してほしかった」というような記述がある。つまり、本当に総攻撃をすると思って指令を出していなかった。部隊の側も理解してくれるだろうと思っていたのに、突撃してしまったというのである。(136頁)
  • 戦後に間違った常識がまかり通っているが、激戦の最中に捕虜はとらない。足手まどいだし、いつ裏切るかわからない。片付けて進むのは当然である。(148頁)
  • 戦略とは、マキャベリが言う政略と戦術の間に立つ概念である。(198頁)
  • 戦後半世紀を経た今、日本が「反省」すべきことは、「侵略」でも「大虐殺」でもない。戦争を設計せずに、大東亜戦争に突入したことである。(253頁)
6 闘え、本社

日下公人

PHP研究所
初版1995年5月8日

 副題が「新しい日本よ、こんにちはPART 2」ということなので、「人事破壊」の続編となる。「人事破壊」では個人がどうあるべきかが述べられていたが、「闘え、本社」では企業戦略が話の中心となっている。

 この本で述べられている「本社」とは経営管理部門のことを意味している。「本社」はアメリカの企業のように戦略をたて、特に経営者はジャック・ウェルチを目指しなさい、ということが書いてあった。

 アメリカはこうだから日本もそうしなさいという残念な内容だったのだが、後に日下さんは「21世紀、世界は日本化する」という本を出されることになる。「闘え、本社」を執筆された1995年の時点では、「世界はアメリカ化するべきだ」と思われていたようだ。

  • (太平洋戦争中の日本について)予科練と航空機メーカーだけがある一時期世界水準を超えていたのであって、他はそれを見習うべきなのに「同じ日本人」と安易にはしゃいだから、戦争が拡大して総当たり戦になると日本は弱かった。(38頁)
  • アメリカ企業はタテ社会で、本当に指揮・命令ができて新しいチャレンジをする人が社長になるので、下々は命令どおりにやればいい。(53頁)
  • 倒産への前駆(その1)来客が減る、(その2)したがって情報が入らなくなる、(その3)来客は売り込みの営業マンばかりになる(毎日お世辞が聞ける)(その4)自分から面会に行っても会ってくれない(パチンコが上達する)、(その5)ゴマすりが昇進する、(その6)いい奴から退職していく……。(63頁)
  • ホワイトカラーは自分たちで仕事をクリエイトする――というか、要するにいらない仕事をつくりだしてしまう存在である。(89頁)
  • 面接で「学生がマニュアル通りの答しかない」と不満を言うが、同じ質問をするからマニュアル本が出回るのある。(138頁)
  • サッチャー首相は在任中、英国の日産自動車を訪問したり、労働組合を説得したり、たいへんな努力をした。ECに対しても「これはイギリスの自動車である」と頑張ってくれた。(172頁)
  • 日本人は自分が働いて儲ける、アメリカ人は世界の人を働かせて儲ける、イギリス人は遊びながら儲ける。(227頁)
5 組織に負けぬ人生

日下公人

PHP文庫

 1983年に出版されたものの文庫版。陸軍大将今村均の回顧録を引用し、上司や部下との付き合い方に焦点を当て、組織に負けぬ人生を日下公人が解説している。

 日本陸軍の軍人は、当時日本で最も優秀な人たちの集まりだということが、本書の今村均や、山下奉文、東条英樹、石原莞爾等の逸話を読めば分かる。学問があるだけでなく、将軍として人格的にも非常に優れていた。しかし、陸軍という組織となると、悪い話が数多く残ってしまった。

  • アメリカの戦争回顧録にも、日本軍の作戦は紋切り型だったとの感想が随所に見られる。日本海軍の艦長達は初動攻撃には優れていたが、混戦になってからは信じられないほど無能だったとキング元帥は書いている。(59頁)
  • 人の生涯は長いが、それでも十代から五十代までその人柄は意外に一貫している。(202頁)
4 これからの10年

日下公人

PHP研究所
初版1997年10月15日

 日下さんは物事を面白おかしく表現するので読んでいて楽しい。

 これからの10年をうまく乗り越えることができると、その後の50年はとてもいい時代がくる。これからの10年を「変化」「不安」「行動」の三つに分けて日下さんが解説されている。

 日本は交渉事が上手でない、というのをチャーチルの回顧録を引用して説明してある。無理難題を強いても1度目、2度目は笑って受け入れるが、調子にのってさらなる要求をすると突然態度が変わり、戦いましょうということになる。交渉しているのだから、嫌なことは嫌と言って欲しいそうだ。

 再来年には立派に生まれ変わった新日本が期待できる、と結んであるが、1999年がその年にあたる。1999年の株価の上昇などは生まれ変わった日本を示しているのだろうか。

  • 今は激変期だから、安い給料でいい人が雇える。専門職も、どこかで辞めさせられた人を何割安かで中途採用できる。しかもその人たちは心を入れ替えて、今度こそは働こうと思っている。(42頁)
  • (女性から聞いた話)英雄豪傑が色を好むではなく、色が英雄豪傑を好む。(70頁)
  • マイルドセブンは、タバコのみは不潔と思われるのを気にしているというのを発想の原点にし、「白い世界」をコンセプトに南極やアルプスなど白い映像を流しつづけた。(91頁)
  • LIC(Low Intensity Conflict)すなわち「低強度紛争」の時代がすでにやって来ている。(162頁)
  • かつて農林省のお達しで「杉の木を植えろ、補助金をだす」ということになったら、たちまち日本中が杉の木だらけで、花粉症が発生した。(209頁)
  • 普通のサラリーマンに所得税がかかるようになるのは昭和15年である。((214頁)
3 21世紀、世界は日本化する

日下公人

PHP研究所
初版2000年3月6日

 日本の未来は明るい、ということを日下さんが日本の娯楽・文化を中心に記したもの。21世紀、老いも若きも日本人は文化発信者となる。

 ヨーロッパ文明と無関係の日本は野蛮な国、という考えをもつ人が国際派。それに反発するのが国粋派。日本にも法隆寺のエンタシスの柱のようにヨーロッパ文明がしっかり伝わっているので野蛮ではない、と考えるのが中間派。この中間派の意見は面白い。このように書いてあった。法隆寺の柱はギリシャ神殿と同じエンタシスの柱だから、日本にもギリシャの文明が伝来していた、と歴史で習ったのだが、ただの外国かぶれの意見だったようだ。

 高齢化社会を迎える日本だが、それは決して暗いものではない。老人が増えると必然的に、社会も老人にあったものになる。そうなると、老人も元気いっぱいになるそうだ。
 若い女性の厚底靴なども日本の文化の一部になるようであり、アジアの国では、その文化を取り入れているところがある。世界が日本化するというのは、日本の古き伝統を受け継ぐのではなく、マンガやゲームなどの文化を日本と共有するということ。

  • 「ポケットモンスター」のピカチュウがアメリカの子供に絶大な人気を博しているが、ピカチュウは「ピカチュウ」の一語しか話さない。すなわち言葉を話さなくても何でも通じる「以心伝心」の世界の素晴らしさを、あのマンガは教えている。(21頁)
  • 転職を男は「不安」に思っているが、奥さまは「チャンス」と思っているらしい。(82頁)
  • 21世紀世界の7大潮流
    @大衆消費社会へ世界は進む
    A中流社会へ世界は進む
    B大都市化へ世界は進む
    C平和へ世界は進む(国家より民族、軍事より経済)
    D少子高齢化へ世界は進む
    E東洋風へ思想革命が進む
    F多民族共存と人種平等へ世界は進む(122頁)
  • E東洋風へ思想革命が進むを列挙すれば、ゆらぎの理論、ファジーの理論、あいまいの理論、カオス、不連続の研究、複雑系の経済学などとなる。(167頁)
2 人事破壊

日下公人

PHP文庫

 「「逆」読書法」を読んで、日下さんは年のわりに面白い考えをしている人だと思い、また一冊読んでみた。

 1994年に刊行されたものの文庫版。1994年の時点で、その先に起こった企業の大規模なリストラ、それに伴う株価の上昇などが見事に予測されている。

  • もともと「日本型雇用」(日本だけの雇用形態などもともとないのだが、とりあえず)の本質は、最初は安月給だが、一生懸命働いて会社を大きくすれば老後は厚遇されるという「長期後払い方式」である。(21頁)
  • 人間は差が激しい時代が長く続くと、平等にしたとき喜んで働く。ところが平等が長く続くと、残念ながら今度は差が欲しくなる。(52頁)
  • デフレ時代がくる→仲間主義が続けられない→資本家の支配が戻ってくる→しかし発展する会社は先端へ出る→先端分野は人本主義である→そこでは資本家も威張っていられない→才能のある人間をまとめられる人が新しいリーダーである→をの人は評価能力も人徳も兼ね備えていなければならない、そして実行力もなければならない→そういう人の周りに優秀な人材がたくさん集まっていい会社ができあがる。(209頁)

 

1 「逆」読書法

日下公人

三笠書房 知的生きかた文庫

  読書法ではなく、「逆」読書法を日下さんが記した本。なかなか面白いことが書いてあった。どのような本であっても、著者を崇め奉り、内容を鵜呑みにするのではなく、対等な立場だと思って読むとよい。
  • 共立女子大学の鹿島先生の「人生反比例法則」、"男×クルマ=1"。貧弱な男ほど立派なクルマに乗りたがり、立派な男は平気で小さな、見栄の悪いクルマに乗る。(38頁)
  • マーシャルの『経済学原理』のみならず、原典というのは総じてやさしい。(44頁)
  • いい本というのはひと言でいえるメインテーマを持っている本で、しかも声高な決めつけをせず、実証例がたくさんある本ということになる。(100頁)
  • 本を読んだとき習慣にしておくといいのは、「著者はこの本を書くまえにどんなことが胸につかえていて、書き終わって何がすっきりしたんだろう」と考えてみることです。(156頁)

ホーム