「大股歩きのふたり」

ユーミンの「情熱に屈かない Don't Let Me Go」を音楽に、市川準氏が監督を務め、キリンラガ一がいつも側にある若者の恋愛模様を描いているラガービールのCM。

出演は、大野役の大鶴義丹さんと、清水役の財前直見さん。実際のオンエアは短いが、その背景にある「大股歩きのぶたり」と題した映画のシノブシスのようなストーリーを紹介しよう。

ある日、芝居の作・演出に熱中していた大野がアルバイトをしているコンビニに、バイオリンを持った清水が大股歩きでビールを買いにくる。その翌朝、近所の土手でバイオリンの練習をしている清水を見かけ、大野は次の芝居にバイオリンの音が欲しくなってしまった。大野は清水を尾行し、どしゃぶりの雨の中、ようやくのことで清水のOKを取ることに成功する。

公演は成功だった。そして、ふたりに恋がめばえた。冬がきて、ふたりは一緒に暮らすようになる。

春が過ぎ、夏が過ぎ、秋がきた。ふたりはケンカをし、清水は大野の部屋を去って行った。大野は悩んだあげく、手紙を書いて清水のバイト先に届けにいく。手紙の内容は、次の公演の出演依頼であった。しかし、清水は稽古場に現れない。挫析感でいっぱいの大野は、夜の街を大股で歩いていく。そして、プラットホームのベンチに座っている清水を見つける。あわてて電車に乗る清水。それを追いかける大野。人込みをかきわけて大野が清水の側にたどり着いた。ふたりはなんだかほっとして、何も話さずに夜の街を肩を並べてみつめている…。


'91年の2月、早朝から深夜までカメラを回すこと1週問。100カット以上の撮影だっただけに、スタッフも出演者もしゃかりきだったという。

撮影は、池袋と13号埋め立て地など、都内の各地で行われた。財前さんがバイオリンを弾いている場面は、多摩川土手と立教大学構内。駅は京王線の東府中の駅。その他、芝浦のコンピニ、荒川の都電などで撮影をしている。

なお、1991年12月21日の深抜、CX系で、紹介した全ストーリー4分30秒バージョンをたった1度オン・エアした。






「ふたりの青春・再会




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あれから2年が経った…。大野は、結局インテリアメーカーのサラリーマンになった。
よく働いた。そして、今年もまた夏が来た。

残業の帰り、彼はいつものように自動販売機で缶ビールを買う。LAGERの文字を見ると思い出す顔があった。
清水…どうして別れてしまったのかもわからない。この懐かしさはどこからやって来るのか。大野は清水にもう一度会いたいと思った。
彼女は今、九州のとある港町で中学の音楽教師をしていた。大野は休暇を取って出掛けた。

さびれたような小さな駅で清水は待っていた。久しぶりに会う彼女は、メランコリックになっていた。大野はすぐにそれを察知した。そんな気分をふっきるように遊んだ。2年の歳月が嘘のようだ。
でも、タ暮れになると清水の心はどこかへ帰って行った。それは、二度とあの情熱に帰れない悲しみのようなものだった。夏休みは終わろうとしていた。

ふたりは、砂浜を歩いていた。どちらともなく大股歩きのくらべっこのようになった。まるでどっちが元気か競争しているみたいに。

そして、ふたりはそれぞれの日常に戻って行った。以前より、少し透んだ瞳で…。