平成18年度 学校環境衛生・薬事衛生研究協議会報告
 

日本学校薬剤師会 副会長 築城 敬直
 

 
 平成19年(2007年)に築城400年を迎える熊本城をかかえた「歴史と文化の薫るまち」熊本市において、去る11月16-17日の両日、平成18年度学校環境衛生・薬事衛生研究協議会が開催されました。
この会は、学校環境衛生・薬事衛生についての研究協議を行うことで、実際の学校現場において健康教育の充実を図ることを主旨として毎年開催されております。
参加対象は各学校の教職員、学校医、産業医、学校歯科医および学校薬剤師、そして都道府県、指定都市および市町村教育委員会の学校保健担当者及び学校給食担当者となっており全国からの多数の参加者で熱のこもった大会となりました。

初日、熊本テルサ(テルサホール)において開会式には日薬会長の中西敏夫先生の挨拶のあと日学薬会長の杉下順一朗先生がご挨拶された。両会長の出席に学薬への関心の高さが感じられ、身の引き締まる思いであった。
開会式に続き講義Tがあり、昼食休憩後引き続き講義U、特別講演が行われました。

講義Tは「学校における喫煙、飲酒、薬物乱用防止に関する指導」演題で、文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課・健康教育調査官の鬼頭英明先生から

1.未成年における喫煙、飲酒、薬物乱用の現状と問題点
2.喫煙、飲酒、薬物乱用防止に関する教育の必要性
3.対策
4.喫煙、飲酒、薬物乱用教育
5.教材の提供

について詳しい説明がありました。
特に、今の小・中学生はタバコ・アルコールの害についてはおおむね理解している。しかし「将来タバコを吸うと思うか?」という質問には高校男子では「思う」が約30%にも達し、非常に高いことに驚かされた。
「将来酒を飲むと思うか?」という質問では男女とも差はなかったが小学校高学年で約50%、中学生で約60%、高校生では80%にも達した。
いずれも嗜好品であるが、未成年は禁止のものである。家庭での環境がかなり影響しているので、児童・生徒に対する教育のみならずご父兄に対する指導が不可欠であろう。

ただ、喜ぶべきは2000〜2004年にかけての調査で、児童・生徒の喫煙経験率・飲酒経験率がいずれも減少していることだ。2000年と言えば、【健康日本21】がスタートした年であり、それに続いて学校敷地内全面禁煙など、全国各地で喫煙、飲酒に関する取り組みが以前より活発に行われた期間でもある。もちろんその流れは現在も続いている。したがって、今後も各学校において喫煙・飲酒問題は継続的に取り組む必要があることは言うまでもないとはなされ、続いて、 違法薬物で問題になっているのがMDMAかと思われる。シンナー・覚せい剤はここ最近検挙者が減少していて、政府は平成15年から2度目の薬物乱用防止5ヵ年戦略を実施しており一定の効果があったと思われる。その一方で、青少年における薬物乱用の背景の最も危険なことは「薬物の使用は個人の自由」という考えが横行していることだ。特にMDMAはファッション感覚による乱用急増というこれまでにない様相を呈しているということも聞く。これらは性の逸脱行動にも関連してこよう。

児童・生徒のこうした問題は、一般的に「健康の価値への無関心」「社会規範に対する意識の欠如」などから、何らかの要因によって発生したストレスや不安感を解消しようとしたり、満足感などを得ようとすることにあるとも言われている。このため、我々は、児童・生徒にまずは健康面(特に体を大切に思う心)からアプローチをしていくことが必要があろう。
と話されました。

講義Uは「水問題を認識する」と題して熊本県立大学 環境共生学部教授の篠原亮太先生から、熊本は世界有数のカルデラ・阿蘇を、西には豊穣の海・有明海を望み、豊かな自然に恵まれた都市であり、特に市民の上水道のすべてを賄う地下水や、清冽な湧水群、河川、湖沼など、世界でも稀とされる独特の水資源を有するとともに、水にまつわる風習や伝統行事など有形・無形の水資源が数多く存在し、地域の文化や風土として息づいているとして、水資源についてその保全の重要性をお話し頂きました。

特別講演は北里大学薬学部教授の望月眞弓先生に「小・中・高校生に伝えたい薬の常識」についてのお話しして頂きました。

我が国においては、学校教育の中でくすりの教育が行われておらず高等学校になって初めて保健体育の授業で取り扱われているぐらいといわれることから、日本学校薬剤師会の事業の大きな柱の1つとして平成16年度から取り組んでいる「小学生・中学生・高校生における薬の正しい使い方」の指導という観点から、また改正薬事法の問題等にも絡んで、

1.医薬品とは
2.医療用医薬品と一般用医薬品の違い
3.くすりと健康食品・サプリメントの違い
4.くすりができるまで
5.くすりの効果と副作用
6.くすりの適正使用の原則

等、これからの子供たちに是非伝えてゆきたいという熱意がこめられた講演でした。

フランス、アメリカではくすりの教育は小学校より始まり段階を追って進められています。我が国日本には学校薬剤師という素晴らしい制度があるのですから、専門性をいかした学校薬剤師が教育現場に参画することで、是非ともくすりの教育を普及させていきたいものです。

2日目は、

1.飲料水・プール部会
2.学校給食衛生管理部会 
3.喫煙、飲酒および薬物乱用防止教育部会 
4.学校保健委員会・学校環境部会 

の4つの分科会が開催されました。  
飲料水・プール部会においては、

研究テーマ1は「学校プールのよりよい管理をめざして」と題して、学校薬剤師と連携して実施した事例報告。

研究テーマ2は「プールサイドで使う業務日誌」と題してプール日誌の適正記録によるプールの適正管理についての各発表がおこなわれ、これをもとに研究協議が行われました。

研究協議での話題は飲料水・プール水で「学校環境衛生の基準」に則った検査の実施及び指導助言が不十分と見られる地域が全国でも結構あるということが明らかになったことでした。
飲料水・プールでの事故は児童生徒の生命にも関わることから基準に則った適正な検査の実施、指導助言が望まれると指導助言者の先生が結ばれました。

学校給食衛生管理部会では、
研究テーマ1は「学校給食の衛生管理」と題して衛生管理における薬剤師の関わりについての発表研究

テーマ2は、同じ題材で*食中毒発生の防止 *異物混入の防止 *食品などの汚染の防止がポイントであるという発表がおこなわれ、これをもとに研究協議が行われました。

学校給食の衛生管理は管理する側だけでなく、管理される側である児童生徒にも手洗いの衛生習慣の確立などを促すことで自らの健康は自らつくり守るという生活習慣をつけさせることが重要で、こうしたことにも学校だけでなく家庭・地域の連携が必要だと結ばれました。

喫煙、飲酒および薬物乱用防止教育部会では、

研究テーマ1は「ライフスキル形成を基礎とする喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育プログラムの実践」

研究テーマ2は、「薬物乱用防止教室開催の問題点と実際」と題して学校の受け入れ態勢と行った後の生徒の感想についての発表があり、これをもとに研究協議が行われました。

学校保健委員会・学校環境部会では、
研究テーマ1は「ダニ・ダニアレルゲン検査を実施して」と題して、検査の「評価と事後対策」について宮崎の日高先生から発表がありました。

研究テーマ2は「笑顔が輝く学校作り」と題して「人・もの・こと」と豊かに関わり合う活動を健康活動の重点課題として実践している事例の発表があり、これをもとに研究協議が行われました。

見た目の清潔とは無関係にダニアレルゲンが検出された例から、普段行っている清掃活動の欠点等が明らかになるとともに、換気等の重要性等が意識できたことが非常に参考になった。

以上のように各分科会ともに活発な質疑応答がなされ実り多き研究協議会となりました。

来年度、大阪での再会を約し解散となりました。