第2章 中学生が解くロ−レンツ変換
質量が増大する話の裏話に行く
ご案内
「中学生が解くロ−レンツ変換」の目的は相対性理論の根本原理であるロ−レンツ変換を
「光速度不変の原理」のみから初等幾何学と代数を使って導くことです。そして導いて
しまった。ただそれだけのことです。
しかし驚くことに相対論の解説にこの種の解説がないため、なんでもないこの章が
大きな意味を持ってしまったのです。
ロ−レンツ変換は古代ギリシャの哲人や物理学者にとっても理解可能でしょう。
ただし、理解できると言うことと賛成する、信じることとは別物です。
”ロ−レンツ変換はどう考え、どうすれば導けるか”が理解できる章です。
その上で反対だ、賛成だ、信じられない、信じる等を議論すべきです。
例によって数式はどうもと言う方に「ちょっと一服VER2」でソフトに
展開させます。お気にいるかどうかはわかりませんが、趣旨を理解の上
お読み下さい。(作者 執H11.11.7)
* 加筆・修正H14.03.04
目次
(2−1)アウトライン
(2−2)速度変換
(a)ガリレオ変換
(b)変換は座標の網を架け替えることでもある。
(c)逆変換
(a)光速度
(b)光速度不変の原理
その1)縦軸の傾き
その2)X”/C、t”を求める。
その3)X’とt’を求める。
その4)Kの値を求める。
(2−5)宿題 *を入れたため順番が入れ替わっております。H14.03.
(a) 時間の伸び ”t’=t√(1−V2/C2)”を導く
(b) *第1章の式 ”t’=t/√(1−V2/C2)”を導く
(c) 加法則 ”W=(u+v)/(1+uv/C2)”を導く
(2−6)この章の終わりに
通して呼んでいただきたいのですが、各項目へジャンプも出来ます
(番外)ちょっと一服 少し疲れたらお読みください。
ホ−ムペ−ジ公開の巻
(2−7)追加項目 幾何学を使わないロ−レンツ変換の出し方 H12.8.5 アップ
(2−1)アウトライン
ロ−レンツ変換とは何であるかを順を追って見るとこうなる。マックスウェルにより「光は波である」ことが証明された。波を伝えるには媒質が要る。光を伝える媒質をエ−テルと名付けた。エ−テルの存在を確かめようとしたマイケルソン−モ−レ−の実験は完全に失敗しその結果エ−テルは消え、「光速度は不変」であった。そこで登場したのがロ−レンツ変換である。
この話は少々疑問があるがそれは5章に譲る。この章ではロ−レンツ変換の式を「光速度不変の原理」のみから導く。式を導き、式の条件を検討し結論すること。我々はこれこそ科学的方法と思っている。!第一章(速度が増しても質量が増えないと言うこと)でも後半は質量が増大する式をまず出し、式が成立する条件を吟味した。もし(速度が増せばやはり質量が増大する)と反論するためには質量が増大するしかないように式を組み立てなければならない。そこに気がついて欲しい。それがこのレポ−トのスタンツである。時たま相対性理論の解説書を批判するが批判が目的ではない。
式を組み立てるのはそれほど難しくは無い。ロ−レンツ変換自体を中学生の学力で導き出せる程度のものである。ただし相対性理論自体は難しい。だから中学生で相対性理論がわからなくても無理はない。もともと相対性理論は中学では習わない。だが中学生が理解してしまっても不思議ではない。難しいのは式の意味付けであり式を数学的に解くことではない。
この章が完成すれば第1章の宿題である(2)(3)も導かれる。
(2) ロ−レンツ変換からの導かれる時間の伸び ”t’=t√(1−V2/C2)”
(3) ロ−レンツ変換からの導かれる加法則 ”W=(u+v)/(1+uv/C2)”
だが「光速度不変の原理」は宿題として先送りしなければならない。この原理は「凍れる時期の秘方」である。馬鹿にしているのでもふざけているのでもない。イメ−ジとしてはまさにピッタリな表現である。詳しくは5章で説明する。
このレポ−トは本質的には知的謎解きゲ−ムである。電脳遊戯(TVゲ−ム)のように人工的に作られた空間での人工的な謎解きではない。本物の物理の謎を解いてみようと言うわけだ。
前置きはこの位にして本題に入る。
(2−2)速度変換
我々が相対的な運動を感じるのは車の中である。今まで運転席にしろ助手席にしろ一度も車に乗ったことがない人はまずおるまい。時速80Kで走るバイクを時速60Kで走る車から見ると時速20Kで遠ざかるように見えるだろう。我々はこれを速度変換と名づけた。変換とは同じ対象(例えばバイク)を違う立場(例えば走行中の車と停車中の車)から見ればどう変わるかを扱うことである。見る立場が変わると見える速度が変わるから速度変換もりっぱな変換である。
もし時速Wで走るバイクを時速Vの車から見れば時速Uであったとすると U=W−Vの関係になる。これはW=U+Vと書き換えることも出来る。
つまりW=U+Vは速度変換である。平たく言えば速度80Km/Hで走っている時バイクに追い抜かれたら「あのバイクは90Km/H出している」と感じることである。そこにはスピ−ドの増減はない。バイクも車も等速直線運動をしていれば良い。
(3) ロ−レンツ変換からの導かれる加法則 ”W=(u+v)/(1+uv/C2)”
はこの延長にある。第1章でこの式はむしろ速度変換であると言った意味はここにある。 だが一方では加法則、「速度Vの車から速度Uで投げた球は速度Wで飛んで行く」と言う解釈も出来る。つまり速度変換と加法則は等価である。どこまで等価であるかはU,V,Wの内ひとつでも光の速度を超えたとき適用可能かを判断する材料になるがまだ何もない章、おそらく第6章から7章あたりで取り上げる。(計画中)
変換とは同じ対象を違う立場から見ればどう変わるかを扱うことである。速度に注目すれば速度変換である。一般にガリレオ変換、ロ−レンツ変換は座標に注目する。暗黙の了解として基準座標(例えば止まっている車を原点とする座標)は(t、X)を使い、慣性座標(例えば動いている車を原点とする座標)は(t'、X')を使う。また慣性座標と基準座標の間の速度はVが用いられる。さらにガリレオ変換に限ればt’=tとなる。
U=W−V の関係でUは動いている車から観測したバイクの速度であるからU=X'/t’である。同様にWは止まっている車から観測したバイクの速度であるからW=X/tである。よってU=W−V はX'/t’=X/t−Vと書き換えられる。
ガリレオ変換 X’=X−Vt t’=t |
(b)変換は座標の網を架け替えることでもある。

(C)逆変換
X’=X−Vt,t’=t から直接 X=X’+Vt’t=t’が出てくる。車(運転手)が観測するバイクの座標(X’,t’)から歩行者が見たバイクの座標(X,t)を導き出すものであり逆変換と呼ばれる。それはそれで正しいのだが 逆変換にはもうひとつ意味がある。歩行者から見た座標には(X,t)を使い車(運転手)が観察する座標には(X’,t’)を使ったが座標(X,t)と座標(X’,t’)には当然優劣はない。
歩行者から見た座標に座標(X’,t’) を使い車(運転手)が観察する座標に座標には(X,t) を使っても誰も文句は言えない。なぜなら”すべての慣性系で物理法則は同じである”からであり、同じであるなら名前をつけ変えたぐらいで本質が変わるわけはない。
座標だけを入れ換える これも逆変換である。
数学的には X’とX t’とtを入れ換えれば良いが座標(X,t) と座標(X’,t’) の相対速度Vの向きは逆になるからV→−Vとしなければならない。
| X’とX t’とtを入れ換える。 V→−Vとする。 |
何でも無いようだがロ−レンツ変換の重要な鍵である。
(a)光速度
ガリレオ変換を理解するとロ−レンツ変換は楽に解けると言いたいが少々小うるさいのが”光速度”を同時に扱わなければならない点である。
光速度とは3×1010 p/SEC 3×108 m/SEC 3×105 q/SEC 秒速30万q 秒速3億mどれでも好きなものを選べば良いがともかくべらぼうに大きい数値である。
もし横軸に時間(秒)を1秒10pで取り,縦軸に距離として1mを10pで取ったなら,光速度を表すためには3×107m(=3,000万 m)の紙が必要である。これは地球を3/4周する長さになる。!
縦軸を距離として1qを1oで取ったとしても光速度を示すには300mの紙が必要である。双眼鏡でもないと縦軸の端が見えない。!
よって縦軸は普通のmとかKmと言った単位で考えるのは諦めて,距離を光が1秒間に進む距離で割った単位を使うことにする。数字としてはX/Cと表現とする。
すると光速度とは座標でちょうど45゜の直線になる。左図は基準系から見た光速度である。基準系は”歩行者からみた座標”と同じであるが光速度があまりにも速いため飛行機に乗っている人も歩行者も座標に書き込めばほとんど差がない。
そう言う意味から基準系を地球に住む全ての人に共通する系と言いきっても 差し支えない。
(b)光速度不変の原理
ロ−レンツ変換は”光速度不変の原理”と”すべての慣性系で物理法則は同じである”より完全に導かれる。光速度はどの系より見ても一定だと言うことだ。
当然 基準系から見ても光速度は光速度で一定であり,それは図では45゜(傾き1)の直線で 表わす。
一方慣性系から見ても光速度は一定でなければならない。そう言う原理だから
基準系から慣性系に光速度一定の条件で座標の網を架け替えること それがロ−レンツ変換である。光速度一定の条件をグラフで表せば、上記基準系のグラフの中にある隠された仕様 つまり 横軸(時間軸)と縦軸(座標軸)は光の軌跡に対して線対称に設定されることである。

ロ−レンツ変換とはただそれだけに過ぎない。!
お待たせしました。では実際に中学生レベルの数学でロ−レンツ変換を解いて行きます。
問題は全部で4個です。
回答は青文字をクリックします。現役の中学生のほうが得意かもしれませんが!
その1) 縦軸の傾き
変換の網の目を除くと図のようになる。横軸(t)が傾き(V/C)でガリレオ変換と同じように上を向く。
一方縦軸(X/C)の傾きは「光速度不変の原理」より光の線(0−C)を中心に線対称でなければならない。(図の赤線)
この縦軸の傾きが(C/V)になることを証明する。
その2) X”/C、t”を求める。
任意の標準座標(t,X/C)に対してカタムキの分かっている線を交差させた時の横軸、縦軸の長さX”、t”(図)を求める。
本当は図の赤線の部分を求めたいのだが計算が厄介なのでかわりにX”/C、t”とする。
t”=t-XV/C2
X”=X−Vt
その3) X’とt’を求める。
t’とt”の関係をt’=Kt”とする。ここでK>0である。
するとX’とX”の関係も同じKを使ってX’=KX”となる。なぜなら図の赤い三角形は相似であるから。
よって
t’=K(t-XV/C2)
X’=K(X−Vt) となる。
その4)Kの値を求める。
t’=K(t-XV/C2) X’=K(X−Vt)のままではKの値は特定できない。 ここで逆変換の法則を使う。
| X’とX t’とtを入れ換える。 V→−Vとする。 |
この法則をそのまま適用すると新たに二つの式t=K(t’+XV/C2) X=K(X’+Vt’)が得られる。式は全部で4個あり整理すると下のようになる。
| X’=K(X−Vt) t’=K(t-XV/C2) 正変換 X=K(X’+Vt’) t=K(t’+X’V/C2) 逆変換 |
このうち任意の3個の式を取り計算するとK2=1/(1−V2/C2)となる。K>0だからK=1/√(1−V2/C2)になる。
そしてこれがロ−レンツ変換の式である。
(1) X’=(X−Vt)/√(1−V2/C2) 正変換 (2) t’=(t-XV/C2)/√(1−V2/C2) 正変換 (3) X=(X’+Vt’)/√(1−V2/C2) 逆変換 (4) t=(t’+X’V/C2)/√(1−V2/C2) 逆変換 |
結局ロ−レンツ変換は哲学的な解釈は別としても数学的にはまったく歯が立たないと呼べるほど複雑怪奇な代物ではない。中学,高校程度の数学でも少し背伸びすればなんとか解る程度のものであるから,大学入試に”ロ−レンツ変換を求めよ”とあってもそれほど破天荒な問題ではないと思わる。
納得できない人がおられるかも知れないが、納得できない理由を自分なりに考えることは可能だろう。また我々の計算にミスがあれば指摘することも可能だろう。そうできるだけの資料を出したつもりだし数学的にそれほど高度なものは無い。
他のノウハウ本のように信じられない、納得できないとなると閉息状態に陥るのとは根本的に異なるはずだ。信じられない、納得できないなら”光速度不変の原理”に変わる”何かの原理”を出して中学生変換だの高校生変換だの女子高生変換だのを作ることも可能だろう。もしそうなったらそれこそ愉快だ。
(2−5)宿題
(a) 時間の伸び ”t’=t√(1−V2/C2)”を導く
変換とは見る立場によって異なる座標の網を被せ直すことである。ならば 正変換
(1) X’=(X−Vt)/√(1−V2/C2) 正変換
(2) t’=(t-XV/C2)/√(1−V2/C2) 正変換
は座標(X,t)を観測した後 座標の網(X,t/C)を座標の網(X’,t’/C)に被せなおし X’,t’を求めることである。ここに第1章の条件「時間t’は基準系から相対速度vで動く物体に張り付いた時間とする。」を入れると、X’=0 つまり X=Vt であり、これを(2)に入れるとt'=t√(1−V2/C2)となる。
そうするとこの式 の意味は t を観測した後、座標の網(X’,t’/C)に被せなおしt’を求めたことになる。つまり t→t'への変換である。あくまでこちら(t)を基準として相手(t') を計算するとこうなると言う意味である。
(b)*第1章の式 ”t'=t√(1−V2/C2)”を導く
もう導いているものをまた導く? 変なわけだが実は
(3) X=(X’+Vt’)/√(1−V2/C2) 逆変換
(4) t=(t’+X’V/C2)/√(1−V2/C2) 逆変換
からも導ける。X’=0 にして(4)に入れるとt=t’/√(1−V2/C2) つまりt'=t√(1−V2/C2)になる。また X’=0 にして(3)に入れるとX=Vt’/√(1−V2/C2) それにさらに X=Vt を入れると
Vt=Vt’/√(1−V2/C2) → t=t’/√(1−V2/C2)
これもまた t'=t√(1−V2/C2)になる。
要するに X’=0,X=Vt のペア または単独で正変換,逆変換どちらに入れても同じ結論になる。
X’=0,X=Vt はともに「時間t’は基準系から相対速度vで動く物体に張り付いた時間とする。」と言う条件そのものに他ならない。
実はこの辺もH14.03.04の修正では間違えていました。 m(-_-)m
(c) 加法則 ”W=(u+v)/(1+uv/C2)”を導く
W=X/tとおけばロ−レンツ変換の式(3)(4)より
W=(3)/(4)={(X’+Vt’)/√(1−V2/C2)}/ (t’+X’V/C2)/√(1−V2/C2)
=(X’+Vt’)/ (t’+X’V/C2)={(X’/t’)+V}/{1+(X’/t’)V/C2}
となるからu=X’/t’とすればW=(u+v)/(1+uv/C2)が求まる。(1)、(2)を使ってもできる。
(2−6)この章の終わりに
この章は我々素人が非常に難しい相対性理論を原理から100%理解することは最初から無謀だと言う概念を打ち破る最初の試みである。「光速度不変」の命題はもらうにしてもまったくの徒手空拳で自力でロ−レンツ変換は導き出せるのである。科学とは結果が正しければ良いと言うものではなくそこに至る考え方そのものも正しくなければならない。その意味で結果のみ宣伝している今の解釈本は大いに不満である。
次の3章,4章は解釈本の変なスリコミにより迷信と化けてしまった様様な結果(トピックス)を解釈し直すものである。第1章でも速度が増すと質量が増えると言う馬鹿げたトピックスを扱った。これらの解釈本の罪は変なスリコミ、ウソとまでは言えなくとも大げさで紛らわしいものでまともな科学的態度が取れなくなることである。まともな科学的態度とは式の検証と意味付けが正確であること、そしてそれがわかることに尽きる。
(2−7)幾何学を使わないロ−レンツ変換の出し方

我々の図は横軸を時間にしているが、縦軸を時間にしている本やHPもある。時間は横軸に書くべきか、縦軸に書くべきか? 横軸と縦軸どちらが正しい?
これは質問が悪い。無意味である。どちらが「元祖」でどちらが「本家」は意味がない。もし縦軸を時間としたら正しいが、横軸を時間にすると違った結果になるなら変換自体が間違っている。
すると、変換の式は横軸と縦軸の変数を交換しても同じでなければならない。実際そうである。
式 T'=(T-XV/C2)/√(1-V2/C2)をX/CとTを入れ替え、X'/CとT'を入れ替えると式 X'=(X-VT)/√(1-V2/C2)になる。これは数学上「X/CとTは同格同列」であることをしめす。
ニワトリが先か卵が先かの議論かもしれないが、「X/CとTは同格同列」を原理とすれば幾何学を使わなくともロ−レンツ変換が導ける。
a)基本形の確立
ロ−レンツ変換とは何か? まずリニア−変換である。そして暗黙の了解であるが慣性系と基準系の原点は重なる。よってまずX'=aX+bTと書ける。
もうひとつT'=AT+BXも考えなければなるまい。ここで「X/CとTは同格同列」が威力を発揮する。つまり式X'=aX+bT のX/CとTを入れ替え、X'/CとT'を入れ替える。するとT'=aT+bX/C2が得られる。わざわざA、Bを導く必要がないのだ。!
これにより正変換は式 X'=aX+bT T'=aT+bX/C2になる。
b)相対速度Vの導入
ここで系の相対速度を代入する。相対速度をVとすれば基準系からみてX=VTは慣性系からみればX'=0である。よってX'=0とX=VTを式X'=aX+bTに代入すれば0=aVT+bT=(aV+b)TだからaV+b=0つまりb=-aVである。よってロ−レンツ変換はX'=a(X-VT),T'=a(T-VX/C2)となる。
aをkにすればこの章のc)ロ−レンツ変換その3x'とt'を求めるで出した式と同じものが得られる。これから後は一緒である。再度書けば
c)逆変換
これに逆変換の法則T’とTを入れ替え、X'とXを入れ替え、-Vを+Vにすると逆変換の式
X=a(X'+VT'),T=a(T'+VX'/C2)が求まる。
d)計算
そして式X'=a(X-VT),T'=a(T-VX/C2)とX=a(X'+VT'),T=a(T'+VX'/C2)の任意の3個からa=1/√(1-V2/C2)が求まる。
以上で幾何学を使わなくともロ−レンツ変換が導けた!