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私は食いしん坊なので、食べもの、飲みものに関することは、かなり、その旅、その国の印象の良し悪しを左右する。 しかし食いしん坊といっても、貧乏旅行なので当然、贅沢な“グルメ”と言うわけではない。朝食のパン、一杯のコーヒーが美味いのがうれしいのだ。 バンツは前日或いは朝早くに、最も近いバス停前のお店でパンを買って来てくれる。それがとてもうまい!前の家の近所にもあった“何でも屋さん”のパンと同じパン工場のものと思われる。茶色のずしりと重いパンや、パリパリのクロワッサン。さすがスイス!ドイツとフランスの本物が、どこにでもあるというわけ。チーズは近くの農家が、“自家製チーズ”を作っていて、それはもう、言わずもがなうまい。これを食べられたらスイス人とバンツがいう、くさーいウォッシュチーズもある。彼が梅干を食べた時の驚きや拒否反応に比べたら、私はいくらかましだが、“旨みが解らなくもない”程度。すすんで切って食べようとは思わない。スーパーなどでは輸入チーズも充実していて、日本で見かけるフランスのチーズも3分の1くらいの値段で売っている。ハム・サラミもイタリアからの輸入物を売っているが、近所に質の良い農家の自家製もある。バンツの家の朝食は、そのおいしいパンと、農家の自家製チーズとサラミ。それからおいしい蜂蜜・・という、質素だが豊かな食卓だ。 バンツの家からさらに車で10分登ったあたりに突然立派なレストランがあり、不思議に賑わっている。もちろん近くに町もないし、周りは確かに美しいけれど特に何があるわけでもない。しかし、わざわざ町からそこに食べに来ているようだ。私たちは、“アドベンチャー”の後のほっと一息で入った。バンツも初めてだそうだ。(*この“アドベンチャー”は後記)泥だらけの靴をはいた私たちは明らかに場違いであったが、スイス人は礼儀正しく、じろじろ見たりひそひそ話したりしない。皆さん、久しぶりの友人達との会食や、家族や親類とのやや格式ばったランチに、少しおしゃれして来た感じ。ランチのコース料理をワインとともに楽しんでいる。料理が来るのを待っている間、恵琉馬には、クレヨン・画用紙・絵本・パズルなど店の人がありったけ出してくれる。他のレストランでも同じサービスがあった。子供を連れてきてもよいし、こういったサービスはしますが、責任を持って静かにさせてくださいよ、頼みますよ、といったところ。フェアーできちんとしている。ところが、出てきたポタージュスープは、インスタントスープのようだ。メイン料理も美味く無い。スイスではシェフが出てきて、お味はどうですかと、各テーブルを回る。皆、気がついているのかいないのか・・褒め称えている。テーブルひっくり返すべきだったか。 今回は、美味しい思いもたくさんしたけど、まずいのも結構あったなあ。スイス・バーゼルのレストランのオムレツもひどかった。フライパンに溶き卵を入れ、ただ念入りに火を通しただけのようなものだった。ドイツ・トリーブルグでは、美味くないソーセージに遭遇したし、あちこちにあるケバブ、もっと美味しかったと思うけど。5年の間に食のレベルがもしかして落ちたのかな?しかし、さすがに、インビスや市場で売られている焼きソーセージは相変わらず抜群。パン屋の店先で売られているプレッツェルも岩塩がプチプチくっついていてほんとに美味しい。又、ドイツ・オッフェンブルグでは、ロック系・前髪たらりのお兄さんが、一人でやっている店のソーセージサラダが、妙に美味かったし、フィリンゲンではあまり流行ってないイタリアンの店のパスタが抜群だった。ビールは言うまでもない。 バンツはとても料理が上手い。今回は、地鶏のスパイシーグリル(確か彼のお父さんのお得意料理)、ベーコンとトマトのパスタを作ってくれた。又バンツのサラダのドレッシングも抜群なのだ。(スイスのレストランのサラダは、とてもおいしい。オーガニックの野菜と油控えめのイタリア風自家製ドレッシング。皿に残ったドレッシングはパンに吸わせて食べたりしている。私もやっと美味しいドレッシングを作れるようになって来た。パスタに関して、スイス人は茹で過ぎが好み。アル・デン・テは嫌なんだって。) 今回滞在中、お礼の意味もこめて、2度日本食を作った。マグロのすしが食べたいというので、スーパーで新鮮そうなマグロを買い、付け丼にした。それと、ブロッコリーとジャガイモの炒め物と麩の味噌汁。魚は生では食べないと言う前提にあるから、売る人は生では食べられないと言う。しかしバンツは、日本食が恋しくなり、時々そこのマグロを生で食べているらしい。バンツのお母さんは生で魚を食べたと言うと、信じられない!と驚愕するのだそうだ。アニサキスはマグロにはいなかったっけ?とそれだけは心配。(冷凍すれば死ぬらしいが。海のないスイス・・・。冷凍でしょう、きっと・・。)もう一回は、バンツの前の家の隣人で、神業的な耳と技術を備えた調律師、ベネ(*彼の調律したピアノのおかげでa song for someone と言う曲が出来た。) とガールフレンドがゲストで、鳥の照り焼き、肉じゃが、きゅうり(ヨーロッパ産は特大、皮を剥いて使う)とワカメ(日本より持参)の酢の物と、土筆が生えていたのでスイスの土筆の味噌汁という献立で作った。どれもたいそう喜んでくれた。土筆は自然派のべネ以外は半信半疑で残していたけど。 前の家の真ん前にあったレストランがなくなっていたのは残念だった。良いシェフがいてとてもおいしかった。ベルンからたくさんの人が食べに来ていた。ボリュームもあったなあ。コルドンブルーというハムとチーズを肉に挟んで揚げたカツレツは、わらじの様で、そのカロリーは恐らく2000Kcalはあろうかと思われる。バンツは未だに思い出して笑う。土井君のレコーディングのリハーサル中、皆で食事した時に奥さんやスタッフの女性が注文した、スイス料理のローシティ(細切りジャガイモをバターでチーズと共にお好み焼き状に焼いてある、これも巨大であった)が目の前に運ばれた時、そしてほんの少し食べて、もうおなか一杯とギヴアップした時の顔ったら・・と。予想を超えた大きさと、その変化の無さには、日本人なら誰しも圧倒される。このバターとチーズにまみれた大量のジャガイモをひたすら片付けなくてはならないのか・・うまいが、かんべんしてくれー・・・。(バンツもその気持ちをよく解っている。) 日本の「ご飯」にあたるものが「ジャガイモ」。カツの付け合せにゆでたジャガイモならまだしも、フライドポテトだったりするから、見ただけでうんざりしてしまう。キャベツと白いご飯でしょうやっぱり! スイス・ドイツの料理を私は好きだが、確かにシンプル・豪快、言い換えれば単純・大雑把な所はある。(0型気質っぽいなあ。)しかしその半面、シンプルを極めれば極上に達する。あのハム・ソーセージの味、ビールの味、パンの味・・・。そうそう、ドイツで、肉の旨煮の付けあわせの“クヌーデル”というパン団子は、うまかったー! パンをちぎって玉子と小麦粉を加え、野球ボール大にして、スープで煮る。もともと硬くなったパンのうまい食べ方だったのだろうと思う。焼きおにぎりのようだと思った。 今回はバンツのリクエストで醤油を持って行ったのだが、醤油というのはなんと複雑な味の素晴らしい調味料なんだろうと、痛感する。又、和食が素材の味を活かした、とても自然で健康な料理だという事にも改めて気づかされる。純和食、だけでなく、色んな国の料理を取り入れてきた日本の家庭料理は、なかなかの優れ物と思う。ジャンクフードや、スナックなど、刺激的で平坦で、空っぽな味に子供たちが慣れてしまうと、日本食の将来は恐ろしい。 |
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高田ひろ子 2005.08.02 |