語源辭典 動物編・植物編
吉田金彦 平成十三年 東京堂出版
平成疑問かなづかひ―假名遣標準化計劃
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・あいなめ、愛魚女・鮎並
『倭訓栞』は「鮎のやうに滑らかであるから」としたが、滑らかな魚と「アイナメ」に限定するのはいかが。『大言海』に「鮎に似てゐることから、鮎並の轉」とするのがよいが、これだけでは、どんな點で似てゐるのかが明確ではない。
・あおじ、蒿雀
もとアヲシトトの略。頬の青いシトトといふ意。……
奈良時代には、シトトは今日のホホジロ・アヲジなど廣くホホジロ類一般を指すことばであったやうである。
・あおだいしょう、青大將
『大言海』に「青大蛇の延と云ふ」と言ったのが當ってゐる。……
「青蛇」(和漢三才圖繪)とある。
・あかしょうびん、赤翡翠
カハセミ類の古名ソニから變化したものである。すなはち、ソニ→ソビ→ショウビ→ショウビンで、赤いソニの意。
・あじ、鰺
『俚言集覽』や『倭訓栞』では「味のある魚」であることを擧げ、『東雅』も「アヂとは味也。其味の美をいふとなりといへり」とした。
・あひる、家鴨
『大言海』は「足廣の略」として足の水かきが大きくて廣いことを言ふとしてゐるが、『東雅』はアヒロとは足濶と見、その濶歩するをいひしと見えたり」と歩く差萬い解してゐる。
・あほうどり、信天翁
無人島を繁殖地にしてゐるので、人を恐れず、容易に捕へられるところからとも、陸上での歩き方が不器用で簡單に捕へられるからともいふ。
・あめんぼ、水黽
水面で小蟲などを捕へて食べるが、そのときに水飴の臭ひがするところからいふ。すなはち「飴棒」または「飴坊」からきた名稱と思はれる。
・あんこう、鮟鱇
アンコウの語源は、アカヲ(赤魚)の轉(大言海)とあるやうに、赤魚→アコウと、顎→アンゴの語形變化とのダブリが相まって、アンコウになっていった可能性が強い。
・いかなご、玉筋魚
『大言海』は「詳らかならず」としたうへで、カマス(梭子魚)と混じて「如何魚子」の意味でイカナゴとする説を紹介してゐる。……
一體どのやうにして生活してゐるのかが、漁師たちにとって不明であったことから、如何魚=イカナゴとなったものと思ふ。
・イクラ、
ロシア語でикраで、「魚の卵」の意の ikra から由來したもの。
・いさき、伊佐木
イサキは、イサ+ナキである(衣食住語源辭典)。すなはち、イサは磯臭いところから、ナキは別種でよく混同されるシマイサキが浮袋を使って警戒音を發するところから來てゐる。「磯臭く、鳴く」魚がイサキといふわけである。
・いのしし、猪
「ゐ」の語源は猪や豚の鳴き聲と關係がある。……
これらの語はすべてwとbとpといふ子音で始る。
・いもり、井守
『日本國語大辭典』では、ヰモリ(井守)説と、壁などを離れないからヰモリ(居守)といふのと二説を紹介してゐるが、前者が壓倒的に支持されてゐるやうに、清流の井の水中に居るといふことが語源として有力であらう。
・いわし、鰯
「いやし也、魚の賤しき者也、或曰く、よわし也、とりてはやく死るゆゑ也」(日本釋名)、「イワシとは弱也。其水を離ぬれば、たやすく死するをいふ也」(東雅)とあるやうに「弱し」の轉が定説になってゐる。
・いんこ、鸚鵡
漢語をそのまま唐音讀みした借用語で、
・うお、魚
結論をいへばヲ(尾)のある生き物、といふのが語源である。
・うぐい、石斑魚
一般に體が細長く、中には「丸太ん棒」がその語源とされるマルタもゐる。したがって、イグヒの語源も現在言ふところの杭=クヒ、すなはち齋杭=イグヒに求めることができようか。
・うじ、蛆
『古事記』に「火燭して入り見ます時に宇土たかれころろきて」、『新撰字鏡』に「[虫昔] 宇自」のやうに見える。……
蒸されて濕氣のある所から發生したものがムシ(蟲)で、その子音m音が下のシ音を濁音化させて脱落したのがウジ(蛆)である、と見るのが正解とならう。
・うとう、善知烏
藤原定家の「陸奧の外の濱なる呼子鳥鳴くなる聲はうとうやすかた」……
有力なのはアナ(穴)説である。すなはち青森縣八戸では、出崎ではなくて、穴・洞をウトウといひ、山形縣・秋田縣・九州でも穴をウトウ・ウトロと呼ぶこと、ウトウが子を穴で育てること、早く飛ぶ鳥の漢字に「穴」を用ゐた「鴪」の字があること、さらには青森縣の善知烏神社、長崎縣の鵜戸神社の本體が洞穴であることなどが根據となってゐる。
・うわばみ、蟒蛇・大蛇
『大言海』にいふごとく「大蝮(大蛇)の轉」でよい。
・え、餌
『日本國語大辭典』の語源説五項の中では、ウヱ(飢)の義と通じるか、とした『倭訓栞』の説がよい。飢ゑた時に得られるもの、といふ意味があるからである。
・えそ、狗母魚・鱠
ヱソ科の外見上の最大の特徴は、下顎が上顎より長いこと、すなはち下顎の先端が上へ曲ってゐることである。このためヱソの頭部は、人間でいへば笑顏のことき表情を呈する。ヱソのヱは「笑」に通じるものとして『日本國語大辭典』でも一つしか語源説を出してゐない。……
これは苦しい解釋となる。むしろ練り固めて作る食品材としての命名で、魚肉から造る練製品、ウヲソ(魚酥)が語源であらう。
・えつ、齊魚
エツで特徴的なのは、その口である。非常に大きく、上顎骨の後端は胸鰭の基底にまで達する。また下顎は上顎に覆はれてしまふほどで、魚の口といふよりは、むしろ「くちばし」を彷彿とさせる。エソの語源は、「鳥のくちばし」を意味するアイヌ語の「エツ」と見たい。
・おこぜ、虎魚・〓
『新撰字鏡』に「乎己自」、『和名抄』に「乎古之」の記され、古名をヲコジ・ヲコゼと言ったことは間違ひない。
・おさむし、歩行蟲
ヲサ(筬)はヲサシ(麻差)の略である。
・おしどり、鴛鴦
イトヲシミ深い鳥であるところから、形容詞のヲシ(愛)をそのまま鳥名にしたものである。
・おっとせい、膃肭臍
「膃肭臍」はオットセイの陰莖のことで、中國で強壯劑として珍重された(本草綱目)。アイヌでオットセイは onnep といひ、アイヌの採ったオットセイの陰莖の部分が長崎經由で盛んに中國に輸出され、中國でこれを「膃肭」と音譯した。
・おひょう、大鮃
大きなヒラメ「大鮃」を「おほひゃう」と讀んだことから、オヒョウとして定着した。
・かいつぶり、〓〓
カヒツブリは、カキ(掻)ツ-ムグリ(潛)ツの約略か(掻いたり潛ったり)といふ説(大言海)、……
ニホの語源は、ニフ(入)鳥、すなはち水に入る鳥の意といふ説(大言海)
・ががんぼ、大蚊
「カノオバ(姥)・カノウバ(姥)」などの稱もあることから考へて、語源は蚊の年長者・蚊の中の嫗の意、つまり「蚊の中の、大きいもの」「蚊々の姥」といふ意味であらう。
・かげろう、蜉蝣
この蟲の飛び方が春の地平にちらちらと立ちのぼる陽炎の搖らめきを思はせるところからの名である。名詞のカゲロヒから轉じたもので、もとは動詞カギロフからきたものである。
・かじき、旗魚・梶木
中世末から近世における和船には、梶木と呼ばれる船底材として取つける棚板があった。カジキは、劍状に前に突き出た上顎で、この舟板を突き通すことがあったため、この名稱になったものと思はれる。
・かつお、鰹
「かつをはかた魚也、ほしてかたくなるゆへなり、たとつと通ず、うを略す」(日本釋名)、「かつをと云魚は、古はなまにては食せず、ほしたる計用ひし也、ほしたるをもかつをふしとはいはず、かつをと計いひしなり、かつをはかはうを也、ほせばかたくなる故也、かたうをゝ略してかつをといふなり」(定貞雜記)……
『大言海』は「堅き魚の義とする説あれど海中に[月昔]なるはなし」と批判してゐる。カツヲは漁師が釣上げると、木の棒で叩いたりぶつけたりして處置しておくから、米や麥を搗つやうに魚を搗つので、その點他の魚とは違ってをり、漁業處理法の特徴から名づけられた。
・かっこう、郭公
クヮッコウは明らかに鳴き聲による命名と思はれる。
・かに、蟹
「古漢字音甲の和語化」
・かも、鴨
中國語の「雁」(漢音ガン)から出、わが國では、語頭を濁ることを好まなかったのでカムと發音し、それがカモと轉じたもの(日本古語大辭典)といふ説などがある。しかし『衣食住語源辭典』の言ふやうに、古くはカモとカモメの區別があいまいであったとすれば、カモの語源は、カモメと同じといふことになる。
・かれい、鰈
『和名抄』の割注に「和名加良衣比、俗云加禮比」とあるのは注目してよい。その體形の類似からエヒの一種であると考へられたのである。
・かわうそ、川獺
『大言海』によるとヲソ(獺)はウヲヲス(魚食)の義だとしてゐる。
・かわせみ、川蝉・翡翠
ソニ・ソニドリの名で奈良時代から知られる。……
『類聚名義抄』の「少微(セウビ)」、……
ソニドリはもともとアカセウビンを指すことばであったといふことになる。
・がん、雁
江戸時代には、カリは雅語、ガンが一般名といふ使ひ分けがなされてゐる。
・かんたん、邯鄲
漢字「邯鄲」は中國河南省の地名
・きじ、雉
キギシのつづまったもの、キギシ→キイシ→キジ
・こうなご、小女子
『衣食住語原辭典』が述べるやうに、コ(小さい)ウナゴ(ウナギ)が語原であらう。體形はウナギのやうに細長く、しかも五センチ程度の大きさであれば、妥當な説である。
・こうのとり、鸛
歴史假名はカウノトリ。『大言海』に「カウは鸛の音なるクヮヌの轉」とあるやうに クハン→クヮン→カン→コウの音變化と見られる。しかしまた『日本書紀』の用字「[霍鳥](鶴)」から考へると、この字音はカクだからカクのウ音便カウとも解される。カク→カウ→コウ。コウノトリは、嘴をカタカタと咬み合せ、拍子木を打つやうな音を立てて求愛するので、カク(鶴)字音説のはうがそれに合ってゐる。
【按】多くの國語辭典では「こふのとり」。
・こおろぎ、蟋蟀
『箋注和名抄』『時代別國語大辭典・上代編』などは「コホロ」と鳴くことによるとする。
・ごかい、沙蠶・砂蠶
『大言海』に「ミミズを餌とするに對して、小飼を濁音に云ふ語となるか。カヒは餌なり」といふのが定説である。
・こまい、氷下魚
他のタラ科目の魚に比べて體が小さいため、コマイ(小さいの意)と呼ばれるやうになった。
・ごんどうくじら、巨頭鯨
ゴンドウの語源には二説がある。一つは、この鯨が五島列島の海に多いため「五島クヂラ」がなまってゴンドウクジラになったとする説だが、この鯨は世界の海にをり、日本近海でもとくに五島列島近くの海に集中的にゐるわけではない。もう一つはゴンドウのゴンは「大」を意味し、ドウは「頭」の意味であるとする説。用字の「巨頭」とほぼ同じ發想である。しかし體も頭も他の鯨やイルカに較べて大きいとはいへない。ゴンドウクジラの大きな特徴は、前頭部から口にかけての形が丸く、くちばしが突き出てをらず、前頭部のメロン(melon)と呼ばれる部分が非常に丸い。つまり「丸頭クジラ」で「丸頭」を音讀みすると「丸頭」となる。まるあたま→がんとう→ごんとう→コンドウ、といふやうに變化したと考へたらどうだらうか。
・ざこ、雜魚
漢語「雜喉」または「雜魚」の變化したことば。「雜」の漢音サフの慣用音ザフ、「魚」の呉音ゴ。拗音化してジャコともいふ。
・さざえ、榮螺
『日本國語大辭典』では、小家・小枝・碍枝・塞手榮・礫の轉など五説をあげてゐるが、最後の松岡靜雄の説が參考になる。
・さば、鯖
『東雅』に「古語の多きを謂うてサハといふ」に注目してみたい。「サハ→サバ」といふ濁音化は十分にあり得るし、「鯖を讀む」とは「物を數へるとき、とくに數が多いときに實際よりごまかすことをいふ」のだから、サバが多數で群を成すために、正確に數へられないことから生じた慣用句であると考へ得る。……
まさにサバ(鯖)はサハ(多量)なのである。
・さはら、鰆
サハラはサバ科であることから、サバ(鯖)の語源に注意を拂ふ必要がある。
・さんま、秋刀魚
『衣食住語源辭典』がいふやうに、サンマが「三馬」や單に「馬」といはれたことを合せ考へると、サンマはもとサウマ・サムマであり、イサムマ(磯・甘味)→サンマの可能性はある。
・しいら、鬼頭魚・[魚暑]
歴史假名はシヒラ。シヒラはシヒナ(粃)の訛で、空籾の意味からの轉用である。
・じがばち、似我蜂
『大言海』に「ジガは古名スガルの轉にて、共に鳴く聲にて呼べるならむ」と古い前の形も參照してゐる。そして「似我の字の音なりなどとも云ふは附會なるべし」と釘を刺してゐる。つまり上代では鳴き聲をスガといふ文字に寫し、中世ではジガといふ音で受取ってゐて、
・じゅごん、儒艮
マレー語で duyung といひ、これが英語に入って dugong となり、これが中國で音譯されて「儒艮」(ju ken)となった。「儒」の漢音ジュ、「艮」は漢音コン、慣用音ゴンで、
・じょうびたき、尉鶲
ジョウについては、上等のヒタキ説や紋付とも呼ばれるところから、定紋の定ヒタキ説もあるが、成長した雄の頭頂部が灰白色であることから能樂でいふ翁の意で尉、すなはち、尉ビタキであらう。
・じんべいざめ、甚兵衞鮫
魚の形がちゃうど甚兵衞羽織(甚平)を着た姿に似てゐることによる。
・すけとうだら、介黨鱈
一般に「スケトーダラ」の呼稱が廣く用ゐられたのは、昭和四〇年代からで、それまでは昭和三〇年代が「スケソーダラ」、それ以前は單に「タラ」と呼ばれてゐた。
・ずわいがに、ずわい蟹
スクスクと伸びた木の枝をスハエ(直生え)、それを訛ってズバエ・ズンバエ・ズンバイ(楚氣條)といふが、その細長い枝のやうな形の足を持つカニ
・せいうち、海象
『大言海』に「蘭語 Zeekoe の轉訛にてもあるか。セイクルと云ふ、蘭人舶來せり」とある。またロシア語ではアシカを意味する sivch に由來するともいふが、
・せみ、蝉
『大言海』の「鳴く聲を名とす。ミはムシの約、蝉の音轉なりと云ふは非なり」と斷言してゐるのを正解とする。
・たひ、鯛
タヒの外形で特徴的なのは、『類聚名義抄』の表記「平魚」からもわかるやうに、「平らなこと」で、タヒ(ラ)が語源となった。
・たいらぎ、玉[玉兆]
歴史假名はタヒラギ。ギは介(貝)の漢音カイと和語のカヒの合致するところから、その約音キが濁音化したものか、あるいは本來から固いものを表す接尾語のキであったか、やや決定しがたい點もある。
・ちゅうひ、澤[狂鳥]
『大和本草』に「チウヒ」の名。……
チュウヒは、チュウヒダカ(中晝鷹―中位の大きさの晝間飛ぶ鷹)の下が省略された形と考へられる。チウシャク(大和本草)・チウサギ(養禽物語)など、チウ(中)といふ表現は珍しくない。
・ちん、狆
漢語「狆」の發音に由來する。「狆」は中國の貴州・雲南地方のタイ系の少數民族の舊稱で(舊稱チンチア族、現在プーイー族)、文字自體の意味は「犬」と「[中皿](小さい)」とからなり、「小さい犬(のやうな野蠻人)」といふ意味で、中國人の中華思想の産物である。……
「狆」の字音はチュウであるが、實際は tiung のやうな發音であり、チンに近い音である。
・てん、貂
漢字の「貂」の音テウ(チョウ)に由來する。「貂」は漢字音ではトンで、これが訛ってテンとなった(大言海)
・てんじくねずみ、天竺鼠
「天竺」はインドを意味する漢語で、サンスクリット語の Sindhuh(インダス川地域)に由來する。この Sindhuh は原義的には「川」を意味するが、これがペルシャに傳へられ、Hendhu,Hindhu,Thendhu などのやうに變化した。天竺はこの變化した Thendhu の音譯である。ヒンズー教徒やインド人を意味する英語の Hindu はこのペルシャ語の Hindhu に由來する。『後漢書』の西域傳に「天竺國、一名身毒」とあり、身毒はサンスクリットの Shindhuh をほぼそのまま音譯したもの。「印度」もサンスクリットの Sindhu に由來してゐる。
・どじょう、泥鰌
『塵添[土蓋]嚢抄』『易林本節用集』『和爾雅』などに「ドチヤウ」のルビがあり、タ行であることがわかる。また『全國方言辭典』(東條操・一九五一年)にドテクロ(鹿兒島縣谷山)とトドヨ(和歌山縣海草郡)があることから、ドヂャウは、ドテ(トド)―ウヲ(イヲ)を語源とすることがわかる。ドテ(トド)は「泥」のことで、
・トナカイ、馴鹿
アイヌ語の tonakai に由來する。
・とんぼ、蜻蛉
『大言海』の「トビハ(飛羽)の音便延で、トンバウ(蜻蛉)、その約形がトンボ」で、それが最もおだやかな説である。
・なまず、鯰
ナマヅのヅはドヂャウ(泥鰌)のドと同じ「泥」の意である。ナマヅとドヂャウは似てゐる。したがってナマヅ(鯰)は、賀茂百樹の『日本語源』に則して「滑つる泥魚なり」といふのが正解となるであらう。
・なめくじ、蛞蝓
舌で舐めるやうにして這って歩くナメ(舐)。それに付いたクヂは花や葉が食べられてあと駄目になってしまふクヂル(抉)の末音省略形であらう。
・にいにいぜみ、にいにい蝉
芭蕉の「靜かさや岩にしみ入る蝉の聲」のセミは、ニイニイゼミではないかといはれる。……
鳴き聲がニイニイまたはチイチイと聞えるためである。
・にゅうないすずめ、入内雀
『大言海』に「ニフナイは新嘗の訛、新稻を人より先に食む意かと云ふ」とある。
・ぬえ、鵺
『古事記』に「青山に奴延は鳴きさ野つ鳥雉は響む」とあり、……
『和名抄』には「[空鳥] 沼江、恠鳥也」。
・はや、鮠
『和名抄』『字鏡』に「波江」とある。『大言海』は「速の轉にて、泳ぐこと極めて速ければ云ふか」とし、
・はんどういるか、半道海豚
ハンダウとは、「半道」のことで、歌舞伎の役柄を示す用語で道化役者のこと。三枚目ともいふ。……
ちなみに「バンドウイルカ」は、動物學者の西脇昌治が一九五七年に「ハンドウ」ではなく「バンドウ」が正しいとして制定した名前で、その著書『鯨類・鰭脚類』(一九六五)の「バンドウイルカ」の項目の中に異名として「ハンドウ」を出し、バンドウイルカといふ名に正統性を與へた。……
西脇の勇み足だった。
・ひがい、鰉
美味で明治天皇が賞味したところから「鰉」の字を當てる。『大言海』は「この魚は明治天皇、嗜み給へるに因りて皇魚の合字を作る」としてゐる。しかし「鰉」(huang)の字は中國にありチャウザメの一種を指す。嚴密には國字とはいへない。
・ひわ、鶸
歴史假名はヒハとヒワの兩方がある、……
『榮花物語』に「いみじうひはやかにめでたういらせたまふ」、『源氏物語』に「いとさやかなる人の常の御なやみに痩せ衰へひわづにて」とあり、また「ひわずい」といふ方言もある。
・ふじつぼ、藤壺
小さい圓錐形は富士山に似てゐるので、この名前がある。ちなみに「藤」はフヂ、「富士」はフジの假名で、古い假名からいへば別々な語である。これが混同された中世以降の言葉である。平安京の藤壺といへば、内裏にあった女官の部屋の名前でこれとは關係ない。
・ほうぼう、魴[魚弗]
『書言字考節用集』に「魴[魚弗] ハウバウ」とあり、……
漢字「魴」は漢音ハウ、「[魚弗]」は漢音フツだが、二字でハウバウと讀んでゐる。『大言海』に「形、方頭魚に髣髴たり、故に字を魴[魚弗]に作るといふ、いかが、假名遣亦詳かならず」とある。……
この魚は體表が滑らかで美しいが、頭・背・腰に特徴があり、骨質板で覆はれ、口先に棘がある。顏つきがいかにも骨張ってゐるのでホホボネウヲ(頬骨魚)であることは確かである。
・ほたてがい、帆立貝
ホッキガヒ(北寄貝)は、アイヌ語のホッケ(寢る)が起源といふ。ホタテガヒは砂泥上に棲息するからさう言った。
・ほっけ、[魚花]
語源はアイヌ語の「ホッケ」(寢る、伏す、横臥するの意)から出た……
ものか。
・ほととぎす、郭公
「郭公も保々登々となくとききてやなづけそむらむ」([口嬰]々筆語・天保一三年)とあるやうに、ホトトギスの仲間の名は鳴き聲に由來し、
・まんぼう、翻車魚
『日本國語大辭典』で歴史假名はマンバウだが、語源未詳としてゐる。『大言海』は「圓坊鮫の訛にもあるか」として、ウキキ(浮木)と同じとしてゐる。……
『倭訓栞』では「形方なるをもて滿方といふにや」とあって
・みみず、蚯蚓
『名語記』『日本釋名』など多くのものが「メミズ(目不見)の義」
・みみずく、木菟
ミミヅクよりもツクの用例が古い。
・めじな、目仁奈
語源はメヂナ(目地魚)で、鱗の接ぎ目に黒點が竝んでゐる魚といふ意味であらう。メジナは元來、東京・三崎・伊豆の呼び名である(魚の生態・海魚篇、一九七八)。
・やぎ、山羊
語源は『大言海』によれば二つあり、一つは「羊」の朝鮮音ヤングに由來するとする説、もう一つは、ヤギは角があって牛に似てをり「野牛」と書かれたためヤギと呼ばれたとする説である。『物品識名』に「ヤギ 羊に似て小さし 野牛」とあり、『日葡辭書』に「ヤギュウ」とあり、群馬・徳島縣の方言でもヤギュウと呼ぶことを考へると、ヤギウ(野牛)が訛ってヤギになったとするのがよい。
・らんちゅう、蘭鑄
『大言海』は「俗に阿蘭陀の蟲の意と云ふも疑はし、龍睛魚(lung ching yu)の支那音の轉訛ならむ」としてゐる。
・あゐ、藍
「アヲ(青)の轉」とする『東雅』の説が最もよい。……
「藍」は音ラン(ラム)。
・あふひ、葵
「葵、阿保比」(新撰字鏡)、「葵、阿布比」(和名抄)。
・アカシア、
アカシアの語源はAcacia(俗名arabica)で、エジプトのいばら(茨)の意……
漢字では「槐棘」「槐樹」……
「槐」はヱニスと言った。漢字「槐」の漢音クヮイ、呉音ヱ。平安時代に wenisu と發音してゐたのは、「槐の樹」のつもりで言ったのであらう。ヱニスは王朝時代の表記である。
・あぢさゐ、紫陽花
『日本國語大辭典』は語源説を七項目あげてをり、その主なものは、アヅサヰの約轉でアヅはアツ(集)サヰ(眞藍)で青い花が集って咲くの意、次にアヂサヰ(味狹藍)の意味。アヂはほめ言葉、サヰは青い花のことをさす。……
この中で最もよいのは第一であらう。アヂサヰの特徴は何といっても手鞠のやうに小花が集って大きな球をなすこと、色が變ることにある。『萬葉集』には花の集ってゐることを歌った「安治佐爲の八重咲く如く八つ代にもいませ吾が夫子、見つつ偲ばむ」(四四四八)や、物を言はない花の木にも變りやすいアヂサヰのやうな木もあると歌った「言問はぬ味狹藍諸弟らが練の村戸に詐えけり」(七七三)とあって、……
しかしまた一方、『和名抄』に「紫陽花、和名阿豆佐爲」とあるのを見ると、アヅサアヰ(梓藍)の約も考へられてくる。
・あづき、小豆
ヅに漢字の「豆」の字音の「ヅ」やトウに關係してゐるかもしれない。
・あすなろ、翌檜
『大言海』にアスハヒノキ(羅漢柏)に對して「明日は檜に爲らむの意と云ふとして『明日檜』と云ふは略せるなり」と説いて、「明日爲らう」→アスナロ説が通用してゐるが、……
清少納言も「枝さしなどのいと手觸れにくげに荒々しけれど、何の心ありてあるは檜の木とつけけむ。あぢきなきかね言なりや。誰に頼めたるにかあらむと思ふに、知らまほしうをかし」(枕草子能因本四十七段)といって命名の理由を問題にし、その名が當てにならない言ひ方だと疑ってゐる。
・あらせいとう、紫羅欄花
方言では水油や菜種油をセイトウと呼ぶ。「齋燈」つまり燈明のことで、轉じて燈明油や水油の意となったらしい。蝋に對する菜種油の意の「油齋燈」がアラセイトウと縮まりながら
・い、藺
『大言海』に「席にして居る意」とあるやうに、人のヰル(居)……
その素材のヰ(藺)
・いすのき、蚊母樹・柞
『大言海』に「古くはユシと云ふ。語源詳ならず、今ユス、またイスと言ふは其轉なり……
・いたどり、虎杖
『倭訓栞』後編に「疼取の義也」とあるのを『大言海』も支持してゐるやうで、本草に「血痛、墜撲などに用う」とある。すり傷に若芽をもんで患部にすり込み、出血・痛み止めに用ゐたから、イタミ(痛)トリ(取)
・いちゐ、一位・櫟
昔、材が笏をつくるのに用ゐられ、位階の正一位・從一位に縁が深いといふことで「一位」と名づけられたとするのが通説。しかし漢字の櫟は『萬葉集』や『和名抄』ではイチヒと讀まれてゐるので、古くはイチヒが元で、イチヰ→イチイと變化したと考へられる。「イチヰ=一位」説は變化の途中の音イチヰを捉へた語源俗解である。イチヒは、日本の木材の中ではずば拔けて赤いといふことで「甚緋(very red)」といふ意味ではないか。……
現在の諸辭書はこれら(記紀萬葉)の「いちひ」をイチヒガシのことであると斷定する……
先入觀を捨てて考へると、記紀・萬葉の中のイチヒは現在の一位に相當するやうに思はれる。
・いちじく、無花果
イチジクは外來語。新村出によると、はじめペルシャ語 Anjir からヒンズー語 Injir に傳はり、中國語「映日」果と譯され、それが日本に入ってイチジクと寫された。……
『和漢三才圖會』に「無花果、映日果、阿[馬且]優曇華、俗云一熟、又云唐柿、いちじゅく、たうがき」とあるのは、傳來の事情を示してをり、また「熟すれば紫色軟らかに爛る、甘き味柿の如く核無し、一月にして熟す」とある。この文は毎日一つづつ熟してゆく經過がよく示され「一熟」といはれた理由も説明されてゐる。
・いちゃう、銀杏
はじめイテフと書かれてゐたのは葉の散るさまが「蝶」に似てゐるからもあったらう。それでイ(寢)たるテフ(蝶)の意といふ解釋も生じ(和句解)、またイチエフ(一葉)とも見る説も出たが(日本釋名)、「葉」を中心に見る考へは批判され、正しくは外來語にベースを置くことば。中國語に基づくことは『大言海』に「鴨脚の字の中國宋代の音なり、中國音は廣東にてイチャオ、揚子江北にてヤチャオなり。鴨は我が邦の漢音アフ、呉音エフなれば、エ・イ・ヤの轉なり。此樹の實なる銀杏をギンナンと云ふ、即ち宋音なり」で明白である。
・いのこづち、牛膝
『牧野植物圖鑑』は「亥槌の義で、節の太い莖をゐのこの足の膝頭に見立てて言ふのだらうか」といふがわかりにくい。……
『新撰字鏡』に「爲乃久豆和」……
莖を中心に左右に斜上した花軸を馬の轡に見、「猪の轡」だったのが元である。それがヰノクツチになりヰノコヅチに變じたのだといふ説である(植物和名の語源研究)
・いばら、茨
『萬葉集』は「道の邊の宇萬良の末」(四三五二)などとあるウマラ(棘)からウバラに變り、
・うこぎ、五加木
『倭名抄』に「五茄、無古木」とあるやうに、五加の中國語音ウコに、日本語讀みの「木」が結びついた成語。なほ、ムコギはウコギの古名ともいはれ「向木」の意味に解され、葉が五葉一體になってゐるところから名づけられたとの説もある。
・うめ、梅
『萬葉集』の「梅」の假名書きはウメ、『古今集』はムメの傾向から、『日本國語大辭典』は「ウメの發音は上代は ume と發音したらしいが、平安以後 mme となったか」としてゐるが、これに對し梅は當時ムメと發音したにもかかはらず、語調上歌だけはウメを用ゐた、當時一般の梅の發音は一音のメでも二音のウメでもなく、朝鮮語もしくは中國語そのままにムメに近い音だったと反論が出てゐる。
・えごのき、齊[土敦]果
「エゴい木」といふ意味である。この木の果皮はあくが強く、なめると喉がえごくなるので、形容詞エゴイの語幹エゴが元になったことばである。
・えにしだ、金雀枝
ラテン語の genista(ゲニスタ)が轉訛したスペイン語の Hiniesta(イニエスタ)から派生した語。
・えのき、榎
「枝をなす木」「枝の多い木であるから」が通説だが、『牧野植物圖鑑』は、意味不明としてゐる。
・おぎ、荻
「風になびく姿から招草の意」(古今要覽稿)とあるやうに、靈魂や鳥を招き寄せるといふことから、動詞ヲグ(招)が語源で、その連用形ヲギである。
・オクラ
英語の okra に由來する。これは西アフリカ土語のオクラを意味する nkuruman に由來する。
・おけら、朮
『新撰字鏡』に「白朮 乎介良」と見える。……
語源は「葉や莖の軟毛を朮(蓑)に見立てたといふ」(圖説草木名彙辭典)ことなら、ウブ(生)ケ(毛)ラ(接尾語)→ウケラ→ヲケラの經路で變化した藥草名と見るべきであらう。ウケがヲケに變るのは神を招き寄せる意のヲク(招)といふ動詞を類推したからであらう。
・おだまき、苧環
ヲは「緒」「麻」「苧」などの字が當てられ、絲や紐などのやうな長いものをさし、タマキは「環」「手卷」の字が使はれ、卷きつけて輪のやうにして穴のある玉の形をしたものをいふ。【按】「をだ」を卷くわけではない。
・おなもみ、蒼耳子
大振りな雄ナモミに對して、全體に小振りな雌ナモミがある。『新撰字鏡』に「奈毛彌」と見える。
・おみなえし、女郎花
『萬葉集』に「乎美奈弊之」とある。
・おもだか、澤瀉
クワヰの原種。……
オモ(面)は顏、ダカは形容詞タカシ(高)の語幹。「面高の義。葉面の紋脈隆起す」(大言海)とあり、
・おもと、萬年青
『名言通』は「大本の義」、『牧野植物圖鑑』は「大本の意でがさつで大きい株を表現した名」といふ。
・かえで、楓・鷄冠木
『大言海』に「カヘデはカヘルデの略。カヘルデの木、略してカヘデ、轉じてカイルデ」……
『萬葉集』にも「蝦手」と表現してゐる。「吾が宿に黄變づ蝦手見るごとに妹をかけつつ戀ひぬ日はなし」(一六二三)。
・かじめ、搗布
乾かして粉に搗いて吸ひ物などに使ふので「搗ち布」
・かしゅう、何首烏
中國原産の蔓性の芋。
・がじゅまる、榕樹
ガジマル(榕樹)ともいひ琉球語(首里方言)で、八重山で「かざむねー」といふのは元の語形の訛ったものか。
・がまずみ、
ソミ(染)→スミ→ズミと變じた。ガマズミの實は衣布の染料になるが、萬葉の歌(一三四四)の歌はそれを證明してゐるといふ(植物記)。
・からたち、枸橘
『大言海』にいふやうにカラタチバナ(唐橘)の略でよい。タチは突き刺さるとげのある木の意。『古事記』の傳説、田道間守にちなんでタヂマハナ(田道間花)の約轉の中にタチバナを求めるのは俗説である。
・カンナ
英語の cannna に由來する。
・きはだ、黄蘗
樹皮の内側が黄色で苦味がある。これを黄蘗といひ、黄色の染色劑とし、
・ぎぼうし、擬寶珠
「若い葉が欄干の擬寶珠に似てゐるため」が定説だが、ネギ(葱)ボウシ(帽子)からの轉とも。
・きゅうり、胡瓜・黄瓜・木瓜
黄(キ)+瓜(ウリ)が構成的な語源で、
・ぎんなん、銀杏
「漢字銀杏の宋音、ギンアンなり、連聲にてギンナンと言ふ」(大言海)
・くず、葛
『衣食住語源辭典』には「吉野葛で著名な地名國栖から」といふ『大言海』説を支持するとともに、「木髻華(木の髮飾り)の約」といふ説を出してゐる。
・くわい、慈姑
この語源に「食藺」が當てられるなら假名はクハヰでなければならず、そこで『大言海』はクヒ(噛)ワレ(破)ヰ(集)として葉の形を言ったものと考へたらしいが、
・げんげ、紫雲英
ゲンゲの語源はレングヱの代替表現によると言ってよい。
・げんのしょうこ、驗の證據
『大言海』に「現の證據の義、藥效に言ふ」とある通りであるが、ただゲンの漢字は「現」よりも「驗」(漢音・呉音ともにゲン。清音ケンは慣用音)がより適切である。
・こうぞ、楮
語源は『大言海』に「紙麻の音便、古、木綿を作りたれば、麻の名あり」といふのに盡きてゐる。
・こんぶ、昆布
アイヌ語で昆布を意味する Kombu の音譯に由來し、和譯としてエビスメ(夷布)と呼ばれたが、
・さいかち、皀莢
『大言海』には「皀角子、サイカイシ、サイカチと轉じたる語」として皀は黒、角は莢、子は實だと解してゐるが、角子→カチ」の變化に無理がある。……
「皀」は音を借用したものか。
・しおじ、鹽地
狂ひが少く耐久力があるので、建材・家具・枕木・運動具などによく使はれる。……
歴史假名はシャウジュ。もとの文字は「柾樹」で「柾」は國字だから本來韻字ではないのであるが、「正」」の音でもって「柾」を讀ませてをり、シャウジュ→ショウジ→シオジと變化した。それに當て字「鹽地」を使った。
・しめじ、占地・濕地
多數群生し、地面を占領することから占地、濕って出るキノコでシメイヅ(濕出)、それがシメヂ(濕地)に轉じた。
・じゅずだま、數珠玉
珠の數を誦へるので、「誦數」などと書いた「誦」の音(漢音ショウ、呉音ジュ)の影響や、「珠」の音(漢音・呉音ともにシュ、その慣用音ジュ)と混じたかに見える。が、平安文學では「ぼだいずのすす」(宇津保物語・國讓下)、「すすの脇息に引き鳴らさるる音」(源氏物語・若紫)などススと表記(發音はズズ)……
ズズは假名和文系に用ゐられた直音表記の和化した言ひ方であって、本來は「誦數」の字音ジュス(數の呉音。スウは日本の一般の慣用音)が起原だったと見るべきである。
・しょうが、生姜
「薑」の字音がキャウ・カウであるため、同音の姜を代用して生姜と書くやうになった。
・すいか、西瓜
漢語の「西瓜」の唐音サイカが變化してスイカとなった。
・すいかずら、忍冬
『大言海』に「水を吸ふ蔓の義、水邊に生ずといふ」とあるが、とくに水邊だけの植生ではないので、この水吸説は當らない。
・すいば、酸葉
ふつうスカンポといはれる。……
文字通りスイ(酸)ハ(葉)。
・ぜんまい、薇
ゼニマキ(錢卷)と呼ばれたのが轉じた。
・だいだい、橙
『本草圖譜』によれば、和名は「代々」の意で、
・たぶのき、椨
重壓にたへしのぶ固い材質故に舟材としたことから「たへる」木であり、その終止形「たふ」に木をつけた。
・つわぶき、石蕗
『大言海』の「ツヤハブキ(艷葉蕗)の義にて、葉に光澤あるを以て云ふかと云ふ」
・とうぐゎん、冬瓜、
漢語の冬瓜の字音はトウグヮ donggua が訛ってトウガンとなった。
・どうだんつつじ、滿天星
ドウダンはトウダイ(燈臺)の變化といふ。牧野富太郎によると、昔の家庭では燈明臺が三本脚を交叉しその上の皿に點火した。ドウダンツツジの痩せ長の枝振りがそれに似てゐるから、と説いた。そしてはっきり燈臺ツツジといってゐる所もあるといふ(植物一家言)。
・とうもろこし、玉蜀黍
タウ(唐)などモロモロ(諸々)のコシ(越)の國からやって來たもの、すなはち「外國からのもの」といふ意味。……
「唐唐」「唐蜀」といふ重複を避け、「玉蜀黍」の用字にした。……
タマキビ(玉黍)の別名もあり、
・どんぐり、團栗
諸説があり、トチグリ(橡栗)の音便説、ダングリ(團栗)の意、
・なずな、薺
『大言海』の「ナデナ(撫菜)の義にて、愛づる意かと云ふ」のが採るべき説であらうと思ふ。
・にくづく、肉荳蒄
ニクヅカンのンの省略とカの轉訛したクを使ひ、ニクヅクと讀んでゐる。この木の種子・香辛料のナツメグは、英語の nut-meg
・のうぜんかづら、凌霄花
リョウセウはr音とn音の交替によってノウセウとなり、それがさらに變じてノウゼンと訛った。
・ほうれんそう、菠薐草
唐宋音「菠薐(ホリン)」の訛った音である。唐の太宗の時に頗稜國より獻上されたので、「頗稜(ホリン)」と呼ばれ、改字して「菠薐(ホリン)」となった。頗稜國は現在のネパール(Nepal)のことである。ネパールのパールの部分を音譯したものが「頗稜」と考へられるので、(Ne)pal = 菠薐 = 頗稜 = ホリン → ホウレンとなる。
・まくわうり、眞桑瓜
岐阜縣本巣郡眞桑村(現眞正町)のものが最上とされた
・マロニエ
フランス語 marronnier、マロン(栗)の木が語源になってゐる。
・マンゴー
タミル語の man-kay