平成19年度健康・学校環境衛生講習会
 
 
日本学校薬剤師会九州ブロック理事
日高 華代子  
 


  「平成19年度健康・学校環境衛生講習会」が、8月5日(日)9時から15時まで、宮崎県宮崎市のシーガイア・サンホテルフェニックス国際会議場に、全国から学校薬剤師250名が参加して、日本学校薬剤師会と宮崎県薬剤師会の共済、日本薬剤師会と宮崎県教育委員会の後援で開催されました。

2日前に宮崎県日向市に台風5号が上陸し心配しましたが、前日には台風一過の晴天となり、無事当日を迎えることが出来ました。

 この講習会は日曜日に開催され、最新の情報を著名な先生方に講義していただける、地方の学校薬剤師には貴重な研修会です。

 今回も3名のご高名な講師の先生から「飲酒」をテーマに、様々なお立場からご講演を、また会員からは研究課題の「ダニ」をテーマに3名の方から報告がありました。

 開始が9時からであったため、ほとんどの方が前日に来県されていましたので、自由にご参加いただける懇親会を4日に開催し、杉下会長始め他県の学校薬剤師の方々との交流はおおむね好評でした。

 今回は、ランチョンセミナーは行いませんでしたが、7社の展示企業をゆっくり見ることが出来たと感想も寄せられました。

 以下、講習会の中で印象に残った部分をご紹介させていただきます。

講義1では、元文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課健康教育調査官で、4月から兵庫教育大学大学院・学校教育研究科臨床・健康教育系教授になられた鬼頭英明先生より「学校における飲酒防止教育」と題して、平成18年度に文部科学省で実施した「児童生徒の薬物等に対する意識等調査」内容を解説いただきました。

 中学生になると飲酒について、女子は男子より関心が強く機会があれば飲んでしまうことが危惧され、多少飲んでも健康に影響がないと答える割合も高く、喫煙への理解よりはるかに意識が低い。

 男子の数値が低いことは、飲酒に対する知識のためというより友達がいない生徒が増えたことと無関係ではないようだ。

飲酒の機会は冠婚葬祭時や家族との飲酒経験がかなり高く、未成年の飲酒は法律違反であることや、健康に与える影響を学校教育できちんと教えることが必要であるが、従来のような知識を与える教育では飲酒の機会を減らせないというデータもあり、身についた知識が行動と結びつくように、科学的根拠もきちんと教育することで、適切な意思決定と行動選択が必要であることを理解できるようになる。

小学校低学年から学級活動やホームルーム活動の時間も健康や飲酒の害について取り上げることが必要である。そのため、学校保健安全計画を立てるときに、保護者、地域住民や関係機関からなる学校保健委員会を開催し、関係者全員で飲酒防止への取組について理解することが大切である。

講義2は、独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター 副院長 樋口進先生に、「未成年者の飲酒と健康」と題して、未成年者が飲酒をしてはいけないとされる科学的根拠について、講義していただきました。

 タバコの健康被害は国内どこに行っても取り上げられるが、飲酒については寛大であり、害に対する認識は著しく低い現状がある。なるべく早いうちに未成年者の飲酒がなぜいけないのか医学的エビデンスをきちんと教えることが必要です。

1回の飲酒ではアルコールが分解され体から消失することで元の状態に戻るが、毎日大量に飲酒し常に体にアルコールが存在する状況が続くと、身体依存に陥る。身体依存からアルコールを取り去ってやる過程に禁断症状が現れる。アルコール依存症のほとんどに、精神依存と身体依存の双方が認められる。

 体質については、2型アルデヒド脱水素酵素ALDH2遺伝子の1塩基に変異があると、ALDH2の活性が著しく低下するか、または消失する。

 赤型、白型は、エタノールパッチテストである程度の判別が出来る。中高生は、アルコール分解酵素が充分ではないので、皮膚の紅班は出にくく、成人より時間を長く、エタノールもガーゼにたっぷり含ませる必要がある。

 未成年者は成人に比べてアルコール分解速度が遅いことが考えられ、急性アルコール中毒を起こすリスクも、高くなる。

 また、アルコールによる脳細胞障害作用は未成年期のほうが大きく、特に記憶をつかさどる海馬の機能が強く障害され、飲酒による脳の萎縮も大きいといえる。

 女性は母親として、胎児への飲酒の影響を常に考え、妊娠3ヶ月までは勿論、妊娠中の飲酒をゼロにすることが必要であり、胎児性アルコール症候群の出生率をなくすことは可能である。

昼食休憩の前に、日南市立飫肥小学校の児童による飫肥に古くから伝わる武士の踊り「泰平踊り」の演技があり、参加者から拍手を頂きました。

講義3ではサントリー株式会社 環境部ARP・UD室長 高梨 健先生から「酒類企業と社会的責任(CorporateSocialResponsibility)」と題して、企業として未成年の飲酒防止へどのように関わっていくのか、国際的な比較や現在行われている活動事例を具体的にあげて、講義をしていただきました。

 未成年者に対してはポスターやビデオ等の教材作成やキャンペーンの実施、妊産婦に対して母子手帳の表示等、また宣伝広告への注意表示挿入など、良く見かけるものです。

 今後の課題として、教育の対象を小学生やPTAへ拡げて、未成年者の飲酒防止の強化を図るとともに、過剰飲酒の防止を図り、習慣性飲酒の防止にも力を入れてゆきたいといわれました。

講義4では研究課題報告として、愛知県学校薬剤師会副会長 木全勝彦先生より「学校環境衛生の今日的課題」@児童生徒が抱えるアレルギー様症状等の実態についてと題して、平成18年に小中学校25校で実施した保健調査について、報告がありました。

 結果として、児童生徒の半数近くがアレルギー疾患ありと回答していて、まれな疾患ではなくなったことが分かりました。

小学校ではアトピー性皮膚炎が、中学校では花粉症が多くなる傾向があり、医療機関の受診は60%であり、市販薬による治療が20%ありました。

呼吸器では夏場以外は一年中あり、医療機関の受診率が高いことが日常生活への影響をうかがわせていました。

今後も状況を把握し、対策も含め安全・確実で効率的な対応策を作り上げてゆきたいと結ばれました。

講義5では宮崎県・延岡市西臼杵郡薬剤師会の佐藤 和俊先生により、「ダニ汚染度簡易測定キットとELISA法による室内塵中ダニ汚染度判定結果の相関性評価」として、平成18年度夏に実施した簡易検査キット・アカレックステストとマイティチェッカーをELISA法と比較検討した結果を報告しました。

公定法であるELISA法は国際的なスタンダードですが、高価であり設備が必要ですし、測定者の習熟度によって差が出てしまいます。

簡易測定キットは価格が安価であり、測定法を守れば誰が実施しても差はないという利点があり、設備も不要であることから、相関性が認められればスクリーニングとして使用することが出来ます。

50検体をそれぞれの検査法で検査した結果として、アカレックステストもマイティチェッカーもELISA法との相関性は相関係数r=0.906、r=0.864と相関性が高く、マイティチェッカーとアカレックステストとの相関性もr=0.747で有意に高い相関性を示しました。

講義6は、日本学校薬剤師会 健康・学校環境衛生委員会副委員長 宮下元樹先生から、「日本学校薬剤師会 健康・学校環境衛生委員会から調査結果発表 ダニ・ダニアレルゲン検査の実施促進に向けて(全国の検査データ集積結果より)」と題して平成18年度に検査した全国のデータを集積し、その問題点や結果を分析した報告をしていただきました。

 この調査の目的は検査表の統一化やより簡便な検査方法の検討を目的としています。

 結果は22都道府県より送られてきましたが、検査方法も検査対象も時期もそれぞれであり、安易に比較できないところも多く、問題点として次の点が上げられました。

 測定がすべての学校で行われていない・温度や湿度が検査表に記入されていない・保健室の寝具以外を測定している学校もあり、保健室の寝具等測定場所の統一化が必要・日頃の対策に対してエビデンスに基づく基準値設定の必要性・地域によって夏期以外の測定の必要性・検査キットの検討などです。

 検査表の統一に付きましても、今後検討していきます。

 以上簡単にまとめましたが、講習会教本に詳しく載せてありますのでご一読ください。