| Wizardry : Bane of the Cosmic Forge | |
|---|---|
| 邦題 | ウィザードリィ (VI) ベイン オブ ザ コズミックフォージ(禁断の魔筆) |
| ジャンル | Fantasy Role-Playing Simulation |
| 開発元 | Sir-Tech Inc. |
| Designed By | David W. Bradley |
| 機種 | IBM-PC PC-9801 PC-9821 FM-TOWNS スーパーファミコン他 |


Wizardry : Bane of the Cosmic Forge(以下BCFと表記)は、「ウルティマ」と並び、一般的なコンピュータ RPG の元祖と言われているウィザードリィの、シリーズ 6作目です。今回から「新シリーズ」となり、基本ルールの変更を含む大掛かりな改革が行われたため、当時、ファンの評価は賛否両論真っ二つに分かれました。
このゲームは、基本的には俗に「3Dダンジョン型 RPG」と言われるスタイルのゲームです。最大6人でパーティを組み、戦闘を繰り返してキャラクターを育てつつ、数々の謎を解いて先に進んでいくという、非常にオーソドックスな(クラシックな)スタイルの RPG だと言えます。ただ、何だかんだ言っても戦闘の占める割合がかなり大きいのは確かなのですが、戦闘以外の要素についてもきちんと気を配らないと先には進めないため、クラシックなCRPGとは結構なプレイ感覚の違いがあります。
全体的に難易度は高く、ややマニアックな内容であるため、米国産のコンピュータRPGに慣れていない人がいきなり手を出すのは、無謀かもしれません。これはレビューで書くべき事ですが、ゲーム全体の雰囲気はかなり良く、その点では広くお勧めしたいだけに、このゲームのマニアックさは、少々残念な点でもあるように思います(その一方、個人的にはこれくらいの方が面白いと感じてもいるので、判断の難しいところではあります)。
そして、もう一つ。詳しくは後述しますが、このゲームはスーパーファミコンにも移植されています。しかし、細かい部分が色々とアレンジされており、なおかつスタイルの根本に関わる部分にも手が入っているので、やや極端ですが「全くの別物」と言えるほどの違いが生じています。スーパーファミコン版が最も入手し易く、また最も快適にプレイ出来るバージョンではあるのですが、個人的には出来るならパソコン版を一度でも触れていただきたい、と思います。
「この世には、知らねばならない事がある。」
その昔、この世界にはCosmic Forgeと呼ばれる魔法のペンがあった。そのペンで書いた事柄は、全て現実のものとなるのだという。120年ほど前に、とある邪悪な王と仲間の魔法使いがそのペンを入手し、絶大な力を手に入れたが、同時にそれは、彼らの間でペンを巡る激しい争いをも引き起こした。その争いの結果、彼らとペンがどうなったのかを知る者は居ない。今はただ、居城が廃虚として残っているのみである。しかし今、新たな冒険者達がその城を訪れた事によって、全てが変わろうとしている。
冒頭で書いたように、BCFでは大掛かりな改革が行われました。色々と書く前にまず、BCFにおけるシステム面での変更点を紹介します。旧シリーズ作品をご存知でない方は、以下に挙げるものが BCFの特徴なのだ、と思っていただければ。
幾つか漏れている点はありますが、大雑把に言うと BCFで行われた改革というのは、このようなものです。...と、本来ならこれに続いて改革の意義や是非について書くべきなのでしょうが、かなりの長文になってしまったので、ファイルを分けて、せっかくだからみっしりと色々書く事にしました。
というわけで、以下は「一つの CRPGとしての評価」です。

さて、こういった改革が成された事によって、一体どのような収穫が得られたのでしょうか。収穫は幾つもありますが、そんな中でも、全体として「冒険の最中に居る」という感覚がかなり強く味わえるようになった、というのが一番の収穫だと言えます。単純に「冒険の過程がより面白いものになった」と言っても良いでしょうか。
取り敢えず、「RPGってこういうゲームだよね」という固定概念は忘れて下さい。そして、ファンタジー世界における冒険が実際には一体どのようなものなのか、想像してみて下さい。素直に考えてみれば、例え寄り道する事なく目的まで一直線に突き進んだ場合でも、戦闘以外にも色々な種類の困難を乗り越えなければならないだろう、と思えるのではないでしょうか。そういうファンタジー世界の冒険をリアルに再現しつつも、ゲームとして面白くなるよう上手くアレンジしたもの、それが BCFです。(てか、RPGって本当はそういうゲームの筈なんですけどね...)
だからこう、「戦闘以外にも遊べる要素がある」から面白い、と言いたいんじゃないのです。「戦闘以外の要素についても気を配る必要がある」から面白いのです。一般的なCRPGでは無視されてきた様々な要素が、世界の一部、冒険の一部としてきちんと機能しているため、これまで以上に濃密な冒険を味わう事が出来る、というのが大事なのです。
また、全体的にプレイヤーが実際に選択すべき事柄がかなり増えています。これは、単に新要素が盛り込まれたからではなく、例えば戦闘など既存の要素についても、より細かく行動を指示するようになっています。と書くと「ただ面倒になっただけでは?」と思われるかもしれません。まあ、面倒だと感じちゃう人も多いのだろうけど、少なくとも無意味に細かいわけではありません。全ての選択にはちゃんと意味があり、その後の冒険や時にはキャラクターの生死に影響を与えるのです。この事から、BCFはプレイヤー(とキャラクター)の力量で難関を突破して目的を達成する、という感覚が非常に強いです。
あと、舞台となるダンジョンの存在感がよりリアルに感じられるようになっています。BCFのマップは、スタート地点となる城を中心に幾つものエリアが垂直方向、水平方向に繋がっており、なおかつキチンと空間的に辻褄が合うように作られています。だから、ちゃんと立体的に再現された空間の中を冒険している、という感覚が味わえます。CRPGでこういう感覚を再現したゲームというのは、BCFが最初なのではないでしょうか。
このように、BCFは非常に手の込んだ作りのゲームです。単純に色々な要素を盛り込んだだけではなく、全体として上手く機能するように、細かい部分までアイディアが練り込まれています。ゲームシステムを思い切って変えてしまったのも、つまるところはアイディアを練り込む作業の一環として行われた事なのです。日本では「Wizardryは旧シリーズの方が面白い」という声が異常なまでに強いので書いておきますが、こういったゲームシステム等の作り込み、バランスの緻密さという点では、旧シリーズはどうやっても勝てません。その差は圧倒的です。
そう言えば、BCFに限らず、このゲームを手掛けた David W. Bradley氏の作品は、一見すると良くある RPGに見えるけど、何だか独特の感触がありますね。これは流石に、文章では上手く表現出来ないんですけど。氏の魅力として表現力豊かなテキストを挙げる人が多いんですが、それ以外にもゲームシステムの作り方とか、手触りとか...何か、他の RPGでは味わえない魅力があるのです。

冒険を進める上で、探索、戦闘と並んで重要な意味を持つのが、各地に点在する NPCとのやりとりです。彼らに対しては、アイテムの売買や会話の他にも、手持ちのアイテムを盗んだり、果ては戦いを挑んで殺してしまう事も出来ます。
勿論、無闇に虐殺すべきではありませんけどね。アイテム売買が出来なくなるだけでなく、先に進むためのヒントも得られなくなってしまいますから(註:一応、彼らを殺した時に、コンプリートに必須のアイテムや、扉を開けるためのパスワードなど、知らなければ絶対分からないような情報は得る事が出来ます。でも、会話から得られるヒント無しに自力でコンプリートするのは、不可能に近いでしょう)。盗みも、相手に気付かれると機嫌を損ねられて、その後の売買や会話での情報収集に影響してくる...らしいです(自分は未確認。と言うより、盗みをしないので...)。
既に書いたように、NPCとの会話は「キーボードから質問を文章で入力する」事により行います。このシステムは、上手く作らないとただ面倒なだけ(ひたすら正解の単語を探すとか)になってしまうのですが、BCFでは「わりと上手く機能している」ように思います。同じ内容の質問を表現を変えて聞いても結構反応してくれますし、名詞の一部を省略しても大体は通じます。また、直前に相手が話した事に関連する質問なら、代名詞も受け付けてくれます(どうでも良い事ですが、実は英国のスペルも通用します)。現実の会話っぽい感覚は、わりと上手く再現されているように思います。あと、ゲームの進行とは直接関係の無い話を聞けたりするのも、面白い点です。
ただ、実際には相手から返ってくる台詞が少なめで、一人から聞ける情報もかなり少ないです。つまり、意外と会話が広がらないわけでして、この点はちょっと残念です。しかも、相手がどれ位の情報を持っているのかが最初から分かる筈もないので、始めは手当たり次第に色々な質問をぶつける事になるでしょう。まあ、そういうわけで、面倒臭さをわりと強く感じてしまうという一面があるのは事実です。
とは言え、このシステムのお陰で、情報収集の過程、ひいてはシナリオ展開が多彩なものとなり、プレイヤーが柔軟に冒険を進められるようになった、というのもまた事実です。情報の殆んどはいわゆるヒントなので、全ての台詞を聞かないと先に進めない、というわけでもありません。謎が解けるかどうかだけが問題なのです。だからまあ、「わりと上手く機能している」とは言えるでしょう。でも、もう少しフォローが欲しいですね。様々な制限を考えると難しいのは分かるんですけど。
はっきり言ってしまうと、BCFの戦闘は非常に難易度が高い部類に入ります。難しいと言うよりは、シビアだと言った方が妥当かもしれません。きっちりと戦術を練って的確に行動しないとあっと言う間に情勢を覆されたりしますし、いわゆる経験値稼ぎが非常にやり難くなっているため、じっくりとレベルを上げて難易度を下げる、という手段も使えません(いずれにせよ、レベルを上げるだけでは勝てませんが)。また、戦術の上で魔法の使いこなしが非常に重要な役割を果たすのですが、覚えられる魔法の数がかなりタイトに調整されているため、今はどの魔法を覚えるべきかをしっかりと考える必要もあります。
とまあ、BCFの戦闘はシビアなのではありますが、ゲームバランスが悪いというわけではりません。むしろ、全体的にはバランス調整が巧みだと言えます。戦術さえしっかりと考えれば、無理にレベルを上げなくても、或いは運に頼らずとも勝てるように調整されている(終盤は少しレベルを上げないと厳しい気もしますが)ので、厳しいのは確かなのですが、理不尽な感じはありません。と、このように全体的には非常に良くバランスが練られているのですが、残念ながら、不満に感じる点もあります。
終盤の敵に、状態異常を引き起こす魔法をバンバン使ってくるのが登場するのですが、こいつらがやたら大量に出現する上、かなり素早い(行動順序が早い)のですね。BCFの状態異常魔法は非常に欝陶しいため、こちらから何も手を出す事が出来ないまま全滅を待つしかない(逃げる事すら出来ない)という状況に陥る確率が非常に高いという、非常に凶悪な敵パーティとなっています。まあ、実は上手い対処法があるのかもしれませんが、彼らだけがずば抜けて強いという印象があり、なおかつ遭遇を完全に避ける事も出来ないため、自分としてはやはり彼らの存在に疑問を感じてしまいます。
また、いわゆるボス敵も特定の魔法が無いと非常に厳しい、というのが殆んどで、なおかつ一度戦闘に入ると逃げられない事も多いため、自力で頑張っている人はここでリセットしてやり直しをする羽目になるでしょう。これも、何らかのフォローが欲しいと感じる点です。
また、これは不満と言うほどでもありませんが、(転職などをせずに)普通に成長させて覚えられる魔法の数も、やや少ないと言うか、ちょっとタイト過ぎるようにも感じます。足りないという事はありませんが、ちょっと余裕が無さ過ぎる感じで、特に自力で頑張りたい人にはかなり厳しいです。まあ、転職すればレベルが 1に戻る事を利用して、魔法をどんどん覚えさせれば良い、という意見もあるでしょう。確かに、対処法があるだけマシではありますし、だからこそ言うほど不満には感じていないのでもありますが。でもやはり、個人的にはちょっとインチキ臭くて、あまり好きにはなれません。
....と、ここまで書いてふと気付いたんですが、自分がこのように感じた理由は、実は自分のパーティ編成がまずかったのかもしれません。うちのパーティには、魔法をガンガン使えるキャラクターは二人(僧侶と魔法使いが一人ずつ)しか居ないのです。自分の体験を元にして言えば、これから始める人は、もう一人魔法をガンガン使えるキャラクターを入れておくのが妥当かと思います。
謎解きの難易度に関しては、難しいのは確かなのですが、単純に「それが解けないせいで進行が止まってしまう」というものでなく、「正解を求めてダンジョン内を探索する」という方向性になっているので、全体的には悪くないと思います。ただ、ラスト直前あたりの謎解きがヒントが少ない上に非常に分かり辛くてイマイチなのと、一箇所だけ、そこに行かないと謎解きが待っている事が分からないのに、その場で質問に答えられないとほぼ全滅が確定の状況にまで追い込まれるという場所があり、そういった細かい難点が存在してしまうのが「珠に瑕」ではあります。
BCFは、ゲームシステムが非常に良く練られたゲームなのですが、「扉の開錠」に関するルールだけは、一部に不満を感じています。BCFでは、鍵の掛かった扉を開ける方法を幾つもの中から選べるのですが(例外もありますが)、話を分かり易くするために、以下では「ピッキングで開ける」場合に絞って書きます(と言うか、それ以外の方法には特に不満が無い)。
ピッキングで鍵を外せるかどうかは、ランダムで決まります。とは言え、当然ながら、ピッキングに関する Skillと能力値が高いほど成功し易いようになっています。また、ピッキングの難易度も扉によってバラバラで、仕掛けが難しい扉ほど、開けるのに高い技術が要求されます。問題は、ピッキングの難易度が実際に試してみるまで分からないのに、一度ピッキングモードに入るとキャンセル出来ない事と、失敗すると一定の確率でジャムってしまい、以降は魔法を使うか、対応する鍵で開けるかするしかなくなる事です。
それで「ハマリ」に陥る事は無いんですけどね。開錠の魔法を覚えていなくても、その魔法の巻物が使えますし。でも、このへんのルールが厳し過ぎるせいで「始めから魔法を使うのがセオリー」になってしまっているのは、やはり残念な事です(続編では修正された様子)。
あと、キャラクター育成に関連する部分の調整が、ちょっとタイト過ぎるように思います。既に書いたように、ゲームバランスという点では非常に巧みに調整されているのですが、やはりシビア過ぎるという印象を拭いきれません。二回目以降のプレイであるとか、事前に攻略情報を読んでおくとか、とにかくゲームの全体像を把握している状態で遊んで丁度良い、という感じになってしまっています。つまり、自力でプレイするのが相当に厳しい、という事です。と言うか、こういうタイトな作りは、CRPGのように先が見えない状況の中を進めていく長編ゲームには向いていないような。ウォーゲームとかには向いているんですが。BCFの場合は、転職を利用するといった逃げ道があり、最初からやり直しをしなくても済むので、辛うじてゲームとして成立している、という感じです。
ちなみに、BCFは「リセット(或いはセーブ&ロード)を繰り返さないとまともに遊べない」と言われる事が多いようですが、実は上に挙げた一部の例外的な状況を除けば、リセットする事なく進められるように調整されていると思います。基本的には、キャラクターの能力とプレイヤーの力量があれば、きちんと対処出来るように作られているのです。しかし、現実的には初回の自力プレイでリセット無しを貫くのは、例え慎重に進めたとしても、極めて難しいでしょう。少なくとも、多分に運に左右されてしまうのではないでしょうか。
誤解を避けるためにフォローしておくと、BCFは二回目以降にキャラクター育成と戦闘を中心に楽しむのなら、非常に面白いゲームとなります。上にも書いていますが、ゲームの全体像が分かっていれば、何を重視して何を捨てるのか、といったシビアな選択も素直に楽しめるでしょう。
ただ、二回目以降だと、探索があまり楽しめないんですよね。冒険の面白さという点では、やはり一回目を自力でプレイする時の楽しさには敵わない。だからこそ、「一回目の自力プレイ」が厳しすぎる点が、ちょっと引っ掛かってしまうのです。
他にも、細かい不満は結構いろいろとあります。状態異常魔法の欝陶しさはちょっとやり過ぎだと思いますし、インターフェイスやプログラムの完成度なども、ちょっと疑問に感じます(プログラムは、ゲームシステムを具現化している部分の出来は素晴しいのでありますが)。

ご覧のように、BCFが色々と問題を抱えた作品であるのは、言い逃れようのない事実です。BCFが賛否両論呼んだのは、改革された事に対する賛否だけでなく、一本のゲームとして見た場合の評価が分かれた、という一面もあるのでしょう。
しかし、良く出来ている部分は凄みを感じるほどの出来映えで、問題点がさほど気にならない人にとっては、充分に「名作」と呼べるだけの内容にはなっています。全体的に、非常に高度な事に挑戦して、その大体は上手く行ったんだけど、上手く行かなかった部分も幾つか出ちゃった、という感じがします。だからまあ、問題点だけを見て避けちゃって良いようなゲームでは無いです(まあ、現在なら他のゲームを選ぶ道もあるのかも)。
何れにしても、難易度が高いゲームなのは間違いないので、生半可に手を出すと痛い目に合うでしょう。でも、難易度の高さだけが魅力のゲームではないので、難しいゲームが平気な人であれば、色々文句を言いながらも面白く遊べるんじゃないですかね。