はじめに
本年1月17日に中央教育審議会から、学校薬剤師にとって非常に重要な答申が文部科学大臣に対してなされました。一つは、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」であり、もう一つは、「子どもの心身の健康を守り、安全・安心を確保するために学校全体としての取組を進めるための方策について」です。今回は、この答申の中で学校薬剤師と関係の深い部分について紹介し、解説を加えます。
「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」
まず最初に、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」からお話します。この答申は、学校における教育課程の基準を改訂するものです。教育課程とは「学校における教育目標を実現するための、教育計画」のことです。学校薬剤師はこの計画の範囲内で学校教育に協力していくこととなります。
答申は、学校の教育活動全体について改善を求めていますが、今回の答申において学校薬剤師に最も関連の深い部分は、教科「体育」「保健体育」に関する部分です。
この部分の改訂に関しては、中学校において「保健分野については、個人生活における健康・安全に関する内容を重視する観点から、医薬品に関する内容について取り上げるなど、指導内容を改善する。また、自らの健康を適切に管理し改善していく思考力・判断力などの資質や能力を育成する観点から、小学校の内容を踏まえた系統性のある指導ができるよう健康の概念や課題に関する内容を明確にし、指導の在り方を改善する」とあります。
また、高等学校においては「科目『保健』については、個人生活及び社会生活における健康・安全に関する内容を重視する観点から、指導内容を改善する。その際、様々な保健活動や対策などについて内容の配列を再構成し、医薬品に関する内容について改善する。また、生涯を通じて自らの健康を適切に管理し改善していく思考力・判断力などの資質や能力を育成する観点から、小学校、中学校の内容を踏まえた系統性のある指導ができるよう健康の概念や課題に関する内容を明確にし、指導の在り方を改善する」とあります。
ここで注目すべきは、中学校の保健体育で医薬品に関する内容が取り上げられることです。医薬品に関する内容は、従来は高等学校における指導内容となっていましたが、新しい学習指導要領すなわち今年の3月に改訂されるとされている学習指導要領では中学校から指導されることになります。
「子どもの心身の健康を守り、安全・安心を確保するために学校全体としての取組を進めるための方策について」
次に「子どもの心身の健康を守り、安全・安心を確保するために学校全体としての取組を進めるための方策について」からお話します。これは、従来の保健体育審議会答申といわれていたものと同じと考えてよいもので、これからの学校保健、学校安全の方向性を示すものです。
@「(5)学校医、学校歯科医、学校薬剤師」
「(5)学校医、学校歯科医、学校薬剤師」の項において、次のように記されています
「Aこれまでの学校保健において、学校医、学校歯科医、学校薬剤師が専門的見地から果たした役割は大きいものであった。今後は、子どもの従来からの健康課題への対応に加え、メンタルへルスやアレルギー疾患などの子どもの現代的な健康課題についても、学校と地域の専門的医療機関とのつなぎ役になるなど、引き続き積極的な貢献が期待される」としています。
また、「C学校薬剤師は、健康的な学習環境の確保や感染症予防のために学校環境衛生の維持管理に携わっており、また、保健指導においても、専門的知見を生かし薬物乱用防止や環境衛生に係る教育に貢献している。また、子どもに、生涯にわたり自己の健康管理を適切に行う能力を身に付けさせることが求められる中、医薬品は、医師や薬剤師の指導の下、自ら服用するものであることから、医薬品に関する適切な知識を持つことは重要な課題であり、学校薬剤師がこのような点について更なる貢献をすることが期待されている」としています。
さらに、「Dまた、学校医、学校歯科医、学校薬剤師は、学校保健委員会などの活動に関し、専門家の立場から指導・助言を行うなど、より一層、積極的な役割を果たすことが望まれる」としています。
そして、「E近年、子どもの抱える健康課題が多様化、専門化する中で、子どもが自らの健康課題を理解し、進んで管理できるようにするためには、学校医、学校歯科医、学校薬剤師による専門知識に基づいた効果的な保健指導が重要である。その中でも、学校医、学校歯科医、学校薬剤師が、急病時の対応、救急処置、生活習慣病の予防、歯・口の健康、喫煙、飲酒や薬物乱用の防止などについて特別活動等における保健指導を行うことは、学校生活のみならず、生涯にわたり子どもにとって有意義なものになると考えられる。学校医、学校歯科医、学校薬剤師が保健指導を行うに当たっては、子どもの発達段階に配慮し、教科等の教育内容との関連を図る必要があることから、学級担任や養護教諭のサポートが不可欠であり、学校全体の共通理解の上で、より充実を図ることが求められる」としています。
A「(8)学校環境衛生の維持・管理及び改善等」
学校環境衛生管理に関しては、「(8)学校環境衛生の維持・管理及び改善等」の項において、次のように記されています。
「@学校環境衛生の維持・管理は、健康的な学習環境を確保する観点から重要であることから、学校薬剤師による検査、指導助言等により改善が図られてきたところであり、その際の基準として『学校環境衛生の基準』(平成4年文部省体育局長裁定)が定められている。しかしながら、学校において『学校環境衛生の基準』に基づいた定期検査は、必ずしも完全に実施されていない状況があり、子どもの適切な学習環境の確保を図るためには、定期検査の実施と検査結果に基づいた維持管理や改善が求められている。そのため、完全に実施されていない要因やその対策について十分検討した上で、現在ガイドラインとして示されている『学校環境衛生の基準』の位置付けをより一層明確にするために法制度の整備を検討する必要がある」としています。
今後、何らかの機関で、学校環境衛生検査が学校において完全に実施されていない状況等の原因などの検討がなされ、その結果によっては、学校環境衛生の基準を、たとえば学校保健法施行規則に明記するなどの施策がとられるようになることも考えられます。日本学校薬剤師会としても「学校環境衛生の基準」が、局長裁定による通知ではなく、法律として明確に位置づけされることは長年の悲願です。この答申をよりどころとして、今後「学校環境衛生の基準」の法制化に向けて、日本学校薬剤師会としても積極的に活動する必要があると考えられます。
なお、これらの答申は、
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/news/20080117.pdf
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/08011804/001.pdf
からダウンロードすることができます。 |