平成疑問かなづかひ−假名遣標準化計劃
國語問題協議會での發言
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- 國語問題協議會での發言1(11.5.15)
- 國語問題協議會での發言2(11.11.20)「歴史的假名遣は信頼に足るか」
- 開設初期の「平成疑問かなづかひ」
國語問題協議會での發言1(11.5.15)
本日は何でもよいから思ふところを開陳せよとの事でございますので、若輩ではありますが、近頃感じるところを率直に申上げます。二點あります。
第一に「他流試合が必要である」と考へます。
どんな分野でも丁々發止の討論のある會は一番面白いものです。さういふ企畫はなかなか難しいのかもしれませんが、少なくとも仲間内だけで固まってゐると、同じ意見の繰り返しに終始し、いつしか重大な問題を見過してしまふのではないかと危惧いたします。一例を擧げませう。昭和六十年「現代假名遣い」で「歴史的假名遣いの尊重」が謳はれ、我々は均しくこれを歡迎したものでした。ところがこの文言はいつしか「原典の尊重」にすり替はり、却って我々の首を絞めつつあると私は感じてゐます。これこのとほり原典は歴史的假名遣など全く守ってゐない、正統表記とは古典の實態を無視してでっちあげられた「僞の傳統」なのだ、といふ論が最近一段と勢ひを増してゐます。ところがその單なる「正確な引用」を、肝腎の我々が「最近は引用文だけでも歴史的假名遣が復活してきた」と無邪氣に喜んでゐないでせうか。ここで試しに、この文中の「ゆへに」は「ゆゑに」の誤りだから訂正すべしと指摘したらどうなるでせう。さういふ恣意的な改竄は古典に對する冒涜だの、正しい讀解を妨げるだのと集中的な批判を確實に浴びるでせう。近頃は古典の翻刻本ですら底本のままに寫すだけで、凡例では歴史的假名遣の扱ひに全く言及しない、それは問題外であるといふ事になりつつあるやうです。かういった傾向が單に私の取越苦勞なのであればよいのですが、一般にはほとんど注意されてゐないので念のため申し上げた次第です。
第二に「趣味の擬古文であってはならない」と考へます。
我々が正字正假名遣を擁護するのは、それが現代の文章を綴るのにふさはしいと考へるからです。それゆゑ少しでも現實の言語環境にそぐはない部分があれば、本會こそ率先して補整改訂案を示してゆくべきです。さうでないと世の中から取り殘された不十分なシステム、單なる擬古文になってしまひます。この考へ方には反對意見もありませう。まづ、さういふさかしらは良くない、自然の推移に任せるべきだといふ意見があります。しかし假名遣とはそもそも自然言語ではなく、人工的に組み立てた規則なのであって、むしろ不斷の調整が不可缺です。次に、かかる重大問題は研究者に任せるべきだといふ意見があります。もちろん深い學識が必要な作業には違ひありません。しかし研究者の視線は常に實在した事を客觀的に觀察分析する、つまりは原典尊重が出發點でありますから、主觀的に「かくあるべし」と主張する規範とは對蹠的な位置關係にあります。國語國字問題を研究者が支援しないのも當然であり、またそれゆゑに使用者や實務者こそ改良提言を擔當すべきものと考へます。歴史的假名遣の最大の缺陷は、假名遣が不明な語彙が相當數あるといふ點です。これは契冲の過失ではなく、その後の保繕整備を怠った我々の罪であります。今の状態が續けば、やがて御家流の筆跡や定家假名遣の如き地位に零落するでありませう。いや、今では定家假名遣の方がよほど「傳統的」なのだとの評價さへあります。それでも定家假名遣が各種辭典に注記されないのは、それが現代文をも綴り得る、今日的意義を持った假名遣とは看做されてゐないからです。「曾て存在したもの」と「今でも使へるもの」の距離はとても遠いのです。
平成十一年五月十五日
國語問題協議會での發言2(11.11.20)「歴史的假名遣は信頼に足るか」
平成十一年五月十五日に國語問題協議會の席上で私が發言いたしました内容につきまして、自分なりに考へをまとめましたので、ここに御報告申し上げます。非力にして未だ道遠い次第ですが、諸先生方の御導き賜りたく、お願ひ申し上げます。
この内容の大部分は、個人開設のホームページ『平成疑問かなづかひ』で、逐次一般公開してをります。近い將來、編輯改訂がいづれかの組織に引き繼がれ、これまで不統一であった歴史的假名遣が、廣く標準化される事を強く期待してをります。
平成十一年十一月二十日
歴史的假名遣は本當に傳統的ですか?
- 定家假名遣こそ眞に傳統的である。いはゆる契冲の復古假名遣とは、一部の國學者だけが遵ひ、明治も後半にやっと一般に普及しただけではないか。
- 現代假名遣も戰前にさまざまな檢討期間があり、戰後は半世紀以上實施の傳統がある。これを否定しようといふのか。
- 古典で「むめ」「むま」といった表記はよく見るが、なぜ歴史的假名遣ではこれを認めないのか。實態を正しく反映してゐないではないか。
- 古典が歴史的假名遣であるといふのは嘘だ。歴史的假名遣を基準にした校訂とは、古典の改竄であって、過去の事實を隱蔽する暴擧だ。
- 歴史的假名遣が最も完備したと稱される延喜天暦年間には、まだヤ行の「江」が存在した。「エ」と「江」を區別しないのでは、僞物ではないのか。
- 古いからよいのなら、上代特殊假名遣まで遡るべきではないか。萬葉集を讀む時に、はるか後代の歴史的假名遣を持出すのは淺薄滑稽である。
- そもそも假名遣とは、時代と共に變化しつづけるものである。なぜ平安時代だけが「正し」くて、他の時代は「正し」くないと斷言できるのか。
- 假名とは表音文字ではないのか。現代語を表記する際に、平安時代の音を基準にしてもうまく行く筈がない。それは倒錯にすぎない。
それでも歴史的假名遣は信頼できますか?
- 「くじら」「げじげじ」など、古用例を確定できず、假名遣不明の言葉がある。他ならぬ『假名遣ちかみち』にもさう明記してある。システムとして大缺陷であり、信頼できない。
- 辭書を引き較べると、假名遣には少なからぬ相違がある。どの辭書を信用してよいか、どこにも指針が無い。
- 地名や人名の假名遣は辭書を見てもしばしば出てない。調べやうもない假名遣を守れと言はれとも困る。
- 戰前の「舊假名」と現在の「正假名」はだいぶ違ふさうだが、何處が違ふのか。そんなにくるくる變るのでは安心して從へない。
- 「てんわう」「てんのう」のどちらか、「がくかう」「がっかう」のどちらかわからない。「東西」は「とうさい」なのか。
- 人によって「ゃゅょっ」小書き假名や、字音假名遣の扱ひがまちまちである。辭書を作ったり、學籍番號を振る時はどうすればよいのか。
- 貴方は『大言海』をすらすらと引けるのか。
- 百貨店「そがふ」などと書いても、誰も讀めない。「ドラゑもん」に改めよとは、笑死の限りだ。
- 固有名詞など、當事者の名乘りを無視してもよいのか。「シクラメンのかをり」などといふ曲は無い。表記改竄は著作權を侵害し、冒涜するものだ。
あなたは本當に歴史的假名遣を書けるのですか?
候補の中から正解を選んでみて下さい。すぐにわかる簡單さうなものもありますが、いくつか辭書を較べてみると、思はぬ相違を發見する事があります。どれが正しい假名遣か、私には未だ正解のわからぬものもあり、大方の御教示を仰ぐ次第です。(例語略)
(追記)
十一月十三日の國語問題講演會で、宇野精一先生の御講演が印象に殘りました。漢字はあらかた解決したから、次の目標は假名遣および人名漢字制限である、といふ指摘は特に重要であると感じました。しかしながら、假名遣問題は漢字に比べて著しく不利な状況にあると思ひます。漢字には『説文解字』『康煕字典』『諸橋大漢和』などの規範字書が普及してゐます。またアジア各國の漢字には少なからぬ字體差があり、相互比較の際には嫌でも康煕字典に立ち返らねばなりません。ところが假名遣は單に日本一國の問題ですから他國の假名遣と比較する機會は無く、『疑問假名遣』など基本的な規範書は入手すら難しい状況です。歴史的假名遣の最大の缺陷は、假名遣の決らぬ言葉が少なからず存在する事です。特に俗語や新語、また人名地名は辭書で確認するのも難しい状況です。日常あらゆる場面で假名遣を誤りなく運用せよなどと主張するつもりはありませんが、基準のわからぬルールなど、守りやうもありません。歴史的假名遣は理論的に勝れてゐる筈でしたが、いつの間にかほころびが多くなってゐます。今、私が國語問題協議會に最優先で望むのは、假名遣に迷ふ言葉につき、判斷の指針を示してほしいといふ事であります。これは『同朋各位に訴へる』以前の作業です。宜しく御取りはからひの程、お願ひ申し上げます。
開設初期の平成疑問かなづかひ
假名遣標準化計劃 平成11年11月改版
御閲覽たまはり有難うございます。當ページでは、歴史的假名遣について卑見を示しました。何分、專門外の事とて稚拙な内容でありますが、事情をお汲取りの上、御批判いただければ幸甚に存じます。
内容
- 歴史的假名遣に對する基本的考へ方
- 歴史的假名遣の定義についての疑問
- 歴史的假名遣の運用についての疑問
- 歴史的假名遣に迷った具體的な語彙
凡例
- 本ページを名付けて『平成疑問かなづかひ(假名遣標準化計劃)』とする。これはもちろん『疑問假名遣』(大正元年・四年)にあやかったものである。内容として、到底比肩し得るものではないが、歴史的假名遣の普及發展への期待を込めたつもりである。
- 本ページでは、歴史的假名遣を單に「假名遣」と稱する場合がある。また文脈により、戰前のものを「舊假名遣」、理想的な存在を「正假名遣」などと呼んで區別する事もある。
歴史的假名遣に對する基本的考へ方
- 本ページの開設目的は、假名遣を精確にする事にある。特に明治から戰前昭和まで社會的に實施されたシステムを最大限尊重したいと考へる。しかし「用ひる→用ゐる」の如く、システムに照して改めるべき語彙は大いに改めたい。すなはち個々の語彙について戰前の習慣に無條件に從ふ事はない。この意味で、「歴史的假名遣」と「舊假名遣」の意味は異なると考へる。
- 歴史的假名遣とは、過去の文獻の探究にもとづいた、現代のための表記規範である。古文獻の實態をつぶさに觀察すると、必ずしも假名遣の示すところと合致するわけではない。すなはち過去の實態そのものではなく、過去から現在までの流れをうまく糾合させたシステムである。傳統そのものではなく、傳統をよく整理して得られたものである。殘念な事に、現代假名遣の普及に伴って、システムの更新は停止したままである。常に最新の環境に適合できるやう、假名遣に迷ふ言葉を搜し、いつまでも信頼性の高いシステムであるやうに願ふものである。
- 歴史的假名遣の今日的な存在意義は、「巧みな概論」にあると考へる。平安時代以來の國語の變遷を、方言も含めて俯瞰できる事。つまりどの時代の文であれ、大きな違和感なく讀め、現代口語文も含めて統一的な表記が可能となる。もし最初から國語學を學び、語音の變遷を辿るとすれば、かなりの難物であらう。專門の研究にたづさはるならともかく、通常の讀解には大きな助けであると信じる。
- 個人的な願望としては歴史的假名遣が社會的に再び普及する事を望む。しかし戰後五十年以上にわたり、現代假名遣が普及し、また安定して運用されてゐる事實は事實として尊重し、殊更に對決を迫るものではない。状況によっては一部のみ現代假名遣を支持するが如き考へ方もあってよからう。しかしながら「便宜」があるならば、必ずその前に「本物」を確立する必要があると考へる。
- 本ページでは、假名遣の部分改訂や、現代假名遣との優劣などは一切論じない。また、文化觀や歴史觀と結びつけた話も論じない。純粹に技術的な要件のみを扱ひたい。
歴史的假名遣の定義についての疑問
假名遣とは何か。武部良明著『國語表記事典』(昭和62年、角川書店)によると、
假名によって語を表記するときのきまりを、「假名遣」といふ。從來は、同音の假名を語によって使ひ分けることが假名遣だと考へられてゐた。これを、すべての假名の使ひ分けにまで廣げたのが、『現代假名遣い』をまとめた際の考へ方である。前者を狹義の假名遣、後者を廣義の假名遣とする。(原文略字現假名、また『現代假名遣い』とは昭和六十一年のものを指す)
とある。
また築島裕著『歴史的假名遣い』(中公新書、昭和61年)の説明を借用すると、「假名遣」には「規範」の意味と「實態」の意味がある。武部良明氏の「假名によって語を表記するときのきまり」といふ定義は規範であらう。すなはち假名遣を「正しく」守ってゐるか、「誤った」用法であるか、二つのうちのどちらかで、他のケースはあり得ない。ところが「實態」とは過去から現在までの文獻で、假名がどのやうに用ゐられたかといふ客觀的な觀察結果であり、「正しい」も「誤り」もなく、ただその「状態」があるだけである。「江戸時代の假名遣は社會的に統一がなかった」とか「奈良時代には、後世に見られないやうな、特殊な假名遣があった(上代特殊假名遣)」といふのは、もちろん後者の意味である。
これらをまとめると次のやうにならう。
- 規範
- 同音の假名を語によって使ひ分けるきまり(昭和61年以前)
- 假名によって語を表記するときのきまり(昭和61年以降)
- 實態
- 過去から現在までの文獻で、用ゐられた假名の客觀的觀察結果
ここではとりあへず<實態>については論じない。<規範>について、(1) は (2) に比べて假名遣の起源に忠實であるのだが、實質的な違ひはほとんど無く、ことさらに分けて考へる必要はないやうに見える。しかし私見では、必ず (1) の定義に從ふべきである。さう考へたのは、ある場所で歴史的假名遣について意見交換をした時に、(2) の定義では歴史的假名遣の實態にそぐはないと感じたからである。
意見交換の中で歴史的假名遣について、二つ大きな誤解が浮び上がってきた。
- 曰く、歴史的假名遣は平安時代の發音に從った表記法である。
- 曰く、古文には「むめ(梅)」「むま(馬)」などとあるが、これも歴史的假名遣だ。
假名遣とは「同音の假名を語によって使ひ分けるきまり」であり、「同音」とはもちろん現代語音で同音である事を示す。歴史的假名遣は平安時代中期以前に範を取るとはいへ、平安時代の發音に從ってゐるわけではない。假名文字は表音文字であり、言葉を書き記す時は先づ現代語音を描寫しようとする。しかし同じ音に對し複數の假名が該當する場合があるので、これを語の起源に從って使ひ分ける。平安時代の表記法を完全再現してゐるわけではない。この考へ方を更に廣げれば、從來から歴史的假名遣不明とされてきた語、例へば江戸時代以降に成立した語も、表記を現代音に從って暫定確定させる事ができよう。
また「同音の假名」とは例へば「い」と「ゐ」、「あう」と「おう」など特定の組に限られ、通常「う」と「む」は區別すべき組にはなってゐない。從って「むめ(梅)」は古典に豐富な用例があるとはいへ、嚴として歴史的假名遣には含まれないのである。
もし「假名によって語を表記するときのきまり」の定義に從ふとすれば、これらの説明が全くできず、歴史的假名遣とは時計の針を昔に戻す倒錯した表記法とされてしまふだらう。
「むめ(梅)」が何故歴史的假名遣に含まれないか、些か興味の湧くところである。同樣の例は「むなぎ(鰻)」「むもれぎ(埋木)」「むまご(孫)」など、幾つかある。これだけ揃へば、假名遣として區別すべき一項目としても決してをかしくはない。今のところ「う」と「む」は如何なる状況でも「同音の假名」とは看做されないが、漢字音では「あん(安)」と「あむ(庵)」を區別する場合があるのだから、決して資格なしとはできない。もちろん「うめ」と「むめ」が異なる言葉であれば、無條件で假名遣に加はっただらう。しかしながら「思ふ」に對して「おもう」といふ別の言葉があるわけでもないのに、必ず「おもふ」である。結局、單なる表記の搖れであると考へてよからうが、なほ檢討を要すると思はれる。そして何より、「同音の假名」とはどこからどこまでの範圍なのか、かっちりと定義しておくべきであらう。
なほ、以下の文章は假名遣の起源について、最も簡潔にまとめたものである。
大野晉著『假名遣の起源について』(昭和25年『國語と國文學27-11』所收)假名遣の唱へられた國語史的條件從來の諸研究によって明らかにされた所によれば、假名遣が唱へられるに至ったのは、次の如き歴史的條件にもとづいてゐる。
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奈良時代以降平安時代のはじめには、イヰ、エヱ、オヲは別の音韻として言ひ分け聞き分けられてをり、從って書き分けられてゐた。
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然るに、古經卷の傍訓を見ると西暦一〇〇〇年頃からこの區別の亂れてゐるものがある。これは、その頃から、それぞれの二つの音韻が混同されるに至ったからであらう。
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然し、音韻の混同は必ずしも直ちに假名遣の問題を惹き起すものではない。當時は變體假名が多數行はれてゐたのであるから、イとヰ、エとヱ、オとヲは、同一の音韻を書き表はす文字と考へられるやうになり、特にこれを書き分けなければならないといふ意識が明らかには存在しないこと約二百年に及んだ。
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然るに院政時代以降、手習のはじめに、弘法大師の作と信じられた伊呂波歌がひろく用ゐられ、そこに含まれてゐる四十七字が書き分けるべき基本の假名と意識されるに至った。(五)ここに於て語と假名との關係を密接にして視覺的印象を安定せしめるために、この假名を如何に用ゐ分けるかを問題とする素地が成り立ったのである。
(原文略字現假名)
舊稿【歴史的假名遣の定義についての疑問】
假名遣とは何か。辭典などで「假名遣」をあたると、二種類の説明がある。
- 假名で語を表記する時、二種類以上の方法が可能な場合の書き分け規範
- 過去から現在までの文獻で、假名がどのやうに用ゐられたかといふ實態の觀察結果
築島裕著『歴史的假名遣い』(中公新書、昭和61年)の説明を借用すると、前者の規範としての意味ならば、假名遣を「正しく」守ってゐるか、「誤った」用法であるか、二つのうちのどちらかで、他のケースはあり得ない。ところが後者になると「正しい」も「誤り」もなく、ただその「状態」があるだけである。「江戸時代の假名遣は社會的に統一がなかった」とか「奈良時代には、後世に見られないやうな、特殊な假名遣があった」といふのは、もちろん後者の意味である。
橋本進吉博士は「表音的假名遣は假名遣にあらず」と斷言した。語を基準とし語を表記する規則こそ本來の「假名遣」、音を表記の基準としたものは單なる「假名書き」に過ぎないといふのである。福田恆存氏もこの考へ方を全面的に支持してゐる。これは規範と實態といふ分類とは微妙に異なるが、かなり近いであらう。
そこで極めて紛らはしくなるのが
- 「假名遣は時代によって次第に移り變る」といふ表現である。先ほどの分類でゆけば後者の意味である事は間違ひないのだが、
- 「だから現代は現代の假名遣に移り變って當然」
- 「それに古典をよく讀むと、歴史的假名遣など全く守ってゐない」
といふくだりになると、これは二種類の意味を故意に混同させて、歴史的假名遣の規範性を巧妙に否定したものと見える。歴史的假名遣を愛好する者、中でも自ら日常の文章を歴史的假名遣で綴らうとする者は、當然ながら規範として假名遣を學び、かつ實踐してゐる事になる。つまり過去の實態はどうであれ、現代の文章を綴る上で信頼できるシステムと看做してゐるわけである。ところがその場合、往々にして古人もみな均しく同じ假名遣を守ってきたと思ひ込んでしまひ、話がややこしくなる。規範としての歴史的假名遣が誕生し、また普及したのは、日本の長い歴史ではごく近年の出來事にすぎない。確かに歴史的假名遣は昔の用法を可能な限り忠實に繼承しようとしたものだが、昔そのままではなく、昔を現代にうまく引き繼いだ存在である。
それでは歴史的假名遣とは何か。一般的な定義は、「平安時代中期以前の文獻用例に基づき、いろは四十七文字で表記する假名遣規範」とでもならうか。發音は同じ「アイ」でも、「會ひ」なら「あひ」「藍」なら「あゐ」「愛」は「あい」などと書き分ける規則である。私見では、この定義はだいぶ曖昧で、それゆゑに無用の誤解を招いてしまったかに思ふのだが、それはまた後に述べよう。とにかく一般には、徹底した歸納的觀察に基き、完全に平安時代の實態に沿った規範であると解釋されてゐる。これに對して現代假名遣は「概ね現代語音(の觀察結果)に基く」となってゐるから、どれも均しく「あい」となる。
平安時代の古典に「あひ」「あゐ」などとあっても、それは歴史的假名遣を守った結果ではない。當時はまさにさういふ發音だったのであり、現代の我々が「あ」と「い」を決して混同しないのと同じ事である。それが後世になるといろいろの音が合流してしまひ、「あひ」だか「あゐ」だかわからなくなってくる。そこで「元は違ふ言葉なのだから、同じ發音でも昔のやうに書き分けよう」と考へるのが「假名遣」の發生なのである。さういふ意識が芽生へる前は、假名遣そのものが無いのだから、「古典をよく讀むと、歴史的假名遣など全く守ってゐない」といふ論は、當然といへば當然なのである。また時代や地域によって發音は大いに移り變るであらうが、假名遣といふ規範は、改訂されぬ限り動かない。このあたりは、「假名遣」の意味がどちらであるか、よくよく注意しないと話が全くわからなくなる。
さて、歴史的假名遣に對する批判は大きく三種類あると思ふ。
- 實施にあたって記憶が困難である
- 定義そのものにまつはる矛盾
- 傳統の僞造である
1.の、困難であるかどうかは多分に感覺的な問題である。確かに歴史的假名遣は複雜な一面もあるが、それを補ふだけの合理性があるのなら、複雜大いに結構といふ事である。漢字や英單語を憶えるのが難しいからといって、綴り方を勝手に作っても他人には通じまい。歴史的假名遣の利點として、しばしば「語源がよく理解できる」と強調される。確かにさうなのではあるが、逆に「語源がわかる、といふ事は語源を知らないと運用できない假名遣」との反論もある。この指摘は假名遣決定手順の不備を鋭く衝いてをり、傾聽に價する。
3.は、最近よくお目にかかる。明治政府の權威づけのため、ありもしない歴史をでっちあげた、などと論じる類である。當ページでは文化觀や歴史觀にかかはる話は避け、技術的な方面だけ扱ふので、これはまた別の機會としよう。
ここで重要視するのは (2)
である。先に歴史的假名遣を「平安時代中期以前の文獻用例に基づき、いろは四十七文字で表記する假名遣規範」とした。ではそれが本當に規範として成立するのか?といふ批判である。
-
〔實は延喜天暦の頃はいろは四十七音ではなかった〕
平安時代中期の中でも、延喜天暦年間は歴史的假名遣の規準となる時代とされる。ところが近年の研究によると、この時代はア行の「え」とヤ行の「江」に區別があり、いろは四十七文字で表現する事そのものが不正確といふ事になる。
-
〔理想となる「完成した」時代は實は存在しない〕
しかも例へば、ア行の「え」とヤ行の「江」に區別のあった時代、すでに「お」と「を」の統合は始まってゐるらしい。といふ事は、歴史的假名遣がすべて實現してゐる「完成した」時代はどこにも無い事になる。「古典をよく讀むと、歴史的假名遣など全く守ってゐない」といふ批判は、實態としては正しいと言はざるを得ない。
-
〔この定義では、決定できぬ語彙が存在する〕
さらに古典に用例の無い言葉の處置をどうするか、といふ難問が殘る。もし全面的に過去の用例に依據するなら、用例が無い、もしくは二種類の表記が同時に存在する場合、また後世に誕生したため平安時代の用例など求め得ぬものは、假名遣を決定できない事になる。それでは規範としての役目を果たせないではないか。
-
〔古典を改竄する事になる〕
假にシステムとして成立するとしても、これを古典に適用しようとすると、違背部分を訂正しなければならない。事實そのやうな處置をしたものもあるが、嚴密にいへば古典の改竄にあたるのではないか。
いづれの批判も、なるほど説得力はあらう。ただ、歴史的假名遣を實踐してゐる人にとって、どうも素朴な感覺を滿たさぬ、空虚な批判に感じられるのも事實である。假名遣について、これまで交はされた多くの議論のほとんどが、どこまでも平行線をたどってゐる。それは何故なのか。ひょっとすると、從來からある歴史的假名遣の定義そのものが何か間違ってゐるのではないだらうか。
私見であるが、「歴史的假名遣」の定義を
- 現代語音に基き、
- 主として平安中期以前の用例を參考に、
- 出自の異なる音の區別を最大限留めようとする假名遣
- 現代文もしくは現代的存在としての古典に適用される
と、改めてみようと思ふ。從來は、何を措いても平安時代の用例を第一に重視する姿勢であった。これを
- 先づ現代語音があって、
- これに區別を加へようとする假名の組み合せがあり、
- 然るのちに平安時代などの用例をあて嵌めてゆく、
といふ順番で考へてみたい。
今までの定義では、徹底した歸納的觀察に基き、完全に平安時代の實態に沿った規範であるといふ面が強調され過ぎてしまった。それは契冲や宣長の頃の理想であったかもしれないが、研究が進むにつれ、平安時代の用法だけでは現代語を綴りきれぬ事はあまりに明白になってゐる。單なる學究と、社會的な規範は次第に兩立しなくなってしまった。では明治から昭和にかけて、社會で廣く實施された歴史的假名遣とは、矛盾を抱へた缺陷品だったのか。さうではあるまい。近代的な國語を支へる規範として、十分に練りあげられてきた。ただし契冲や宣長の時代と較べれば、おのづから性格の異なったものになったのではないか。古用例も尊重はするが、先づ現代語音を基礎にし始めたのではないか。
事態はかういふ順番で進んできたのではないか。
- 發音が合流し、假名の用法が混亂
- 契冲らが古例を探求し、正しい綴りを確定
- (當時の)現代音との對應法則が固まる
- 現代音から見て區別すべき組み合せが確定
- 假名遣の問題が發生する語彙が確定
- 規範が成立
さう考へるに至った理由を擧げてみよう。
- (理由1)我々の素朴な感覺として、假名文字は「漢字と違って、喋るとほりに書ける」といふ認識がある。ところが時々「喋るとほりに」は書けない部分があるので、これを規範化したのが假名遣である。とすれば、假名遣に迷はない部分は既に現代語音に從ってゐるとみて間違ひなからう。
- (理由2)『和字正濫鈔』以來、ほとんどの假名遣教科書は「○と○と紛るゝもの」といった項目を立てるばかりである。○と○とはもと異なる書き方であったが、今は發音が合流したから紛れてしまふ、といふわけである。つまり假名遣として迷ふ部分もまた、現代語音に從ってゐる。ちなみに戰前の假名遣教科書が、大きな違和感なく今でも實用になるといふ事は、明治以來の言語環境は、現代假名遣の普及にもかかはらず、さう大きく變ってゐない事を意味するのではないか。
- (理由3)「主として現代語音に基く」現代假名遣と、「古用例に基く」歴史的假名遣は、じつに綺麗な對應關係がある。もし本當に平安時代の用例に忠實であるのならば、そんなにうまく整理できるのだらうか?日本語の音變化はかなり規則的だが、例外が一つも無いとは信じられない。歴史的假名遣と現代假名遣は、實は極めて近い存在ではないか。近いがゆゑに却って近親憎惡的な反撥を繰り返してきたのではないか。
- (理由4)つまり、例外が無いのではなくて、現代語音と結び付きにくいもの、遡りにくいものは、自動的に「假名遣」の範圍からぬけてしまふのではないか。むま(馬)、むめ(梅)や、いを(魚)スヰン(春)なども古典籍でいくらも用例はあるが、通常は假名遣に含めない。くゑる(蹴)、まをす(申)あたりは境界線上であらうか。ゑふ(醉)は、終止形では何といふ事もないが、「あさきゆめみしゑひもせす」を讀む時には落ちつきの惡さを感じる。
- (理由5)歴史的假名遣を自ら實踐してゐる人の多くが、頭の中で現代假名遣、もしくはそれに非常に近いものからの逆置き換へをやってゐないだらうか。漢字に隱れる部分は假名遣を問題にしなくてもよいとよく言はれるが、それでは漢字の讀み方をどうやって憶えただらうか。戰後教育なら否應なく現代假名遣で憶えたのではなからうか。歴史的假名遣を意識するといふ事は、現代假名遣を出發點にして、もう少し細かい區別を加へる、といふ状況に事實上なってゐるのではないか。
- (理由6)一般に假名遣が適用されるのは、和語(國語假名遣)と漢字音(字音假名遣)の二種類だけである。しかし時に、近世以降の外來語でも「ラヂオ」「ウヰスキー」など假名遣に似た文字づかひをする場合がある。その方が外國語の原音に近いといふ説明もあるが、「レィディオ」とはせず、表音の效率を追及したものとは思へない。先づ日本語現代音としての把握があり、然る後に原音を參考に「ヂ、ジ」、「ヰ、イ」の區別を加へたものに見える。さう考へれば、平安時代の用例など絶對にないにもかかはらず、歴史的假名遣と同じ發想に立ったものであると理解できよう。この區別とは、五十音圖との整合性をはかったものではないか。ギョウ
と ゲウ などの區別は五十音圖に慣れた日本人の理解の範圍を越えるためか、ゲウザ(餃子) セウチウ(燒酎)とはなかなか書かない。
- (理由7)外來語と同樣に、方言の描寫も假名遣の適用が問題になる。例へば京都方言の「あんぢょう(味良う)」や「ずつない(術ない)」などは十分に語源を意識してゐる。これらの語彙に古用例があるかどうかはわからぬが、用例の有無はあまり意識されてゐないやうに見える。先づ方言音があり、それを假名文字で表す際に語源に從って區別を加へたものではなからうか。
また「現代的存在としての古典」といふ考へ方についても説明の必要があらう。假名遣といふ規範を過去の文章に適用する事の是非である。
假名遣といふ規範はもちろん正しく遵守される事を期待してまとめたものであるが、しかし現實の文章には數多くの誤りがある。まして多くの古典は、假名遣といふ考へ方が成立する前の時代のものである。この場合に誤りを誤りとして訂正してよいものか。
原典尊重といふ考へ方がある。「假名遣」の定義で示した
- 過去から現在までの文獻で、假名がどのやうに用ゐられたかといふ實態の觀察結果を重視して、原文の一字一句たりとも改めてはならない、それは過去の改竄に當ると考へるのである。研究者の態度としてはごく自然な態度であり、特に非を唱へるところは無いだらう。そして、この考へ方によれば歴史的假名遣とは倒錯的な規則といふ事になる。最近の古典覆刻本では「文字づかひは原典どほり」が主流となり、歴史的假名遣には全く言及しないものが増えてきた。それはそれで一つの見識であらうかとは思ふ。
ところが何と、ここに現代假名遣で振り假名をつけるものが多いのである。そのため「醉ふ」は「よふ」、「幸ひ」は「さいわひ」といふ状態となる。「さいわ」が注釋、「ひ」が原典との考へ方であらうが、結果として奇怪な假名遣が生じてしまった。原典に句讀點や鍵括弧や段落替へなどの修飾を施すならまだしも、これは到底容認できるものではない。
何故このやうになったのか。原典尊重とは、古典が成立した時代の状況を尊重するといふ事である。しかるに振り假名などをつけるのは現代人が讀むための便宜であって、時代の尊重ではない。二種類の異なる原則が衝突してゐるのである。結局、古典とは確かに昔の文章かもしれないが、現代人の我々が讀む限り、それは現代の文章だと思ふ。覆刻本や注解本の著者は「自分はかう讀んだ」といふ結果を本にまとめたものであり、自己責任で表記の統一をはかって差し支へない、いやさうすべきだと考へる。そこに參考として原典も添へればより親切であらう。「古典」と「古文書」とは全く異なる存在である。
「自分はかう讀んだ」といふ意志を表面に出さず、原典尊重といふ一種の正論に寄掛かったために、「さいわひ」などといった迷假名遣が誕生したのである。これに比べれば、古典といへどすべて現代假名遣で通した方が、よほど筋が通ってゐるといへよう。
今まで、歴假名の定義は何故再檢討されなかったのか。古用例の客觀的觀察といふ從來の定義は、國語學の立場上、取扱ひに都合がよいからではないか。現代の言語學や國語學では、過去や現在の實態觀察には大いに興味を示すが、規範を自ら構築し提案する事は抛棄して久しい。契冲や宣長の業績についても、過去の實態探究の手法を確立した部分は大いに賞揚するが、歴史的假名遣といふ規範を構築した事はあまり興味を示さない。まして「これからの」歴史的假名遣について、定義を再檢討するといった發想は、學究的立場からは全く出てこない。
歴史的假名遣とは、國語の變遷についての研究が基礎になるとはいへ、最終的には現代社會に實施すべき規範である。研究の成果は成果として、それをどう表記に反映させるかは、實務家の仕事である。筆者も歴史的假名遣の一使用者して、規範の改善について發言する資格はあると思ふ。大正年間の『疑問假名遣』が學究面での集大成であるとすれば、この『平成疑問かなづかひ』ページは實務面を重視した標準化、精確化を求めてゆきたいと願ってゐる。
歴史的假名遣の運用についての疑問
歴史的假名遣が公的に運用されなくなって、五十年以上が經った。この間、國語學の分析や、言語環境の變化は著しく、基本的な運用規則が不明な部分やふさはしくない部分が増えてゐる。從來の假名遣教科書では「自明の理」で濟んだことも、今後は微に入り細を穿って解説すべきであらう。たとへば日本語を學んで日が淺い外國人にもよく理解できるやうでなければいけない。あるいは英文の解説も用意すべき時代ではなからうか。
區別の範圍
假名遣の定義を「同音の假名を語によって使ひ分けるきまり」とした場合、「同音の假名」とは何か、どこまで區別を加へるべきか、確定せねばならない。さもなければ「むめ(梅)」「むま(馬)」などの古用例もすべて「歴史的假名遣」と看做されてしまふからである。
- 四ッ假名 「ジズ」と「ヂヅ」の區別。
- ワ行 「イエオ」と「ヰヱヲ」の區別。
- 合拗音
「カガ」と「クヮグヮ」の區別。これは漢字音にしか現れない。最近では「キギ」と「クヰグヰ」、「ケゲ」と「クヱグヱ」の區別も漢字音として認める傾向にある。「蹴る」の古形「くゑる」もこれに該當するのかもしれない。
- 長音
- 「アウ」と「オウ」
- 「イュウ」と「イウ」
- 「イョウ」と「エウ」
- ハ行轉呼音語頭以外の「ハヒフヘホ」が「ワイウエオ」に合流。但し漢字音では「-フ」の形のみ。「アウ」を「アオ」と讀む事あり、「あふぐ」「たふす」など。「アウ」を「オー」と讀む事あり、「はふる」「-たふ(任)」など。「アオ」を「オー」と讀む事あり、「まをす」「あをめ(青梅)」など。「エオ」を「イョウ」と讀む事あり、「めをと」など。「ア」を「ワ」と讀む事あり、「鳥取縣はあひ(羽合)町」など。「ヱ」を「ヨ」と讀む事あり、「ゑひ(醉)」など。
- 唇内韻尾 漢字音に限り「-ン」と「-ム」を區別する。但し「ウム」といふ音は「吽」を除き、日本漢字音には存在しないやうである。和語でも「〜せん」に「〜せむとす(意志)」「〜せぬ(否定)」の兩義あり、意識的に區別する事がある。
區別を加へるべきかどうか問題になるのは、「クヰ、グヰ、クヱ、グヱ」および「-ム」の二種類であらう。戰前の舊假名遣ではごく特殊なものを除き、區別してゐない。「蹴る」の古形は「くゑる」だが、あまり使はれない。「ほんと?」「そ、さうでしょ」「イチロー」なども表記に迷ふところである。「同音の假名を語によって使ひ分けるきまり」の定義であるならば、「同音の假名」の問題が發生しないのだから、單純にそのとほり書いてゐればよい事になる。この場合は、結果として現代假名遣と似た原理に從ふわけである。また實際に「オモフ」と發音する言葉があった場合、どう表記するかが問題となる。現代假名遣でも「彼は」と「枯れ葉」の區別のつけやうが無いのだが、特に問題視されてはゐない。
索引の問題
歴史的假名遣で大きな問題になるのが、言葉のならべ方である。これは技術的といふより、假名遣の根本にかかはる問題である。「語源がよくわかる」事を重視すればするほど「あらかじめ語源もしくは正しい綴りを知ってゐないと檢索できない」場面が増えるからである。もちろん「概ね現代語音に基く」とされる現代假名遣とて例外ではなく、「こんちちは」だの「はなぢ」だの、辭書を引く上での注意點はいろいろある。英單語はもっと不規則な綴りに滿ち滿ちてゐる。ただし英單語の場合、綴りが漢字の蔭に隱れる事はないため、嫌でも常日頃から綴りを意識せざるを得ないだらう。
近年『大言海』が現代假名遣配列に組み替へられて出版された。これにより檢索が便利になったといふ聲こそおこれ、舊版の方が使ひやすかったとの有力な意見は無い。辭書ならば「空見出し」といふ便宜手段もあらうが、學籍番號ともなると重複は許されない。辭書を利用する場合、漢字だけわかってゐる時と、假名の綴りだけはわかってゐる時と、發音だけわかってゐる時と、三通りあるだらう。漢字なら漢和字典の出番であらうし、假名の綴りが明確なら大言海でも難なく利用できるだらう。問題は發音だけの場合である。英單語なら發音と英字の綴りが鞏固に結びついてゐるが、日本語はどうしても漢字に直接結びついてしまひ、假名遣まで意識が及ばないのではないか。
戰前の辭書では字音假名遣のみ現代假名遣に近い状態でならべ、國語假名遣のみ守ったものが普及してゐる。これは便宜的措置として良いところに落ちついたものと思へる。語彙によっては「落度」のやうに和語と漢語の境界線上にある場合があり、その取扱ひは明確にすべきであらう。
近年、文書の電子化が進むにつれ、キーワードの抽出とデータベースの構築は重要な鍵となってゐる。「かなづかひ」「假名遣」「假名遣ひ」「仮名遣」「仮名遣ひ」などに分散すると、檢索の際に壓倒的に不利益を蒙る。歴史的假名遣をどう調和させるか指針を立てないと、たとへ歴史的假名遣についての情報を得たい人がゐたとしても、データの存在そのものが全く知られずに終ってしまふだらう。その混亂ぶりは、たとへば吉田東吾編『日本地名大辭書』の索引をながめれば容易に理解できる。「あう」「あふ」「おう」などが時に同じ見出し、時に違ふ見出しとなり、索引の機能を大いに殺いでしまってゐるのである。
歴史的假名遣と現代假名遣との對應關係を細大洩らさず記入したデータだけでもあれば、檢索問題は機械的に解決されぐっと樂になる。そのためにはやはり、歴史的假名遣を嚴密に定義しておく必要がある。
字種
歴史的假名遣に從ふ時、假名文字の種類はどこまでか、意見は一致してゐない。
ほぼ確定的な部分
- いろは四十七文字が基本的な假名文字である。
- これに「ん」が加はる。
- 敕語など特別の場合を除き、濁音半濁音が加はる。
- 片假名の長音符號「ー」は、使ふべきでないといふ意見もある。しかし、前述のとほり片假名が發音記號に近い存在だとすれば「ー」の使用も容認してよいのではないか。
- ヤ行の「江」は使はない。上代特殊假名遣も再現しない。
意見が未だ一致してゐない部分
- 一般に「ゃゅょっ」などの小書き假名は使はないとされる。私見では使ってもよいと考へる。その方が語の識別性が高まるからである。また「ゃ」などを機械的に「や」に直すのは簡單だが、その逆は容易ではないからである。もし小書き假名を認めるなら、漢字音の「クヰ」や「クヱ」も拗音の一種であるから、ヰヱの小書き假名も用意した方がよいのだらう。但し「蹴る」の古形「くゑる」も拗音かどうかは、淺學にして未詳である。
- 「ヴ」「ヵ」「ヶ」などの特殊な假名の取扱ひについても不規則な面が多い。そもそも「ヶ」は假名文字に含めてよいのであらうか。
- 平假名と片假名は同じ性格の文字であらうか。現在、一般には平假名を用ゐ、片假名は擬音語や外來語に使はれる。また「ヴ」や長音符號「ー」はほぼ片假名專用である。つまり、片假名はより發音記號に近い存在として扱はれてゐるのではなからうか。
範圍
歴史的假名遣の確實な適用範圍は次のとほりである。
- 和語、呉音、漢音、唐音(但し明らかな用例は頭チウのみ)これ以外に、例へば方言や、また近世以降の外來語もまた假名遣に類した表記の區別を見掛ける。しかしこれらが假名遣に該當するかどうか明確ではなく、もしさうでない場合、何か代るべき規範があるかどうかもわからない。
また和語(國語假名遣)と漢字音(字音假名遣)の境界線はそれぞれ概ね明瞭であるが、中には所屬の明確でない語もある。所屬が明確でないといふ事は、當然ながら語の由來が不明でもあり、假名遣の決定が困難である。またそもそも假名遣を適用してよいかどうか疑問である。字音假名遣だけは現代假名遣に從はうとしても、扱ひに困る場合がある。そんな語の例を擧げてみよう。
- 和語由來 「かひ(甲斐國)」「フヂモリ(藤森)大統領」
- 漢語由來 「ぐゎんぢゃう(頑丈)」「をちど(落度)」
- 近世外來語由來「じゅばん(襦袢)」「じょうろ(如雨露)」
- 近世漢字音由來「げうざ(餃子)」「しうまい(燒賣)」
- 由來不明 「のうぜんかづら(凌霄花)」「めんえう(面妖)」
決定方法
歴史的假名遣の決定にあたり、古文獻の探求が最も重視される。典型的には、平安時代延喜天暦年間を中心とした文獻における用法に從ふ事となってゐる。しかしこれだけで日本語のあらゆる語彙を決定するわけにはゆかず、さまざまな補助手段を驅使してゐる。これら假名遣の決定に至るまでの手順も是非、標準化すべきである。また、どうしても最終決定に至らぬ場合の取扱ひについても、指針を立てるべきである。
典型的な用例が無い場合は、以下の優先順位で決定してゐる。
- 他の時代の用例がある。
- 傍證がある。
- 語源の考證による。字音の場合は、韻書に基づき同音の漢字から推定する。
- ごく近代のものは、用例の多い方に就かざるを得ない場合もある。
ここで問題が生ずるのは、次のやうな状況である。
- 用例や傍證が無いか、一つに定まらぬもの。「鯨」など。
- 江戸時代中期以降の語。「いぢける」など。『假名遣ちかみち』の「あとがき」で、故山田忠雄教授は「江戸期中葉以降に興つた語は、…(中略)…畢竟、用例の多きに就くか、獨自の語原説によつて解決するかの方法を取らざるを得ない」としてゐる。
- 語源の考證に難があるもの。『假名遣ちかみち』では「右のやうな次第で、上代語に於て傍例無き場合は專ら語原によつて決定せざるを得ないが、語原説は間ま恣意に出ることを免れぬ。己が先入主に牽引・強行する傾きを禁じ得ない。」と、假名遣決定の難しさを語ってゐる。
- 假名遣とは「同音の假名を語によって使ひ分けるきまり」の定義であるならば、「同音」とは「現代音で同音」といふ事になる。「語源が確定できない時はこの假名文字で書く」との一項を追加すれば、暫定的に確定させる事も十分に可能である。
- 誤った假名遣が廣く使はれてゐるもの。特に地名人名などは「誤りを正す」行爲に躊躇を覺える。「どぜう」「かほりさん」など。
- 漢字表記が一定しないもの、もしくは語源にふさはしくない宛て字が一般的となったもの。「をちど(落度)」「がんじょう(岩乘)、がんぢゃう(岩丈)、がんでふ(岩疉)、ぐゎんぢゃう(頑丈)」「そがふ(十合)百貨店、そがう(十江)さん」など。
- 漢字音と韻書の間に、明らかな矛盾がある場合。韻書の示す音は「かんけ(菅家)」「ばせう(芭蕉)」である筈だが、實際の用例は「くゎんけ」「ばせを」となってゐる。
規範の典據
さまざまな理由で、假名遣を決定しづらい語が少なからず存在する事は、先に述べたとほりである。しかしながら一語といへども假名遣を決定できないものがあれば、規範としての有效性を大きく損ふ。國語學の探求は探求とし、「當面の」規範として尊重すべき典據の優先順位を定めておくべきである。日常生活では一語一語について原則を吟味するわけではなく、とりあへず何らかの辭書などを信頼する場合が多い。誰もが容易に入手でき、實用に便宜が多いものがふさはしからう。國語辭典や漢和字典は各人の好みがあるが、假名遣の正しさといふ視點で、最も信頼できる一種類を指定できればと考へる。
目下のところ、『假名遣ちかみち』(山田孝雄・小島好治著、山田忠雄訂補、昭和十八年原版、平成七年覆刻訂補、國語問題協議會發行)の記述を第一に優先させるべきであると考へる。
また、字音假名遣については、『學研漢和大字典』(藤堂明保編、昭和五十三年、學習研究社)の示すものが、「クヰ、グヰ、クヱ、グヱ」および「-ム」の區別をしてをり、好適であると考へる。
他表記との調和
歴史的假名遣は一つのシステムである。從って他の原理に基づくシステムがあれば、表記上で衝突をきたす。その際の對應方法も考へておかねばならない。さもなければ引用文一つにも苦慮してしまふ。
- 原典主義との調和我々が古典と思ってゐるもの、つまり文學全集などで讀む古典の多くは、原典を歴史的假名遣に沿って訂正したものである。ところが「原典尊重」の立場からすると、これらは悉く「原典の改竄」として指彈すべきものであり、甚だしくは歴史的假名遣を虚構の産物と批難する傾向にある。原典尊重そのものは何ら批難すべきところはなく、學術研究上は必須の態度であらう。しかしながら原典尊重もまた「一つのものの見方」に過ぎない。システムとして歴史的假名遣を運用する場合、古典などにも及ぼしてよい事はよく確認しておくべきである。最近は文學全集といへど原典重視が多くなり、底本そのままに覆刻し、歴史的假名遣には一顧だにせぬ傾向にある。しかも振り假名や漢文の訓讀文だけは現代假名遣に從ふため、「幸ひ」を「さいわひ」、「醉ふ」を「よふ」とするなど、およそ見苦しいかぎりの状態にある。古典といへど、現代人が讀む際には現代的存在になってゐるものであり、底本の影印本以外は、完璧な原典主義など成立しないと知るべきである。
- 舊假名との調和「用ひる」「つくゑ(机)」「ハウ(寶)」は戰前には一般的であったが、現在では誤りとされてゐる。假名遣の定義に從へば「用ゐる」「つくえ」「ホウ」とすべきである。ところが原典尊重ならば、正しいとか誤りといった評價すらせず、戰前の文書は戰前の表記を尊重して、といふ扱ひである。これまた引用文の扱ひに困るところである。
- 現假名との調和從來の國語國字問題では、歴史的假名遣と現代假名遣は不倶戴天の敵の如く、共に相容れぬ存在のやうに扱はれてきた。しかし現代假名遣はますますひろく、しかも安定して使はれてゐる。どちらかの優位性を主張するばかりでなく、兩者共存してゆける環境を摸索すべき時ではなからうか。例へば電子化された文書を、自動的に正漢字歴史的假名遣に直すのは、さう困難といふわけではない。むしろ歴史的假名遣の方が、規範として曖昧な點が多く、プログラム構築の障害となってゐる。
- 字音假名遣との調和字音假名遣は、その難解さの故か積極的に運用される事が少なかった。字音假名遣に限って現代假名遣に從ふべしとの聲も多い。これも一種便宜的な態度して容認はできよう。ただ「〜のやうに」「すは(諏訪)」の如く、和語と漢字語の境界線にある語は、その取り扱ひを十分に確認しておいた方がよい。
- 固有名詞との調和現代假名遣の環境下にあっても、地名や人名など、固有名詞の取り扱ひは困難を極める。例へば『JIS漢字字典(平成10年、芝野耕司編)』を參照すれば、不規則な讀み方の地名人名が多く、現代假名遣さへ如何に滲透してゐない事がわかるだらう。まして歴史的假名遣の原則を徹底させるのは不可能に近からう。また、固有名詞の語源を探るのは一般に困難である。自衞隊の潛水艦「なだしお」は「なだしほ(灘潮)」であらうと推測できても、同掃海艇「はりお」が「はりを(針尾島)」に由來する事は、なかなか調査もつくまい。
また、當事者の名乘りを無視して「勝手に」表現を變へる事の是非も問はれる。有樂町驛前の百貨店「そごう」は漢字で「十合」だから「そがふ」とすべきかもしれない。しかしこれでは正しく百貨店名と讀み取ってもらへるか、甚だ心許ない。これに對して、もし當事者が嫌惡感を表明した時、對應方法は不明である。平成十年に、國語問題協議會會長の宇野精一先生が表明された意見は、今後の指針として傾聽に價する。固有名詞など、假名遣の不明な言葉もいろいろあるが、自分自身の言葉との親疎によって考へてゆけばよいといふものである。自分の疎遠な言葉とは、所詮自分自身のものではなく、假名遣を神經質に考へるまでもなからう、といふ趣旨である。
公的な存在
歴史的假名遣は公的な場から完全に姿を消したわけではない。どのやうに存在してゐるのか、確認しておく必要があらう。
- 御製を始め、和歌や俳句は歴史的假名遣に從ってゐる。
- 文部省の教科書檢定基準(國語)で、古典は歴史的假名遣に從ふ事になってゐる。これに基き、教科書に載る古典文は假名遣の修正を施してゐる。
- 文語文の法律文を一部改正する時は、全體の調和を考へて歴史的假名遣の文語文にする事となってゐる。日本國憲法も歴史的假名遣であるが、こちらは口語文であり、將來改正された機會に、現假名に修正されてしまふ虞れはある。
- 昭和六十年『現代假名遣い』で、歴史的假名遣を「尊重」する旨の一文が入った。ただ、この「歴史的假名遣」とは、單に過去の文獻で使はれた程度の消極的な意味である可能性も大きく、これまでのところ具體的に何か「尊重」されたらしき形跡は無い。戰前の文獻を引用する時に「原文どほり」とする習慣が定著しつつあるが、これは單なる原典尊重に過ぎず、規範としての歴史的假名遣を尊重してゐるわけではない。
その他
- 入聲や連聲。特に字音假名遣で、入聲や連聲の表記法は確定的とは言ひ難い。「學校」は「がくかう」か「がっかう」か。「觀音」は「くゎんおん」か「くゎんのん」か。
- 補助記號。「。」「、」などの句讀點符號は現代假名遣でもさう變化がない。逆に踊り字は「〃」「々」以外はあまり使はれなくなった。例へば『くりかへし符號』(昭和二十一年、國語調査室)を規範としてよいものかどうか。また、左横書きの「,.」をどう扱ふか。
- 右横書き。現在でも右横書きは自動車の右側面でよく見かける。右横書きではなく、一字一行の縱書きであるといふ解釋もある。中華民國教育部の規定で「看板は右横書き、交通機關は進行方向から、その他は左から」とするものがあったらしいが、現在は事實上撤廢された模樣である。
- 送り假名。送り假名の問題も古來から厄介なものとされてゐる。明治以來、いくつかの基準案が出たが、未だに決定的なものが無い。雜誌『しにか』平成十一年六月號の『「送り假名の付け方」の意味するもの』(野村雅昭)にかういふ一節がある。「オクリガナを整理するとなれば、一貫した論理にもとづく体系化が必要である。保守主義者はそれを批判するが、単なる感情的な反発にとどまり、それにかわる案を呈示することはできなかった」これは送り假名のみならず、國語國字問題全般にわたって深刻に反省すべき事ではなからうか。
歴史的假名遣に迷った具體的な語彙
- 語源のわからぬもの、古用例に諸説あるもの、くぢら、げぢげぢ、
- 語源を誤解しやすいもの、でづっぱり、
- 語源意識が薄くなったもの、うなづく、
- 豫想される音變を越えるもの、ほふる、ゑひもせす、はわい、そ、さうでしょ、
- イ音便ウ音便と活用の紛れるもの(從前あまり注目されず)、向う側<文字について>
- 文章に綴る習慣なきもの、口頭語、罵語、卑語、隱語、方言、
- 語として確立されてゐないもの、流行語
- 一般に漢字で綴る習慣であるもの、(音訓ともに)漢字語、地名人名<漢字について>
- 漢字が安定しないもの、頑丈、十江、
- 規範的な字音字訓でないもの、
- 語源と漢字表記が矛盾するもの、落ち度、<假名について>
- 戰前の習慣と異なるもの、用ゐる、
- 假名書きが定著してゐる固有名詞、そごう、
- 假名書きされることある動植物名、漢語、あうむ、どろばう<語彙について>
- 近似形の異語あるもの、
- 二字語で切れ目が重なるもの、青梅、
- 洒落をかけたもの、波乘り船の音のよきかな
【一般的なもの】
- あいさつ,挨拶,あいさつ,字音語だが「挨」も「拶」も他の語で用ゐる事の少ない漢字であり、また「相」や「逢」への連想が働くためか「あひさつ」と誤りやすい。
- あいそ,愛想,あいそ,「想(漢シャウ、呉サウ、慣ソ)」ゆゑ「あいさう/あいそ」
- あいにく,生憎,あいにく,←あやにく、「あひにく」ではない
- あうん,阿吽,あうむ,
- あえなく,敢,あへなく,
- あおぐ,仰,あふぐ,【アウ→アオ】
- あおる,煽/呷,あふる,【アウ→アオ】
- あかんべえ,赤ん目,あかんべえ,「べゑ(兵衞)」ならず
- あきない,商,あきなひ,時に縁起から「商内」と書く場合あり、假名遣が合はぬ
- あじわわない,味,あぢははない,書いても喋っても落ちつきの惡い言葉である
- あせみずく,汗,あせみづく,
- あたじけない,,?,語源不明、江戸〜明治の流行語
- あたぼう,,あたばう,當たり前のべら坊
- あない,案内,あない,
- あふる,溢,あふる,【不變】同樣の例に「ほふる(屠)」、但し「あふる(煽)」は「アオル」と讀む。
- あほう,阿呆,あはう,呆は宛て字だが「はう」、信天翁は「あはうどり」
- あまつさへ,剩,あまっさへ,←あまり(餘)+さへ(助詞)、小書き假名使用なら「あまっさへ」の筈だが、久しい前から「あまつさへ」と言ひ慣らはしてゐる
- あやうう,危う,あやふう,←あやふく、「あやふふ」ではない、
- あやふや,不審,あやふや,【不變】
- あらん,有らん,あらん,←あら+ぬ(否定)←あら+む(意思推量)、前者は「あらぬ事を言ふ、あらぬ疑ひをかける、あらぬ方を向く」など、後者は「あらむ限りの力、御配慮あらむ事を」など、
- あるいは,或,あるいは,←ある+い(名詞接尾語)+は(助詞)、
- あんぽんたん,,あんぽんたん,
- いえづと,家苞,いへづと,土産
- いおう,硫黄,いわう,←古語ゆわ、硫黄の字音「りうわう」、そのため「ゆわう」とも
- いかさま,如何樣,いかさま,
- いかもの,如何物,いかもの,「いかもの喰ひ」
- いかん,如何,いかん,←いか(疑問詞)+に(助詞)(撥音便)←行か+ぬ打消、後者は「してはいかぬ」など
- いきおい,勢,いきほひ,←息+おほふ(覆)
- いぎたない,寢穢ない,いぎたない,
- いきどおる,憤,いきどほる,←息+とほる(通)
- いくじ,意氣地,いくぢ,く(氣)は音便
- いけしゃあしゃあ,,いけしゃあしゃあ,「いけ」は接頭語、「いけぞんざい、いけすかない」など、
- いじける,,いぢける,
- いじめる,,いぢめる,
- いじらしい,,いぢらしい,
- いじる,弄,いぢる,
- いさりび,漁火,いさりび,
- いずし,貽鮓,いずし,なれずし
- いちじるしい,著,いちじるしい,←いと(非常)+しるし(明白)
- いなせ,鯔背,いなせ,
- いばる,ゐばる,威張る,「意張る」は宛て字
- いぶかる,訝る,いぶかる,
- いまわ,今,いまは,今はの際
- いらっしゃいませ,,いらっしゃいませ,←入らせられませ
- いらっしゃる,,いらっしゃる,←入らせられる、「ゐらっしゃる」ではない
- うさん臭い,胡散臭い,うさん臭い,
- うじうじ,,うぢうぢ,
- うじゃうじゃ,,うじゃうじゃ,
- うずうず,,うずうず,「うづく」との關連性は不明。
- うっとうしい,鬱陶,うつたうしい,【字音】
- うでずく,腕盡,うでづく,←腕+つくす(盡)
- うむ,(感心),うむ,了解承諾なら「うん」
- うろん,胡亂,うろん,
- うわき,浮氣,うはき,←上氣
- うわずる,上擦,うはずる,
- うわづる,上吊,うはづる,
- えい,(擬聲語),えい,氣合ひ
- ええ,,ええ,應答、反問「はい→あい→ええ」
- ええと,感動詞,ええと,摘語摸索
- えげつない,,えげつない,
- えこじ,依怙地,えこぢ,えこひいき(依怙贔屓)
- えづい,,えづい,ゑづく(嘔吐)との關係は不明
- えせ,似而非,えせ,
- えと,干支,えと,←兄弟
- えぼし,烏帽子,ゑぼし,「帽子」は「ぼうし」、戰前には誤って「ばうし」とされた
- おいてをや,,おいてをや,
- おいど,御居處,おゐど,
- おう,擬聲語,おう,擬聲語ゆゑ歴史的假名遣でも「おお」などとして差し支へない
- おうい,感動詞,おうい,片假名では「オーイ」とする事あり、
- おうご,朸,おふご,←おふ(負)+子、あふご(會期)と掛け言葉にする事あり、
- おうち,楝,あふち,栴檀の古名
- おうて,負,おうて,←おひ(負)+て(助詞)
- おうへい,横柄,わうへい,横柄/横平なら「わうへい」押柄なら「あふへい」大柄/大平なら「おほへい」。なほ、現代假名遣でも大柄ならおおへい。「横柄」が一般的か
- おうまがとき,逢魔が時,あふまがとき,「大禍時」なら「おほまがとき」、現假名でも「おおまがとき」となり一致しない。
- おうよう,鷹揚,おうやう,「大樣」なら「おほやう」、現假名でも「おおよう」となり、一致しない。
- おお,感動詞,おお,實際の用例としては、「おお、をを、おう、わう、あう」など樣々
- おおて,大手,おほて,王手なら「わうて」
- おおばんぶるまい,大盤振舞,おほばんぶるまひ,[木宛]飯振舞なら「わうばんぶるまひ」、現代假名遣も「おうばんぶるまい」
- おおむこう,大向,おほむかふ,一説に連用形「むかひ」のウ音便で「おほむかう」ともいふ
- おかちん,お搗ちん,おかちん,
- おきな,翁,おきな,「嫗」は「おうな」、「をとこ、をんな、をとめ」からの聯想に注意。
- おきゃん,お侠,おきゃん,「侠」の唐音とするも斯樣の音なし
- おこわ,強飯,おこは,
- おさんどん,,?,「お爨どん」なら「おさん」、「お三どん」なら「おさむ」、兩説あり、但し一般には「さん」と「さむ」を分けぬため、兩者の假名遣は同じとなる
- おじや,,おじや,粥、「お〜」の女房言葉。
- おじゃる,,おぢゃる,←お出でである
- おじゃんになる,,おぢゃん,鎭火の際に半鐘を打った事から
- おしょう,和尚,をしゃう,佛教語は呉音で讀むのが原則であるが、宗派により一定しない。「和」は呉ワ 漢クヮ
慣ヲ、呉音わじゃう、漢音くゎしゃう、禪宗をしゃう。方言では「をっさん」とも
- おす,,おす,「お早うございます」の極端な省略
- おせっかい,お節介,おせっかひ,←切匙(味噌こそぎ篦)
- おちこち,遠近,をちこち,
- おちど,越度,をちど,「落度」は宛て字。
- おちゃっぴい,,おちゃっぴい,←お茶挽き
- お茶の子さいさい,,お茶の子さいさい,「さいさい」は囃し言葉
- おっかない,,おっかない,
- おっくう,億劫,おくくふ,
- おてまえ,點前,おてまへ,
- おてんば,お轉婆,おてんば,
- おどし,縅,をどし,鎧の裝飾、「威す」は「おどす」であり、矛盾する。
- おとずれ,訪,おとづれ,←音+つれる(連)
- おもわく,おもはく思はく。「思惑」は宛て字。
- おやま,女形,をやま,「小山」の轉
- おわい,汚穢,をわい,
- おわら節,,?,「越中おわら節」「鹿兒島おはら節」の二種類あり、いづれも囃し言葉で、海路傳はった由
- がえん,臥焔,ぐゎえむ,
- がえんず,肯んず,がへんず
- かけずりまはる,驅,かけづり,「擦る」との關連性は不明。
- かけひ,筧,かけひ,現假名で人名に「かけい」もあり、下樋、瓦樋など
- かざみ,汗衫,かざみ,
- かじ,梶,かぢ,
- かしゅうなっつ,加州,カシウナッツ
- かたわ,かたは片端,「かたわ(片輪)」は宛て字。
- かっか,,かっか,火の燃える樣。「くゎっくゎ」ならず。
- かっこいい,恰好,かっこいい,←かっかういい
- かったい,癩,かったゐ,←かたゐ(乞食)
- かっと,,くゎっと/かっと,刮目または日照の樣子。そのとほりに讀んでよからう。「刮クヮツ」と關係あるか?
- かどわかす,勾引,かどはかす,←かどふ(勾)
- がらがら,,がらがら,
- がれき,瓦礫,グヮレキ,
- かわいい,可愛,かはいい,←かはゆし(和語)、「可愛」は宛て字
- かわいそう,可哀,かはいさう,「可哀相」は宛て字
- かん,罐(缶),くゎん,「罐」の字音は「くゎん」だが、canからの外來語であるため、「かん」のままでよいのかもしれない。
- がんじょう,頑丈,ぐゎんぢゃう?,がんじょう(岩乘)がんでふ(岩疉)がんぢゃう(岩丈)ぐゎんぢゃう(頑丈)など、さまざまな表記あり
- かんずまる,神座,かむづまる,←神+しづまる鎭、かんづまる
- かんする,關する,クヮンスル,
- かんにん,堪忍,かむにん,
- がんばる,頑張,がんばる,←我に張る、「ぐゎんばる(頑張)」は宛字
- きっぷ,氣っ風,きっぷ,
- きづま,氣褄,きづま,
- きょうび,今日日,けふび,
- くおうるに,加,くはふるに,
- くげん,苦患,クグヱン
- ぐじゃぐじゃ,,?,
- 來るわ來るわ,,來るわ來るわ,
- くゎいせき,懷石/會席,くゎいせき,「懷石」「會席」は異る言葉だが、同一視される事あり、假名遣も偶然に一致する、
- くんずほぐれつ,組つ解れつ,くんづほぐれつ,完了助動詞「つ」の用法の一、
- けじめ,,けぢめ,締めるわけではないので「けじめ」とはならぬ
- けったいな,希代,けったいな,
- けはい,氣配/化粧,けはひ,「氣配」は古語「けはひ」の宛て字、本來なら「ケワイ」と讀む筈のところ、漢字音に引かれて「ケハイ」と讀む。鎌倉の化粧坂は「ケワイザカ」
- 毛むくじゃら,毛むくぢゃら,尨犬を根幹とした擬態語
- けれん,外連,クヱレン,歌舞伎用語
- げん,驗,げむ,←「縁起」の倒置とも、「〜をかつぐ」
- げんたん,減反,ゲムタン,
- けんのん,劍呑,けむのむ,
- こうじ,麹,かうぢ,←かび(黴)+たち(立)
- こうずか,好事家,かうずか,
- ごうつくばり,強突張,がう〜,「業突張」なら「ごふ〜」
- こうっと,,?,(呼び掛け)「かうっと」かもしれない。
- こうと(考へる),,かうと〜,
- ごうはら,業腹,ごふ〜,
- こうや,紺屋,こうや,音便
- こえたご,肥擔桶,こえたご,
- こおう,怖,こはう,ウ音便、〜ござります
- ゴーヤー,苦瓜,,
- ごくどう,極道,ごくだう,
- ごじん,御仁,ごじん,
- ごしんぞ,御新造,ごしんぞ,「造」は「ざう」
- ごっつぉお,御馳走,ごっつぉう?,
- こぢんまり,小,こぢんまり,小+ちんまり
- ことじ,琴柱,ことぢ,呉音ヂュ(柱)
- こはいかに,此は如何に,こはいかに,こ此+は助詞+いか如何+に
- ごまかす,,ごまかす,「誤魔化す」は宛て字。化は「くゎ」
- これはこれは,感動詞,これはこれは,
- こんちは,今日,こんちは,こんにちは
- さいなら,,さいなら,←さやうなら
- さいわい,幸,さいはひ,さき咲+はふ延
- さいのかみ,塞の神,さへのかみ,←さへぎる、「塞」の字音サイの連想もはたらく
- さじき,棧敷,さじき,「さずき(假床)」の轉
- さわさわ,,さわさわ,葉ずれ
- ざわざわ,,ざわざわ,
- 〜さんえ,,〜さんえ,(呼びかけの終助詞)
- さんか,山窩,さんくゎ,
- しいしい,爲爲,しいしい,する爲の連用形「し」を重ねた形、見い見い、
- しおおせる,爲果,しおほせる,おほせる(仰)と同源、「しおわす」と誤りやすい
- しおしお,,しをしを,
- しおらし,,しほらし,
- しおわす,爲終す,しをはす,「しおほせる」と誤りやすい
- じきに,直に,ヂキに
- じくじく,,じくじく,滲む
- しくじる,,しくじる,
- しけ,時化,しくゑ,
- じたばた,,ぢたばた,
- しちまった,,しちまった,關西なら「してしもた」
- しっくい,石灰,しっくい,唐音、漆喰は宛て字ゆゑ「しっくひ」ならず
- じっと,,じっと,
- してしもた,,してしもた,關東なら「しちまった」
- しない,竹刀,しなひ,←しなふ割竹
- しもうて,了,しまうて,しまひ了+て助詞
- じゃ,助詞,ぢゃ,では→ぢゃ
- じゃあ,,ぢゃあ,←では
- じゃあじゃあ,,じゃあじゃあ,水流
- しゃがれ聲,嗄聲,しゃがれ,←皺枯
- じゃこ,雜魚,じゃこ,←ざこう(雜口)
- じゃぶじゃぶ,,じゃぶじゃぶ,水流
- しゃもじ,,しゃもじ,←笏文字
- 〜じゃんか,,〜ぢゃんか,←ではないか
- じゃんけん,石拳,じゃんけん,←リャンケン(兩拳)
- じゃんじゃん,,じゃんじゃん,鐘
- じゅうぶん,十分,じふぶん,「充分」なら「じゅうぶん」
- じょうず,上手,じゃうず,
- しょうそく,消息,せうそこ,(古語)
- しょうぞく,裝束,しゃうぞく,古語に「さうぞく」とも
- しょうもない,,しゃうもない?,←しやうもない
- しょっちゅう,,しょっちゅう,←初中後
- しりえ,後方,しりへ,←尻+へ方
- じりじり,,じりじり,
- じれる,焦,じれる,
- じろり,,じろり,
- じわじわ,,じわじわ,じわり
- じんべえ,甚平,じんべゑ,←陣兵羽織から?、陣は音「ヂン」、じむ甚+べゑ兵衞
- 死んじまえ,死んぢまへ,死んでしまへ
- しんぼう,辛抱,しんばう,しんぼう辛棒
- ずうんと,,ずうんと,←ずっと
- すおう,素襖,すあを,←「襖」の字音アウ【アオ→オウ】
- ずかずか,,づかづか,
- ずかりと,,,
- ずきずき痛む,,づきづき,
- 〜ずくめ,盡,〜づくめ,黒づくめ、結構づくめ、
- ずけずけと言ふ,,づけづけ,
- すけべえ,助平,すけべい,「助兵衞」なら「すけべゑ」
- ずさん,杜撰,づさん,
- ずしんと,,づしんと,「づしりと」も同樣
- ずたずたに,,づたづたに,
- ずっと,,ずっと,
- ずでんどう,,づでんどう,
- ずどんと一發,,ずどんと一發,
- ずぬける,,ずぬける,ずばぬける、「頭拔ける」は宛て字
- ずぶ濡れ,,づぶ濡れ,
- ずぶずぶと,,づぶづぶと,
- ずぶの素人,,づぶ,
- ずぶりと刺す,,づぶりと,
- すまい,,すまひ,「すまゐ(住居)」は宛て字
- すもう,相撲,すまう,すまふ(動詞)→すまひ(名詞形)→すまう(ウ音便)
- ずらかる,,ずらかる,
- ずらりと,,ずらりと,
- ずるずるべったり,,ずるずるべったり,
- すわ,感動詞,すは,←そ+は助詞、すは鎌倉、
- ずんぐり,,ずんぐり,
- ずんずん,,ずんずん,
- ずんどう,寸胴,ずんどう,
- せい,背,せい,現代假名遣で「え」の長音は、主として和語「ええ」字音「えい」となる。しかしながら「せい」は明らかに「せ(背)」の長音であるにもかかはらず「せえ」とはなってゐない。
- ぜいろく,贅六,ぜいろく,
- ぜんまい,撥條,ぜんまい,
- そう,左右,さう,←さいう
- そうかえ,,さうかえ,
- そうれご覽,,そうれ,
- そこひ,内障,そこひ,「そこい」とは讀まぬ【不變】
- そばえる,戲,そばへる,
- そわそわ,,そはそは,
- たじたじ,,たぢたぢ,←たぢろぐ
- たまずさ,玉梓,たまづさ,←玉+あづさ(梓)
- 〜だわ,,〜だわ,
- たわいない,他愛,たわいない,「他愛」は宛て字
- たはけ,白癡,たはけ,
- だんな,旦那,だんな,
- 〜だんべえ,,〜だんべい,←であるべし
- ちくしょう,蓄生,ちくしゃう,
- ちゃう,,ちゃふ,←てしまふ、困っちゃふ
- ちゃうちゃう,違ふ違ふ,ちゃふちゃふ
- ちゅう,,ちふ,←といふ、なんちふ事だ
- ちゅうて,,ちうて,と言うて(音便)
- ちょこざい,豬口才,ちょこざい,
- ちょっかい,,ちょっかい,←一寸と掻く
- ちわ,,ちは,こんちは
- ちんちくりん,,ちんちくりん,
- ちんちんかもかも,,ちんちんかもかも,
- ちんば,跛,ちんば,
- つい,,つい,不用意に、無雜作に
- ついぞ,遂,つひぞ,←終
- ついつい,,ついつい,
- ついな,追儺,ついな,「つひな」ならず
- ヅカ,塚,ヅカ,「寶塚」の略、ヅカファン、ヅカガール、ヅカむすめ
- 〜づく,,〜づく,毒づく
- でけえ,大,でけえ,
- てこずる,手古摺る/挺子摺る,てこずる
- 手ずから,,手づから
- でずっぱり,出突張,でづっぱり,「でず」では「出ない」意味に取られよう。
- てなずける,手懷,てなづける,手+なつける(懷)
- てめえ,手前,てめへ,
- てんこもり,,,
- でんでん蟲,,でむでむ?,「出ぬ出ぬ」ではない
- どうお?,,どうお?,「さうお?」なども同樣。
- とうがらし,唐辛子,たうがらし,
- とうぐう,春宮,とうぐう,←東宮
- とうてい,到底,たうてい,
- どうと倒れる,,どうと倒れる,
- どぢ,鈍遲/鈍智,どぢ,←とちる
- とつおいつ,,とつおいつ,←取りつ置きつ
- とみこうみ,,とみかうみ←と見、斯く見
- どら息子,,どら息子,←道樂、「道樂」は「だうらく」
- どろぼう,泥坊/泥棒,どろばう,
- とんちき,頓癡氣,とんちき,
- とんま,頓馬,とんま,
- ないしょ,内緒,ないしょ,「内證」の轉
- なかんずく,就中,なかんづく,
- なめずる,,なめづる,「嘗め+摺る」ではない
- なんじ,汝,なんぢ,←汝+むち貴
- にじりぐち,躙口,にじりぐち,
- ねんず,念ズ,ねむず,
- のう,喃,なう,〜ぢゃなう、現代假名遣でも「のお」とはならぬ
- のうし,直衣,なほし,【アオ→オウ】
- はえ,南風,はえ,
- はおり,羽織,はおり,←羽折り?
- ばかやろう,馬鹿野郎,〜やらう,←莫迦
- ばくれん,莫連,ばくれん,
- はずむ,彈,はずむ
- はだえ,肌,はだえ,
- ひいさま,姫樣,ひいさま,
- ひどい,酷,ひどい,「非道い」は宛て字、「非道」は「ひだう」
- ひとまず,,ひとまづ,
- ひもじい,,ひもじい,←ひだるい+文字
- ひょう,雹,へう?,漢音ハク→ハウ→ヒョウ、冰雨ヒウ→ヒョウ
- ひょうと射る,,ひょうと射る,
- ひょうろく玉,表六玉,へう〜,
- びろーど,天鵞絨,びろーど,ポルトガル語
- びわ,琵琶,ビハ
- ピンきり,,ピンきり,ピンはポルトガル語
- びんた,,びんた,←鬢+た
- ふわふわ,,ふはふは,
- ふんわり,,ふんはり,
- へい,塀,へい,現代假名遣で「え」の長音は、主として和語「ええ」字音「えい」となる。「塀」は國字であるものの、「へい」は形聲文字と同じ原理による讀み方であるから「へえ」とはならない。則ち「へい」は明らかに字音に準ずるものとして扱はれる。同樣の例に「鮟鱇」の「鱇」があるが、こちらは辭書によって「かう、こう」定まらない。
- へい,,へい,←はい
- へいへいする,,へいへいする,(諂ひ)
- べっかんこう,,べっかんこう,←目赤ん子
- へっつい,竈,へっつひ,←邊つ火
- べらぼう,篦棒,べらばう,人名「可坊」か
- ほうける,惚,ほうける,←ほく(惚)の長音化、ぼける、「ほほける」とは別
- ほうける,呆ける・惚ける,はうける?,呆は。惚は
- ほうちょう,庖丁,ほうちゃう
- ぼうぶら,,ぼうぶら,aboboraはポルトガル語の瓜
- ほうほうの體,はふはふ
- ほうる,抛,はふる,【アウ→オウ】放・抛の字音はハウ
- ほおける,蓬,ほほける,←穗穗ける、けばだつ、「ほうける」とは別
- ほじる,,ほじる,
- ほてい,布袋,ほてい,
- ほふる,屠,ほふる,【不變】同樣の例に「あふる(溢)」
- ぼる,,ぼる,←暴?、「暴」は「ばう」
- まじえる,,まじへる,→まざる
- まじまじと,,まじまじ,
- まっこう,眞向,まっかう,ま(眞)+むかひ(向)ウ音便、「向」は音「かう」
- まっとうな,,まったうな,←全う、「眞當」は宛て字だが、偶然にも假名遣は同じ。
- まんじりと,,まんじりと,
- みいず,御稜威,みいづ,
- みけん,眉間,みけん,
- みじめ,,みじめ,
- みょうと,夫婦,めをと,【エオ→イョウ】「メオト」との區別なら「めうと」か
- みょうぶ,命婦,みゃうぶ,
- むいか,六日,むいか,
- むこうがわ,向う側,むかうがは,ウ音便であり、「むかふがは」ではない
- むしず,,?,「蟲酸」なら「むしず」、「蟲唾」なら「むしづ」
- むずがゆい,,むずがゆい,むずむず
- むずがる,憤,むづかる,←むつかる←難しい
- むんずと組む,,むんずと組む,
- めずらしい,珍,めづらしい,目+つら(連)+し形容詞語尾(もっと見たい)
- めっそう,減相,めつさう,
- めんよう,面妖,めんよう,「名譽」の轉。「面妖」なら「めんえう」
- もうでる,詣,まうでる,
- もうひとつ,,もうひとつ,
- もうろく,耄碌,まうろく,
- もさ,猛者,もさ,「猛」は「まう」
- もじもじ,,もぢもぢ,
- もじゃもじゃ,,もじゃもじゃ,
- もだえる,悶,もだえる,←もだゆ
- もっけ,勿怪,もっくゑ,〜の幸ひ。「物怪」の轉。
- もっそう,盛相,もっさう,(飯入れ)
- もとい,,もとひ?,←元へ、訂正、
- もとい,基,もとゐ,
- ものかは,,ものかは,もの+か(助詞)+は(助詞)
- もののけ,もののくゑ,物の怪
- ももんじい,,ももんじい,
- やおちょう,八百長,やほちゃう,八+ほ(百)+長
- やおや,八百屋,やほや,
- やくたいもない,益體,やくたいもない,
- やじ馬,野次馬,やぢ,「親父馬」「やんちゃ」などの説あり。
- やじろべえ,野次郎兵衞,やぢろべゑ,
- やっかい,厄介,やっかい,
- やっちゃお,,やっちゃお,←しまはう
- やまずみ,山祇,やまづみ,山+つ+み(靈)、わたつみ、
- やわら,柔術,やはら,
- やんわり,,やんはり,
- よいとまけ,,よいとまけ,
- ようか,八日,やうか,や(八)+の+日
- ようなし,要なし,えうなし,(古語)
- ようやく,漸,やうやく,や稍+く副詞語尾、やくやく→やうやく
- よじる,よぢる,「もぢる」「ねぢる」も同樣。
- りょうけん,料簡/了見,れうけん,
- ろうけち,臈纈,らふけち,染物
- ろうたけた,臈たけた,らふ〜,
- ロマン,浪曼,ロマン,「浪」は「ラウ」
- ヲコト點,,ヲコト點,現代假名遣でも「ヲ」
江戸の方言を描寫した文獻はかなり多く、假名遣の問題が發生するものも少なくない。中でも「アイ→エエ」などの變化は紛らはしいところである。【アイ→エエ】
- あんめえ,,あんめえ,←あるまい
- ごぜえやす,御座,ごぜえやす,←ござります
- たんねえ,不足,たんねえ,
- へえ,,へえ,←はい
- べえごま,貝獨樂,べえごま,「べいごま」ではない。[虫貝]バイガヒで作った獨樂
- めえ,枚,めえ,【アヒ→エエ】
- おめえ,御前,おめえ,「おめへ」ではない
- けえる,歸,けえる,
- ちげえねえ,違,ちげえねえ,「ちげへねえ」ではない
- へえる,這入,へえる,【オイ→エエ】
- おせえ,遲,おせえ,
- すげえ,凄,すげえ,
- そけえら,其處,そけえら,
- にけえ,二階,にけえ,
- ひでえ,酷,ひでえ,
- ふてえ,太,ふてえ,【ウイ→イイ】
- わりい,惡,わりい,
方言でも、以下のものは有名であらうか。
- あんじょう,,あんぢょう,←味良う、關西方言
- おおきに,,おほきに,←大きに、(關西方言)
- じょっぱり,,,(津輕方言)「意地っ張り」の轉なら「ぢょっぱり」、「強情っ張り」なら「じょっぱり」か
- 〜ずら,〜ずら,靜岡方言
- ずつない,,ずつない,←術ない(關西方言)
- 〜でごわす,,〜でごわす,九州方言
- ほうとう,[食傅-人][食モ],ハウタウ(山梨縣郷土料理)
- ぼん,坊,ぼん,(大阪方言)
方言によっては、假名文字にのせにくいものもあるが、それは假名遣以前の問題であるので一まづ措く。
【疉字の形容動詞】「〜と」「〜に」「〜たる」など假名表記となり、字音假名遣の問題が發生する場合がある。
- おうおう,怏々,アウアウ,
- いいだくだく,唯々諾々,イイダクダク,
- ゆうゆう,優々,イウイウ,
- ゆうゆうじてき,悠々自適,イウイウジテキ,
- うんぬん,云々,ウンヌン,
- えいえい,營々,エイエイ,
- えんえん,炎々,エムエム,
- えんえん,延々,エンエン,
- こうこう,浩々,カウカウ,
- こうこう,皓々,カウカウ,
- かかたいしょう,呵呵大笑,カカタイセウ,
- かくかく,赫々,カクカク,
- かんかんがくがく,侃侃諤諤,カンカンガクガク,
- がいがい,皚々,ガイガイ,
- がが,峨々,ガガ,
- ききかいかい,奇々怪々,キキクワイクワイ,
- きゅうきゅう,汲々,キフキフ,
- きょきょじつじつ,虚々實々,キョキョジツジツ,
- きんきん,近々,キンキン,
- ぎょうぎょう,仰々し,ギャウギャウ,
- こうこう,煌々,クワウクワウ,
- けいけい,炯々,クヱイクヱイ,
- けんけん,拳々,クヱンクヱン,
- けんけんごうごう,喧喧囂囂,クヱンクヱンガウガウ,
- けんけんふくよう,拳々服膺,クヱンクヱンフクヨウ,
- ぎぎ,巍々,グヰグヰ,
- けいけい,輕々に,ケイケイ,
- けんけん,憲々,ケンケン,
- ごうごう,囂々/嗷々,ゴウゴウ,
- ごうごう,轟々,グヮウグヮウ,
- ここ,呱呱の聲,ココ,
- ここべつべつ,個々別々,ココベツベツ,
- こつこつ,兀々,コツコツ,
- こんこん,懇々と,コンコン,
- こんこん,昏々と,コンコン,
- こんこん,滾々と,コンコン,
- ごくごく,極々,ゴクゴク,
- そうそう,錚々,サウサウ,
- そうそう,草々,サウサウ,
- そうそう,早々に,サウサウ,
- そうぞう,騷々し,サウザウ,
- ししそんそん,子々孫々,シシソンソン,
- しんしん,深々,シムシム,
- しゃあしゃあ,洒々,シャアシャア,
- しょうじょう,猩々,シャウジャウ,
- しゃくしゃく,綽々,シャクシャク,
- しゅくしゅく,肅々,シュクシュク,
- しゅじゅ,種々,シュジュ,
- じじ,時々,ジジ,
- じじこっこく,時々刻々,ジジコッコク,
- じょうじょう,上々,ジャウジャウ,
- じゅんじゅん,順々,ジュンジュン,
- じゅんじゅん,諄々,ジュンジュン,
- じょじょに,徐々に,ジョジョニ,
- せいせい,清々,セイセイ,
- せいせいどうどう,正々堂々,セイセイダウダウ,
- せいぜい,精々,セイゼイ,
- しょうしょう,少々,セウセウ,
- しょうしょう,蕭々,セウセウ,
- せんせんきょうきょう,戰戰恐恐,センセンキョウキョウ,
- せんせんきょうきょう,戰戰兢兢,センセンキョウキョウ,
- そうそう,匆々,ソウソウ,
- ぞくぞく,續々,ゾクゾク,
- とうとう,蕩々,タウタウ,
- とうとう,滔々,タウタウ,
- たんたん,淡々,タムタム,
- たんたん,澹々,タムタム,
- どうどうめぐり,堂々巡り,ダウダウメグリ,
- だだっこ,駄々っ子,ダダッコ,
- だんだん,段々,ダンダン,
- ちょうちょうはっし,丁々發止,チャウチャウハッシ,
- ちゃくちゃく,著々,チャクチャク,
- じきじき,直々,ヂキヂキ,
- じゅうじゅう,重々,ヂュウヂュウ,
- ずうずうし,圖々し,ヅウヅウシ,
- ちょうちょ,蝶々,テフテフ,
- てんてん,點々,テムテム,
- てんてん,轉々,テンテン,
- じょうじょう,嫋嫋,デウデウ,
- でんでん,電電,デンデン,
- のうのう,喃々,ナウナウ,
- なんなんと,喃々と,ナムナムト,
- ねんねん,年々,ネンネン,
- ほうぼう,方々,ハウバウ,
- はんはん,半々,ハンハン,
- ばんばん,萬々,バンバン,
- ひょうひょう,飄々,ヘウヘウ,
- 髭ぼうぼう,茫々,ばうばう,
- ぼうぼう,某々,ボウボウ,
- まんまん,滿々,マンマン,
- まんまんいち,萬々一,マンマンイチ,
- めいめい,銘々,メイメイ,
- めいめいはくはく,明々白々,メイメイハクハク,
- ようよう,揚々,ヤウヤウ,
- ようよう,洋々,ヤウヤウ,
- ろうろう,朗々,ラウラウ,
- ろうろう,浪々,ラウラウ,
- りゅうりゅうしんく,粒粒辛苦,リフリフシンク,
- るいるい,累々,ルイルイ,
- れきれき,歴々,レキレキ,
- れんれん,戀々,レンレン,
- おうおう,往々,ワウワウ,〜にして
- えんえん,淵々,ヱンヱン,
【動物名】各種辭書や圖鑑を參照。特に『自然大博物館』(平成4年、小學館)が參考になった。字音假名遣にかかはるものが多く、更に和語のものを充實させねばならぬ。
- あいなめ,鮎魚女/鮎並,あいなめ,
- あおだいしょう,青大將,アヲダイシャウ,
- あかしょうびん,赤翡翠,アカショウビン,音の由來未詳
- あこうだい,赤魚鯛,あかをだひ,←赤+魚+鯛
- あひる,家鴨,あひる,【不變】「アイル」とは發音しない。
- あほうどり,信天翁,アハウドリ,←阿呆鳥
- あめんぼう,水黽,アメンバウ,←飴ン坊
- ありじごく,蟻地獄,アリヂゴク,
- あんこう,鮟鱇,アンカウ,鱇は國字で音讀みではないが、康はカウ
- いがい,貽,イガヒ,
- いかなご,玉筋魚,いかなご,
- いさき,伊佐幾,イサキ,
- いすか,交喙,いすか,
- いっかく,一角,イッカク,
- いんこ,鸚哥,インコ,唐音
- うとう,善知鳥,うとう,←うみ海+とき鴇?、謠曲では「烏頭」
- うんか,浮塵子,ウンカ,←雲霞
- おうむ,鸚鵡,アウム,
- おおじゅりん,大壽林,オホジュリム,
- おおせっか,大雪加,オホセッカ,
- おおるり,大瑠璃,オホルリ,
- おさむし,筬蟲,をさむし,
- おっとせい,膃肭臍,ヲットセイ,膃はヲツだが、アイヌ語onnep起源
- か,蚊,カ,「くゎ」ならず
- かいめん,海綿,カイメン,
- かいろうどうけつ,偕老同穴,カイラウドウケツ,
- かじき,梶木,かぢき,
- かっこう,郭公,カッコウ,
- かば,河馬,カバ,
- かれい,鰈,かれひ,←から(唐)+えひ
- かんぱち,間八,カンパチ,
- が,蛾,ガ,
- がちょう,鵝鳥,ガテウ,
- がびちょう,畫眉鳥,グヮビテウ,
- がむし,牙蟲,ガムシ,
- きゅうかんちょう,九官鳥,キウクヮンテウ,
- きりん,騏麟,キリン,
- きれんじゃく,黄連雀,キレンジャク,
- くいな,水鷄,くひな,
- くじゃく,孔雀,クジャク,
- げそ,下足,ゲソ,
- げんごろう,源五郎,グヱンゴラウ,
- こうなご,小女子,こをなご,いかなご(玉筋魚)の異名
- こうのとり,鸛,コフノトリ,音の由來未詳
- ごかい,沙蠶,ゴカイ,
- こくぞうむし,穀象蟲,コクザウムシ,
- こじゅけい,小綬鷄,コジュケイ,
- ごいさぎ,五位鷺,ゴヰサギ,
- ごんずい,權瑞,ゴンズイ,魚名
- ごんどうくじら,巨頭鯨,ゴンドウクジラ,
- さい,犀,サイ,
- さんしょううお,山椒魚,サンセウウヲ,
- ざとうくじら,座頭鯨,ザトウクジラ,
- しいら,[魚暑],シイラ,しひらではない
- しじゅうから,四十雀,シジフカラ,
- しふぞう,四不像,シフザウ,「象」ならず
- しゃこ,蝦蛄,シャコ,
- しゃち,鯱,シャチ,國字
- しょうじょう,猩々,シャウジャウ,
- じゃこうじか,麝香鹿,ジャカウジカ,
- じゅうしまつ,十姉妹,ジフシマツ,
- じゅごん,儒艮,ジュゴン,
- じょうびたき,常鶲,ジャウビタキ,
- じんべいざめ,甚兵衞鮫,ジムベヱザメ,
- すいぎゅう,水牛,スイギウ,
- すけそうだら,介宗鱈,スケソウダラ,介黨スケタウとも
- せいご,[魚夸],せいご,鱸の幼名
- せんざんこう,穿山甲,センザンカフ,
- ぞうむし,象蟲,ざうむし,
- たいまい,玳瑁,タイマイ,
- たず,田鶴,たづ,
- たんちょうづる,丹頂鶴,タンチャウヅル,
- だちょう,鴕鳥,ダテウ,
- ちょうちょ,蝶々,テフテフ,
- ちょうちんあんこう,提燈鮟鱇,チャウチンアンカウ,
- ちん,狆,チン,
- つくつくぼうし,つくつく法師,ツクツクハフシ,
- てん,貂,テン,貂はテウ
- てんとうむし,瓢蟲,テンタウムシ,天道
- とうまる,唐丸,タウマル,
- どじょう,鰌,ドヂャウ,訓
- はくびしん,白鼻心,ハクビシム,
- はんみょう,斑猫/斑[矛攵虫],ハンメウ,
- ばかがい,馬鹿貝,バカガヒ,
- ひょう,豹,ヘウ,
- びんなが,鬢長,ビンナガ,
- ぶっぽうそう,佛法僧,ブッポフソウ,
- べっこう,鼈甲,ベッカフ,
- べら,倍良,ベラ,
- ほうぼう,魴[魚弗],ハウボウ,
- ほっきがい,北寄貝,ホッキガヒ,
- ほっけ,[魚花],ホッケ,音の由來未詳
- まっこうくじら,抹香鯨,マッカウクジラ,
- まんぼう,翻車魚,マンバウ,音の由來未詳
- みじんこ,微塵子,ミヂンコ,
- むつごろう,[魚睦-目]五郎,ムツゴラウ,
- めじな,目仁奈,メジナ,
- もんごういか,紋甲烏賊,モンガフイカ,
- らんちゅう,蘭鑄,ランチウ,蘭蟲ランチュウとも
【植物名】
- あおい,葵,あふひ,【アウ→アオ】
- あずき,小豆,あづき,豆ヅとは無縁?
- あすなろ,翌檜,あすなろ?,「明日は檜にならう」「あすひ」などの説あり、「あすはひのき」とも、現代假名遣では「あすわひのき」となるらしい
- あまずら,甘葛,あまづら,←あま(甘)+つら(蔓つるくさ)
- あんず,杏子,アンズ,
- いちい,一位,イチヰ,
- いちじく,無花果,いちじく,←いちじゅく(一熟)
- いのこずち,牛膝,ゐのこづち,←ゐのこ豚+つち槌
- いぶき,伊吹,イブキ,
- いんげんまめ,隱元豆,イングヱンマメ,
- うこぎ,五加木,ウコギ,唐音
- うこん,鬱金,ウコム,
- うっこんこう,鬱金香,ウッコムカウ,チューリップ
- えんじゅ,槐,ヱンジュ,
- えんどう,豌豆,ヱンドウ,
- えんばく,燕麥,エンバク,
- えんれい,延齡,エンレイ,
- おうぎ,黄耆,ワウギ,
- おおばこ,車前草,おほばこ,大葉子
- おごのり,於期海苔,オゴノリ,
- おもと,萬年青,オモト,宇佐の御許山
- かいどう,海棠,カイダウ,
- かりん,花梨/花櫚,クヮリン,
- かんしゃ,甘蔗,カムシャ,
- かんしょ,甘藷,カムショ,
- ききょう,桔梗キチカウ,キキャウ
- きょうちくとう,夾竹桃,ケフチクタウ,
- きんせんか,金盞花,キムセンクヮ,
- きんぽうげ,金鳳花,キムパウグヱ,
- きんもくせい,金木犀,キムモクセイ,
- ぎぼし,擬寶珠,ギボシ,
- ぎょりゅう,御柳,ギョリウ,
- ぎんなん,銀杏,ギンナン,
- けいとう,鷄頭,ケイトウ,
- けし,芥子,ケシ,
- けまんそう,華鬘草,クヱマンサウ,
- げんのしょうこ,現證據,ゲンノショウコ,
- こちょうらん,胡蝶蘭,コテフラン,
- こんにゃく,蒟蒻,コンニャク,蒟はク
- ごぼう,牛蒡,ゴバウ,
- ごれんし,五斂子,ゴレムシ,
- ごんずい,權萃,ゴンズイ,木名
- さいかち,皀莢,サイカチ,
- さざんか,山茶花,サザンクヮ,
- さんざし,山査子,サンザシ,
- さんしきすみれ,三色菫,サムシキスミレ,パンジー
- さんしょう,山椒,サンセウ,
- ざくろ,石榴,ザクロ,
- しこんのぼたん,紫紺野牡丹,シコムノボタン,
- しめじ,占地,シメヂ,
- しゃが,射干/著我/莎我,シャガ,
- じゃが芋,,ジャガイモ,じゃがたら芋
- しゃくなげ,石南花,シャクナグヱ,
- しゅうかいどう,秋海棠,シウカイダウ,
- しょうが,生姜,シャウガ,
- しょうじょうばかま,猩々袴,シャウジャウバカマ,
- しょうのう,樟腦,シャウノウ,
- しょうぶ,菖蒲,シャウブ,
- しょうろ,松露,ショウロ,
- じゅうにひとえ,十二單,ジフニヒトヘ,
- じゅずだま,數珠玉,ジュズダマ,
- じんちょうげ,沈丁花,ヂムチャウグヱ,
- すいか,西瓜,スイクヮ,
- すいかずら,忍冬,スヒカヅラ,吸ひ蔓
- すいせん,水仙,スイセン,
- すいれん,睡蓮,スイレン,
- すおう,蘇芳,スハウ,
- すずらん,鈴蘭,スズラン,
- せんだん,栴檀,センダン,
- せんにちこう,千日紅,センニチコウ,
- せんりょう,千兩,センリャウ,
- だいおう,大黄,ダイワウ,
- ちょうじ,丁字,チャウジ,
- てんさい,甜菜,テムサイ,
- てんじくあおい,天笠葵,テンヂクアフヒ,
- とう,籐,トウ,
- とうがん,冬瓜,トウグワン,
- とうき,當歸,タウクヰ,
- とうひ,唐檜,タウヒ,
- どうだんつつじ,滿天星躑躅,ドウダンツツジ,燈臺の轉か
- とうもろこし,玉蜀黍,タウモロコシ,「たう」は唐ではなく玉の轉
- どんぐり,團栗,ドングリ,
- なんてん,南天,ナムテン,
- にくずく,肉豆蒄,ニクヅク,蒄は呉音
- にっけい,肉桂,ニッケイ,
- にわとこ,接骨木,ニハトコ,
- にんじん,人參(蔘),ニンジム,
- のうぜんかずら,凌霄蔓,ノウゼンカヅラ,音の由來未詳
- のかんぞう,野萱草,ノクヮンザウ,
- はじかみ,薑,はじかみ
- はたんきょう,巴旦杏,ハタンキャウ,
- はるじおん,春紫苑,ハルジヲン,
- はんげしょう,半夏生,ハンゲシャウ,
- はんごんそう,反魂草,ハンゴンサウ,
- はんとう,蟠桃,ハンタウ,
- はんのき,榛木,ハンノキ,←ハリノキの轉、「榛」は音「シン」
- ひまし,蓖麻子,ヒマシ,
- ひょうたん,瓢箪,ヘウタン,
- びおうやなぎ,未央柳,ビアウヤナギ,
- びゃくだん,白檀,ビャクダン,
- びわ,枇杷,ビハ,
- ふよう,芙蓉,フヨウ,
- ぶどう,葡萄,ブダウ,
- へんとう,扁桃,ヘンタウ,
- ほうせんか,鳳仙花,ホウセンクワ,
- ほうれんそう,菠薐草,ハウレンサウ,
- ほお,朴,ホホ,
- ほおずき,酸漿,ホホヅキ,
- ほていあおい,布袋葵,ホテイアフヒ,
- ぼけ,木瓜,ボクヱ,
- ぼたん,牡丹,ボタン,
- まくわ瓜,眞桑瓜,マクハ,美濃國の村名
- まんごー,芒果,マンゴー,
- まんじゅしゃげ,曼珠沙華,マンジュシャグヱ,
- まんりょう,萬兩,マンリャウ,
- みかん,蜜柑,ミカム,
- みずばしょう,水芭蕉,ミヅバセウ,
- みょうが,茗荷,メウガ,芽香の轉
- むくげ,木槿,ムクゲ,
- もうせんごけ,毛氈苔,モウセンゴケ,
- もうそうちく,孟宗竹,マウソウチク,
- もくれん,木蓮,モクレン,
- もじずり,捩摺,もぢずり,「ねぢばな(捩花)」の別名、「道奧の忍ぶ〜」
- やぶこうじ,薮柑子,ヤブカウジ,
- ゆうぜんぎく,友禪菊,イウゼンギク,
- らっかせい,落花生,ラックヮセイ,
- らっきょう,辣韮,ラッキョウ,「韮」は音「ク、キウ」
- りんご,林檎,リムゴ,
- りんどう,龍膽,リンダウ,
- るこうそう,縷紅草/留紅草,ルコウサウ,
- れんぎょう,連翹,レンゲフ,
- れんげそう,紫雲英,レンゲサウ,←ゲンゲ、レングヱ(蓮華)は宛て字
- ろうばい,蝋梅,ラフバイ,
- われもこう,吾亦紅,われもかう,←和木香、樣々な書き方あり「我木香」なら「ワレモカウ」、「吾亦紅」なら「ワレモコウ」か
【地名】この項目は『地名の語源』(昭和52年、鏡味完二・明克著、角川小辭典13)による。
- あいら,姶良郡,あひら,鹿兒島縣
- あお,粟生,あふ?,京都府長岡京市、←あは(粟)+ふ(生)【アウ→アオ】「ふ(生)」は地名に多い、がまふ(蒲生)しばふ(芝生)にふ(丹生)はにふ(羽生)やぎふ(柳生)きりふ(桐生)など、
- あおづくり,泥障作,あをづくり,青森縣三戸郡
- あこう,赤穗市,あかほ,兵庫縣【アオ→オウ】、古來より假名遣教科書に必ず取上げられるのは、忠臣藏のためでもあらうし、アオ→オウなる不規則音變のためでもあらう。
- あぞうの,薊野驛,あざうの,土讚線驛名
- あづまやさん,四阿山,あづまやさん,群馬縣
- あのう,賀名生,あなふ,吉野郡
- あわら,湶,あはら,富山縣高岡市、濕地、深泥の田
- いかり,五十里,いかり,栃木縣鹽谷郡
- いくわ,的,いくは,佐賀縣神埼郡
- いすず,五十鈴川,いすず,伊勢神宮
- いずはら,嚴原,いづはら,長崎縣下縣郡
- いずろ,石燈籠,いづろ,鹿兒島市
- いたこ,潮來,いたこ,茨木縣行方郡
- いちいばら,櫟原,いちゐばら,山口縣宇部市
- いつくしま,嚴島神社,いつくしま,廣島縣佐伯郡
- いといがわ,絲魚川市,いといがは,新潟縣
- いとうづ,到津,いたうづ,北九州市小倉北區、「いたる」と「トウ」の混同か
- いぬぼうざき,犬吠埼,いぬぼうざき,千葉縣、←ほゆ(吠)
- いぶすき,揖宿,いぶすき,鹿兒島縣、←揖イフ、市名としては「指宿市」となる
- いまとばる,今任原,いまとばる,福岡縣田川郡、←たへる(任)
- いもあらい,一口,いもあらひ?,京都府宇治市、「いもらひ」とも
- うぐいがわ,鰄川,うぐひがは,北海道檜山郡
- うすい,碓冰峠,うすひ,群馬長野境
- うずまさ,太奏,うづまさ,京都府
- えき,浴,えき,山口縣には谷状の濕地を稱して「えき」とする地多し
- えばら,荏原,えばら,東京都品川區、舊荏原區
- えひめ,愛媛縣,えひめ,
- おいずるがだけ,笈ヶ岳,おひずるがだけ,石川縣
- おうま,青馬,あをま,千葉縣香取郡【アオ→オウ】
- おうみ,青海島,あをみ,山口縣長戸市【アオ→オウ】「あふみ(近江國)」「おほみ(大三島)」などと混同しやすい
- おうむ,雄武,おうむ,北海道紋別市
- おうめ,青梅市,あをめ?,東京都、「あを+め」か「あ+うめ」か不明、【アオ→オウ】
- おおかい,大峽,おほかひ,宮崎縣延岡市
- おおぎ,仰木,あふぎ,大津市
- おおきだ,碩田,おほきだ,大分縣古地名
- おおそ,尾曾,をおそ?,奈良縣高市郡、「を(尾)」の長音はどう表記すべきか不明
- おおぼけ,大歩危,おほぼくゑ,徳島縣三好郡
- おおみわ,大神神社,おほみわ,←みわ(三輪)
- おくて,晩稻,おくて,鳥取市、←奧手
- おぐらいけ,巨椋池,おぐらいけ,もと「おほくらの入江」
- おこう,岡豐,をかふ,高知縣南國市
- おごせ,越生,をごせ,埼玉縣入間郡
- おさかべ,刑部,おさかべ,大和の忍坂にちなむ
- おさらぎ,大佛,おさらぎ,鎌倉市古地名
- おしね,晩稻,おしね,和歌山縣日高郡
- おじや,小千谷,をぢや,小千谷縮で有名
- おしょろ,忍路,おしょろ,北海道小樽市
- おち,越智郡,をち,愛媛縣
- おちかた,彼方,おちかた,大阪府富田林市
- おにゅう,遠敷郡,をにふ,福井縣
- かいたに,栢谷,かいたに,岡山市、かや(栢)は國訓
- かじかざわ,鰍澤,かじかざは,山梨縣南巨摩郡
- かしわて,膳夫,かしはて,奈良縣橿原市
- かずえ,主計,かずへ,←數へ
- かすが,春日,かすが,←神+住む+か(所)、春日部は「かすかべ」
- かべ,河邊,かべ,東京都青梅市、「か(河)」は字音か訓か不明。
- からさわ,売澤,からさは,「売」は「殼」の略字か
- かれいざわ,王餘魚澤,かれひざは,青森縣南津輕郡
- かわい,川會,かはひ?,兵庫縣美方郡、「かは+ひ」か「か+あひ」か不明
- かんな,桑名,くゎんな?,千葉縣吉橋町、←桑ン名、「くはんな」とすべきか
- きわだくぼ,檗窪,きはだくぼ,群馬縣吾妻郡
- くず,圷,くづ,栃木縣那須郡、「あくつ(圷)」とは川沿ひなどの低地、「塙」の逆、
- くずは,楠葉,くづは,大阪府枚方市
- くまがい,熊谷,くまがい?,←くま(曲)+かひ(谷)と考へれば「くまがひ」だが、「くまがやつ」なら「くまがい」であらう。「くまがや」とも讀むから後者か。
- けい,飼飯,けひ,兵庫縣三原郡慶野松原の古稱、「慶野」は「けいの」とせざるを得ぬ
- けわいざか,化粧坂,けはひざか,鎌倉市/福島縣田村郡
- けんげいじ,建花寺,けんぐゑいじ,福岡縣飯塚市
- こうげ,郡家,こほげ,鳥取縣八頭郡
- こうぞ,楮,かうぞ,岡山縣勝田郡
- こうどう,革堂,かうだう,京都市上京區
- ごうらぎ,控木,?,仙臺市、東北方言で木の空洞をゴーラといふ。假名遣不明。
- さいが,雜賀,さひが,和歌山市、←雜
- さいかち,皀莢,さひかち,京都府上京區
- さえき,佐伯郡,さへき,廣島縣、大分の「佐伯市」は「さいきし」
- さえぐさ,三枝,さえぐさ,←「さきくさ」、「さいぐさ」とも、
- さかい,堺市,さかひ,大阪府
- さかわ,酒匂川,さかは,神奈川縣
- さそう,佐々布,ささふ,島根縣八束郡
- さわたり,澤渡温泉,さはたり,群馬縣吾妻郡、「さは+たり」か「さ+わたり」か不明
- さわらぎ,椹木,さはらぎ,京都市中京區
- じお,地黄,ぢお,橿原市、また「じょう」とも呼ぶが、假名遣不明。
- しじょうなわて,四條畷市,しでうなはて,大阪府
- しずがだけ,賤ヶ岳,しづがだけ,滋賀縣伊香郡
- しずくいし,雫石,しづくいし,岩手縣岩手郡
- しぼう,芝生,しばふ,徳島縣板野郡、同じ徳島縣の名東郡に「シバウ」もあるが、同じ假名遣とせざるを得ぬ。
- しゃかのお,目尾,しゃくゎのを?,福岡縣飯塚市、「目」は律令の「さくゎん」
- じゅうにそう,十二社,じふにそう,新宿區
- じゅうにそう,十二所,じふにそう,鎌倉市
- しょうじ,東海林,しゃうじ,←庄司
- しょうず,清水,しゃうづ,
- しらぬい,不知火,しらぬひ,熊本縣飽託郡
- しわい,鹽間,しはい?,高知縣須崎市、「しは+ひ」か「し+あひ」か不明
- しわく,鹽飽諸島,しはく?,香川縣丸龜市、「しは+く」「し+あく」か不明、「しあく」なら【ア→ワ】の不規則變化
- すえ,末江,すえ,福岡縣京都郡、「末」は「すゑ」、「江」は「え」なれど本來ヤ行
- すみのえ,住吉神社,すみのえ,←住之江
- そうず,早水/寒水/澤水,さうづ,
- そお,囎唹郡,そお,鹿兒島縣、現在は「曾於郡」
- そおり,佐布里,さふり,愛知縣知多郡
- たろう,太良尾,たらを,【アオ→オウ】
- ちょうなばら,釿原,てうなばら,徳島縣麻植郡
- つえがや,崩ヶ谷,つへがや,←つひゆ(潰)
- つえだまり,潰溜,つえだまり,高知縣吾川郡、←ついゆ(潰)
- つじ,辻驛,つじ,徳島本線驛名
- とうのみね,多武峰,たふのみね,奈良縣櫻井市
- どおめき,百目鬼,どおめき,千葉縣安房郡←「十+十」、「とをとを→とと→どど→どお」と變化したらしい。「とどろき」といった地名にも使はれる。百目鬼恭三郎は評論家
- とりいさき,華表先,とりゐさき,名古屋市熱田區舊地名、「華表」は鳥居の事。
- ならい,西風,ならひ,岩手縣江刺市/宮城縣栗原郡
- にいがた,新潟縣,にひがた,
- にいのみ,新家,にひのみ,
- におうざき,匂崎,にほふざき?,京都府舞鶴市、「匂ふ崎」なら「にほふざき」だらうが、「匂ひ崎」のウ音便で「にほうざき」と考へる事もできる。
- にしきおり,錦織,にしきおり,大津市、「にしごり」とも
- ねい,婦負郡,ねひ,富山縣、萬葉集には「めひ(賣比)」とあり
- ねずがせき,鼠ヶ關,ねずがせき,山形縣西田川郡
- のうがた,直方市,なほがた,福岡縣【アオ→オウ】
- はいばら,榛原,はいばら,奈良縣、靜岡縣、←はり(榛)
- はえばる,南風原,はえばる,沖繩縣島尻郡
- はくい,羽咋市,はくひ,石川縣
- ばくろちょう,馬喰町,ばくろちょう,東京都中央區←はくらく(伯樂)
- はじ,土師,はじ,埴+師
- はじうど,櫨宇土,はじうど,熊本縣本渡市、←はぜ(櫨)
- はじかみ,椒,はじかみ,兵庫縣城崎郡
- はなわ,塙,はなは,福島縣東白川郡、
- はわい,羽合町,はあひ,鳥取縣東伯郡【ア→ワ】
- ひいらぎ,柊,ひひらぎ,京都市中京區
- ひじかた,土方,ひぢかた,←ひち(泥)+方
- ひずめ,廿九日,ひづめ,石川縣鹿島郡、←日詰め
- ほうじろ,喰代,はうじろ,三重縣上野市、←はむ(喰)
- ほりやま,祝山,ほりやま,はふり(祝部)
- みえ,三重縣,みへ,
- みない,藥袋,みない,山梨縣南巨摩郡、元は「藥嚢」、ナング→なぎ→ない
- みのお,箕面市,みのお,大阪府
- みやけ,三宅,みやけ,福井市
- もうか,眞岡,まをか,【アオ→オウ】
- もず,百舌鳥,もず,阪和線驛名
- もずめ,物集女,もづめ,京都府向日市
- やまずみ,山祇,やまづみ,長崎縣佐世保市、←おほやまつみ、「わたつみ」の逆
- ゆうき,結城,ゆふき,結城紬で有名
- ゆくえ,行衞,ゆくゑ,京都市上京區、一般に「行方」を「行衞」と宛て字する事あり。
- るもい,留萌市,るもい,北海道
【その他氣付いたこと】
- 地名には、讀み方の由來が全く想像もつかぬ場合が少なからずあり、假名遣を考へる上で手の施しやうがない。何か由來があるのかもしれないが、小さな地名の場合、それを調べるのは容易ではない。「月出山」が「かんと」(大分縣日出市)「行々林」が「おどろばやし」(千葉縣船橋市)など、
- 二字地名には、假名遣が重複して上下どちらの字にかかるのか不明なものが多い。「鹽飽諸島」は「しは+く」か「し+あく」か、「澤渡温泉」は「さは+たり」か「さ+わたり」か、「青梅市」は「あを+め」か「あ+うめ」か、
- 中國地方には「たお、たわ、たふ、とう(峠/垰/嵶/屹)」なる地名が多い。「たわむ(撓)」に由來する由であるが、「たうげ(峠)」と假名遣を混同しやすい。
- 楳本。むめもと、京都市山科區。「う」が「む」となるものは、「むめ(梅)」「むま(馬)」「むなぎ(鰻)」「むまる(産)」「むまご(孫)」など、いくつかある。しかし通常これらは歴史的假名遣とは看做されない。
- 八重洲。漢字どほりであれば「やへす」とならうが、この地名は蘭人Jan Joosten
の名に因み、舊稱は「八代洲」であった。それゆゑ「やえす」とするも、あながち誤りとは言へまい。
- ウラジオストック。漢字で「浦鹽斯徳」とする。外國地名に訓讀みで宛て字したものは珍しい。しかしながら、漢字どほりなら「ウラジホ」となってしまふ。
- 臺灣高雄市。もと原住民の地名であり、漢人は「打狗(ターカウ)」と宛て字をした。日本領となった後、「高雄」とこれまた訓讀みの宛て字をした。現在、世界地圖には「カオシュン」と振り假名をつけるものが多いが、これは高雄を北京語讀みしたものに過ぎず、原音ターカウから隔たってしまった。問題はこれを「たかを」としてよいかどうかである。古い高雄驛の寫眞では「たかを」となってゐた。京都にも「高雄」があるが、こちらは文句なく「たかを」であらう。
- 齒舞諸島。北海道の地名も宛て字が多い。擇捉島は「擇らび捉らう」との訓讀みらしい。北方領土はしばしば「クナシリ、エトロフ」などと片假名書きされるが、それでは「ハボマヒ」とすべきではなからうか。
【人名】
古典の人名でまづ問題になるのが
- かんけ,菅家/菅原道實,くゎんけ
- ばしょう,芭蕉,ばせをこの二つである。「官クヮン」「管クヮン」などからの聯想であらうが、廣韻などの韻書に基づく字音假名遣は「菅カン」である。
- えんのおずぬ,役小角,えんのをづぬ,「役」を「エン」と讀む根據不明。
- のんこう,のんかう,樂燒の陶工名。漢字は不明。
- もんのう,文雄,?,『磨光韻鏡』の著者。「もんのを」かもしれない。
- あいば,饗庭,あひば
- おさらぎ,大佛,おさらぎ,←おほさらぎ、大佛次郎は小説家
- かのう,狩野,かのう,
- かのう,加納,かなふ,
- さえき,佐伯,さへき,
- たてわき,帶刀,たてはき,
- つじ,辻,つじ,
- どおめき,百目鬼,どおめき,←「十+十」、「とをとを→とと→どど→どお」と變化したらしい。百目鬼恭三郎は評論家
- まつとうや,松任谷,まつたふや,「任」は「たふ、たへる」
【假名書きとなった地名人名】
平成10年2月から郵便番號は7桁となり、日本中の主な地名や市町村名が身近な形で網羅化される事となった。北川宣浩さん(NBE02322@nifty.ne.jp)作成のフリーデータ『新舊郵便番號と市區町村コードデータベース98年版D』を參照して、假名書きの地名や市町村名を檢索した。
【市町村名】假名書きの市町村名は13あり、その内で假名遣が問題となるのは「えりも町、いわき市、びわ町、えびの市」である。
- えりも町 → ○ (襟裳岬)
- いわき市 → いはき市(磐城國)
- びわ町 → びは町 (琵琶湖)
- えびの市
- 北海道虻田郡 ニセコ町
- 北海道幌泉郡 えりも町
- 青森縣 むつ市
- 福島縣 いわき市
- 茨城縣 つくば市
- 茨城縣 ひたちなか市
- 東京都 あきる野市
- 滋賀縣東淺井郡 びわ町
- 滋賀縣高島郡 マキノ町
- 和歌山縣伊都郡 かつらぎ町
- 和歌山縣西牟婁郡 すさみ町
- 山口縣阿武郡 むつみ村
- 宮崎縣 えびの市
【地名】この項目も前項と同樣に檢索した。郵便番號、市町村、地名の順番で記す。同樣の地名が複數あるときは、一つで代表させた。
(〒) (市町村名) (地名)〒002-807_,北海道札幌市北區, あいの里 → 愛?藍?會?〒933-0911,富山縣高岡市,
あわら町〒491-0835,愛知縣一宮市, あずら〒080-1203,北海道河東郡士幌町, いこい〒068-2164,北海道三笠市,
いちきしり〒919-0424,福井縣坂井郡春江町, いちい野〒039-2507,青森縣上北郡七戸町, えぞ花〒509-0104,岐阜縣各務原市,
各務おがせ町〒923-0314,石川縣小松市, おびし町〒667-0303,兵庫縣養父郡大屋町, おうみ〒746-0055,山口縣新南陽市,
かせ河原町〒454-0957,愛知縣名古屋市中川區,かの里〒319-1417,茨城縣日立市, かみあい町〒010-0861,秋田縣秋田市,
手形からみでん〒701-0132,岡山縣岡山市, 花尻ききょう町〒056-0005,北海道靜内郡靜内町, こうせい町〒270-0102,千葉縣流山市,
こうのす台〒510-8033,三重縣四日市市, 下さざらい町〒703-8248,岡山縣岡山市, さい〒921-8132,石川縣金澤市,
しじま台〒990-2367,山形縣山形市, すげさわの丘〒518-040_,三重縣名張市, すずらん台 →鈴蘭?〒010-0911,秋田縣秋田市, 保戸野すわ町
→諏訪?〒491-0873,愛知縣一宮市, せんい〒987-0423,宮城縣登米郡南方町, ぜん荷山〒090-083_,北海道北見市,
とん田〒756-0015,山口縣小野田市, ひがんだ團地〒021-081_,岩手縣一關市, ほうりょう〒911-0835,福井縣勝山市,
遲羽町ほう崎〒780-0976,高知縣高知市, みづき〒284-0043,千葉縣四街道市,
めいわ〒329-0528,栃木縣河内郡上三川町,ゆうきが丘〒647-0023,和歌山縣新宮市, 蓬らい〒598-004_,大阪府泉佐野市, りんくう往來
→臨空?〒590-0535,大阪府泉南市, りんくう南濱 →臨空?〒797-0028,愛媛縣東宇和郡宇和町,れんげ〒012-0833,秋田縣湯澤市,
カツクイ澤山〒969-3122,福島縣耶麻郡猪苗代町,ガギ田〒778-0008,徳島縣三好郡池田町, クヤウジ〒778-0004,徳島縣三好郡池田町,
シンマチ〒778-0013,徳島縣三好郡池田町, シンヤマ〒509-3314,岐阜縣大野郡朝日村, スズラン高原→鈴蘭?〒563-0044,大阪府池田市,
ダイハツ町〒771-2104,徳島縣美馬郡美馬町, チゲジ〒639-3622,奈良縣吉野郡川上村,
井戸(ネジ畑)〒777-0301,徳島縣美馬郡木屋平村,ハジコノ〒777-0301,徳島縣美馬郡木屋平村,ビヤガイチ〒778-0009,徳島縣三好郡池田町,
ヤサン
中には、現代假名遣らしからぬ綴りも散見した。
〒991-0006,山形縣寒河江市, 夕カヘ〒771-2104,徳島縣美馬郡美馬町, ノリコヘ〒771-2103,徳島縣美馬郡美馬町,
ナロヲ〒470-2337,愛知縣知多郡武豐町, ヱヶ屋敷〒612-8403,京都府京都市伏見區,
深草ヲカヤ町〒969-3121,福島縣耶麻郡猪苗代町,ヲヒテ川〒470-2366,愛知縣知多郡武豐町, ヲヲガケ
外來語由來かどうか不明のものも散見した。これらは必ずしも假名遣に結び付かない。しかしながら、假名遣は外來語には適用されないので、語の出自が不明な場合、判斷に迷ふ可能性がある。例へば「ガス平」なる地名は「グヮス平」とすべきかどうか、何ともいへないところである。
〒089-0552、北海道中川郡幕別町、 札内あかしや町〒669-1323、兵庫縣三田市、 あかしあ台〒039-2601、青森縣上北郡東北町、
ガス平〒778-0003、徳島縣三好郡池田町、 サラダ〒989-3433、宮城縣仙臺市青葉區、 ニツカ〒441-3434、愛知縣渥美郡田原町、 ほると台
【鐵道路線名】鐵道關係の名稱は多く地名から取ってゐる。この項目は日本交通公社『完全保存版
日本の鐵道全驛驛名總覽9938(『旅』1997年11月號(第71卷第11號)別册付録)』による。
- 千葉縣 いすみ鐵道 → ○(夷隅郡)
- 京都府 北近畿タンゴ鐵道 → ○(丹後國)
- 高知縣 土佐くろしお鐵道 → くろしほ(黒潮)
- 大分縣 別府ラクテンチケーブル→ ○(樂天地?)
なほ、栃木縣の眞岡鐵道は、現代假名遣なら「もおか」とすべきところ、長い間「もうか」と書いてゐた由である。現在は訂正されてゐる。
【列車名】
平成10年の各月時刻表による。特急や急行の名稱は近年大きく變りつつある。例へば
- 羽越線 新特急 おはようとちぎ → おはやう (お早う)
- 内房線 L特急 おはようさざなみ → おはやう (お早う)
- 外房線 L特急 おはようわかしお → おはやうわかしほ (お早う若潮)
- 常磐線 L特急 さわやかひたち → ○ (爽やか)
- 上越線 新特急 さわやかあかぎ → ○ (爽やか)
また、ローマ字を混ぜたために假名遣の適用が見當もつかないものもある。
- 九州内 蒸氣 あそBOY → ? (阿蘇・遊ばう)
- 内房線 ビーチインBOSOわかしお → ばうそう わかしほ (房總若潮)
次の如き例も語の由來がわからず、假名遣が特定できない。
- いわき リゾートゆうひたち → ? (?)
- 明石海峽 あい → ? (?)明石海峽開通記念特急
それに比べれば、從來型の名稱は由來も單純なら、假名遣もわかりやすかった。
《過去の列車名》この項目は『新・列車名大研究(1989年1月 大久保邦彦 曾田英夫 日本交通公社)』による。特に間違へやすさうなものを示す。
- 東海道 うわじま → (宇和島)
- 北海道 えんれい → (延齡・名寄市市花)
- 出雲市 かいけ → (皆生)
- 東海道 つわの → (津和野)
- 日南線 なんごう → なむがう(南郷町)
- 東北線 はちまんたい → はちまんたひ(八幡平)
- 九州内 はんだ → (飯田高原)
いづれも漢字がわかれば何といふ事はなからう。しかし平假名だけでは「うはじま」「はちまんだい」などと誤る可能性が大きい。
【驛名】
この項目は日本交通公社『完全保存版
日本の鐵道全驛驛名總覽9938(『旅』1997年11月號(第71卷第11號)別册付録)』による。似た名前の驛名が續く時は、代表的なもののみ示す。
- あいの里教育大 北・札沼 札幌市北區
- あかじ 平成筑豐伊田 福岡縣小竹町
- 阿蘇下田町ふれあい温泉 南阿蘇鐵道 熊本縣長陽村
- アプトいちしろ 大井川鐵道 靜岡縣本川根町
- あわくら温泉 智頭急行 岡山縣西粟倉村
- いこいの廣場 天龍濱名湖鐵道 靜岡縣掛川市
- いこいの村 九・豐肥 熊本縣阿蘇町
- 大池いこいの森 北越急行ほくほく 新潟縣頸城村
- いずみ野 相鐵いずみ野 横濱市泉區
- いづろ通 路面 鹿兒島縣鹿兒島市
- いのつき 松浦鐵道 長崎縣江迎町
- いりなか 名古屋市鶴舞 名古屋市昭和區
- いわき 東・常磐 福島縣いわき市
- うきは 九・久大 福岡縣浮羽町
- うらがわら 北越急行ほくほく 新潟縣浦川原村
- えびの 九・吉都 宮崎縣えびの市
- おかどめ幸福 くま川鐵道 熊本縣免田町
- おもちゃのまち 東武宇都宮 栃木縣壬生町
- おゆみ野 千葉急行電鐵 千葉市緑區
- おりはた 山形鐵道 山形縣南陽市
- 勝沼ぶどう郷 東・中央 山梨縣勝沼町
- くいな橋 京都市烏丸 京都市伏見區
- 源じいの森 平成筑豐田川 福岡縣赤村
- 芝浦ふ頭 新交通・東京臨界新交通 東京都港區
- しんざ 北越急行ほくほく 新潟縣十日町市
- すずかけ台 東急田園都市 東京都町田市
- すずらんの里 東・中央 長野縣富士見町
- せんげん台 東武伊勢崎 埼玉縣越谷市
- つつじヶ丘 京王 東京都調布市
- ときわ台 東武東上 東京都板橋區
- ときわ台 能勢電鐵妙見 大阪府豐能町
- なかもず 大阪市御堂筋 大阪府堺市
- なんば 大阪市御堂筋 大阪市中央區
- 東あずま 東武龜戸 東京都墨田區
- ひらんだ 大井川鐵道 靜岡縣本川根町
- ふじみ野 東武東上 埼玉縣富士見市
- ふれあい生力 平成筑豐伊田 福岡縣赤池町
- ほうらい丘 索・比叡山鐵道 滋賀縣大津市
- まつだい 北越急行ほくほく 新潟縣松代町
- みずほ台 東武東上 埼玉縣富士見市
- みつわ台 懸・千葉モノレール 千葉市若葉區
- めじろ台 京王高尾 東京都八王子市
- やながわ希望の森公園前 阿武隈急行 福島縣梁川町
- ラクテンチ上 索・別府國際觀光 大分縣別府市
- りんくうタウン 西・關西空港 大阪府泉佐野市
【假名書きの人名】
この項目は『筆名 作家のペンネーム辭典(1990年 佐川章 創拓社)』 などによる。
- いいだ もも
- キノ トール
- 嵯峨の屋 おむろ (お室)
- サトウ サンペイ
- サトウ ハチロー (佐藤八朗)
- つか こうへい (いつか公平)
- なだ いなだ (スペイン語 nada y nada)
- 平塚 らいてう (雷鳥)
他にもいろいろありさうである。
- フジモリ大統領,藤森,→フヂモリ、外國人名であるから假名遣を適用できないと考へる事も可能ではある
- イチロー,鈴木一朗→イチラウ
- カンサイ,山本寛齊,→クヮンサイ
- ケンゾー,高田賢三→ケンザウ
- 谷 ナオミ
- ハナヱ・モリ,森英惠(歴假名どほり)
【會社名、商品名など】
- サントリー,,サントリヰ?,(sun鳥居)
- ダットサン,,ダットサン,(脱兎産)
【流行語】
- ドラえもん,どらゑもん,←野良猫+右衞門、「銅鑼燒き」とは關係ない。
- テレホーダイ,はうだい,←放題
- ゴーマニズム宣言,がうまん,←傲慢
- カミオカンデ,かみをか,←神岡(地名)、中性子觀測裝置名
- ジベタリアン,,←ぢ(地)べた+ベジタリアン(菜喰主義者)
- ドニーチョ,,←土曜日曜電話割引き
- ゴジラ←ゴリラ+くぢら
- やおい本,,←「山なし、落ちなし、意味なし」
【生活用品】
- あかだな,閼伽棚,アカダナ,
- あじろ,網代,あじろ,
- あんか,行火,あんくゎ,
- うちわ,團扇,うちは,
- おきび,熾火,おきび,←おこし火
- おしろい,白粉,おしろい,「おしろひ」ならず
- おでん,お田,おでん,←田樂
- かっぽう,割烹,かっぱう,
- かやくごはん,加藥御飯,かやくごはん
- かんじき,[木累]橇,かんじき,
- かんじん縒り,,かんじん縒り,由來は「觀世」「勸進」兩説あり
- きょうけち,夾纈,ケフケチ,染物
- きんぴらごぼう,金平牛蒡,きむぴらごばう,「金比羅」とは無關係
- けんちん,卷纖,けんちん(唐音)
- けんどん箱,儉飩箱,けむどん,「慳貪」なら「けんどむ」
- げんのう,玄翁,げんのう,「翁」は音「ヲウ」
- こうけち,纐纈,かうけち,染物
- こうもり傘,蝙蝠傘,かう〜,
- こんろ,焜爐,こんろ,
- さじ,匙,さじ,茶匙
- じゃのめがさ,蛇の目傘,じゃのめがさ,
- じゅうのう,十能,じふのう,
- じゅず,數珠,じゅず,
- じょうご,漏斗,じゃうご,←上戸
- じょうろ,如雨露,じょうろ,ポルトガル語
- せいろ,蒸篭,せいろう,
- ぞうすい,雜炊,ざふすい,
- そうめん,索麺/素麺,さうめん,
- ぞうり,草履,ざうり,
- そっくい,續食,そっくひ,
- たくあん,澤庵,たくあむ,
- たどん,炭團,たどん,
- たらい,盥,たらひ,
- たわら,俵,たはら,
- ちょうつがい,蝶番,てふつがひ,
- てんぴ,天火,てんぴ,
- とい,樋,とひ,かけひ(筧)
- はいちょう,蠅帳,はひちゃう,
- ひりょうず,飛龍頭,〜づ?,ポルトガル語
- ほうじちゃ,焙茶,はうじちゃ,焙は呉ベ漢ハイ、ハイ→ハウ
- ほうろく,炮烙,焙烙,ハウロク
- ほお,頬,ほほ,朴(朴齒)
- ほおば,朴齒,ほほば,
- ホーロー,琺瑯,はふらう
- もんじゃやき,文字燒?,モンジャヤキ,
- やかん,藥鑵,やくゎん,
- らう,羅宇/斑竹,らう,ラオス産の竹管、「らお」とも
【雜誌名】この項目は『雜誌のもくろく1999』栗田出版販賣(年刊)
を參考にした。雜誌名はおほむね意味をとりやすく、假名遣に迷ふものは少ない。しかし
- あるじゃん(リクルート)
- じゃらん(リクルート)
- しんびよう(新美容出版)
- ゆうゆうムック(北隆館)
- ゆほびか(マキノ出版)
- ユリイカ(青土社)など、題名だけ見ても判斷しにくからう。例へば「あるじゃん」は「あるではないか」を連想するが、正否は不明である。「じゃらん」はインドネシア語に由來する由である。
また、假名遣の判斷は容易であるが、
- ほんとうの時代(PHP研究所)
- ほんとにあった怖い話(朝日ソノラマ)の2誌をならべると、却って歴史的假名遣の方が「ほんたう、ほんと」と不統一な印象を受けてしまふ。
更に
- dancyu(プレジデント社)は、「男子廚房に入る」に由來するといふが、「廚チウ」を誌名に反映させるのは無理であらう。
- BANDやろうぜ 寶島社
- NHKのおかあさんといっしょ 講談社
- dancyu プレジデント社
- あるじゃん リクルート
- いずみコミック 一水社
- いたずらぶっく 小學館
- 英語であそぼ NHK出版
- えくぼあかちゃんえほん 講談社
- おおきなぽけっと 福音館書店
- おかずのクッキング 全國朝日放送
- おとこの遊び專科 青人社
- おはよう21 中央法規出版
- おはよう奧さん 學習研究社
- かがくのとも 福音館書店
- かわいい小動物 フロム出版
- がん看護 南江堂
- 鍛える國語教室 明治圖書出版
- きょうの健康 NHK出版
- きょうの料理 NHK出版
- げーむじん ティーツー出版
- 月刊ずいひつ 日本隨筆家協會
- げんき 講談社
- さわやか元氣 成美堂出版
- ざ・いけのぼう 日本華道社
- じゃらん リクルート
- 素人娘まるかじりナンパ塾 日正堂
- しんびよう 新美容出版
- だいじょうぶ 小學館
- てんとう蟲コミックス 小學館
- ふれあいケア 全國社會福祉協議會
- ほんとうの時代 PHP研究所
- ほんとにあった怖い話 朝日ソノラマ
- まんが〜 (多數あり)
- みんなのねがい 全國障害者問題研究會
- めばえ 小學館
- ゆうゆうムック 北隆館
- ゆほびか マキノ出版
- ユリイカ 青土社
- ら・かん 日本漢字能力檢定協會
【郷土玩具】
この項目は『日本郷土玩具事典(1964年 西澤笛畝著
岩崎美術社)』による。靜岡市の「おかんじゃけ」は「お髮竹」といふから,「おかんぢゃけ」とすべきか
- 秋田おばこ
- イナウ ,北海道 ,アイヌ祭神
- うわはん人形,岡山縣川上郡,踊りの囃し言葉
- えんぶり人形,青森縣八戸 ,農具
- おかんじゃけ,靜岡市 ,
- ずぼんぼ ,淺草神社 ,獅子舞の囃し言葉
- いづめこ人形,山形縣鶴岡 ,育兒用の籠。「いづめ」は「ふご」の古語
- でんぼ ,京都 ,炮烙
- ぼんでん ,秋田縣横手市,旭岡山神社の「梵天」祭奉納物
【公共施設】
調査範圍は東京周邊のみである。
- 映畫館 シネマスクエアとうきゅう → とうきふ (東急)
- 映畫館 よこはま西口にっかつ → にっくゎつ(日活)
- ホール ニッショーホール → ニチセウ (日本消防會館)
- ホール ゆうぽうと簡易保險ホール → いうぽうと(郵)
- ホール イイノホール → イヒノ (飯野海運)
- 美術館 相田みつを美術館 → ○
- 美術館 ニューオータニ美術館 → オホタニ
- 遊園地 後樂園ゆうえんち → いうゑんち(遊園地)
- 遊園地 西武園ゆうえんち → いうゑんち(遊園地)
- 遊園地 としまえん → としまゑん(豐島園)
- 遊園地 ナムコナンジャタウン → (なんぢゃもんぢゃ?)
- 博物館 淺草賑わいみゅーじあむ → 賑はひ
- 博物館 ジュサブロー館 → ジュサブラウ?
- 美術館 いわさきちひろ繪本美術館 → いはさき?
- ホテル ホテルニューオータニ →
- ホテル ホテルオークラ → 鄰地に大倉集古館あり
- 百貨店 そごう → そがふ (十合)
- 水族館 しながわ水族館 → しながは (品川)
【軍艦】
この項目は『聯合艦隊軍艦銘銘傳
全八六〇餘隻の榮光と悲劇』(昭和63年,光人社,片桐大自)による。自衞隊の保有する艦艇の命名はすべて平假名となり,假名遣があらはになってしまった。
【天象】
【海洋】潛水艦は「○潮」のつくものが多い
【草木】
- しい,護,椎,昭和二十年代の警備艇など小艇に,花の名前が多い。
- すいせん,,水仙,宣長の字音假名遣では「すゐ」とされたが,これは誤
- すいれん,,睡蓮,宣長の字音假名遣では「すゐ」とされたが,これは誤
- ふじ,,藤,出典の解説によると,南極觀測船の「ふじ」は「富士」であり,本來は假名遣が異る筈のところ,新假名遣では同名になり,しかも同時期に在籍した事があるといふ。「ふぢ」は昭和二十八年から四十六年まで。「ふじ」は昭和四十年進水。
- かんな,,,軍用としては珍しくラテン語である。
【鳥名】
- おおたか,驅潛艇,大鷹,「たいよう」と讀めば,舊軍の空母
【島名】
- あわじ,掃,淡路島
- あわしま,掃,粟島
- いおう,掃,硫黄島,舊軍の海防艦に「伊王」あり。長崎港外の伊王島。
- おうみ,掃,長戸市の青海島,出典の解説によると、瀬戸内海に「大三島」があり紛れやすいが,こちらは「おおみ」となり,假名遣が異るとある。しかし現代假名遣の「おうみ」から眞っ先に聯想するものは「近江國」であらう。「大三島」は「おほみ」、「近江國」は「あふみ」となる。「青海」は「あうみ」か「あをみ」か,假名遣に迷ふところ。同樣の例に東京の地名「青梅」がある。
- おぎしま,掃,備讚諸島の男木島
- とうし,掃,志摩の答志島
- はりお,掃,佐世保灣と大村灣間の針尾島
- ふくえ,掃,五島列島の福江島,舊軍の海防艦に「福江」あり「ふかえ」と讀んだ。