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当時の男ヘル(男子ヘルパー・スタッフ)の仕事に早番というものがありました。摩周湖YHは摩周湖に一番近い宿というのが一つの売りでした。それでも歩いて小一時間は掛かりましたが。
摩周湖YHの名物に「日の出前に起きて、摩周湖第一展望台まで歩いて、摩周岳から登る朝日を見る」というツアーがありました。その名も「早朝散歩」。
その早朝散歩に欠かせない重要な役目を担うのが「早番」です。
どれくらい重要かというと、「早番はその日の他の仕事が免除されるという」くらい重要な役目だったのです。
基本的にヘルパーの帯同はなく、「摩周湖へは一本道で迷うこともないので、各自行って下さい」なのですが、早番は
1、日の出一時間前には玄関の鍵を開け、
2、空模様を見て天候の判断(特に冬の場合、危険なため星空が出ていなければ中止)、
3、中止の場合、「天候不順のため中止」の看板をフロントに置きます
4、行けそうなら前夜に確認していた希望者を起こしていきます。
という仕事をしなければなりません。
当時の摩周湖YHはシーズン中は男女別相部屋でほぼ満室なので、目覚まし時計を鳴らされると他のホステラーに迷惑が掛かるので、早朝散歩に行きたい人の希望を前夜に聞いておき、ヘルパーが責任を持って起こしていました。枕元で「朝ですよ」と言って廻るのです。
ヘルパーにとっては、いつでも行ける早朝散歩(一度も行かなかったヘルパーも多い)ですが、限られた日数で旅しているホステラーさんには行けるチャンスは宿泊したときだけです。
だから、早番にはホステラーさんの為にも失敗は許されないのです。それだけプレッシャーがありますし、朝4時起きと体調管理も難しい仕事です。
だから、そんな早番は私みたいな下っ端ヘルパーが担当することが多かったのです。
さて、ここに一人の男ヘルがいました。その名は「隊長」。彼は春休みのシーズンヘルパーでした。
でも隊長は朝が大の苦手。
それを知ったのは隊長の初めての早番の時でした。まだ真っ暗な中、ヘルパー部屋をノックする音が・・・。
「今朝の早朝散歩は中止ですか?中止の看板が出てませんけど」
「げっ!」と思って、飛び起きあたふたと対応しその場を取り繕いましたが、早番の隊長は高いびき・・・。
次の隊長の早番の時、私は心配で隊長より早く目が覚め、隊長を起こしますが全く起きる気配なし、仕方なく早番のリリーフをしました。シーズン中のヘルパー達はローテーションで役割分担をしていましたが、忙しくストレスが溜まっていました。そんな中、早番を失敗してホステラーからクレームが付くと、当の早番だけでなく男ヘル全員が酋長(ペアレント・オーナー)にこっぴどく怒られました。
だから早番失敗はヘルパー部屋の雰囲気を一気に険悪にしたものです。
そんな中、隊長の早番をどうするか、というのが早番をローテーションで回している男ヘル数人の悩みの種でした。
でも、起きない隊長を起こすのは至難の技で、いつしか隊長の早番の時には「隊長を起こす為の早番」が必要となりました。でも、結局起きないので、「隊長を起こす為の早番」は正規の早番の役目も果たさないといけないのでした。
そんな隊長ですが、決して手をこまねいていたわけではありません。
「朝起きられないのだったら、徹夜すればいいんだ」と頑張っていましたが、「朝が弱いから夜が強い」というわけでもなく、失敗。
目覚ましを何個もかける。結局、起きるのは他のヘルパーで、失敗。おまけに、起こされた他のヘルパーは機嫌が悪い。
それならとロビーに布団を敷いて、目覚ましの音量を上げる。ヘルパー部屋で目覚ましが鳴らないので、誰も気が付かず、早起きしたホステラーに起こされ、失敗。
そして、とうとう前夜に「天候不順のため中止」の看板を置いて、ロビーで寝る始末・・・。
結局、「隊長に早番を成功させる」ことが男ヘルの一つの目標になっていきました。隊長が早番に一回でも成功したのか記憶にありませんが、失敗のイメージしかないので、多分全敗だったのでしょうね。
もう時効でしょうから、この場を借りてあやまります。当時宿泊していたホステラーの皆さん、当時の「天候不順のため中止」の何回かは隊長の早番失敗が原因でした。ごめんなさい。
そんな隊長も20年以上たった今では「朝5時には目が覚める」、と言っています。年には勝てませんね。
2011.1.17
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