現在の足寄郡陸別町内にあった省線(後の国鉄)池北線・陸別駅の近くの貯木場を起点とし、利別川の支流である陸別川を遡っていた路線と、同じく利別川の支流である斗満川を遡っていた路線の総称である。
沿革
全国森林鉄道によれば、以下のとおりである(p.26)
| 距離 | 陸別−陸別国有林 20.1km 陸別−斗満国有林 29.2km |
| 開始 | 陸別線 大正12年(1923) 斗満線 大正14年(1925) |
| 廃止 | 陸別線 昭和28年(1953) 斗満線 昭和41年(1966) |
一方、鉄道廃線跡を歩く(1)では、以下のとおりである(p.162)。
| 森林軌道(鉄道)名 | 級 | km | 開設 | 廃止 |
|---|---|---|---|---|
| 斗満(幹線) | (1) | 23.9 | 1945(S20) | 1966(S41)11 |
| 〃 ニオトムス支線 | (1) | 12.8 | 1945(S20) | 1966(S41)11 |
すなわち、「全国森林鉄道」の記事と比べると
- 陸別(幹線)および支線区間が抜けている
- 斗満(幹線)の開通時期およびキロ数が合わない
という問題がある。
また、"ニオトムス支線"とは後述するニオトマム支線である可能性が高い。
一方、この記事を執筆した時点におけるWikipediaには陸別駅のエントリに当路線の沿革に関する記事が載っている。
これを「全国森林鉄道」の記法に合わせて修正すると、以下のようになる。
| 距離 | 陸別−陸別国有林 20.112km 陸別−斗満国有林 23.928km |
| 開始 | 陸別線 大正14年(1925) 斗満線 大正14年(1925) |
| 廃止 | 陸別線 昭和28年(1953) 斗満線 昭和40年(1965) |
すなわち、「全国森林鉄道」の記事と比べると斗満線のキロ数、陸別線の開通時期ならびに斗満線の廃止時期が合わない。
ただし斗満線のキロ数は「鉄道廃線跡を歩く(1)」に載っているキロ数と(ほぼ)一致しているため、この部分に関しては両者は同じ資料を参照したと推定される。
関連地形図・空中写真
この路線の載った1:50000地形図
| 図名 | 発行 | リスト番号 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 陸別 | 昭44 | 34-8-4 | |
| 芽登温泉 | 昭45 | 34-12-4 | |
| 小利別 | 昭32 | 34-7-3 |
この路線の載った1:200000地勢図
| 図名 | 発行 | リスト番号 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 北見 | 昭34 | 34-8 |
この路線の沿線を写した空中写真
陸別線
| 整理番号 | 撮影 | 地形図番号 | 地形図名 | 写真番号 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-20 | 陸別および周辺 |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-4 | 上足寄 | C9-21 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-3 | 本岐 | C8-4 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-3 | 本岐 | C8-6 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-3 | 本岐 | C8-8 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-3 | 本岐 | C8-10 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-4 | 上足寄 | C9-27 |
トリップシュ線
| 整理番号 | 撮影 | 地形図番号 | 地形図名 | 写真番号 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-3 | 本岐 | C7-7 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-3 | 本岐 | C6-6 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-3 | 本岐 | C4-3 |
斗満線
| 整理番号 | 撮影 | 地形図番号 | 地形図名 | 写真番号 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C11-18 | 陸別および周辺 |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C11-16 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-17 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-15 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-13 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-11 | ニオトマム線分岐 |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-9 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-7 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-5 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-3 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-12 | 芽頭温泉 | C9-2 |
ニオトマム線
| 整理番号 | 撮影 | 地形図番号 | 地形図名 | 写真番号 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C10-11 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C9-12 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C9-10 | |
| CHO-77-33 | 昭和52年度 | NK-54-1-8 | 陸別 | C9-8 | |
| CHO-77-32 | 昭和52年度 | NK-54-1-7 | 小利別 | C9-25 | |
| CHO-77-32 | 昭和52年度 | NK-54-1-7 | 小利別 | C8-26 | |
| CHO-77-32 | 昭和52年度 | NK-54-1-7 | 小利別 | C8-24 | |
| CHO-77-32 | 昭和52年度 | NK-54-1-7 | 小利別 | C7-23 |
研究(笑)報告
この路線は全国軽便鉄道に載っていない。
日本の森林鉄道(上)は、この路線について以下のように述べている(p.88)。
陸別森林鉄道は、北海道庁拓殖部林務課によって大正11(1922)年8月に着工、大正12(1923)年に完成した陸別貯木場・陸別国有林内間17.6kmと、その後の延長及び支線を合わせて24.6km。トマム森林鉄道は同じく大正11(1922)年8月に着工、大正13(1924)年に完成した陸別貯木場・トマム国有林内間17.2kmとその後の延長及び支線を合わせて36.5km…
上記の陸別図、芽登温泉図および小利別図には、以下の"特殊軌道"が載っている。
- 陸別市街を起点とし、斗満川本流を遡る約23km
- "1."の途中で分岐し、新斗満川を遡る約9km
一方、上記の北見図(1:200000)には陸別幹線に相当する区間のみが載っている。
旧版地形図に載っているルートを電子国土ポータル機能で表現したものがこちらである(注:JavaScriptが動作できる環境が必要です)。
「全国森林鉄道」の付表には、当路線に関する以下のデータが載っている(順不同)。
陸別川流域
| 級 | キロ数 | 開通 | 廃止 | |
|---|---|---|---|---|
| 陸別(幹線) | 1 | 20.1 | 1923(T12) | 1953(S28) |
| トリップシュ支線 | 1 | 16 | 1937(S12) | 1947(S22) |
| 土井沢 | 1 | 2.2 | 1947(S22) | 1949(S24) |
| 一の沢 | 1 | 2 | 1950(S25) | 1952(S27) |
| 二股 | 1 | 2 | 1949(S24) | 1952(S27) |
斗満川流域
| 級 | キロ数 | 開通 | 廃止 | |
|---|---|---|---|---|
| 斗満(幹線) | 1 | 29.9 | 1925(T14) | 1966(S41)11 |
| ニオトマム支線 | 1 | 12.8 | 1925(T14) | 1966(S41)11 |
| クンネベツ支線 | 1 | 10.5 | 1922(T11) | 1949(S24) |
| 熊の沢 | 1 | 3.5 | 1928(S03) | |
| トマム支線 | 1 | 3.1 | 1924(T13) | |
| フトカラニオトマム支線 | 1 | 1.9 | 1925(T14) |
「陸別(幹線)」が陸別川本流を遡る路線であったことは(ほぼ)議論の余地はない。
陸別川の支流に長大な取布朱川が存在するため、「トリップシュ支線」が同川を遡る路線であったことも同様に(ほぼ)議論の余地はない。
地名としての土井沢は現在の「銀河の森」地区である。
このため「土井沢(線)」は陸別市街の東で幹線から分岐し、陸別川の支流である宇遠別川を遡っていた路線であると推定できる。
「一の沢(線)」および「二股(線)」については不明である。
ちなみに現在の陸別町内で見出せる"一の沢"という地名は(陸別川の流域ではなく)斗満川の流域で見出せる。
「斗満(幹線)」が斗満川本流を遡る路線であり、旧版地形図に載っている(陸別市街を基点とし、斗満川本流を遡る)路線であったことは(ほぼ)議論の余地はない。
キロ数と廃止時期から考えれば「ニオトマム支線」は旧版地形図に載っている(新斗満川を遡る)路線であったことは(ほぼ)議論の余地はない。
注:
どちらの路線も記録に残るキロ数よりも旧版地形図に載っているキロ数が短い。 これは森林鉄道の末端にあたる支線や作業線は仮設物であり、伐採終了とともに撤去される物であったため地形図に載らなかったためである…と考えている。
「クンネベツ支線」については以下2つの候補が可能であり、現時点では判断ができない。
- 貯木場を出てから利別川本流を約4km遡り、続いて同川の支流である勲祢別川を遡っていた
- 斗満(幹線)の途中で分岐し、ポントマム川を遡っていた
"1."は地名との比定は容易である反面、このように考えると「全国森林鉄道」の本文にある『斗満森林鉄道の支線』という記載と合わない。
ただし、同書の付表にあるクンネベツ支線の開通時期(注:1922年で斗満幹線の開通より早い)が正しいとすれば、こちらが"正解"である可能性もある。
"2."は、クンネベツが現在の勲祢別川ではなくアイヌ語の「黒い川」の意味であり、実際には斗満川の支流である…と考えたものである。
こちらが"正解"であるためには、以下が成り立つ必要がある。
- 斗満川の支流であって、(最大)10km超の森林鉄道を建設できそうな場所である。かつ、
- 旧版地形図に"特殊軌道"が描かれている斗満川本流でも新斗満川でもない。
この点で候補となるのは(現在の)ポントマム川のみである。 ただし、これが"正解"であるためには
- ポントマム川の旧名がクンネベツであったことを示す資料、あるいは
- 往時の同川が『黒い川』であったことを示す資料
が必要である。
「熊の沢(支線)」は、名称から考えて斗満川の支流である斗満熊の沢川を遡っていた路線であると推定できる。
「トマム支線」については不明である。
「フトカラニオトマス支線」は、名称から考えて斗満川の支流である太辛川を遡っていた路線であると推定できる。
Wikipediaの「陸別駅」のエントリには、この記事の執筆段階で陸別森林鉄道に関する以下の情報が載っている。
| 1925(大正14)年 | 陸別(幹線) | 新設 | 18.905km |
| 1940(昭和15)年 | 陸別(幹線) | 延伸 | 20.112km |
| 1947(昭和22)年 | 土井沢支線 | 新設 | 2.2km |
| 1949(昭和24)年 | 二股支線 | 新設 | 2km |
| 1950(昭和25)年 | 一の沢支線 | 新設 | 2km |
| 1953(昭和28)年 | 陸別森林鉄道 | 廃止 |
上記を「全国森林鉄道」と比較すると、以下の違いがある。
- 陸別(幹線)の新設時期が異なる
- トリップシュ支線が載っていない
理由は不明である。
また、同エントリには「斗満森林鉄道」に関する以下の情報が載っている。
| 1925(大正14)年 | 斗満(幹線) | 新設 | 18.085km |
| 1939(昭和14)年 | クンネベツ支線 | 新設 | 10.458km |
| 1954(昭和29)年 | ニオトマム支線 | 新設 | 12.700km |
| 1956(昭和31)年 | 斗満(幹線) | 延伸 | 23.928km |
| 1965(昭和40)年 | 斗満森林鉄道 | 廃止 |
上記を「全国森林鉄道」と比較すると、以下の違いがある。
- 斗満(幹線)の廃止時期が異なる
- クンネベツ支線の開通時期が異なる
- フトカラニオトマム支線、トマム支線および熊の沢支線が載っていない
- ニオトマム支線の開通時期およびキロ数が異なる
こちらも理由は不明である。
さらに北海道の森林鉄道史に関する研究には、陸別・斗満森林鉄道として以下の路線が挙げられている(順不同)。
- 大正12年に17377mが建設され、昭和28年まで運行された陸別幹線
- 昭和12年に1550mが建設され、昭和23年まで運行されたトリップス支線
- 昭和22年〜25年に運行された2200mの土井沢支線
- 昭和25〜28年に運行された2000mの一の沢支線
- 昭和24年〜28年に運行された2000mの二股支線
- 大正14〜昭和11年に運行された3010mの二股支線
- 大正13年に14256mが建設され、昭和41年まで運行されたトマム幹線
- 昭和20年に8480mが建設され、昭和41年まで運行されたニオトマム支線
- 昭和11〜25年に運行された6310mのクンネベツ支線
- 昭和3年〜(不明)に運行された3524mの熊の沢支線
- 大正14年に1915mが建設され、廃止時期の判らないフツカラエオトマム支線
- 昭和7年〜(不明)に運行された1319mの連絡線(区間不明)
なお、筆者は同論文を閲覧&メモしたのみであり、コピーを入手した訳ではない。
したがって、筆者の理解が誤っている可能性はある。
"1."について現段階では特記すべき点はない。
"2."については「全国森林鉄道」に載っているトリップシュ支線と同一と考えている。
"3."〜"5."については「全国森林鉄道」に載っている土井沢(支線)、一の沢(支線)および二股(支線)と同一と考えているが、廃止時期に微妙な違いがある。
"6."については初代の二股支線であると考えている。
これが「全国森林鉄道」から漏れた理由については不明である。
"7."については現段階では特記すべき点はない。
"8."の開業時期については不明である。
"9."については開通時期、廃止時期およびキロ数の全てが異なるが、他に比定できる候補がないため同一路線と考える。
なお、開通時期については筆者がメモを取る際に"T"(注:大正)を"S"(注:昭和)と誤った可能性もある。
"10."については特記すべき点はない。
"11."については「全国森林鉄道」に載っているフトカラニオトマム支線と同一と考えている。
"12."については不明である。
開通時期および廃止時期における±1年の差は、
- 暦年と会計年度の違い
- 完工と開通の違い
- 運行終了と書類上での廃止の違い