声の高い男 「もしもし、おにーさん。おにーさんてば。」 「うわ!超、声高いっスね。なんですか?」 「なに?遊ぶところ探してんの?旅行?出張とかですか?」 「いえ、まあその。」 「じゃあ、アレですよ。いいとこありますよ。」 「...。」 「あ、アレですから。ワタシ客引きとかじゃないの。 紹介所ってのがあってね、そこからだから、うん。」 「紹介所、ですか。」 「そう、それ。この辺は悪質なの多いからね。 ウチはちゃんとナニな方のアレだから。大丈夫大丈夫。ね。」 「ナニとかアレとかよく判んないっスね。」 「ああー。じゃあさ、(ピー)って知ってる?新宿の(ピー)。 アレ姉妹店なんですよね。ウチの。うん。まあ系列っていうか。」 「はあ、ていうかピーじゃ判らないんですけど。」 「で、評判いいんでここにも出来たんですよ。去年の?、夏?」 「...いや、俺に聞かれても。」 「オープニングの時はスタッフ足りなくて呼んだのよ、新宿から。 でも今はね、逆。こっちの方が質がいいのね。評判いい。うん。」 「はあ。ソレ、なんていう店ですか。」 「そう、さすがに同じ(ピー)じゃまずかろうってんで、 こっちは(ピー)っていう...」 「同じだよ。ピーにしか聞こえねえよ。」 「料金安いから。ぽっきりだから。ホント。」 「いくらよ。」 「まず入って(ピー)円払って...」 「わかんねえよ!それに「まず」ってなんだよ「まず」って。 ぽっきりじゃねえじゃねえか。」 「それはコースで違うから。コースで。」 「なんだよコースって。」 「(ピー)円の(ピー)コースだと(ピー)から(ピー)で (ピー)を(ピー)して、いわゆる(ピー)っていう 「おい!ピーコースしかねえのかよ!それしか聞こえねえよ! 普通AコースとかBコースとかだろうがよ。なんだよPって。」 「いえ、ですから(ピー)コースから」 「聞いてんのかおまえは。」 「...はい?」 「はい?じゃねえよ。なんだお前は。」 「でもね、アリアリなんですから。」 「なにが?」 「な・ん・で・も」 「そういうのはさー、高いんじゃないのー?」 「それが今だけ、なんと、(ピー)円で。」 「またかよ、ああ、もう判ったよ。いいよ。どこだよソレ。」 「ありがとうございます。 じゃ今ちょっと電話で確認してみますから。 一番人気の娘押さえときますから。 これがまた、すんごいことになって... あ、もしもし、(ピー)ですけど。」 「またピーかよ。」 「え、お客さんで。なに。え?どうにかなんないの、それ。 え?なんだよ、怒られちゃうよ、俺。困るなあ。 え?うん。うん。そう?かえって悪くない?それじゃ。 いや、でもぽっきりで話ついちゃってるしさ、こっち。 え、いいの?ほんとに?じゃあ、今回だけ。 うん。オフレコで。はい。じゃ行きますんで。よろしくー。ピッ。」 「何よ。」 「いやねぇ。満員なんですわ。」 「なんだ。そう。じゃっ。」 「いやいやいやいや、せっかちだなアンタ。 『慌てる(ピー)は貰いが少ない』ってね。」 「ソコのピーは合ってるよ。それは言っちゃ駄目。」 「でね、店長と話したらね、 都合つけてくれるって言うんですよ。」 「いや、そんな。無理にいいよ。」 「それがですね。ランクが一つ上のお店なんですけどね、 まあ、これも系列店でして。 普通は(ピー)円ぐらいじゃ全然入れないところなんですけど。」 「...うん。」 「そちらのほうで勘弁してもらえないか、と。 もちろん(ピー)円ぽっきりで。」 「へえ、あ、そうなの。 ところであんた声が高くなくなってるよ。」 「あっ、な、何言ってるんですか。」 「あ、高くなった。」 (後ろで何か吸い込む) 「お、ヘリウム?それヘリウムなの? なんでわざわざ声高くするのよ。」 「やめてくださいよ、なに言ってるんですか。 人聞きの悪い。面白い人だなあ。 じゃ、早く、ね。行きましょう。 ほら。この辺、変なボッタクリとか多いから。」 「お前だよ。」 [もどる]