★No.36 サウンドトラックの世界・その2★

 前号はサントラCDの限定版・プロモーション盤について書いたけど、今回はさらに突っ込んで深い領域、ブートレグ(海賊版)についての話へと移行しよう。
 アーティストのソレが殆どオーディナリーのライヴコンサート録音モノであるのに対し、サントラのブートは基本的にオリジナル音源であり、そこには3つの存在条件がある。ひとつは「アナログ盤リリースはあったが、CD化されていないサントラ」、それと「アナログもCDも過去に出ていないサントラ」、そして「アナログもCDも出ているが、その収録曲数が少ないサントラ」だ。
 例えば最近だと、『X−メン』(音楽:マイケル・ケイメン)の2枚組サントラなんてものが存在する。これはCD−R2枚組のいかにもブート然としたシロモノだが、なによりオフィシャル版には収録されていない、あの魂がビリビリ震えるかっこいいエンドタイトルがフル収録されている。
 あるいは『フェイス/オフ』が全長版2枚組サントラなんてのもあったりするのだが、これはサウンドスコアにSEがミックスダウンされたテープ音源だったため、曲のところどころに銃撃音や爆発音なんかが入り交じっている。ただこれもオフィシャル版には収録されてなかった、キャスター・トロイ(ニコラス・ケイジ)がロングコートをなびかせて登場するシーンの渋いスコアがキチンと入ってたりして、ちょっと嬉しい。
 これら音源はかなり関係者寄りのところから流れてきた出物のようで、音質も悪くない。サントラブートの場合でもサウンド・コンディションのバラつきは広く、マスターとなる音源のクオリティ次第で正規品と変わらぬ音質だったり、高音が割れ低音がブーストしまくる粗悪だったりする。ひどいのになると、単にLPからコピーをおこしただけの物も存在するのが御愛嬌だ。
 また音質に問題はないけど最悪なのは、LDやDVDのアイソレーテッド・スコア(音楽だけのチャンネル特典)を転用しているケース。近年はそういうブート対策もあって、作曲者のコメントを曲の頭尻に重ねるようになってきた。というか、DVDの普及率とディスクの単価、それに「そこまでしてサントラを希求するユーザーは、既にDVDの世界に侵食されているだろう」ということを考慮すれば、商売的にさしたる旨味もないのが現状ではあるが。

 いずれにしたところで、やはりブートはブート。筆耕でメシを喰うオレとしては、著作権侵害の片棒をかつぐことにいささか自戒の念もある。なるべく買うまい持つまいとは思うものの、市場にないから出回る“くすぐり”に抗うのは至難の技だ。特にアナログ盤が極希少なタイトルがブートCD化された場合、これに抵抗するのは悶絶死を招く。
 というワケで、最近のマイ歓喜な出物は『マルコ・ポーロ』(音楽:エンニオ・モリコーネ)のブ−トレグ。中学の頃からアナログ盤を探しに探し、見つけたときには運悪く持ち合わせがなかったりで、すれ違いを重ねていた“瞼の母”的サントラ。できることなら正規品での再会を望みたかったけど、こういうのがこの世界の廃れないところなんだろうなぁ。
(…と、この文章をフィニッシュした矢先に、いきつけのサントラ専門店から「『マルコ・ポーロ』入荷しましたよ」と連絡が。ああ、しょせん人生なんてそんなものさ。)


▲『X−メン』海賊版サントラCD。ジャケがカラーコピーで安普請さ極まるが、ケイメンの泣き節が120分楽しめる魅力は大きい。
▲『マルコ・ポーロ』海賊版CD。ピクチャーディスク製なのがミソ。『1900年』と並ぶモリコーネの傑作スコアだけに、正規でCDリリースしないことのほうがブートよりも罪深い。


(初出誌:ワールドフォトプレス「フィギュア王」2002年6月号)






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