
ドリー・尾崎(以下:ドリー) 今月は待望の『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』で行ってみましょうかね。
テリー・天野(以下:テリー) あれ? それって本号が出るときは既に公開中じゃん。
ドリー いや、みんながあんまし褒めるもんだから、ここで少し頭を冷やしてもらおうと思ってね。
テリー うわ、性格悪っ! ここでさんざんネガティブ・ファクトを挙げ連ね、マイノリティを気取って自己主張ってワケか。
ドリー いや。でも正直、観てる間ケツが痛くて痛くて。『旅の仲間』のほうが省略の手際よさと編集の巧さで、ダレることなく観せてくれたよ。みんなヘルム峡谷の攻防戦にアテられてんのかな?
テリー でもトリロジーの中間部って、前作から完結に至るまでの繋ぎなんだから、そのへんはハンディでしょうに。
ドリー いやいや、あくまで作り手の問題だ。『二つの塔』の原作は、上巻でピピンとメリーがエント族と邂逅するパートと、ガンダルフやアラゴルンらがアイゼンガルト勢力と争うパートのダブルプロットで構成されている。
テリー フロドとサムの道程は?
ドリー それは下巻の独立した話。だから上下巻を合わせたトリプルプロットを、映画はクロスカッティングしてるの。しかもヘルム峡谷の戦いをクライマックスの見せ場に持ってくるなんて、正直言って“うまい!!”と思ったよ。けど…。
テリー 何かご不満が?
ドリー 平行話法って各エピソードがそこでいったん歩を止め、別ステージに移るだけだから、おのずと進行が緩慢になるんだよ。しかもピーター・ジャクソンはアクション演出に関しては最高のセンスを発揮するけど、芝居演出はバストアップだけに頼り切る傾向がある。これ、ヘタクソな漫画家なんかが陥る悪いクセで、ドラマが単調で平板になってしまう。
テリー ほう、だからただでさえ3時間の長丁場が、4時間にも5時間にも感じられると?
ドリー しかもトリプルプロットやクロスカッティングというのは、劇映画の古典主義的アプローチ。ルーカスやコッポラがやたらとコレにこだわるじゃない。陳腐だよ。
テリー ピーターもその手に墜ちたと。
ドリー そう。指輪の魔力に屈したのだよ。
テリー だんだん言いがかりじみてきたなぁ。あれが最良の選択だと思うのに。
ドリー それ以上に問題なのは、『二つの塔』って原作エピソードの半分も消化してないんだぜ。
テリー ウソ! それってかなりヤバいんじゃないの?
ドリー 『旅の仲間』だって、丸々ワンエピソードをカットしたりしてるから、また今度もうまいこと省略するだろうと思うだろ? けどあのエンディングを観た限りでは、取りこぼしたエピソードはあくまで次回に持ち越すつもりだ。それでなくとも『王の帰還』は、地上戦、海上戦入り乱れるフォースプロットで、それだけでもどう3時間にまとめるのかってくらいなのに…。
テリー うわ、考えたくないなぁ。
ドリー あとなぁ…。
テリー まだ何かあるのか?
ドリー エント族(木の精)たちを実写で映像化しちゃうと、ロケーションを中心にしたリアリティと相反しちゃって、興趣を思いっきり削ぐんだよ。ゴラムとかムダに生物感ありありに描いているのに。そんな違和感を覚えなかった? デザイン担当のアラン・リーもそのへんを思ってか、原作じゃ敢えて詳細な挿絵を避けてたのに。なんだか安っぽいファンタジーみたいになっちゃった。
テリー もともとファンタジーじゃん。
ドリー おまえね、指輪をハリー・ポッターとかと一緒にすんなよ。だいたいハリーが苦労して試練を乗り越えて魔法使いになったか? 死んだ親が立派だったから、てめぇはその七光りにあぐらをかいてるじゃねぇか。周りもムダにチヤホヤして、権威主義のブタどもめ!!
テリー ……。
ドリー それに比べてフロドを見ろよ。戦いを知らない平和種族が、あんな過酷な試練を背負わされてさ、ウウッ。それがドラマってヤツだろ。土台が違うんだよ土台が!!
テリー ああ、なんだかんだ言っても、やっぱり『指輪』を愛してるんだね。
ドリー しかしゴラム、しもべ妖精のドビーにそっくりだな。パクリか?
テリー うわぁ!! この発言でそれまでの話みんな台無し!!
■今月のヤリ玉!!■ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
(日本ヘラルド映画配給)監督;ピーター・ジャクソン
音楽:ハワード・シュア出演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、
ヴィゴ・モーテンセン、オーランド・ブルーム他
(初出誌:ワールドフォトプレス「フィギュア王」2003年3月号)
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