滝川市留守家庭児童を持つ親の会

「地域の子育て力」

成田光美 滝川市留守家庭児童を持つ親の会

学童クラブとは

 「たきかわ学童クラブ」を知っている方はおられますか? あまり馴染みのない言葉でしょうか。簡単に説明すると、放課後や冬休みなどに、「学童」つまり小学校に通う子どもたちを、保護者が帰宅する時間まで有料で預かってくれる学童保育スペースのことです。

学童の必要性について

 滝川市は保育所がとても充実しています。共働きのわたしたち夫婦も、わが子たちをまだオムツもはずれていない生後三カ月から6歳まで預けて、安心して働くことができました。ところが子どもが小学校に入学した途端、「子育ては家庭の責任」とばかり、いきなり見放されてしまいます。
 たとえば、保育所の修了は3月31日ですが、4月1日から小学校入学式までの春休みがまず問題です。昨日まで保育所に通っていた子どもを、いきなり一人で一日中、留守番させられるでしょうか。また、新1年生は学校生活に慣れるまで入学後も1週間ほど、給食なしで午前中のうちに帰宅させられるので、この期間も心配。さらに夏休み・冬休みの間はどうすればいいでしょう。振替休日や、開校記念日だってあります。
 たかだか6歳の甘えん坊はまだ1人で留守番をするには幼すぎます。わが娘も毎日のように私の帰りを首を長くして待っていました。帰ると同時に飛びついてくるわが子を見るのはとても切ないものでした。
 滝川市には、留守家庭の小学生が放課後を過ごせる「学童保育」が存在しなかったのです。そのため父親1人で子ども2人を育てていた知り合いの方は、学童保育サービスのある他のまちに引っ越していきました。また、保育所を利用していた仕事を持つ女性がお子さんの小学校入学と同時に仕事をやめたという方の話はたくさん聞いています。


学童設立に向けて

 娘がなんとか1年生の壁を乗り越えた頃ですが、行政にその気がないなら、保護者が学童保育を滝川で実現させめようという動きがありました。それ以前にも保育所の保護者会が滝川市長に宛てて学童保育設置を求める要望書を出すなど、何年も前から学童保育を滝川市へ働きかけてはいましたが、いっこうに実現の兆しが見えなかったからです。
 学童保育を必要としている家庭というのは、全員が就業しているので、時間のやりくりや気力・体力の面で、なかなか市民運動などには携わりにくいものです。しかし、子どもが小学校に入学する年の4月1日から子育て環境が激変してしまうこの状況を何とか変えようと、10名程度の保護者たちで「留守家庭児童を持つ親の会」をつくったのが2001年のことでした。
 「親の会」をつくっても「学童クラブ」が発足するまでには様々な壁にぶつかりました。滝川市役所には学童保育の担当課はありませんでしたので、保育所を管轄する福祉部や、小学校を管轄する教育委員会と折衝してみましたが、タライ回しにされるのです。理由のひとつは滝川には児童館が小学校数の2倍ほどと多数設置されており、確かに、近隣自治体に比べてもかなり充実していると言えます。教育委員会にすれば、行政の「放課後児童対策」はこれら児童館運営で十分果たせているという意識だったのでしょう。しかし、児童館の開館時間は夏の間は5時まで、冬になると4時半までというのは働く保護者にとっては厳しい時間です。また、児童館と学童保育とでは役割が異なります。児童館は単なる「遊びの場」。これももちろん重要ですが、「親の会」が求めたのは、オヤツを食べたり宿題をしたり、疲れたらちょっと昼寝できたり、あくまで保護者が留守の間に子どもたちが安心して過ごせる「準家庭的な空間」でした。


クラブ発足

 1年以上かけて親の会と滝川市が話し合いを続けた結果、とりあえず半年分、運営費の一部を補助していただく形で2002年9月に「中地区学童クラブ」が発足しました。この時には足りない費用は自分たちでお金を出し合って会場を借り、指導員の先生も自分たちで雇っていました。
 私たちにとって一番の苦労は、指導員の確保でした。保育士の資格をもつ人材を探しましたが、時給は最低賃金レベルの750円、交通費は日に200円、おまけに平日は児童館が終わった4時半〜6時までのわずか1時間半だけの勤務といった条件の仕事を、だれが引き受けてくれるでしょう。冬休みも午前8時から児童館が開く午後1時までの5時間限定。指導員さんにとっては短時間・短期間のパート収入にしかなりません。それを拝み倒して頼み込んでいました。「とりあえず自分たちで出来ることを」と始めてみたものの、不安定な状態でした。市の補助金もすぐ打ち切られ、平日の開設は諦めざるを得ませんでした。なんとか春夏冬の長期休みだけは続けましたが、当時「親の会」の会合のたびに交わされたのは「来年はもうムリかもしれないね」といった悲観論ばかりだった気がします。

 しかし、そんな不安定さとは裏腹に「親の会」への登録申し込みが相次ぎ、利用者は増える一方でした。私立滝川幼稚園さんにも支援していただき、2003年からは花月地区を加えた2カ所、2005年からはさらに西地区を加えた3カ所で学童クラブを開設できるようになりました。
 ニーズの高まりを行政も認めざるを得なくなったのでしょうか。2006年3月、「親の会」と市役所との折衝で初めて、市は「市と『親の会』の協働方式による学童クラブの運営」を提案してきました。私たちが一番苦労していた指導員の確保を市が担い、その人件費の半額を助成までしてくれるというのです。数年前には、「子どもは家庭で育てるものだから学童保育を支援できない」と言われて私たちを呆れさせた同じ役所とは思えない、うれしいサプライズでした。そして2007年には新たに北地区を加え、4カ所の学童クラブを開設することができました。
 そして今年度(2008年度)、発足して7年目になる「たきかわ学童クラブ」は東地区を加えて市内5ケ所となり、「協働」という方式を残しながらも市が運営の大部分を担う形で通年開設を行うこととなりました。今まで親の会で集めていた利用料――月額3000円です――も、市に納入するシステムとなりました。


市への要望

 大きな飛躍の年を迎えた「たきかわ学童クラブ」ですが、まだまだ問題点もあります。滝川に住むどの子にも利用できるようにするためには、東栄小、江部乙小の子どもたちをどうするのか、障害児の受け入れはどうするのか、「親の会」の役割は今後どうなっていくのか……。ほかにも細かいことをあげればたくさんあります。
 そんな中でも登録者数はさらに増え続け、多くの方に必要とされている活動だということを改めて感じています。発足当初は10名程度しかいなかった登録者が、今では150名を超えています。この中には仕事を辞めずに生き生きと働いている女性や滝川が子育てをしやすいまちと感じるようになった方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。多くのお子さんたちが学童クラブを楽しみにしてくれていると聞いています。まもなく始まる冬休みはストーブを炊くなど火気の心配や、家にこもってゲームばかりしているのではないかという心配もなく安心して働けると感じる方も少なくないと思います。
 子育てしながらも働きやすい環境を作ることによって、若い人が増え、強いては「誰もが住みたい町、滝川」になると考えます。また、現在様々な社会問題が噴出していますが、保育所や学童保育が親のつながりを作り、育児や家族のあり方を伝え、相談できる役割を担うことで、社会としての安定も確保できるのではないでしょうか。
 3世代同居から核家族化が進み、社会がこれだけ変容してきたのですから、「子育ては家庭の問題」という意識を大きく変える必要があると思います。そして、それに即応した自治体が生き残り、繁栄を続けていけるのだと思います。何かと予算の問題で片付けられることが多いのですが、住んでいる人たちにとって、住みよい環境を作ることが、町の繁栄につながり、町の収益につながると思います。
 私は「子育てしやすい町」=「活気のある人の集まる町」だと考えています。


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2008年まちづくり市民会議(2008年12月18日、たきかわホール)におけるパネルディスカッション「『子ども未来づくり条例』の制定に向けて〜未来の『たきかわ市民』を育む〜」のための話題提供予稿。2008年12月19日に掲載。

成田光美「学童クラブと男女共同参画」(2004)

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制作・著作 滝川市留守家庭児童を持つ親の会 2004-2009