……だからおねえちゃんは、ぼくがまもるよ

…うん、じゃあ……約束だね?

うん

ゆびきりげんまん

うそついたらはりせんぼんのーます

ゆび

きったっ







あからさまに『八百屋』と書かれた看板を掲げた八百屋の前で、
二対のメダロット、カンガルー型メダロットのポッケガルガルと、
カマキリ型メダロットのヒパクリトによるロボトルが繰り広げられていた。
ポッケガルガルの後ろには、メダロッターと思われるセレクト隊の制服を着た少女が立っている。
ヘルメットのバイザーを下ろしているので顔は分からないが
胸部にあるそれが女性である事を証明している。
ふいに、少女がメダロッチに向い叫んだ。
「がるるんっ…あっぱーぁっ!!」
何だか微妙にやる気を失くすようなネーミングである。
「おいしょっと」
ポッケガルガルがそれに応じ、ヒパクリトの懐に飛び込んで、
カンガルー型の脚力を生かした強力なアッパーを繰り出す。
それをマトモに食らい、吹き飛ぶヒパクリト。
「クッソゥ!覚えてやがれセレクト野郎!」
あからさまな捨て台詞を残し、その場から急いで立ち去るヒパクリト。
暫くして、八百屋の奥の方から、妙に四角い顔をした店主と思われる男がやってきて、
セレクト隊の少女に、有り難う御座いますセレクト隊さんと頭を下げて言った。
そしてややうんざりした表情で何かを語り始める。
「うちの店、ああ言うメダロットに関する被害を良く受けるんですよ…。
ずっと前も子供達のロボトルに巻き込まれて野菜がダメになったり……
ロボトル保険に入っているから平気なんですが」
「はい、それにしても野良メダロットが野菜をドロボウしようとするなんて…」
「世も末だよねー」
横からポッケガルガルが横槍を入れてくる。
「それじゃあ、通報有り難う御座いました、また何かあればどうぞ!」
言って、少女とポッケガルガルはその場から立ち去って行った。



少女とポッケガルガルは、土手をのんびりと歩いていた。
ロボトルが終わったからなのか、少女の頭にもうあのヘルメットは付いていない。
今はポッケガルガルがグローブの形をした手に持っていて、
被る所に手を入れてぐるぐると回して遊んでいる。
「ふー、ここ最近野良メダロットの事件が多くなってないかなぁ、マキィ」
マキと呼ばれた少女は、そうだねーと軽く返事をして、両手を後ろに回す。
「野良メダロットの事件は殆どスレイヤーが原因だと思う、最近活動が活発になってるみたいだから」
「みたいだねぇ、あー所でマキ、今日も何時もの焼き鳥屋さんの所に行くの?」
「んー、お仕事が終わったら、かな。今日は他にも色々忙しいから、頑張ろうねガルルンっ!」
「うぃー」
ガルルンと言うポッケガルガルが気の抜けた返事をして、ヘルメットをカポッと被った。
被った事により前が見えなくなり、フラフラとした足取りで前へ進み、石に足を取られごてんと転んだ。
あはは、と笑うマキ。



今日も一日頑張るよ、よーくん

マキは心の中で、そう唱えた。






突然だけれど私赤坂マキは今日夢を見た。
遠い日の約束、決して忘れない、私の弟との約束の、夢。
最初に私が、夢を語った。
自分の大切な人を守れる、テレビに出て来るようなヒーローになると言う夢。
子供心ながらの、でも本気で叶えるつもりの夢。
次に弟…よーくんが、約束をしてくれた。
誰かに守ってもらえないヒーローの私を守る人になる、と。
その時の約束の言葉は、こうだった。


……だからおねえちゃんは、ぼくがまもるよ

…うん、じゃあ……約束だね?

うん

ゆびきりげんまん

うそついたらはりせんぼんのーます

ゆび

きったっ



私は、この約束の言葉を思い出す度に、やる気が出る。
勇気が出る。
何でも出来ると言う気になれる。
よーくんはもう家にいないけれど、
でもこれはよーくんの言葉が私を守ってくれているってことにならないかな?
だから、よーくんはずっと約束を守ってくれているんだ。

そして今度は私の番。
私は私の大切な人達を守っていくことの出来る、本物のヒーローになるんだ。
私は、夢は叶わないから夢なんだ、とは絶対に言わない。
夢は、叶えるから夢なんだ。
だから私は何時の日か、ヒーローになる。
少し遅れちゃうかもしれないけど、何時か絶対に叶えるからね、よーくん。





「マキー、どこ行くのー?」
ポテポテとマキの後を付いて行くガルルン。
「んー、この辺でロボトルトーナメントやってる学校があるって言うから、ちょっと観戦にー」
「『お仕事』ってこれのことー?」
「えへへ〜近隣の調査も立派なお仕事だよぉ」
にんまりと満足そうな笑顔を浮かべるマキ。
「おっとここかな」
横に『未凪高校』と書かれた正門を一見して、嬉しそうな表情で通るマキ。
正門を通りグラウンドを歩くマキの前、丁度グラウンドの中央に、ステージのような物が設けられていた。
その周りには取り囲むように人が集まっている。既にロボトルトーナメントが始まっていたのだ。
「あれま、始まっちゃってるじゃない、しかももう終盤っぽいよ」
ステージの上のレフェリーが『これより決勝戦を始めます!』と言っている。
「オルフェノクの草加正人って奴だね」
「草加?……『骨折り損のくたびれ儲け』かな?」
「当りー」
いやかなり無理があるだろうそれは。
「違うよガルルン、草加はオルフェノクじゃなくてオルフェノクに成り損ねた……んむ?」
かなり専門的な知識をひけらかす途中でマキは言うのを止め、ステージを見た。
人込みの中から、白い何かが飛び出したのだ。
それはメダロットだった。KWG型シンザンのようだ。
そのメダロットはステージに見事に着地して、
「KWG型シンザン改……ッ!ディスティニー見・参ッ!!」
叫び、ヒーロー物のやるようなポーズを取る。
「……………………」
それを見たマキが、衝撃を受けた顔をしながら暫く言葉を失う。
「あれー、どしたのマキ?」
「…………ガルルン」
「んー?」
「明日から私達もあれやるよっ!」
「無理に決まってるでしょーがっ」