読書録 宮崎学

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題名
初版発行日

感想

・印象的な内容(一部要約したものあり)

1

突破者 戦後史の陰を駆け抜けた50年

宮崎学

玄冬舎アウトロー文庫 上下

 本書は1996年10月に南風社より出版されたものを文庫本にしたもの。昭和20年、伏見のやくざの組長の子として生まれた著者の半生が綴ってある。ものすごい立場の人たちが実名でポンポン登場してくる。

 戦後間もないころのやくざの生活から始まり、学生運動での機動隊や他派の学生との闘争、自分の会社の倒産、グリコ・森永事件でキツネ目の男として捜査を受けたこと、バブル期の地上げ、暴力団対策法等について当事者の視点から語ってある。被差別部落の問題についても知らない話が多かった。
 
学生闘争の際、口を割った牛乳ビンを投げつけたり、五寸釘をさした木の棒で殴りつけたりと、当時の学生のパワーに驚かされた。そのパワーは今どこへ行ってしまったのか。進学率が低かったころは、大学生が何か特別な使命感を持っていたのだろうか。
 当事者がその視点から物事を見つめ、出来事を語るだけでなく、自身の意見をはっきり述べてある。警察や大企業に対して臆することなく実名で批判するところに、修羅場を潜り抜けてきた著者の強さを感じた。

  • 「イモを引くな」「クンロクを入れろ」「往生せい」
  • 倒産した経営者の三割ほどが再起を果たすが、再起組は人間が二回りも三回りも大きくなり、情と非情をあわせもったタフな事業家へと脱皮する。

2

敗者復活 リストラ社員の大逆襲

宮崎学、設楽清嗣

幻冬舎
初版1999年5月10日

 突破者・宮崎学と東京管理職ユニオン書記長・設楽清嗣がリストラされたサラリーマンを助けた日々を綴った本。一流企業の社員から社員20人程度の小さな販売店の社員まで、さまざまな人の解雇に対する事例が書かれてある。

 組合活動をやっているにもかかわらず共産主義に批判的であるなど、設楽さんはなかなか変わった人物だ。設楽さんの所に助けを求めて駆け込んで来た弱そうなサラリーマンは、同じ境遇の人たちと行動を共にするうちに、たくましく変わっていくそうだ。そのあたりが、ただ会社から有利な条件を引き出すことのみを目的とするのでなく、会社に捨てられ自信をなくした人たちを「敗者復活」させることを目的とした組織たる所以だろう。

  • 大切なのは、まじめにコツコツ生きることではなく、もっとちゃらんぽらんに生きることだ。

 

3

不逞者

宮崎学

幻冬舎アウトロー文庫

 愚連隊の万年東一と在日の星金天海を描いた作品。颯爽とした万年の生き方と対照的に、在日朝鮮人の代表として活動していた金天海の生き方には、悲壮感を感じてしまう。いずれにしても、斯くありたい、と思える人物である。

4

突破者列伝

宮崎学

幻冬舎アウトロー文庫

 「突破者」で自分の半生を描いた著者がこの「突破者列伝」で自分の身近な人について、その人生を描いた。

 「突破者」の中でもあったのだが、暴対法について批判が述べられている。在日朝鮮人や被差別部落出身という社会的弱者がやくざの道に進んでしまうことが多いという事実に、そういう人たちへの見方が変わった。

  • ダメな上司というものは、下から見るとすぐにわかってしまうものである。

 

5

突破者の条件

宮崎学

幻冬舎アウトロー文庫

 「突破者」で自身の半生を記した宮崎学が、アウトローから見た日本について書いたもの。学生運動、暴力団、総会屋、警察、朝日新聞等について、さらに、サカキバラ事件に関連して教育についても述べてある。宮崎学にしか書けないような内容が数多く含まれている。

  • 精神医学の本を読みあさって話し合いをするよりも、子供の好物を腹一杯食べさせる方が、更正の道は開けると思う。(12頁)

 

6

喧嘩の極意

宮崎学

幻冬舎アウトロー文庫

 1997年、同時代社より出版された「バトルトーク突破者」の文庫版。東大生、サラリーマン、中学校教員等との対談のほかに、会津小鉄四代目からの「宮崎学にエール」も収録されている。

 188頁の「刑務所の外は一面の雪だった」は胸がジンとする話だった。

7

グリコ・森永事件 最重要参考人M

宮崎学、大谷昭宏

幻冬舎
初版2000年2月10日

 昨年来、キツネ目の男こと宮崎学の本を読みつづけてきたが、来たる2000年2月13日で、グリコ・森永事件の最後に残った森永事件が時効を迎える。事件のあった1984,5年当時、僕は小学生であったので、事件について、どくいりきけん たべたらしぬで、とか江崎社長が裸で逃げたといったことくらいしか今となっては覚えていない。
 それが、この本を読んでみて、初めて知る事実の多いこと多いこと。今、同じ事件が起これば、テレビにかじりついてしまうだろう。

 本書の構成は、大谷が宮崎を尋問する、という形をとっている。宮崎の無実を証明するための尋問のように思えなくもないが、いろいろな話が飛び出てきて興味深い。警察問題、同和問題など、宮崎学の本に度々登場する話題も本書に出てくる。しかも、グリコ・森永事件と絡めた形で。

 この本を読めば、時効までの何日間が非常に楽しめるのではなかろうか。殺人事件に発展しなかったので、多少は不謹慎なことを考えてもいいのではないだろうかと思ってしまう。

8

血族

宮崎学

幻冬舎
初版1999年7月10日

 アジア・マフィアの義と絆を宮崎学が描いた本。宮崎学はこのような本も書けるのかと読んでいて思った。

 本書は、客家の謝俊耀を中心に日中戦争以降のアジアの歴史を裏からたどったノン・フィクション。第二次大戦中の抗日戦争、中国の国共戦、ベトナム戦争、ビルマの軍事政権とアウンサン・スーチーのことなどが書かれている。

 日本の戦争は1945年8月15日で終わったが、アジア地域では、中国の国共戦争や、再び植民地支配を試みるヨーロッパ諸国に対するアジア民族の独立戦争など、まだまだ終戦を迎えてはいなかった、ということが、この本を読めば認識できる。また、日本国は終戦したが、その後も戦いつづけた日本人は多くいた。そういった人たちも、本書に登場してくる。

9

土壇場の人間学

青木雄二、宮崎学

幻冬舎アウトロー文庫

 「ナニワ金融道」の青木雄二と「突破者」の宮崎学が、金儲けについて語り合った本。ローンの残っている家を競売にかけても、一年半から二年はタダで住むことができるなど、土壇場で役に立ちそうな話が多かった。

 青木雄二は、熱烈な共産主義者である。このような人がまだこの世にいたのか、と思わせる。また、青木雄二は自身のことを絵がうまいと思っているようだ。

  • (野村克也が南海の監督時代)サッチーを遠征のバスに同行させたという噂がある。それを当時の川勝オーナーが怒った。(55頁)

10

突破者それから

宮崎学

徳間書店
初版1998年12月31日

 「突破者」で幼少時代、学生運動、会社倒産、さらに銃で撃たれた経験を記した著者が、その続編として「突破者それから」でバブル期の地上げについて描いた。著者が直接関わった神田神保町の地上げと群馬県吉井町のゴルフ場建設現場の地上げのほかに、江東区木場の土地取引に関する人間ドラマが描かれている。

 こんなことを書いてもいいのだろうか、という内容がちょくちょく出てくる。もう時効だからいいだろうと、ことわって書いてあるだが、関係者などは、迷惑するのではないだろうか。

 なにはともあれ宮崎学の本を読むと面白い。「痛快」という言葉がぴったりはまる。

  • いくら大金を手にしても、本業を投げうってしまうようでは、先行きの見込みがまるで立たない。大金を手にしたら、それを投じて本業をがっちり固める。こういう考えでなければ商売人と言えない。(101頁)
  • 県議会のボスには、平成三年から四年にかけて、5000万円、5000万円、2000万円、3000万円、2000万円、5000万円、5000万円と七回に分けて金を渡した。(171頁)
  • 福田派はおっとりしていて、政治家自身が直接金に絡むことはない。金の受け渡しは後援会や事務局の人間が行う。中曽根派は、いったんそうとなると、政治家本人が自分で金を掴むに何ら躊躇ない。(180頁)
  • それまで儲かった分は会社の利益となるが、悪くなったと見るや、会社はマイナスを個人にかぶせてくる。(192頁)
  • 人間というのは、突飛もないことをしでかすからこそ面白いのだ。(311頁)

11

突破者流・勝ち残りの鉄則

宮崎学

ダイヤモンド社
初版2000年11月9日

 宮崎学の本がダイヤモンド社から出版されるようになった。そういうところにも時代の移り変わりを感じてしまう。

 本書は、「キャリアデザインマガジン タイプ」1999年5月4日号〜2000年5月2日号に連載されていたものをまとめたもの。そういう雑誌があることを私は知らなかった。

 借金取り立ての方法で物議をかもし、袋叩きにされた日栄。銀行などと違い、天下りがいないため、袋叩きにされたのかと思っていたが、実は警察官僚と大蔵官僚の天下りは結構いたようだ。

 宮崎学と佐高信との対談も載っているのだが、宮崎学の中坊公平批判に佐高信も同調していた。佐高は以前、中坊公平との対談で相手を褒め称えていたのにも関わらず。

  • 日本のサラリーマンにとって、一番得意なことは、問題を「先送りする能力」(1頁)
  • カネ儲けのために貸したサラ金に対しては、(返済の)道義的な義務なんかない。借りたカネを返せないこともあるということを前提にして、資本主義はなりたっとるんや。(34頁)
  • 住専問題のとき、政府は、中坊公平が借金を取り立ててくれるというイメージを振りまこうとした。(63頁)
  • ロスチャイルドにしても、ロックフェラーや岩崎弥太郎にしても、うまく立ち回ったからあれだけの財を成した。人の100倍働いたから、100倍金持ちになったというような話ではない。(79頁)
  • (退職する部下に対して)送別会のときになって、初めて上司は本音をもらしたそうや。「もうちょっと若ければ、オレも辞めたい」てな。(92頁)
  • 戦後、労働運動はずっと左翼に利用されてきた。左翼は「労働者のため」とかなんとか言いながら、実際は自分たちの組織を守ることが目的。(112頁)
  • (新聞紙上に本の広告を載せたとき)本の中身がよう分かるような広告ほど効果が高かった。(131頁)

 

12

涙を忘れた日本人のために

宮崎学

小学館
初版2000年12月10日

 涙を忘れた日本人のために、そして闘争心をなくした男のために書かれた本。

 宮崎学の本には「突破者」など壮絶な生き様を記したとても真似できそうもないようなもの多いのだが、本書は、普通の人でもやろうと思えばできるような話が多かった。

 最近の若者は、、、という内容ではなく、今を生きている人すべては、昔と比べて、、、という内容だった。

  • 私は、男という生き物は、雨ダレの一滴であると思う。強固な岩盤に一滴となってぶつかり散る。散った後それは大河になるかもしれないし、そのまま蒸発してしまうかもしれない。しかし、いずれの日にか、その一滴は強固なる岩盤に穴を開けるのである。(16頁)
  • 三人の老ヤクザの話は、それぞれの人生において、夢に到達した時が一番嬉しいことではなかった。夢の中に生きている時が一番嬉しいものだということだった。(32頁)

13

カネに死ぬな掟に生きろ

宮崎学

徳間文庫

 本書は1999年5月に徳間書店より出版されたものの文庫版。宮崎学の本が幻冬舎以外から文庫本で出版されるのは、この本が初めてだろう。

 宮崎さんの息子が、学校でいじめにあったとき、宮崎さんはいじめた子の家に乗り込み、その親を子どもの前でどついてやったそうだ。いじめはそれっきりなくなったという。

 例え犯人と分かっていても、それが身内だったら徹底的に守り通すという姿勢を強調されていた。

  • 国家は、ヤクザ者から博奕を取り上げて、公営ギャンブルだけを合法とした。それに飽き足らず、警察はパチンコ業界を自分の支配下に置いた。(51頁)
  • カネを貸さずに殺された奴はいても、返さずに殺された奴はおらんで。(79頁)
  • カネというものは、ポンと投げ出せばカッコがいいし、それを断れば、さらにカッコができる。(221頁)

 

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