第4回 AV男優、少女コミックに




 AV(アダルトビデオ)というお仕事――。

 昔のような偏見はかなり薄れてきたとはいっても、さりとて故郷に錦を飾る職業とも言い難く、社会のウラ物的扱いを受けているのはご存じの通り。TVに出てきてもその大概はお色気構成員、あるいは実話系バラエティのネガティブファクターで、まだまだ大手を振ってその存在をアピールできない弱さがあります。

 ところが、そんな業界においてただひとり、ゴールデンのドラマやバラエティ番組、さらにはTVCF等でもその活躍ぶりを見せ、今やAV男優としての枠組みだけでは語れない、まさに希有な存在として名をとどろかす人物がいます。ご存じ“ゴールドフィンガー”こと加藤鷹!! 

 数多くの女性を絶頂のみならず、潮吹きにまで至らせるその超絶指テク。女性に優しく、男性ファンには気さくなアニキ。その存在感たるや、常にAVを深夜の友として重宝してきた皆様(ドリー含む)にとって空気のごとき!と言っていいくらいです。


 そんな鷹さんの男っぷりを称え、彼の波瀾に満ちた生涯を描いた伝記コミックが、このたび発刊されました。

 AV男優の実録物といえば、井浦秀夫の『職業・AV監督』(秋田書店)や『AV烈伝』(小学館)のように、青年誌や成人向け雑誌で掲載される事が多いのですが、今回出た『−鷹−5000人を抱いた男』は、何と講談社KCデザート……つまり女性向けコミックスとして出版されたものなんです。
 うーん、確かに相変わらずの「何でもあり」状態に併せ、読者の低年齢化も進む昨今のレディコミ業界を考えると、そりゃ見知らぬ世界としてのAVネタも基本的にアリだとは思うのですが…。とはいえ特定の、しかも実在のAV男優をネタにした作品は恐らく本作が初の試み、驚きの快挙であります。

 ストーリーはというと、ネット上のチャットで知り合ったという5人組……女子大生のゴンタ(この物語の実質上の主役)、女子高生のゆっきー、主婦のぷりん、OLのメイ(30過ぎで処女)という、現実社会では明らかにムリ目な設定の集団が、これまたムリ目な“はじめてのAV観賞会”を開催するところから始まります。

 この観賞会で初めて目にする鷹さんの勇姿にメロメロになった5人は、さっそく彼の出演番組を観覧するんですが、ちょうどその頃、彼氏との関係がギクシャクしていたゴンタが
「淫乱な女こそいい女だ!」
 番組でと公言する鷹さんと、収録中にひと悶着起こしてしまうのです。
 スタジオを飛び出し、雨の中をさまようゴンタでしたが、偶然にも鷹さんと再会! 彼がこれまでの生涯を切々と語っていくうち、凝り固まっていた彼女の気持ちも次第にうち解けていく……といった感じで物語が展開していきます。どうです、ありえねぇ素晴らしいでしょう?

 本作に登場する鷹さんは決して三池崇史のような黒々コワ面ではなく、いかにも少女コミックの美少年然とした爽やかフェイスで描かれてますし、肝心のSEXシーンも泥臭さは一切なく、爽やかなエロが少女漫画的に繰り広げられていきます。加藤鷹物語なのに!


 しかし、さすがと言うべきか実録物。登場人物にも実際のAV関係者が続々登場してくるのも、この作品の大きな魅力です。
 明らかに日比野達郎林由美香(これがまたクリソツ!!)と特定できるキャラが登場してくるのはもちろんの事、鷹さんとはいろいろと縁の深い樹まりこまでもが「人気絶頂のAVクィーン!! 超アイドルのマリコ」という名で登場、物語のクライマックスでは鷹とマリコの愛あるSEXが繰り広げられていくんですから!

 まぁ、現実のAV業界を見慣れてる人間にとっては非常に甘々で、ドロドロとした要素を完全排除してるところ、ちょっぴり物足りない気にもなりますが。鷹とマリコの仲も、一応別れる事をほのめかしてるものの、すごいハッピーエンド風に処理してるしね。
 まぁ、これがレディコミ系(渡辺やよいとかあそこらへんの)絵柄であれば、もっとゲスな展開も期待できるのでしょうが、それを今回作画担当した秋元奈美(巻末の作品リストを見た限りでは、最近流行りのH系少女漫画を得意としてるらしい)に望むというのは、ちとお門違いの感はあります。

 というか絵柄からして、この作品のターゲットとなる読者層は10代後半〜20代前半のH系コミックファンですし……そんなにその世代に鷹さんって人気あるんでしょうか? だとしたら、ちょっとイヤな気もしますが。


 しかし、この作品を読んでいて感じるのは、一時期に狂ったように発行されていたアーティスト実録物漫画(宇多田とか小柳ゆきとか)の存在でしょうか。
 少女漫画チックな視点とサクセスストーリーで彼女らの生涯を語っていく切り口は、今回の作品にも通ずる物があるような気がします。ネガ部分が全然描かれてないところも含めて。

 どうせならば、この路線もどんどん突き進め、もっといろいろな男優に光を当てていって欲しいところです。チョコボール向井なんか、新日本プロレスの道場を逃げ出してAVで脚光を浴び、再びプロレスの世界に帰還するまでをドラマティックに描いて欲しいですし(もちろんこの前の逮捕の件は完全無視!!)、我らが英雄・山本竜二先生の、ニワトリやら大阪の筋肉女装ホモやらとまぐわう姿をこそ、今回のような甘々少女コミック風に描いてくれれば……と、切に願う次第です。


『−鷹−5000人を抱いた男』AV男優・加藤鷹物語
 原案/加藤 鷹 作画/秋本奈美  講談社KCデザート

(2004年5月19日掲載)










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