☆ 02.始動 ☆


 
 早速男はダイエットに向けて動き始めた。

 まずはともかく情報収集。
 今はインターネットというものがあるので手軽に調べられるのがありがたい。

 予想はしていたが、ネット上には「○○ダイエット」が溢れていた。

 「サプリを使ってダイエット!」
 「私はこのクッキーで痩せました!」
 「スープを飲んで体重激減!」

 薬の能書きがあった。通販の宣伝があった。怪しげな民間療法があった。

 ダイエットには恐ろしいほどの種類とバリエーションがある事をあらためて気づかされた。

 ディスプレイを見ながら男は鼻を鳴らした。
 昔からこの手の宣伝・広告が大嫌いだったのだ。

 「まぁ何やるにしても、結局は『王道』と言われる方法が一番良いんだよな」

 一見もっともらしい意見だったが、単に男が天邪鬼なだけなのかもしれなかった。

 さて、そのダイエットで「王道」と呼ばれる方法だったが、調べてみると、

・とにかく運動。
・並行して食事制限

 である事がわかった。

 ダイエットと言うとまず食事制限が思いつくが、食事「だけ」でのダイエットは長い目で見た場合にデメリットが多いらしい。

 特に「○○絶ち」と呼ばれるものは避けた方がよさそうだった。

 これらのダイエットでは、体重は一時的に減るかもしれないが、栄養不良(体調不良)やリバウンド(前より太る)の危険性が格段に上がる。

 男に栄養不良になるほどの過激な食事制限ができるかどうかは疑問だったが、とにかくまず、体を動かす事が必要なのは間違いなさそうだった。

 「よし、久しぶりに運動するか!」
 男はそう決意をした。

 ところで決意はしたものの、いい歳のサラリーマンである男にとって、きちんとした運動時間を取る事は難しかった。

 会社でもそれなりの立場と責任があり、定時退社できる日などほとんど無い。
 そしてその分、休日にはこなさなければいけないヤボ用が溜る。
 無論、運動のために早起きする余裕など無い。

 なんとか時間が取れそうなのは平日の夜、それもそこそこ遅い時間だけだった。

 運動として手軽なのはジョギングや自転車だろうが、深夜に近所を走り回るのは気が引けた。
 また、飽きっぽい事を自認する男が長く続ける為には、運動にある程度の楽しみとバリエーションが欲しかった。

 会社から比較的近くの場所にフィットネスクラブ(ジム)がある事には少し前から気づいていた。

 結構大規模なジムらしい。
 ホームページがあったので見てみると、トレーニングマシンやプール、エアロビクスのレッスンが用意されていた。
 規模が大きいだけに払う会費もそれなりだったが、いっぱしの大人である男が払えない額ではない。

 「会社帰りにも寄れそうだし、ここなら気軽に運動できるのではないだろうか?」

 男はまず見学に出かける事にした。

 とある日の会社帰り。男はジムの駐車場で車を降りた。

 郊外にあるこのジムには、当然のように広大な駐車場が用意されている。
 地方の一都市では、どんな商売だろうと相応の駐車場を持たなければ客は集まらないのだ。

 受付で「見学を」と伝えると、スタッフの女性が案内をしてくれた。
 説明をうけながら広いフロアを見て回る。

 何に使うか見当も付かないトレーニングマシンが数十台。
 そこで大勢の人が賢明に汗をかいている。

 ガラスの向こう側のフロアでは、エアロビクスのレッスンの真っ最中。
 こちらも大勢の人が(音は聞こえないが)曲に合わせて踊っている。

 このジムは、会員の平均年齢が高いようだ。
 そこそこの会費のせいもあるだろう。10代はほぼゼロで、20代後半から40代が多そうだった。
 中には60代と思われる方々もちらほら。運動するに年齢は関係ないのだなと、男は改めて思う。

 促され、ロッカールームからプールとジャグジーを見学する。
 別途用意されている風呂はクアハウス並みの大きさがあった。

 施設的には充分のようだ。会社からも近い。
 「後は己の問題だな・・・」
 男はその場で入会の手続きを行った。
 

copyright 2007 Akira



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