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COMPETITIVE ADVANTAGE by Michael E. Porter
1985
前著『競争の戦略』以上に読み応えのある著書であった。
日本の競争優位が危ない 日本語版に寄せて
■この本は、競争優位を論じている。ますますグローバル化する市場という新しい時代に、会社が競争優位を守り、さらに創造するための方法に関して、理論的で厳密な理解への道をお教えしたいと望んでいる。(B頁)
序文
■私の前著『競争の戦略』では、業界と競争会社を分析するフレームワークを提言した。また、競争優位を確保するための三つの基本戦略−コスト・リーダーシップ、差別化、集中を述べた。この『競争優位の戦略』は、三つの基本戦略を実践する方法についての本である。(E頁)
1章 競争戦略―その中心概念
■業界の魅力度および競争的地位の両方が一つの会社で動かされることがある。このために、どんな競争戦略を選ぶかということが難しいだけではなく、わくわくする喜びともなるのである。(4頁)
■競争のルールというものは、つきつめてみると、五つの競争要因によって形成される。(1)新規参入業者の参入 (2)代替品の脅威 (3)買い手の交渉力 (4)売り手(供給業者)の交渉力 (5)現在の競争業者間の敵対関係 (7頁)
■業界で平均以上の業績を達成するための三つの基本戦略が考えられる。(1)コスト・リーダーシップ、(2)差別化、(3)集中がそれだ。集中戦略には二つのやり方―コスト集中と差別化集中がある。(16頁)
■ターゲットとしたセグメントが、それ以外のセグメントと異質でない場合には、集中戦略は成功しない。(22頁)
■集中戦略というのは、意図的に、売上量を制限しようとするものである。そこで、集中戦略に成功すると、その成功の理由を見失ってしまい、売上増という成長を狙って、集中戦略を曖昧にするのである。(24頁)
■コスト・リーダーシップ戦略と差別化戦略も、互いに矛盾する関係にある。差別化に成功するには、ふつう高いコストを要するからである。(25頁)
■基本戦略のどれも、別の戦略からの攻撃には弱体である。(30頁)
■競争優位を診断し、それを強化する方法を発見するための基本手段は、価値連鎖(バリュー・チェーン)である。(37頁)
T 競争優位の原理
2章 価値連鎖と競争優位
■価値連鎖という概念は、コストのビヘイビアおよび差別化の、現存または潜在の源泉を理解するために、会社を戦略的に重要な活動に分解するのである。(45頁)
■競争優位を調べるには、付加価値よりも価値連鎖を分析するほうが適切である。(51頁)
■価値連鎖に影響する競争分野の幅には、四つの次元がある ・セグメントの範囲…生産される製品の種類と狙う買い手の種類 ・統合の範囲…活動が外部の独立会社によってではなく、会社の中で行われる程度 ・地理的範囲…会社が統一戦略で戦う地域の範囲 ・業界の範囲…会社が統一戦略で戦う関連業界の範囲 (68頁)
3章 コスト優位のつくり方
■価値活動のコストは、時間の経過とともに、習熟によって低下する。(92頁)
■習熟は、供給業者、コンサルタント、臨時社員、他社製品の分解検査などのメカニズムを通じて、一社から業界内の他社へ伝播(スピルオーバー)してゆく。(93頁)
■会社の相対的コスト地位は、つぎの二つの関数である。 ・会社の価値連鎖の構成と競争相手のそれとの対比。 ・個々の活動のコスト推進要因に対する会社の相対的地位。(123頁)
■コスト優位を確保するには、大きく二つの方法がある。 ・コスト推進要因をコントロールする。 ・価値連鎖の再編成。(125頁)
■コスト削減は、差別化を台なしにしてしまいかねない。だから、コスト削減を積極的に追求するのは、差別化に関係のない活動に限らねばならない。(126頁)
■習熟はというものは、ひとりでに発生するものではなく、経営者と従業員の努力と注意から生まれてくるのである。(127頁)
■業界によっては、後発会社にコスト優位が与えられることがある。技術が急速に変化していると後発会社が有利であり、また、先発会社の行動を観察して、安いコストで模倣することができるからである。(131頁)
■コストというものは、ひとりでにあるいは偶然に低下したりはしない。むしろ、勤勉と不断の注意の結果低下するのである。(144頁)
■コスト・リーダーシップ戦略の落とし穴 ・コストという言葉を口にすると、ほとんどの管理者は本能的に製造を考える。ところが、トータル・コストのかなりの部分(けっして圧倒的部分とはいえないが)は、マーケティング、販売、サービス、技術開発、全般管理といった活動から発生している。(146頁) ・労働活動コストの削減には熱心だが、購買資材について殆ど注意を払わない会社が多い。(146頁)
4章 差別化の基本的考え方
■買い手にとって価値のある何かについて、会社が特異性を持てると、競争相手から会社は差別化したことになる。(151頁)
■買い手に対して、単に安い価格以上の価値が提供できる特異性を持つと、他社と差別化できたという。(152頁)
■差別化は普通、コストを食う。(161頁)
■買い手は、価値が現に存在しているとしても、それに気付かなかったら、その価値にカネを払いはしない。(177頁)
●差別化の落とし穴 特異性がすべて価値があるとは決まっていない 差別化のやり過ぎ 価格プレミアムが大きすぎる シグナル価値の必要を無視する 差別化のコストに無知である 価値連鎖の全体ではなく製品だけに注意を集中する 買い手のセグメントに気付かない(201〜203頁)
5章 技術と競争優位
■技術変化は、競争を推進する有力な要因である。(207頁)
■先発者は技術その他の活動に関し規格を設定できる。追随者はこれに従わざるを得ない。(233頁)
■買い手のニーズが変化して、先発者の価値を認めなくなると、先発者は弱い。(236頁)
■技術的非連続性は競争上の地位を変化させる最大のチャンスである。技術的非連続性は既存技術に基づく先発者メリットや参入障壁を台無しにする。(244頁)
6章 競争相手の選び方
■競争業者は確かに脅威ではあるが、良い競争業者は、会社の競争的地位を弱めるよりも、むしろ強める。(249頁)
■競争業者を比較の基準にして、自社の差別化能力を強化することができる。(251頁)
■いくら強調しても過大評価にならない競争業者の役割といえば、モチベーターのそれである。健全な競争業者は、コスト削減、品質改善、技術変化への対応を刺激するモチベーションの原動力である。(255頁)
■良い競争業者は、業界を制覇したいとか、ズバ抜けた成長率を達成したいという野望を持たない。(263頁)
■競争相手を選ぶ原理は、100%のシェアを持つことが、(たとえできたとしても)最適の戦略でないことを教えてくれる。(271頁)
●競争相手を選ぶ落とし穴 会社は市場シェアが最も近い相手、あるいは戦略が似ている相手を、最大の敵とみなしやすい。他の相手を無視しても、こういう相手を繰り返し攻撃する。実際には、こういう相手は、実害のない良い競争相手であることが多い。(277頁)
■競争業者は幸福の源泉でもあれば、不幸の源泉でもある。(279頁)
U 業界内部の競争分野をどう決めるか
7章 業界細分化と競争優位
■業界を細分化するためには生産者や買い手の違いを把握するために、次に述べる四群の観察可能な細分化変数を、個別または組み合わせて使う。 ・製品の品種 ・買い手のタイプ ・チャネル(中間の買い手) ・買い手の地理的立地 (291頁)
■広ターゲット業者は、魅力のないセグメントも相手にせざるを得ないことがある。というのは、そのセグメントが共通価値活動の総コストを下げたり、差別化を進めたり、あるいは、構造的に魅力のあるセグメントでの地位を防衛してくれたりするからである。(317頁)
8章 代替に対する戦略
●代替の脅威は次の三大要因に左右される。 ・業界の製品と代替品との相対価値、価格(RVP) ・代替品への切替コスト ・買い手の切替性向 (335頁)
■代替の脅威の変化は、代替の経済学から直接導かれるつぎの五つの分野で発生する。 ・相対価格の変化 ・相対価値の変化 ・買い手の価値認知の変化 ・切替コストの変化 ・代替性向の変化 (350頁)
■総需要に対する代替品のパーセントを経時的にプロットすると、成功する代替品は、たいがいS字曲線を描く。ライフサイクル初期の製品は、他の製品を代替することが多いので、S字代替曲線はおなじみのプロダクト・ライフサイクル曲線に似ている。(357頁)
●代替予測モデル S字型浸透仮説に基づく各種の予測モデルは、流行伝播過程の研究から生まれた。最も良く使われる流行伝播モデルは、指数関数の一種である「ロジスティック関数」である。 F/(1-F)=指数関数K(時間) 但し、F=潜在市場全体のなかで、代替品に切り替わった部分 K=初期の代替成長率をあらわす変数 ロジスティック関数は、次の二つの重要な仮説に基づいている。(1)もし代替が数%進行すれば、最後まで進行を続けるであろう。(2)ある代替品が製品を代替する速度は、まだ代替されずに残っている製品の量に比例する。 (362頁)
●代替の促進 (1)初期切替者に的を絞る (2)RVPに最大の影響を与える分野で製品を改良する (3)切替コストを低減または助成する (4)シグナルに投資する (5)プル効果をつくるために、中間統合を使うか、川上統合を誘う (6)複数の供給源と適切な生産能力を確保する (7)補完製品または共同施設の改善を推進する (8)RVPの向上と障壁の構築との得失を計算する (9)代替品の市場を広げるために、新しい機能を考え出す (10)代替品の競争地位を保てなければ刈り取る (366〜369頁)
●代替品に対する防衛 ・コストの削減、品質の改善、補完製品の改善などによって、代替品との相対RVPを改善する ・製品のイメージを改善する ・切替コストを引き上げる ・買い手の買い手に向けて強力な販売攻勢をかけ、プル戦略を阻止する 他に (1)代替品に影響されない新しい用途を見出す (2)代替品の利点を避ける競争を考える (3)防衛を支援してくれる供給業者の協力を得る (4)代替攻勢に対する脆弱性が最も低いセグメントに戦略の鋒先を変更する (5)防衛せずに刈り取る (6)代替品業界へ参入する (370頁)
●代替品に対する戦略上の落とし穴 ・代替品の認知を誤る ・緩慢な初期浸透の読み違い ・RVPを動かないものとみる ・競争と協調 ・成熟の容認 代替によってパイの大きさを広げるほうが賢明かもしれない。 (373頁)
V 企業戦略と競争優位
9章 事業単位間の相互関係
10章 水平戦略の効用
11章 相互関係の活用
■相互関係を経営戦略に生かし成功しているのはもちろん日本の会社に限られているわけではない。しかし、日本的経営の特徴には相互関係の活用に適した性質が強い。(493頁)
■日本の会社の武器は、最初は低賃金だった。それに取って代わったのが第二の武器である品質と生産性である。おそらくこのつぎに競争優位の武器として立ちあらわれるのは、創造力を磨いてつぎつぎと生み出す相互関係の力であろう。(494頁)
12章 補完製品と競争優位
■必要条件さえ整っていると、相互支援戦略は業績改善の手段として大きな効果がある。世間に評判の高いジレット、コダック、ゼロックスなどがこの戦略を実行し、成功を収めてきた。しかし、この戦略を実施する好機は長くは続かず、積極的に手を打って成功の条件を維持してゆく必要がある。(531頁)
W 攻撃と防衛の競争戦略
13章 業界シナリオと不確実性下の競争戦略
14章 防衛戦略
●構造的障壁を高める(583〜590頁) 構造障壁を高める防衛戦術は、挑戦者が攻めてくると思われる道をふさぐ行為である。主として次のような行為が考えられる ・製品やポジショニングの隙間を埋める ・チャネルの利用を阻止する ・買い手の切替コストを高める ・試用コストを上げる ・防衛の目的から規模の経済性を高める ・防衛の目的から必要資金を増加させる…競争に必要な資金量を増大させる ・代替技術を独占する ・占有ノウハウを守るために投資する ・供給業者との提携 ・競争業者の投入コストを上げる ・防衛の目的から相互関係を追求する ・障壁を高めるように政府の政策を促進する ・障壁を高めるために提携するか、または挑戦者を吸収合併する
●報復見込みを高める(590〜593頁) ・防衛意欲を宣伝する ・障壁作りの気配を見せる ・防衛拠点の確立 ・販売政策を同等にする ・撤退またはシェア低下による損失を大きくする ・報復資源を蓄積する ・良い競争業者を刺激する ・見本を示す・・・報復のイメージをうえつける ・防衛的提携を築く
●攻撃中の報復(593〜594頁) ・テスト販売や市場導入を撹乱する ・抜きつ抜かれつする ・告訴
●攻撃の誘因をなくす(595〜596頁) ・利益目標を下げる ・競争業者の仮説を操作する
■シェアの小さい挑戦者は、見分不相応の広告費を使わざるをえない。(597頁)
15章 業界リーダーへの攻撃戦略 |