早起きは三文の得なのかな?
英廊学園TPRG 笠原望SS

草木も眠る丑三つ時。

私こと笠原望の活動開始時間。
新聞配達と牛乳配りのバイトへ行く時間なのだ。
長年の習慣でこの時間には自然と目が覚めるように
身体がもう覚えてしまっているみたい。

「ん…」
大きくのびをして布団から出ようとする…と
あれれ?何か動けない。
横を見るとなぜだか浅緋センパイが私の身体をしっかと抱きしめて
すごく気持ちよさそうに眠ってる。
…あ…そうか、お夕飯にご招待されてそのまま浅緋センパイのお部屋に
泊まっちゃったんだ。

浅緋センパイは私のいっこ上の英廊学園の2年生ですごく料理が上手で
とっても可愛い〜〜って形容詞の似合う人。
お隣の部屋がその浅緋センパイのお部屋なんだけど
私の家庭の事情を知ってか知らずか、よくお夕飯をごちそうしてくれるんだよね。
ここの管理人のシホさんも時々多く作ったおかずなんかをおすそ分けしてくれたりして
私すごく恵まれているなぁ…って思ってる。

昨日も浅緋センパイからお夕飯のお誘いがあって、私も遠慮しないもんだから
ずうずうしくご飯を頂いた後、楽しくお話をしているうちに、
眠くなってそのままバタンキューしたみたい。

バイトが早いからどうも夜は苦手で、お部屋は隣なのに戻れなくて
目が覚めると浅緋センパイと寝てる。
最近多いなぁ。このパターン。

浅緋センパイに迷惑をかけているんじゃないかって思うと申し訳ないなぁって思うだけど
センパイはあまり気にしていないみたい。
だからお夕飯に誘われるとまたお言葉に甘えてしまうんだよね。

…堂々巡り。

にしても…
今日はしっかりとお腹の辺りを抱きしめられちゃってる。
うーん。困ったなぁ。
頬を指でぽりぽり。
そろそろバイトに行かないとまずいんだけど…
でも何か気持ちいいんだよね。

ちょっと苦笑い。

「浅緋センパイ。失礼しますよ」
私は意を決してすごく気持ちよさそうに眠っているセンパイの睡眠をなるべく妨げないように
そっと離れようとするとセンパイがまたぎゅって抱きしめる。
「…だめぇ」

へ?

「だめなの……ちゃ嫌ぁ…」

…えっと…センパイ?起きちゃった?
「すみません。私どうしてもバイトに行かないと困るんで…」

「だめったらだめなの」

困ったなぁ…。
台風が来ても39度の熱を出してもお休みをしなかったって言うのが私の自慢なのに。
どうしよう…

「…私の枕取っちゃ嫌」

ま…枕〜?
ひょっとして…寝言ぉ〜?

あはは…
ちょっと乾いた笑いをして気を取り直すと、そおっと私の身体に回している手を外していく。
全部外し終わるとお布団から出てセンパイのお部屋から音を立てないようにバイトに向かった。


仕事を終えて綴屋に戻ってくる頃には東の空から太陽が昇ってくる頃。
私はもう一度仮眠を取って学校に行くのが日課で、
センパイの部屋で寝ちゃった時はいつもどっちで仮眠を取ろうかっていつも悩んじゃう。
自分の部屋に戻るか…浅緋センパイの所に戻るか…

隣で寝ていた私がいなくなったら心配するのではないか…とか
ちょっと自意識過剰気味に考えてしまったりするんだけど
やっぱり自分のお部屋で寝るのが常識なのではないかという結論がでる。

お泊まりでセンパイのお部屋に行ったんじゃないんだし
登校はいつも一緒だからいつもの通りセンパイが起きる頃に顔を出せばいいよね。

などと思って下駄箱で靴を脱いで部屋に戻ろうとすると
人影が目の前のドアの前で毛布にくるまってうずくまってた。

「浅緋…センパイ!?」
私は驚いて声を上げる。

「ん…むにゃ…」
私の声で目が覚めたのか彼女は眠そうな目を手でぐしぐしとこすって
私の方を見上げる…
「あー望ちゃんが帰ってきたー」


実はクリックすると別挿絵バージョンに…

浅緋センパイは私を確認をすると私に抱きついて来た。
「セ…センパイ?」
「さっき起きたら望ちゃんが横にいなかったから待っていたんですー」
そう言ってセンパイは私の身体をぎゅうううって抱きしめてすりすり。

「えっと…あの…」
すりすりがちょっと…こそばゆい。

「私、いつも早朝にバイトに行っているんですよ。言っていませんでしたっけ?」
「知ってますよー
でも望ちゃんたら、いつもバイトが終わると自分のお部屋に戻っちゃうんだもん。
お外は寒いかなーってお布団温めていつも待ってるのに
私のお部屋に帰って来ないんですもん。『おかえりなさい〜』ってしたいのに」

ちょっと拗ねた感じの表情をして上目遣いで…

「だから今日はここで待ってたの」
「『おかえりなさい』をするためにですか?」
「うん♪」
にこにことセンパイは無邪気に微笑んでる。

…そっか。
気を使って部屋に戻ってたんだけどセンパイは私を待ってたんだ。
知らなかったとは言え申し訳ない事を…。

「望ちゃんは今からまた少しお休みするんでしょ?」
「はい。登校まで仮眠を…」
「じゃ、一緒に寝ましょ」

って私の腕を取ってセンパイのお部屋に誘われて
あらあらあらって思ってるうちにお布団の中に。

センパイは私の隣で横を向いて丸くなり私の腰に手を回す。
「望ちゃんおやすみなさいー」
「あ…はい」


途端にすーすーという寝息が聞こえてくる。

センパイ寝るの早いですよ?

…眠いのにずっと待ってたのかな?
すごく安心した顔で寝てる。

……………
「ふぁぁぁぁ…」
私も…眠くなっちゃった。
いつも部屋に戻ったらすぐ寝ちゃうもんね。
じゃ、お言葉に甘えて一緒に眠らせてもらお。

おやすみなさい…。

<おしまい>

到着200311190818
小説 from 結城和林氏
イラスト from 有吉輔氏