北朝鮮による日本人拉致事件資料

拉致被害者対応めぐり官邸で激論 安倍副長官と田中局長政府発表前、拉致被害者5人自ら永住決断北「横田さん訪朝」指示 拉致被害者帰国時 大々的に歓迎 日本世論懐柔狙う外務大臣会見記録 03年4月15日厳戒の港、入り乱れる怒号と歓声…万景峰号入港万景峰号:渦巻く抗議と歓迎の声 新潟西港ふ頭万景峰号、7カ月ぶり入港 県警、1900人態勢で警戒「犯罪船のごとく扱われ…」 朝鮮総連幹部が会見
毎日新聞ニュースセレクション 02年11月28日 http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20021128k0000m010160000c.html

拉致被害者対応めぐり官邸で激論 安倍副長官と田中局長

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による拉致被害者5人が24年ぶりの帰国を果たしてから1週間余りたった10月23日、首相官邸を外務省の田中均アジア大洋州局長が訪ねた。 一室には福田康夫官房長官、安倍晋三官房副長官、中山恭子内閣参与が集まっていた。

「5人を北朝鮮に戻したあと、日本に再帰国する保証はあるのか」

安倍氏の問い掛けに対し、田中氏は明確な答えを返せなかった。 安倍氏は畳み掛けた。 「5人を北朝鮮に戻し、もし二度と日本へ戻って来なかったら世論を抑えることができない。 そもそも拉致は国家主権の侵害だ。北朝鮮へ5人を戻すことを論理的にどう君は説明するのか」と迫った。

田中氏は「外交には段取りがある。 5人が残ることを前提に交渉してきていない」と難色を示してから、さらにこう付け加えた。 「5人を戻さなければ、私の交渉のパイプが維持できない」

田中氏は1年以上、北朝鮮と水面下で折衝を続け、史上初の日朝首脳会談を実現した。 交渉相手は「序列順位が極めて高い軍関係者」(外務省幹部)だという。政府関係者が認める交渉パイプの重要性を盾に田中氏は粘ったが、安倍氏が口にした「世論」の言葉に抗する声は出なかった。

(後略)


読売新聞政治ニュース 02年12月1日 http://www.yomiuri.co.jp/00/20021201i301.htm

政府発表前、拉致被害者5人自ら永住決断

携帯電話が鳴った。

「私たち夫婦も日本に残ります。残って子供たちを待ちます」

北朝鮮による拉致事件の被害者の対応にあたる内閣官房参与の中山恭子の耳に飛び込んできたのは、帰国中の被害者の1人、蓮池薫の声だった。

10月24日午前9時半過ぎ、首相官邸の官房副長官室。中山の周りには、官房副長官の安倍晋三、外務省アジア大洋州局長の田中均、官房副長官補の谷内正太郎らがいた。

電話の内容を聞いた安倍は、「責任は政府が負いましょう。政府の意思で5人を北朝鮮に返さないと決めましょう」と宣言した。電話を受ける前、中山は出席者に、他の3人の被害者が日本に残る意思を伝えてきていることを伝えていた。

田中は「5人を北朝鮮に戻さないと困る」と訴えていた。だが、最後に残った蓮池夫妻の決断、そして安倍の強い決意の前に、沈黙せざるを得なかった。

協議の経過を聞いた事務の官房副長官・古川貞二郎は谷内に、「君1人で首相に報告してくれ」と命じた。谷内は小泉純一郎に、「5人は政府の意思として戻さないと決めます」と説明。小泉は、「よし、それで行こう」と言い切った。それまで小泉が頼りにしてきた、北朝鮮との信頼関係を重視する「田中路線」から軌道修正した瞬間だった。

夕刻、首相執務室に官房長官の福田康夫、外相の川口順子、安倍、中山が集まり、この方針を最終確認。福田は記者発表するため、執務室を後にした。

日本に帰国した北朝鮮による拉致事件の被害者5人は、政府が「永住」方針を発表する前に、自らの意思で日本に残ると伝えていたことが30日、関係者の証言で明らかになった。

余裕

10月15日に被害者5人が帰国した当初、外務省アジア大洋州局長の田中均は余裕の表情を見せていた。

この時期、政府は田中の目算通り、5人をいったん北朝鮮に戻し、家族を連れて再来日させる日程を確定するとの線で動いていた。田中と極秘の交渉相手の間の“約束”はそれほど重いものと受け止められていた。

「被害者の子供たちは学校もあり、来月(11月)中の来日は無理だそうですが、北朝鮮は来日に反対していません」

田中は首相官邸にそう報告した。順調に見えた。

だが10月16日、北朝鮮が国際社会との約束を裏切って核開発計画を進めていることが明るみに出て、潮目は徐々に変わる。

官房副長官補の谷内正太郎は北朝鮮への不信感をあらわにし、政府部内で、「五プラス八か、ゼロかだ」と繰り返した。「5人を日本に残し、亡くなったとされる8人の消息を追及すべきだ。北朝鮮に戻したらゼロから始めなければいけない」という意味だった。

一方の田中は、「北朝鮮政府は5人に『家族も連れて帰ったらどうか』と聞いたが、5人が『子供に日本人であることを話していない』と断った経緯もある」と説き、「すべて合意ずくで進めなければいけない」と強調して回った。

平行線

10月22日。中山は地村保志、富貴恵夫妻と曽我ひとみの意思を確認した。3人は異口同音に、「日本に残って家族を待ちたい」と語った。ただ、蓮池薫、祐木子夫妻との接触は、薫が北朝鮮に戻る意思が強いとの情報もあり、中山自身が二の足を踏んでいた。

10月23日午前10時。その日の早朝、被害者家族会の代表らから5人を北朝鮮に戻さぬよう求められた安倍は、首相官邸の自室に日朝国交正常化交渉担当大使の鈴木勝也、田中、外務省アジア大洋州局参事官の斎木昭隆、北東アジア課長の平松賢司、谷内、中山を集めた。

安倍「5人を返さないという選択肢も考えたい」

中山「本人の意思はまだ申し上げられませんが、安倍さんの言う通りです」

田中「北朝鮮はキレやすい相手だ。そこを考えて欲しい」

議論は平行線だった。

午後2時、福田が執務室に安倍を呼び、「田中とよく相談してやって欲しい」と要請した。福田は官邸にあって、田中の強力な擁護者だった。

午後7時、安倍の執務室に田中と谷内が入った。安倍は田中に再考を求めた。田中は「先方に電話させてもらいたい」と、その場は引き揚げた。

勝負所

翌10月24日午前9時半。安倍の執務室に田中、斎木、平松、谷内、中山が顔をそろえた。

田中が口火を切った。

「一つ一つ信頼を積み上げてきた。ここで5人を戻さないとすべて崩れる」

中山は勝負所と見て、地村ら3人の日本残留の意思を初めて明かした。

それでも田中は、「それは困ると言っている。私と先方の信頼関係はどうなるのか。何とかしてもらえないか」と食い下がった。

安倍が、「本人がとどまると言っている以上、日本は自由な国だから強制的に送り返せるわけがない。彼らが自由に意思を表明できる環境を作る責任が我々にはある」と反論した。

中山は、「今は被害者の意思を表に出すべきじゃない。国の意思として5人を日本に残すと言いましょう。批判は我々が受けましょう」と主張し、谷内も「私もそう思う」と同調した。

田中と二人三脚の平松が、「いやあ、困りましたねえ」とうなった。安倍は一気にたたみかけた。

「田中さん、5人の帰国はあなたの『信頼関係』のおかげかも知れないが、もはやソフトランディングは成立しない。まさか、外務省が勝手に連れ出すわけにはいかないでしょう」

田中は顔を真っ赤にし、口を結んだ。

中山の携帯電話が鳴ったのは、その時だった。(敬称略)


産経新聞朝刊 03年2月14日 http://www.sankei.co.jp/news/morning/14iti001.htm

北「横田さん訪朝」指示 拉致被害者帰国時

大々的に歓迎 日本世論懐柔狙う

北朝鮮に拉致され、昨年十月に帰国した五人の被害者らが、北朝鮮側から横田めぐみさん=拉致当時(一三)=の両親を早期に訪朝させるよう指示を受けていたことが十三日、分かった。北朝鮮側は、めぐみさんの父で「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)の代表を務める滋さん(七〇)と母、早紀江さん(六七)を訪朝させ、大々的に歓迎して懐柔することで、日本の世論が強く反発する拉致問題の解決を図ろうとしていたとみられる。

関係者によると、北朝鮮側は当初、被害者五人を一時帰国させ、日本政府が求める被害者の原状回復をいったん実現させた上で約二週間で北朝鮮に戻し、「やはりこちら(北朝鮮)で暮らすことにした」と表明させる計画だった。被害者が日本の親族に明らかにした。

被害者五人には、日本滞在中にめぐみさんの両親を訪朝させるよう働きかけることを指示していたという。

五人は帰国直後から、「めぐみさんと同じ招待所で生活していた」(曽我ひとみさん)、「子供が同じ幼稚園に通っていた」(地村保志さん夫妻)、「乳母車に赤ちゃんを乗せ、夫と散歩しているのを何回も見た」(蓮池薫さん夫妻)−などと拉致被害者の中でめぐみさんに関する情報だけを細かく発言しており、被害者の家族らは「事前に北朝鮮側から、『話してもいい』と言われていたようだった」としている。

五人が帰国する際、平壌の順安国際空港にはめぐみさんの娘、キム・ヘギョンさん(一五)が訪れ、日本政府関係者に「おじいさんとおばあさんに会えると思って来た」と語っており、めぐみさんの両親の訪朝を促す“演出”もしていた。

五人は故郷に戻って生活する過程で永住帰国を決意したため、北朝鮮側の計画は不調に終わったが、日本政府が五人の日本永住を正式に発表した直後、北朝鮮側は日本のメディアにキム・ヘギョンさんのインタビューを許可。

ヘギョンさんはめぐみさんの両親に対し、「私の方に来てほしい。私は学生です。大人はこられるじゃないですか」などと話していた。

北朝鮮側は、日朝首脳会談でめぐみさんの安否について「死亡」と伝えてきたが、めぐみさんが拉致当時、所持していたとされる愛用のバドミントンラケットを公表。拉致についての説明も、他の被害者と違って「実行犯は命令なく恣意(しい)的に行動した者であり、職務停止処分を受けている」などと細かかったことからも、北朝鮮側は当初からめぐみさんの両親の訪朝を重点的に画策していた様子がうかがえる。

帰国した拉致被害者らは帰国直前の昨年十月、政府調査団が北朝鮮で撮影したビデオで「北朝鮮に来てほしい」と日本の家族に向けて話していたが、これも北朝鮮側の指示だったことがすでに明らかになっている。


外務大臣会見記録 03年4月15日 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/gaisho/g_0304.html#4-B

(問)昨日曽我ひとみさんが発表された手記の中で、私の二つの家族、北朝鮮にいる家族と日本にいる家族、この二つの家族をバラバラにしたのは誰ですかと言っています、誰だとお思いになりますか。

(外務大臣)本当に曽我さんの気持ち、お辛いものがあるだろうと思います。ずっとそういう流れがあって、歴史をどこまで遡ればということなんでしょうけれども、具体的にこの人とか、その組織とか、いろんな複合的な力だろうと思います。それが歴史ということじゃないかと思います。そのところに大勢の個人個人の方の犠牲の歴史が刻まれているということだと思います。本当にお気の毒だと思います。


読売新聞ニュース 03年8月25日 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20030825i104.htm

厳戒の港、入り乱れる怒号と歓声…万景峰号入港

白い船体を迎えた港に、拉致被害者家族とその支援者らの「怒号」と在日朝鮮人らの「歓声」が交錯した。関係当局が1900人を動員する空前の厳戒態勢を敷く中、25日朝、7か月ぶりに新潟西港へ入港した北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」号。騒然とした空気に包まれたふ頭では、「疑惑の船」に対する検査が午後まで続いた。

午前7時50分過ぎ、海保の巡視艇や報道陣の船に囲まれ、万景峰号の船体が新潟西港の沖合に姿を現すのと相前後して、同号が接岸する中央ふ頭では、拉致被害者の家族連絡会や救う会のメンバーら約150人が集会を開くなど抗議行動を繰り広げた。

支援者らはふ頭で「拉致した日本人を即刻返せ」などと書かれた横断幕を掲げ、「(拉致被害者の)家族の声を聞け」などと大声で訴えた。接岸した時には、デッキで手を振る乗客や乗務員に向かって「帰れ」「帰れ」と連呼して拳を突き上げた。

また、約30メートル離れたターミナルで北朝鮮の旗を振りながら出迎えた在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関係者らには「日本国民は怒ってるぞ」と叫んだ。

集会では、横田めぐみさんの母、早紀江さん(67)が「本当の友好を望むなら、子どもたち全員を速やかに帰国させてください」と声を張り上げた。

また、2人の子どもを北朝鮮に残している蓮池薫さん(45)の兄、透さん(48)は朝鮮総連関係者に向かって「あなたたちは本当のことを知らないのではないか。一緒に家族を返せと言ってくれ」と言って語気を強めた。

ふ頭では、混乱を警戒した県や県警が家族連絡会や救う会と朝鮮総連側を別々の場所に誘導していたが、入港反対を叫ぶ怒号と出迎えの歓声が入り乱れ、一時は騒然とした空気に包まれた。

◆乗客の大半、無言のまま◆

中央ふ頭の旅客ターミナルには、乗客の家族や在日朝鮮人ら約200人が陣取った。笑顔で手を振るデッキの乗客らに、ハングルで「熱烈に歓迎します」「栄光に満ちた祖国朝鮮民主主義人民共和国万歳」と書かれた横断幕を掲げた。

午前9時半、乗客は見送りの船員たちに手を振りながら笑顔で下船。大きなスーツケースを手にし、旅客ターミナルに姿を見せた約30人の乗客は、船旅にやや疲れた表情をうかがわせた。

報道陣の問いかけに、中年女性の1人は「北朝鮮の旅行は楽しかったですよ」と笑顔を見せたものの、大半は無言のまま朝鮮総連が用意したマイクロバスに乗り込んだ。

港近くの朝鮮総連の施設脇では乗客3人が報道陣の取材に応じた。男性教員の金生華(キムセンファ)さん(44)は東京都在住で、2歳の時に帰国した姉一家17人を訪ねて、北朝鮮に約2週間滞在した。金さんは「万景峰号はあくまで家族、親族を訪ねるための船。乗船した人の中には80歳代のお年寄りもおり、飛行機に長く乗るのは体力的にきつい」と話した。

別の40歳代の女性は「久しぶりの入国でしたが、同胞が出迎えてくれたのがとても心強く感動的だった」と話し、ふ頭で行われた抗議集会と歓迎する同胞の姿については、「びっくりした」と話していた。


毎日新聞ニュース 03年8月25日 http://www12.mainichi.co.jp/news/search-news/885121/969c8ci95f4-0-14.html

万景峰号:渦巻く抗議と歓迎の声 新潟西港ふ頭

拉致被害者が、そして帰還事業の帰国者が渡った日本海から、7カ月ぶりに姿を見せた北朝鮮の貨客船・万景峰(マンギョンボン)号。25日、厳戒態勢の岸壁では、拉致被害者家族らの抗議と、在日朝鮮人の歓迎の声が入り交じった。「数々の疑惑」と「祖国との生命線」。北朝鮮をめぐる6カ国協議を2日後に控え、二つの顔を持つ白い船に、思いが交錯した。

新潟西港のふ頭では拉致被害者の家族や支援団体「救う会」のメンバーら約120人が抗議集会を行い、「拉致被害者を返せ」などと声を上げて、入港阻止を訴えた。一方、近くの港内施設前では、出迎えの在日朝鮮人ら約120人が北朝鮮の小旗を振りながら入港を歓迎した。

家族会などの集会は、午前8時10分から始まった。横田めぐみさん(行方不明時13歳)の母早紀江さん(67)や、新潟県柏崎市の蓮池薫さん(45)の兄透さん(48)がマイクを握り「罪もなく連れて行かれた子供たちを返してほしい」と叫んだ。その後、「万景峰は帰れ」「子供を返せ」とシュプレヒコール。

一方、10メートルほど離れた場所では、在日朝鮮人らが「万景峰号を熱烈に歓迎します」などとハングルで記した横断幕を掲げて、迎えた。

万景峰号の船体が大きくなるにつれ、抗議と歓迎の声は大きくなった。在日朝鮮人の「歓迎」の声に合わせて万景峰の船員らは手拍子をし、救う会のメンバーらは「帰れ」「帰れ」と拳を突き上げ、一層大きな声を張り上げた。

集会終了後、透さんは記者団に対し「政府の対応が情けなくて、悔しい気持ちでいっぱいだ。万景峰も人道かもしれないが、我々にはもっと大事な人道がある」と憤りをあらわにした。さらに「こういう軟弱な態度を取るから、6カ国協議が心配だ」と話した。早紀江さんは「大事な子供を返してほしいと言っているだけなのに、延々と戦い続けなくてはいけない。政府は、き全然とした態度をとってほしい」と訴えた。

集会に参加できなかった蓮池薫さんの父秀量(ひでかず)さん(75)は「北朝鮮側は、人質になっている私の孫たちを早急に日本へ返すべきである。そして、一日も早く『拉致』の全面解決を図るべきであることを強く重ねて提言したい」とのコメントを出した。

新潟県警によると、万景峰号の入港に反対する右翼79団体約400人が新潟市内に集結、街宣車104台で抗議行動を行った。


朝日新聞ニュース 03年8月25日 http://www.asahi.com/special/abductees/TKY200308250052.html

万景峰号、7カ月ぶり入港 県警、1900人態勢で警戒

北朝鮮の貨客船・万景峰(マンギョンボン)号が25日朝、新潟市の新潟西港に入港した。日本への入港は1月以来、約7カ月ぶり。海上保安庁によると、接岸は午前8時30分で、乗客への入国審査に続き、国土交通省、東京税関、海保など関係省庁による合同立ち入り検査を始めた。国際条約に基づく船舶の安全性検査「ポート・ステート・コントロール(PSC)」などで大きな問題がなければ、26日午前に出港する。停泊中、右翼団体の抗議行動などに備え、新潟県警や海保などは約1900人態勢で警戒に当たる。

海保の巡視艇などが警備する中、万景峰号は25日午前8時前に、新潟西港に入港し、予定より約15分早い同30分に、中央埠頭(ふとう)に接岸した。岸壁では在日朝鮮人らが出迎え、乗客も北朝鮮国旗を振って応えた。一方、拉致被害者の家族らは岸壁に「拉致はテロだ」などと書かれた横断幕を掲げ、抗議した。

接岸後10分足らずで、東京入国管理局の職員約50人が船内に入り、乗客らへの入国審査を始めた。その後、PSCを実施する国交省の外国船舶監督官や、積み荷などを調べる東京税関職員、海上保安官らが船内に入った。

新潟県に事前に提出された岸壁使用許可申請によると、同船には在日朝鮮人ら乗客34人、乗組員74人が乗船し、38トンの貨物を載せている。

PSCは国交省の外国船舶監督官24人で実施されている。万景峰号へのPSCは93年以来。今回は、それ以降に国際条約が改定され客船に義務づけられた「高速救助艇」や「船舶自動識別装置(AIS)」「スプリンクラー」「全地球測位システム(GPS)」などの有無を調べている。

このうち、AISは国際基準を満たす装置が搭載されていることが確認された。また、今年1月の入港時には未搭載だった高速救助艇も、後部甲板にそれらしき小型船があり、性能などを確認している。

PSCは25日夕に終了見込みで、検査の結果、乗員・乗客の安全を脅かしたり、海を汚染したりする可能性がある欠陥が見つかれば、改修を求める「技術基準適合命令」を出す。場合によっては、出港を止める「航行停止命令」を出す。

海保は40人が船内に入った。海上保安庁法に基づき、税関や入管と合同で、密航者や密輸品の有無などを調べている。了解を得たうえで、乗組員の個室なども調べている。出港時にも再度立ち入り検査する。

予定では、26日午前10時ごろに出港し、北朝鮮・元山港へ向かう。修学旅行の朝鮮大学校生ら在日朝鮮人約200人が乗船するほか、生活物資なども積み込まれる。

万景峰号は6月9日に新潟入港を予定していたが、日本側のPSCの実施計画などを受けて、直前に中止した。来月9日が北朝鮮の建国55周年に当たることから、物資輸送などの必要に迫られて運航を再開したとみられている。


朝日新聞ニュース 03年8月25日 http://www.asahi.com/special/abductees/TKY200308250113.html

「犯罪船のごとく扱われ…」 朝鮮総連幹部が会見

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部同胞生活局の河秀光(ハ・スグァン)局長は25日午前11時過ぎ、新潟西港の埠頭で「(万景峰号が)犯罪船のごとく扱われ、警戒態勢を敷かれ、一昨日には朝鮮総連施設を狙ったテロ行為も起きているが、我々は在日同胞の祖国訪問のため、無事に出港できるよう願っている。立ち入り検査は国際条約にのっとって行われるはずなので心配していない」と話した。