|
|
題名 初版発行日 |
感想
・印象的な内容(一部要約したものあり) |
|
1 |
ソフト・パワー経済
竹中平蔵
PHP研究所 初版1999年12月8日 |
慶応大学総合政策学部の竹中平蔵先生が、日本が「ソフト・パワー」を持つ国になるために進めべき道を記した本。竹中平蔵の本を初めて読んだが、得るべきことが非常に多く、さらに何冊か読んでみようと思う。
いろいろな人の本を読んでいるが、優れた教育者の書いた本は、やはりなにか違う。一冊読んだ後に自分自身の知識が確実に上昇しているのが実感できる。
ハード・カバーで1100円と、お手ごろな値段であった。
第T部 「二一世紀型」への下地づくり
- 1997年の購買力平価で測ったGNPでは、日本は世界7位。日本はもっと豊かになれる。
- 不良債権をもたらした最大の原因はバブルであって、そのバブルを生み出した最大の原因は金融市場が競争的でなかったからだということになる。
- 二十年前、ハーバード大学に留学したとき、アメリカでは当座預金でも金利がつくことに驚いた。われわれの金融常識そのものを根本から問いなおす必要がある。
- ローリスク・ローリターンの間接金融とハイリスク・ハイリターンの直接金融の他に、ミディアムリスク・ミディアムリターンの道をつくるというのが、ビッグバンの重要な意味。
- 1980年代、アメリカ、イギリスの政策論争で「政府のギブアップ」という言葉がよく使われた。それを一番うまくやったのがサッチャー元首相。
- 人間を無気力にするふたつのケース:第一のケースは、やってもやっても達成感がない場合、第二のケースは、それとは逆に、何もやらなくてもある程度のものが与えられる場合。
- これからの社会は頑張った者がむくわれる税制を徹底的に導入し、代わりに職業再訓練を充実させるなどして、誰もが競争に平等にチャレンジできるチャンスを与える、という政策をとることが重要になってくる。
- 日本は、厳密な意味での学歴社会ではない。企業は、なまじ勉強してきて入社早々、課長を批判するような人材は絶対にいらなかった。だからこそ、日本の企業は大学院卒をほとんど採ってこなかった。
- 自分の能力こそが最大のセイフティ・ネットである。
- アメリカで最も競争力の強いのは、資本集約的な産業ではなく、労働集約産業だった。
第U部 ソフト・パワー経済に挑む
- 日本の成功体験の中には、スピードという要因はさほど重要視されてこなかった。むしろ、後発者の利益を巧みに生かすように努力してきた。
- ソフト・パワーとは「知恵と魅力」「相手を力でねじ伏せるのではなく魅力で引き寄せる」「知的な力、情報の力、人や社会の魅力の総称」。
- 知的パワーを高めるために、世界と競争できる高等教育機関の拡充、とりわけ大学の改革が急がれる。
- 1920年代に日本経済が経験した苦難とその後の回復過程が、今と重なって見える。しかし、結果的に金融問題への対処を誤り大恐慌へと突入していった。
|
|
2 |
ITパワー 日本経済・主役の交代
中谷巌、竹中平蔵
PHP研究所 初版2000年3月6日 |
ソニー社外取締役中谷巌と慶応大学教授竹中平蔵の共著ということで、早速読んでみた。
これからの日本はどうあるべきか?ということを中谷さんと竹中さんが議論されている。「日本は製造業」などと言っていてはだめであり、どんどんネットビジネスを手がけるべきである。優秀な人材が旧来の産業・組織の中で今は埋もれているが、必ずIT産業へ人材が流れる日がやってくる。日本は一度方向性が決まれば、後は速い。というようなことが書いてあった。
今の若者に好意的であり、大きな期待を持っておられることが文面から伺え、非常に嬉しく思った。
- 日本が今悪いというのは、ポテンシャルを発揮できていないことに対する不安だと思います。人々は大きな不安を抱えていますが、それは将来日本が衰亡するのではないかという不安ではなく、今自分が立ち止まっていることに対する不安だと思うのです。(中谷 18頁)
- たぶん、団塊の世代から上は食い逃げ世代になるでしょう。それ以下のサラリーマン世代は、回収期間に入った途端にゲームのルールが変わるので辛いものがある。(竹中 28頁)
- IT革命は、取引コストをゼロに近づける革命。(中谷 40頁)
- 今の若者についてすごく頼もしいなと思うのは、就職について聞くと「ここで一生働く気はありません」と堂々と言うことです。それが立派だと感じます。(竹中 58頁)
- 知恵の時代に暗記重視の教育ではいけません。しかも、問題解決ではなく問題発見の能力を持たなければならない。(竹中 78頁)
- 社長が方針を決めても現場が動かない。戦略的な決定を行っても、それを実行するエンジンがある会社は少ない。(中谷 110頁)
- (日本でベンチャーが育たなかった理由)ベンチャーへの投資は、言うまでもなくハイリスク・ハイリターン。しかし、土地を持っていれば、ほとんどノーリスク・ハイリターンだった。(竹中 157頁)
|
|
3 |
経済ってそういうことだったのか会議
佐藤雅彦、竹中平蔵
日本経済新聞社 初版2000年4月3日 |
経済について佐藤さんと竹中先生が対談したもの。佐藤さんといえば、「モルツーモルツー」とか「バザールでござーる」といったCMと1999年の「だんご3兄弟」で有名な人なのだが、実は慶応大学の教授も兼ねている。というわけで、本書は慶応大学の先生同士の対談となるのだが、これほど内容の分かりやすい大学の先生の対談は他にないだろう。
対談といっても、佐藤さんの素朴な疑問に竹中先生が答える、という形をとっている。佐藤さんも自分の考えをしっかり持っていて質問しているので、竹中先生も答えやすいし、ふたりの対談を読む側も理解しやすかった。人にものを尋ねるときは、まず自分の意見をはっきり述べなければならない、ということも勉強できた一冊であった。
「前方連環」「後方連環」の話が一番印象的だった。先に素材をつくりそこから川下へ下っていくように消費財をつくる「前方連環」というやり方と、先に消費財をつくりそれを伸ばしてから除々に川上に移っていく「後方連環」というやり方では後方連環の方がいまくいっている。旧ソ連は前方連環でやったため、やたら鉄をつくる工場が多いそうだ。一方日本を含めたアジアは、後方連環を選択しはじめに消費財をつくり、うまくいった。
- 貨幣の価値はたとえそれが紙だろうとゴミだろうと、みんなの「信用」によって決まる。(竹中 13頁)
- (税について)価値を生み出している人を罰するつもりがないのであれば、とり方にはあまり差をつけないほうがいい。(竹中 86頁)
- 98年に経済が悪くなってきて、政府は景気刺激のためにさらに所得税減税をやりたくなった。ところが税金を払ってない人には減税のしようがない。だからこの前の地域振興券という商品券減税になるんです。(竹中 95頁)
- 一般に日本は、関税が高いというふうに考えられてますけれど、これはまったく事実を違うんです。日本は世界で最も関税の安い国です。ただ、一部に目立つのがあるんです。コメとか19品目ぐらい、変なのがあるんです。(竹中 105頁)
- 日本だと競争力をつけさせようと思ったら、政府は補助を与えて強くする。これに対し、アメリカで競争力をつけさせる方法はただ一つです。それは、もっと競争させること。(竹中 144頁)
- 日本はタイにお金を貸し付けて、そのお金でハイウェイをつくっているわけです。貸し付けだから当然金利もとっている。そうしたら、タイで乗ったタクシーの運転手がこう言うんです。「これは日本が作った高速道路だ」と。感謝されるのかと思ったら、「それで通行料をとって日本は儲けている」と。(竹中 177頁)
- 先に消費財を作って、それを伸ばしてから除々に川上に移っていく。これを「後方循環」というんです。後方循環の方がうまくいくんです。(竹中 214頁)
- ケインズはこう言っているわけです。「投資こそが経済を発展させる牽引力であって、それを実現するのは起業家のアニマル・スピリットである」。勇気をもって挑戦しろと……。(竹中 238頁)
- 資本主義においては、その将来展望を第三者、つまり投資家にはっきりと説明できないといけないんです。(竹中 247頁)
- 日本のトップが思いきって決断できないのは、彼が株主の資産運用の代理人というより、従業員の兄貴分のような存在だからです。(竹中 289頁)
- もし巨大な市場のものがあったら、それに付随するものっていうのは、最低限大ヒットするんですよ。携帯電話がこんなになったから、携帯ストラップのようなモノでも大きな市場になるんですよ。(佐藤 293頁)
- (竹中さんがある政府系の銀行に勤めているとき聞いた言葉)「経営者というのは、どんな小さな会社の経営者でも、自分で世界を見る目を持っている。だから尊敬しなければいけないんだ」(竹中 296頁)
- シュンペーターは実に魅力的な経済学者なんです。どんなことを言ったかというと、資本主義社会、つまりこの世の中を発展させる原動力は企業の革新、イノベーションだと考えたんです。(竹中 330頁)
|
| 4 |
竹中教授のみんなの経済学
竹中平蔵
幻冬舎 初版2000年12月20日 |
慶応大学の竹中平蔵先生がわかりやすく書いた経済学の入門書。
みんなの経済学ということで、 第1章 お父さんの経済学 第2章 お母さんの経済学 第3章 お姉さんの経済学 第4章 お兄さんの経済学 第5章 おばあちゃんの経済学 からなっている。
テレビや雑誌に頻繁に登場する竹中先生なので、経済についての解説は、初心者にも非常に分かり易く、興味深い内容になっている。 |
| 5 |
日本企業の底力
竹中平蔵
PHP研究所 初版2001年7月4日 |
竹中平蔵さんが大臣就任前の2000年10月から2001年4月にかけて取材した内容を一冊の本にまとめたもの。
取材相手は、 トヨタ自動車 張富士夫社長 松下電器産業 中村邦夫社長 NTT 宮津純一郎社長 キッコーマン 茂木友三郎社長 みずほホールディングス 西村正雄会長 の5名となっている。
なぜ、キッコーマンが含まれているのか違和感があったが、読み終わって納得。「醤油」という日本独自のものを海外に普及させたことは、あまり例のない偉業ではなかろうか。
- 経済の発展、わけても資本主義経済の発展は常に創造的破壊によるものである。しかしこの創造的破壊はまったく新しい勢力によってなされるわけではない。ことに日本のような成熟した経済では、中核を担ってきた企業がさらに進化していくことによって経済発展がもたらされる。(11頁)
- 一社だけですべてを背負い込むのではなく、アライアンスで補完していこうとする姿勢は、ネットワーク型経営の典型だと思う。このネットワーク型経営による新しい結びつきは、シュンペーターのいう「新結合」にほかならない。(14頁)
- 民間は徹底して応用技術と商品開発で競い、基礎研究に関してはNSF(National
Science Foundation =
全米科学財団)のようなパブリックな機関が資金提供して支えていくという仕組みを、これから日本でもつくっていかなければならないと思うのである。(29頁)
- 日本で自動車産業に従事する人は、全雇用者のなかで1割強、700万人を占める。(34頁)
- (アメリカのサラリーマンはみな確定申告なので)家計簿ソフトは定番商品。(80頁)
- 郵便貯金が民営化されれば、「ノーリスク、ハイリターン」は不可能になる。そうなれば、郵便貯金のお金は新たな運用先を求めて、株式市場に流れ込むことになる。それが企業の株価上昇をもたらし、日本企業の「体質強化」が図られることにつながる。(97頁)
- 21世紀の企業ではナレッジワーカー(知識労働者)が企業価値を向上させるために大きく貢献する。(みずほホールディングス 西村正雄会長の言葉 189頁)
|
|
|
|
|
|
|
|