
テリー・天野(以下:テリー) ホグワーツに戻ってはなりません!
ドリー・尾崎(以下:ドリー) いや、別に行かねぇけどよ。そういや『ハリー・ポッター』って、魔法魔術学校の就学年数に合わせて全7作の予定なんだろ? それはアレじゃないのか、ハリーが当たり前に進級すればの話だろ。
テリー …いや確かにそうなんですけどね。それは作者の意向でどうとでもなる話じゃないですか。
ドリー 留年の可能性もあるってことだ。『ハリー・ポッターとダブリ2年で即退学』とか、『ハリー・ポッターと一貫教育の落とし穴〜母さん、僕にもうチャンスないの?〜』とか。
テリー そういう展開を世の中の誰が望んでいるんですか?
ドリー 全国のファンは望んでいるよ。学校の塀外でヤンキー仲間とたむろってるハリーとか、魔法の力で職員室に頼んでもいない寿司の出前送りつけるハリーとか。ああいうのび太タイプはさ、人生一度軌道をはずれるともう最悪よ。
テリー というワケで、とりあえずハリー・ポッターの話題をふって、読者の耳目を引きつけようという卑しい心根が見え見えの当コーナー。皆さん、お仕事や学業は順調ですか?
ドリー 人生、留年とか出世見送りとか、そんなことに負けちゃダメだぞ。ハリーなんか5年もダブってて、本当は31歳のオッさんなんだから。
テリー あんた、ウソはどうかと思うよ。しかも年齢勘定も全然合わないし。
ドリー 年齢詐称にダブりに魔法使い。ダメ人間ここに極まれりだな。
テリー いや、人間じゃなくて魔法使いだってのに。
ドリー でことはますますダメ人間だ。
テリー まぁ、ハリーが魔法使いかダメ人間かは読者の判断をあおぐとして。
ドリー 委ねられてもなぁ。ドラえもんがネコ型ロボットなのを知らない人がいないのと同じで……
テリー 自分で話をややこしくしておいて、そういう足元をすくうようなこと言うのかこの口が!!(と、ここで音声が途切れ、無音状態を待つこと5分)
テリー はい、えー、ドリーはですね、ちょっと身内にご不幸がございまして。本日は僭越ながら私テリー・天野が映画紹介をやらせていただきます。まずは『K-19』からです。えー、この映画はですね、ソビエトの原子力潜水艦が出てくるんですよ。たぶん。
(しばし無音が続き、ざわついた音声のなかを編集氏が登場)
編集 …ちょっと天野さん、“たぶん”って何ですか“だぶん”って。
テリー いやね、オレ実は観てないんですよ『K-19』。
編集 だったら観た映画の話で進めてくださいよ。
テリー なら、最初の紹介作品は『ブッシュマン』です。主演はニカウさん、たぶん。
編集 いつ観た映画の話してるんですか! しかも本当は観ていないという。
テリー すいません、本当は映画とかあまり観ない人だったんです、ウウッ!!
編集 ならドリーさん呼び戻してきてくださいよ!!(と、またまた音声が途切れ、無音状態を待つこと5分)
ドリー いやぁ、あそこで確変するかと思ったら単発でさ、ドル箱全部飲まれて5万の負けだよ。
編集 身内の不幸といいながら、謎のタームが飛び交ってますね。
ドリー だってテリーが追い出すんだもん。で? 結局オレがやらなきゃいけないワケか。
編集 お正月映画特集なんです、お願いしますよ。
ドリー よし、まずは『K-19』。ハリソン・フォードが主演です、たぶん。
編集 ……。
ドリー なんかやっちゃいけない掴みだったみたい。映画はソビエトの原子力潜水艦がメルトダウンを起こし、放射能汚染を懸念して退くか、あるいは任務優先で航行するかの決断を迫られる話なんだけど、面白いの放射能漏れした炉心を修理するために駆りだされるクルーがイケメンばっかで、そいつらが被爆してみんな醜く火ぶくれしちゃう。すごいよ、なんだか使用前→使用後感が強くて。
編集 やっぱりテリーさんとおふたりで話をしてください。なんだか頭痛くなってきちゃった。
ドリー やだなぁ、俺たちをセットでなんぼみたいな扱いして。
テリー まぁそういうことで、今後ともよろしくね。
ドリー ……ハイ、では次の作品。
テリー あれ、『K-19』の話はもういいの?
ドリー いいんだよ。あんなジャンルに愛のない女。
テリー はれ? キャサリン・ビグローみたいなオタクをつかまえて何を言う。
ドリー だってアイツ、記者会見のときのオレの質問「潜水艦映画で『Uボート』とか『眼下の敵』とか意識しなかったか」って訊いたら、「これは男のドラマなので潜水艦は要素でしかないの」とか抜かしやがんの。誰が見たってあの映画、『Uボート』リスペクトじゃねぇかチクショ〜!!
テリー 裏切られ感が強かったのね。
ドリー その点いくと『ゴジラメカゴジラ』の手塚監督はオタクの鏡だよ。東宝特撮に操を立て、ゴジラシリーズ以外の東宝特撮が肯定されてる世界を呈示しちゃったもんな。「本編には登場してないけど
、あの世界には轟天号も飛んでるんだよ」とか言って。
テリー 監督、いくらなんでもそりゃムチャだ。
ドリー 気構えの問題だよ。『Xメカゴジラ』の最初の8分間を観たか? あれこそがジャンルに対する愛なんだよ。
テリー よかったよなぁ、あのメーサー登場のカタルシスは。東宝特撮映画史上、もっとも毛穴から脂成分がスッポンスッポン取れるシーケンスだったよ。
ドリー 謎の例えもさることながら、おまえは「本当は映画とかあまり観ない人だったんです、ウウッ!!」じゃなかったのか。
テリー いやぁ、でも最初の8分間を延々リピートしてくれりゃ、文句なしの傑作だったんだけどさ。
ドリー しかもさりげなく難クセ。
テリー いや、だって最後の決戦も、撮りきりでガツンガツン殴りあえばいいのに、下手に合成ショットを多用するから軽くて軽くて。「アニメっぽい演出」「それが味だ」とか言われても、そんな“見たて”が通用するのはゴジラファンくらいで、一般から見りゃ「ダッサぁ!!」と思うわな。
ドリー まぁ、典型的なプログラム・ピクチャーとして捉えれば腹も立たんだろうが、ジャパニーズ・ソルジャーの怨霊が日本に復讐しに来る『GMK大怪獣総攻撃』のエキセントリックさに比べればなぁ。テリー 物足りないといえば『ギャング・オブ・ニューヨーク』のほうがすごいぞ。
ドリー リライトに次ぐリライトで本当に焦点ボケボケだったなぁ。スコセッシらしさもピンポイントで、最後の『ジャズ大名』みたいな狂気のクロスカットがなけりゃ、オレの本年度ワースト1だ。
テリー 「クロサワの『乱』をテキストにした」とか言ってるが、緩慢でダルダルな展開まで『乱』を真似んでもなぁ。
ドリー でも『グッドフェローズ』は、黒澤の『夢』の撮影(ゴッホ役で出演)が押しちゃって、かなりハイスピードで撮影をやらされたって言ってたね。それが幸いして、あの見事なテンポにつながったらしいけど。
テリー クロサワ効果の明暗を見る思いだなぁ。ところで、まだ★をつけてないんだけど。
ドリー そうだなぁ、『K-19』も『Xメカゴジラ』も『ギャング』も★★★。
テリー ……なんかパッとしないなぁ。ちなみに聞くけど『ハリー・ポっター』は?
ドリー ★★★★★。
テリー なんで!?
ドリー ダブりで頑張ってるから、オレから合格点をやる。
テリー ダブってねえよ、たぶん。
ドリー ……たぶん?
(初出誌:ワールドフォトプレス「フィギュア王」2003年1月号)
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