ぎおんしょうじゃ

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し
猛き人もついには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ。


(ぎおんしょうじゃのかねのこえ しょぎょうむじょうのひびきあり
さらそうじゅのはなのいろ じょうしゃひっすいのことわりをあらわす
おごれるものひさしからず ただはるのよのゆめのごとし
たけきひともついにはほろびぬ ひとえにかぜのまえのちりにおなじ)

角川日本古典文庫『平家物語 上巻』

(訳)釈迦が説法をした天竺の祇園寺の鐘の音には、この世の全てのものが消滅流転すると言う真理を 告げる響きがある。釈迦が入滅したときにその死を悲しんで、俄かに白色に変わり、枯れてしまったという 沙羅双樹の花の色は、どれほど栄えたものでも必ず衰える時が来るという、理をあらわしている。

 力を誇っている人も永遠という事はなく、それは春の短い夜の儚い夢のようなものである。 勇を奮う者も最後には滅びてしまう。それはただ、風の前であっけないく吹き飛んでしまう 塵の存在と同じである。


平家物語

 御存知『平家物語』冒頭。古典の中では『枕草子』『徒然草』『源氏物語』などと並んで原文を暗誦できる、 もしくは覚えさせられた(苦笑)作品だと思われます。
 内容は仏教的無常観を基調にした平家一門の栄華と没落、この一言に付きますね。 それが、美しい和漢混交文で描かれています。琵琶にあわせて語られた、平曲なので本文の異同が 多いということも特徴の一つ。今目にするのは「覚一本」と呼ばれる「十二巻本」+「灌頂の巻」で構成される 作品です。巻数もそれ程多くなく、有名なエピソードも多いので、古典の中では比較的読みやすい 部類だと思います。(『太平記』の40巻、『源氏物語』の54帖に比べればねぇ。)


祇園精舎

 インドの須達長者が仏及び僧の為に造ったお寺の事


諸行無常

 涅槃経の雪山偈の「諸行無常、是生滅法、消滅々巳、寂滅為楽」より。


沙羅双樹

 仏入滅のところに四方に各二株ずつ双生した樹の名前。日本で言う「沙羅双樹」の木とは「夏つばき」の 事を指しています。実際の写真はこちら

沙羅双樹 説明。読めますか?
蕾

「夏つばき」というくらいですから、花は六月〜七月にかけて咲きます。GW中に写真撮りに行ったので、 まだまだつぼみの段階。これは白い花をつけます。赤く咲くのもありますが、やっぱり沙羅双樹の花の色は 白じゃないとね。


盛者必衰

 仁王経護国品、四非常偈の「盛者必衰、實者必虚」より。


参考文献 角川日本古典文庫『平家物語』
浜島書店『常用国語便覧』
小学館『全訳古語例解辞典』