2002年お正月映画第二弾スペシャル!!

2002年最初の「ひん曲がり」は恒例、映画ガチンコ兄弟の
シネマ放談。リアルタイム『地獄の黙示録』世代のドリー&テリー、
帰ってきた『特別完全版』をどう観るか!?






ドリー・尾崎
(以下:ドリー) 毛抜きでヒゲを抜いたあと、カミソリを使ってさらにヒゲを剃ると、ケバ立った毛穴に引っかかって炎症を起こす場合があります。
テリー・天野(以下:テリー) ……あのなぁ、新年最初の「ひん曲がり」がさ、どうしてまたそういう「家庭の医学」みたいなイントロなワケよ。
ドリー いやね、これを伏線にしておくと あとオチが楽になるんでね。
テリー ……とりあえず謹賀新年。
ドリー 今年もあんまりいい年じゃないぞ。
テリー のっけからどうだろう、その態度。
ドリー そんな先行き不安な世の中、せめて映画だけでもいいものをお勧めしていきたいデスネ。
テリー 最後3行のカタカナ印字に不安を感じつつ、最初の映画は?
ドリー 『マルホランド・ドライブ』でいきましょうか。    
テリー うわ、新年いきなりトップバッターがディヴィッド・リンチ。縁起いいなぁ
ドリー 前作『ストレイト・ストーリー』は、出てくる人物みんな変態なのに、ドラマがウソみたいに感傷的だから『エレファントマン』を観たときのような違和感が残ったけど、今回は登場人物も病んだ人たち大盛りで、ドラマも思いっきり歪んでる。最初のダンスシーンからしていかがわしいリンチ臭を放ち、最後はもちろん自分の中だけで物語が完結したような突き放しっぷり。もう★★★★モンでしょ。
テリー 評判いいみたいですね。今年のオスカーとか監督賞にノミネートされそうな勢いで。
ドリー これで賞獲りに『ロード・オブ・ザ・リング』が加わればすごいよな。10年前のオレに教えたくなるね。「リンチとP・ジャクソンがオスカーを奪いあう」ってさ。絶対信じないぞ。
テリー その前に、もっと伝えなきゃいけないことがあると思うぞオレ。「SWに変なカエルキャラが出てきて映画ぶち壊し」とか。


ドリー それにしても、オレたちにとってやっぱり重要なのは『地獄の黙示録 特別完全版』だよなぁ。
テリー 23年ぶりにスクリーンに復活か。その間、いろいろなことがあったなぁ。「SWに変なカエルキャラが出てきて映画ぶち壊し」とか……。公開当時の印象ってどうだったの?
ドリー 壮大な失敗作(笑)。クライマックスに向かえば向かうほどテンションが下がんだもん。仕方がないから、次の回のヘリ編隊シーンを再度観て、志気高めたところで映画館を出た。その当時のオレ的評価では『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』よりも低かったの。それにしても泣いたなぁ劇場版ドラえもん。ラストのあやとりシーンなんかウウッ…。
テリー …なんかカーツ大佐よりのび太のほうが思い出深そうだから、ドラえもんの話にする?
ドリー いや。けど49分も長くなって、かなり印象も変わったよなぁ。
テリー 観る側が知恵ついて、映画を理解出来るようになったんじゃない。
ドリー いや、あの頃とあんまり頭ん中は変わってないから、映画が良くなったんだよ。
テリー オレなんかにこたえただけだぞ!! なんで今さら長くしたの   
ドリー だってコッポラさ、昔から長尺モノに妙な憧れを抱いてたんだろ? 製作時に「オレの今度のベトナム戦争映画は、ベルトルッチの『1900年』(上映時間5時間16分)より5分長ぇぞ」とか言ってたしあのオヤジ(笑)。いやマジな話、アメリカで売られてた海賊版ビデオなんか5時間半あったもんな。VHSテープ3本組
テリー まるで『U・ボート』のTVバーション。
ドリー キルゴア中佐のサービスカットもちょっと増えてて嬉しかったなぁ。
テリー いいよなぁ。ヘリで登場して開口一番「あの緑地帯を100ヤード焼き尽くせ!」(笑)。
ドリー もう後に引けないバカ(笑)。あれが入っちゃったからヘリ虐殺のパートが冗談みたいなコメディになって、映画全体のバランスがよくなったかも。
テリー 初公開当時、「狂気に犯されてるのはカーツじゃなくてキルゴアだろ?」とかミもフタもないこと言われて、カーツの存在ボケちゃった感があったもんなぁ。
ドリー 今なら★★★★1/2くらいあげちゃうね。公開当時は★1/2だったけど。
テリー つかぬことをお聞きしますが、『のび太の宇宙開拓史』は?
ドリー ★★★★★ですが、なにか?
テリー ……いえ、なんでもありません。 



ドリー 公開が先になるけど、ちょこっと言及しておきたいのが『WXIII 機動警察パトレイバー』だ。
テリー 『WXIII』といえば言わずにはおれないぞ。なんだあの映画、製作から完成までの悠久な時間経過はよ。5年くらい前から製作快調と頓挫を繰り返し、半ばあきらめた頃に公開かよ。
ドリー でもオレ、けっこう好き。怪獣映画としてかなりよく出来てるぞ。
テリー そりゃあ結構。『怪獣大決戦ヤンガリー』といい『GMK大怪獣総攻撃』といい、最近は怪獣映画のアタリが多いな。
ドリー おまえの中で『ヤンガリー』はアタリだったのか……。
テリー ………。
ドリー ゆうきまさみの原作版って、あんまし怪物を見せないじゃない。けど映画版は出し惜しみしないでバンバン出てきて、しかもバリバリ人間を食う(笑)。とにかく廃棄物13号のデザインがいいんだ。オオサンショウウオみたいな尾ビレに筋肉質な上腕。目がなくしかも歯は恐竜や肉食獣のそれなんかじゃなく、人間のような歯がびっしり並んでいて妙に気持ち悪ぃ。
テリー なんか『エヴァンゲリオン』のシトみたい。
ドリー 雨がしとど降る湾岸ぶちの駐車場とか、なんや海から得体のしれないモノが上がってきそうなロケーションも素晴らしいね。
テリー でも特車二課のメンツはあんまり出てこないんでしょ?
ドリー そう、ドラマは怪獣の存在をどうリアルに描くかってところに腐心してるワケで、むしろ汎用人型機械が日常にある社会風景って、そのリアイリティを殺しかねないからなぁ。「ロボットがありなら怪獣もありじゃん」みたいな。『パトレイバー』のアイデンティティを殺しちゃって正解でしょ、本作の場合はね。
テリー うええ、ファン的には複雑な位置付けだなぁ。 
ドリー けどなぁ…トーンを前2作に合わせようとして、いかにも“押井不在の押井コピー”って感じがプンプンするんだよ。むしろ作画もキャラデザも、全くカラーをかえたほうがよかったかもなぁ……。怪獣映画として★★★★あげてもいいけど、シリーズとしては★1/2くらいかな。

ドリー いっぽう海外アニメということで、ピクサーの新作フルCGアニメ『モンスターズ・インク』だ。
テリー 今年初になるアカデミー賞長編アニメーション部門の最有力候補ですな。
ドリー そもそもあの賞って、ディズニーの執拗なロビー活動によって生まれたものだからなぁ。あげく受賞が『シュレック』とかになったら、泣くに泣けない。
テリー しかも『シュレック』は、カッッエンバーグの恨み節こもった反ディズニーCGアニメだしね。
ドリー 作品の面白さという点ではどっこいどっこいかな。クライマックスへのたたみかけとか、舞台設定なんか『トイ・ストーリー2』と同じだしなぁ。新しいところはハンドシェイクなカメラ表現が取り入れられたくらいか。ブーがかわいいので★★★1/2くらいはあげてもいいけど。
テリー けど、ラストシークエンスもあそこまで描き込まれると狂気だよな。
ドリー コンピュータ・システムの向上と平行して画像処理速度もグングン短縮化し、さらには画素数も増してどんどんリアリスティックなビジュアルになりつつあるからなぁ。
テリー 『モンスターズ・インク』でどれくらいなの?
ドリー 1コマ200万ピクセル。『トイ・ストーリー2』が140万ピクセルなのを考えると、画面情報が複雑に、リアルになっていくのも頷けるよな。ちなみにフォトリアルな画像の基準値が250万ピクセルって言われているから……あと少しでピクサーの長編CGアニメは『ファイナル・ファンタジー』の域に到達するってことか?
テリー いろんな意味で間違っているよそれ。しかも、そうなりゃ既にアニメとは呼べないんじゃ……。
ドリー おもちゃとか昆虫とかモンスターとか、およそリアルとは縁遠いキャラクターを選んでるのは、技術の経年劣化を目立たなくするためでもあるし。
テリー でもディテールは細かくなっていくじゃない。サリーの毛なみとか。
ドリー 毛といえば、毛抜きでヒゲを抜いたあと、カミソリを使ってさらにヒゲを剃るとケバ立った毛穴に引っかかって炎症を起こす場合があるよね。
テリー そりゃ強引すぎだよアンタ!!






(初出誌:ワールドフォトプレス「フィギュア王」2002年2月号)






BACK   MAIN