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スペインのアルヘシラスからジブラルタル海峡をフェリーで渡ったモロッコの玄関口がタンジェです。モロッコのイミグレーションで入国審査を終え入国ゲートを出ると正装したモロッコ人男性がやってきて、胸にキラッときらめくバッジを見せながら「私は政府観光局の役人です。ここタンジェには悪質なガイドがたくさんいて、観光客とのトラブルが続出しているのでモロッコ政府としてもイメージアップのために私のような者を派遣しているのです。あなた達(フェリーで知り合ったメキシコ人のルイス・エドアルトと一緒だった)だけでここを出るとガイド達に取り囲まれて大変だから私が一緒に行ってあげましょう。勿論私は政府役人なのでお金の心配はいりません。」と言ってきました。
ヨーロッパを旅していた私は少し足を延ばせばアフリカ大陸(モロッコ)を踏みしめる事ができると知り、またイスラム圏にも入れるということで4〜5日モロッコを旅することにしました。でもタンジェのガイドはしつこいから注意しろと教えて貰いました。少し不安でしたがフェリーで知り合ったルイスも同じ気持ちだったようで一緒に旅することにしました。
さて政府ガイドに連れられターミナルを出るとワッとガイドらしき人々が取り囲んできましたが政府ガイドがシッシッと追い払うとすぐに違う観光客に群がっていきました。さすが政府ガイドと思って感心していましたが、「もうこれから二人で大丈夫だから」とお礼を言おうとすると政府ガイドは「いやいやタンジェは危険な町だから案内してあげよう」と帰ろうとしません。この時点で少し変だなと思ったのですが、好意をむげに断るのもいかがなものかなとしばらく付いて貰うことにしました。
連れて行かれたのは絨毯屋などの土産物屋ばかりで政府ガイドの肩書きをとるとそこら辺にいるガイドと変わりありません。だんだん政府ガイドと一緒にいることがうっとうしくなってきて、同行のルイスも同様で、「そろそろ二人で行動するからありがとう」と別れようとするとなんだかんだと言って別れてくれません。挙げ句の果て「あと二件いい店があるから行ってくれ」となり「旅で荷物になるから土産物は買わないよ。」と言っても解放してくれません。
そして連れていった店で「荷物になるなら送ればいい」とか「キャッシュがなければカードでOKだ」とか言いだす始末で「最初の話と話が違うじゃないか」と文句を言いました。すると「俺は君たちをガイドしてチャイや食事(お金は払うと言っても、いいからいいからと払ってくれた)までおごってやったのだから何か買え。」と本性を現してきました。
「あなたは最初お金の心配はしなくていいと言ったじゃないか。モロッコでは政府の人間が土産物を押し売りするのか。チャイ代と食事代は払うから、もうつきまとうのは止めてくれ。」と言うと「お前ら、このままですむと思っているのか。」と言いました。私もルイスも完全に切れて「勝手にしろ、もう帰る」と店を飛び出しました。
こちらはもう無視することにしていましたが、政府ガイドはしつこく付いてきてああだこうだ言ってきました。政府ガイドを振り切るべくレストランに入りましたがそこにも付いてきて隣りに座りました。無視していると注文の品がやってきました。そして政府ガイドは言いました。「これは俺が注文してやったのだからガイド料をくれ。」一瞬何のことか分かりませんでしたが「お前は頭がおかしいんじゃないか?」と言ってやりました。
どれぐらい付いてきたのでしょう。こちらも無言で歩き政府ガイドもさすがに無言で付いてきました。結局ルイスと相談して「お前はいくら欲しいんだ?」と聞くといくらかの金額を言いました。腹は立ちましたが少し身の危険も感じていたので言い値の半額位を渡すことでやっと解放されました。
私もルイスもいきなりモロッコの洗礼を受けたのでした。モロッコ人はインド人よりしつこいという話をこのタンジェで嫌というほど思い知らされました。後に行ったインド人の愛嬌みたいなものもありませんでした。アラブ商人恐るべし。
あれだけしつこく我々を監視していた政府ガイドもお祈りの時間だけは「少し待ってくれ」とお祈りをしていました。しかしあの政府ガイドは本当に政府の役人だったのでしょうか。私はモロッコの他の町(マラケシュは面白かった)にはまた行きたいですが、タンジェにだけは二度と行きたくありません。
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