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ここにあるのは、EAT-MAN Vol.13 ACT-53 「冒険馬鹿」の別バージョンシナリオです。 ※ ※ |
EAT-MAN
ACT-53
冒険馬鹿 (第1稿)
◆1P
■トビラ
◆1P
■とある町/小さな酒場の前/昼
小さな男の子達が店先の路上で遊んでいる。
男の子A「伝説の冒険屋、スライガー参上!」
男の子Aは自分で作ったヘルメットを被っている。
男の子B「スライガーは悪役なんだぞ!カッコつけるな!」
男の子A「違うぞ!正義の味方だ!」
男の子C「そりゃ昔の話だろー」
そこで突然酒場のドアが激しく開き、中から追い出されるようにボルトが出てくる。
唖然とする子供達。
店の中から店主(ロバート)の怒号が聞こえる。
ロバート「入店お断りだ!出て行け!」
ボルト「………」
太った身体でバリケードを作るようにして立ちはだかるロバート。
するとロバートの脇からエプロンを掛けた女の子(エリー)が顔を出す。
エリー「ちょっと親父!新顔のお客さんじゃないか!」
ボルトに向かって愛想よく笑い、中に招き入れるエリー。
エリー「ささ!どうぞ!ごめんね、ウチの親父たぶんボケてんだ!」
店内のテーブルにボルトを案内するエリー。
イスをボルトにあてがってやる。
ロバート「ボケてたまるか!そいつは冒険屋だ!」
◆1P
エリー「冒険屋?」
ボルトがイスに座ろうとしたが、エリーがさっとそのイスを引く。
床にしりもちつくボルト。
エリー「てやんでぃ!調子こいてウチの店に入るんじゃないよ!イスが腐るわ!出てけボケナス!クズ!ゴミ!ゲロ!」
ボルト「………」
エリー「ボスのスライガーに伝えな!2度とウチの店に来るなって!」
ロバート「エリー、そいつはスライガーの冒険屋じゃないぞ」
◆1P
エリー「ふん!冒険屋なんざ皆同類だろ!親父、包丁!」
ロバート「(ボルトに向かって)おい、アンタ、娘に殺されたくなかったら出て行くんだな」
と言いつつ包丁を取り出すロバート。
そこに数人の男達が店に入って来る。
男達「ようよう、にぎやかだねぇ」「繁盛してるじゃねえか」
エリー「手前ら…、スライガーの!」
素早く男の一人がエリーを捕まえる。
エリー「は、離せ!」
そこに黒いマントにコンバットスーツを着込んだ覆面の男が入って来る。
スライガーだ。
スライガーが店の中に入り、ドアを閉め、覆面を取る。
若い男だ。
スライガー「ようロバート、久しぶりだな」
ロバート「………」
◆1P
スライガー「忘れたのか?俺だ。スライガーだよ」
ロバート「俺の知ってるスライガーはもっと善良な男だ」
スライガー「ほう、そうかい。だが昔より金持ちになったぜ」
エリーが暴れる。
エリー「出てけ、バイキン!」
エリーを見るスライガー。
スライガー「娘も美人になったじゃないか。どうだ?娘も母親と同じ運命をたどらせるというのは……」
エリー「……!」
ロバート「あいにくだな。俺はもう冒険屋をやめたんだ」
スライガー「ほう、なるほどね」
スライガーがそう言うと、エリーを取り囲んでいた男達が一斉にエリーのエプロンを剥ぎ取り、スカートをたくし上げる。
エリー「や、やめろー!」
ロバート「………!」
◆3P
エリーを脱がしにかかる男たちに向かってボルトが銃を構える。
スライガー「貴様、何の真似だ?」
今度はボルトに向かって数十人分の銃口が向けられる。
男達の手を逃れたエリーを抱きとめるロバート。
スライガー「(ボルトに向かって)何者だ?俺が誰か知ってのことか?銃を捨てろ」
素直に捨てるボルト。
スライガー「持ってる武器全部だ」
ボルト「いいのか?」
スライガー「つべこべ言うんじゃねえよ」
ボルトの右手から次々と銃が現れ、床にボトボトと落ちていく。
スライガー一行「……?」
ニヤリと笑うボルト。
次の瞬間、店内はボルトの出した銃で溢れかえる。
男たちが店の壁に押し付けられ、骨の砕ける音がする。
スライガー達「どわあああー!」「いであああー!」
唖然とするロバートとエリー。
店の壁が壊れ、男達が銃の山とともに路上になだれ出る。
エリー「………」
ボルトがスライガーの髪の毛をつかみ上げる。
鼻血を流すスライガー。
ボルト「まだ残ってる。しっかり受け取ってもらおう」
スライガー「いえ、もう充分な気がします」
ズルズルと身体を引きずるスライガー。
スライガーの部下がスライガーに耳打ちする。
部下「もう引き上げましょう」
スライガー「そうだな。今日はこのくらいにしといてやろう」
ボルト「一杯飲んで行け」
スライガー「いえ、御馳走様でしたッ!」
スライガーの後を追って他の男達も折れた足や腕を庇いながらその場を去って行く。
◆1P
ロバート「あんた……ボルト・クランク…?世界一の冒険屋と言われる……」
エリー「……カッコイイ…」
ロバート「さすがだな…食った物を再生する男……」
ニヤリと笑って見せるボルト。
ロバート「とりあえず壁を修理してもらおうか」
ボルト「……だな」
■建物の影/夜
広い部屋にスライガーとその一行が包帯だらけの姿で集まっていた。
スライガー「ヤツはボルト・クランクだ」
部下達「あの世界一と言われる……」「どうします?」
スライガー「ふん、エリーのような上玉はそう居ない。このスライガー様が諦めると思うか?」
部下達が高揚する。
部下「おお!」
スライガー「(部下の一人を指差し)とりあえずお前行け」
部下「ええっ!」
◆2P
■ロバートの店/キッチン/同夜
壁の残骸を食うボルト。
エリーが一生懸命ボルトの給仕をしている。
エリー「壁ばっか食べないの!アタシの料理うまいんだよ!」
ボルト「悪いが……」
エリー「遠慮しない!」
ボルトの背中をドカンと叩く。
エリー「親父ね。3年前まで冒険屋だったんだ。でもそのせいで母ちゃんは……死んじまった」
ボルト「………」
エリー「詳しいことは知らないんだけど、あのスライガーってヤツが母ちゃんを……」
ボルト「………」
エリー「スライガーは昔ヒーローだった。でもある日突然悪徳冒険屋になっちまったんだ。シケた仕事しかしないクセに多額の金を取る。最低の野郎さ!」
そこにロバートが入って来る。
ロバート「エリー。もうその話をするなと言ったろう!子供は寝る時間だ」
エリー「ちぇ!もう子供じゃないよ」
立ち去り際にボルトに耳打ちするエリー。
エリー「よかったら後であたしの部屋においでよ。子供じゃないこと教えてあげるから」
ロバート「エリー!」
キッチンを出て行くエリー。
◆2P
エリーが自分の部屋に入る。
するとそこには男達の影があった。
悲鳴を上げる間もなくエリーは男達に押え付けられてしまう。
ロバート「あいつの話は忘れてくれ」
ボルト「あんたが冒険屋だったことを?」
ロバート「そうだ。俺はもう冒険屋じゃない。俺が冒険屋だったせいで妻は……リナは……」
ボルト「……!」
気配を感じ、視線を窓の外にやるボルト。
ロバートもそれに気付く。
数人の男達がエリーを連れ去る姿が見える。
慌てて勝手口から表に飛び出すロバート。
ロバート「貴様ら!」
男達はすでに車に乗り込んでいた。
男達「(ロバートに向って)娘を返して欲しければボスと勝負しな!ただしお前一人だけだぞ!」
そう言って走り去る車。
ロバート「あの野郎……!」
◆3P
■スライガーの本拠地の前/翌朝
朝靄の中からロバートの姿が浮かび上がる。
建物の正面玄関にはスライガーを始め、部下達が待ち構えていた。
身体を抑え付けられているエリー。
エリー「親父!」
ロバート「(スライガーに向かって)言ったはずだ。俺は冒険屋をやめたとな。娘を返してもらおう」
スライガー「お前が冒険屋かどうかは問題じゃない。エリーを取り返したければ俺と戦え。3年前、お前が自分の女房を賭けて戦ったようにな」
エリー「………な!」
ロバート「(エリーに向かって)ヤツは俺との勝負にお前の母親を賭けた。ヤツが負けたんでお前の母親は俺の物になったわけだ」
エリー「じゃあ、母ちゃんは……」
スライガー「ああ、もちろん生きてる。今じゃ俺の奴隷だが……、もう飽きたんでね。次はお前の番ってわけだ」
エリー「(絶句)………」
ロバート「すまないエリー……お前に本当のことは言えなかった。俺の人生最大の汚点だ」
ロバートを睨み付けるエリー。
エリー「……最低。……冒険屋なんて最低だ!自分の女房賭けるなんて!死ねバカ!ボケ!ハゲ!デブ!」
スライガー「ひゃはは!(ロバートに向かって)今回も約束しろ。俺と戦って負けたらエリーを俺にくれるとな」
ロバート「いいや、もうお前と約束はしない。たとえ負けてもエリーは渡さん!」
上着を脱ぐロバート。
エリー「親父……」
スライガー「そうかい。そいつはフェアじゃないな」
部下がロバートに向かって銃を構える。
そこに女性の声が響き渡る。
女性「スライガーの言う通りよロバート!フェアじゃないわ!」
◆2P
ロバート「……リナ」
建物のバルコニーに美しい女性(リナ)が立っていた。
エリー「か、母ちゃん!?」
リナ「私のときは約束したくせにエリーのときは約束しないってどういうわけ?私に対してフェアじゃないでしょう!」
一同「………」
リナ「男なら戦いなさいよ!正々堂々と!本物のスライガーの名に賭けて!」
エリー「……本物のスライガー!?」
リナ「(エリーに向かって)そうよエリー。お父さんは10年前に現れたそこのクソ生意気なガキから一方的に挑戦状を叩きつけられた。私と……スライガーの名を賭けてね」
エリー「……!」
■3年前
高い場所で戦うスライガーとロバート。
ただしロバートがスライガーの格好をしている。しかもスマートな体型。
ロバートが高い場所から落下してしまいそうなところをリナが腕を伸ばして捕まえるがリナの力ではロバートを支えることが出来ず、ロバートもろとも落下しそうになる。
しかし偽スライガーがリナの腕をつかんだので、偽スライガーの腕に二人の人間がぶら下がる形になる。
腕を両方から引っ張られ、苦痛に満ちた顔になるリナ。
そんなリナを見かねて自ら手を離すロバート。
◆2P
■現在
リナ「ロバートは私をかばって負けた……。そしてスライガーの名まで奪われたのよ。本当はこんなクソガキに負けるような人じゃないわ」
スライガー「うるせえ!クソガキクソガキ言うな!」
リナ「クソガキよ。私を満足に抱けもしないくせに」
スライガー「手前の股をこじ開けられる男が居るか!それでも女か!」
リナ「股だけは鍛えたの」
エリーと部下達「………」
リナ「そうね。私を抱けるのはロバートくらいだわ」
ホヤ〜っと笑うロバート。
スライガー「畜生!面倒臭ぇ!殺してしまえ!」
部下が一斉に銃を構え、ロバートに向かって発砲する。
◆1P
しかしロバートの背後にいつの間にかボルトの姿があった。
ボルトの右手から巨大な壁が出現する。店の壁だ。
その壁が全ての弾丸を食い止める。
エリー「……!」
◆1P
スライガー「ボ、ボルト・クランク!?」
ハリボテのような壁がそこにある。
部下達がその壁の裏に回りこむ。
部下達「バカが!裏ががら空きだぜ!」
ボルトが壁のドアを開ける。
壁が倒れ、ドアの場所に立っていたボルトとロバート以外、全員壁に押し潰される。
包帯を巻いた男達の骨がまた新たに折れる。
部下達「ぐぎゃあああー!」「いだあああー!」
スライガー「………」
ロバート「なぜここに居る。壁の修理をしておけと言ったはずだ」
ボルト「あんたに渡す物があるんでね」
ロバート「……?」
◆1P
リナ「そうよロバート。私からのプレゼント……受け取って」
次の瞬間、ボルトの右手から黒い布のような物が飛び出し、それがロバートの身体を包んでいく。
スライガー「ま、まさか!」
スライガーのコスチュームだ。
リナ「あなた……」
惚れ惚れと見つめるリナ。
リナ「太ったわね」
ロバート「おお、思い出したぞ。この感覚!」
◆2P
偽スライガーがエリーの喉元にナイフを突きつける。
偽スライガー「そこを動くな!動くと……」
すでにロバートは動いていた。
ロバート「スライガーパーンチ!」
デブとは思えない速さで偽スライガーに迫り、パンチを食らわす。
吹っ飛ぶ偽スライガー。
エリー「は、早い……。ホントに親父?」
偽スライガー「ち、畜生!」
偽スライガーが銃を出す。
ロバート「スライガーキーック!」
偽スライガーもろともその銃を蹴飛ばす。
偽スライガー「ぐふあああー!」
その衝撃で偽スライガーの腕が変な方向に曲がり、骨の折れる音がする。
商店街に頭から突っ込んでいく偽スライガー。
驚く人々。
◆1P
その中に昨日酒場の前で遊んでいた子供達が居た。
子供達「スライガーとスライガーが戦ってる!」「どっちが偽者だ?」「そりゃデブの方だろ」「でも……、昔の動きにソックリだ」
偽スライガーに留めを刺すロバート。
どよめく人々。
◆1P
ロバート「(人々に向かって)こいつは偽者だ、どなたか警察を呼んでいただきたい」
静まり返っている人々。
ロバート「愛と平和を守るため、我は行かん!」
そう言ってその場を立ち去るロバート。
人々「聞いたか?いつものセリフだ!」「やっぱりコイツは偽者だったんだ!」「そうだ!3年前から言わなくなった!」「どうりで高い金とるわけだ!」
人々にボコボコにされる偽スライガー。
偽スライガー「(くそう!あんな恥ずかしいセリフが言えるか!)」
喝采を後に走り去るロバート。
◆1P
■ロバートの店の前
ロバート「3年も待たせて悪かった、リナ」
リナ「いいのよロバート。あなたは必ず約束を守る人……例え相手がクソガキでも。だから私はあなたが好き……」
エリー「そんなもんかな……」
3人家族を後にし、その場を去るボルト。
◆1P
リナ「スライガーの復活。見事だったわ」
ロバート「いや、もう冒険屋はやらない。もう3年前にスライガーは死んだんだ」
エリー「そうだよ。これからは家族3人……」
そこでリナのパンチがロバートの腹部に命中する。
ロバート「ぐふ……」
エリー「母ちゃん」
リナ「何言ってるの、皆あなたを待ってるわ。弱音を吐く男なんて嫌いよ」
ロバート「リナ……」
リナ「それに私……デブも嫌い」
ロバート「………」
◆2P
■町外れの砂漠
町を背に歩くボルト。
その後ろに立つロバート・スライガー。
ボルト「何か用か?」
ロバート「いいダイエット法は無いものかな。痩せるまでリナに会えない」
ボルト「そいつは気の毒だ」
ロバート「痩せるヒントはあんたの職業かな。あんたの仕事はなにかな?」
笑って答えるボルト。
ボルト「冒険屋」
ロバート「そう!愛と平和を守るため、我は行かん!」
EAT−MAN ACT-53 冒険馬鹿(第1稿)
THE END
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