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99/5/6公開

旅の雑談その21


笑生の成長

パンストをはいた男

何とかなるさプータロー

祖母からの贈り物

車は足

ロイヤルネパールの安全神話




笑生の成長

 旅で知り合った私と妻は結婚してからも「子供を連れてネパールを旅する」というのがお互い共通の夢でした。 そして娘・笑生(えみ)が4才、息子・洋志(ひろし)が3才の時、子供を連れて4ヶ月ネパールを旅しました。旅といってもほとんどポカラで過ごし、2回一週間程度のトレッキングに行っただけですが。

 子連れのネパールは親の私と妻にとっては自分の夢が叶ったと喜んでいるのですが、子供達にとってあの旅はどういう意味があったのでしょうか。
 当時、娘は長女の一般的な特徴かも知れませんが、どちらかと言えば内気で消極的な感じ娘で、その頃一年半通っていた保育園にも馴染んでいるとはいえない感じでした。友達の輪に入って行くよりも、ポツンとまわりで見ているタイプの子でした。
 そんな娘を約5ヶ月休園させて、ネパールに連れていったのです。親にとっては夢のような4ヶ月でしたが、子供達にはプラスとなるかマイナスとなるか少し心配でした。
 でも、帰国した娘は以前に比べて「比べものにならない位、積極的に行動するようになりましたよ」と保母さんに言われるくらい変わったようです。

 ネパールの生活でゴロゴロ、ダラダラしている親を見て「自分がしっかりしなくっちゃ」と思ったのでしょうか。帰国して「やっと日本語が喋れる」と日本語を喋れる喜びを感じたからでしょうか。ただ単に、積極的になる年頃だったのでしょうか。「山村留学で子供が変わった」という話はよく聞きますが、それと同じようなことでしょうか。
 ネパールの旅とどのような因果関係があるのか分かりませんが、いずれにせよ娘が良い意味で変わったのは嬉しいことです。子供の親なら我が子の成長は嬉しいものです。
 でも、「またネパールに行きたいか」と聞くと「もう行きたくない」と答えられるのはネパールに連れていった親としては少し寂しいものです。

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パンストをはいた男

 旅の荷物は極力軽い方が良い。
 でも、寒い国に行こうと思えばどうしても荷物は重たくなってしまいます。私の2度目の旅は、最終的には南米の最南端(パタゴニア)を目指すつもりでした。
 南米というと暖かいイメージがありますが、地図で見ると最南端は南極間近でとても寒そうな感じがしました。そこで、山好きの知り合いに「荷物にならない防寒具はないか」尋ねました。ジャケットとかは現地で買うしかありませんが、パタゴニアは風が強いみたいですし、ヒマラヤ・トレッキングでも使うだろうと、ウインドブレーカーのコンパクトになる登山用品があれば便利だと思ったからです。
 色々と教えてもらったその知り合いは女性だったのですが、「ズボンの下にパンストを履けば暖かいよ。パンストだったらかさばらないし、重たくもないし、持って行って損はないと思うよ。それにパンストは日本製が一番だよ。」と教えてくれました。
 なるほどと思いさっそく買いに走りました。といっても男の私がパンストを買うのは恥ずかしいので知り合いの女性に頼んでですが。

 こうして、私のバックパックには女性用のパンストが加わったのです。
 さて、旅の途中、琴恵と知り合い彼女と親しくなってきた頃、バックパックをひっくり返しているとあのパンストが出てきました。ハッとして周りを見ましたが幸い彼女はおらず、ホッとしたのですが、「さてこのパンストをどうしようか」と考えてしまいました。
 当時はインドの後は彼女と別れて南米を目指すつもりだったので、捨てるのはもったいないし、かといってバックパックに女性用のパンストを隠し持っているのを見られたら「女装趣味の変態」と思われかねません。結局誤解されないよう前もって彼女に説明したのですが、何となく言い訳めいているようで恥ずかしかったものです。あの頃はお互い恥じらいというものがあったのです。

 さて、私はその後南米の地を踏むこともなく帰国したので、あのパンストの効果を試すことができませんでしたが、本当にパンストは防寒に役立つのでしょうか。

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何とかなるさプータロー

 人間誰しも将来に不安があるものでしょう。多かれ少なかれ程度の差はあれ不安を持ちながら生きているのだと思います。仕事のこと、健康のこと等々。
 仕事をやめて、あるいは就職しないで旅に出るということは、ある意味無謀なことでしょう。特に安定した職業や大手企業に勤めている人にすれば「何を馬鹿なことをやっているんだ。」といった感じでしょう。
 「夢?何を甘いこと言っているんだ。現実を見ろ、現実を。」というのが世間一般の答でしょう。
 私の周りを見ても、旅で知り合った人以外では、仕事もせず長い間放浪している人間は見かけません、私の兄を除いては。

 でも、旅をしていると「君は本当にあの勤勉で働き者で有名な日本人か?」と言いたくなるような旅人がたくさんいます。日本国内ではどこに潜んでいるのか目立ちませんが、旅に出ると水を得た魚のようにイキイキと旅しています。
 私も含めてそういう旅人に共通しているのが、「自分の将来を深刻に考えずに楽観視している」ということでしょう。深く考えても仕方がない、そんな将来のことなんかわからない。なるようになるし、なるようにしかならない。開き直りのようなものでしょうか。
 私は旅していた頃、自分の将来に不安を感じたり気分が落ち込んだときなど「何とかなるさ、プータロー」と心の中で叫ぶと、スーッと心が軽くなったものです。旅を終えた今でも、「なんとかなるさ」そう思っていないと、将来も今の世の中も不安な事だらけです。

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祖母からの贈り物

 子供を連れてのネパールは4ヶ月半位の期間でしたので、「何も知らずに外国に連れて行かれた」孫を不憫に思う義理の祖父母から、子供達にお菓子やフリカケ、絵本、ぬりえ、クレヨン等の救援物資が送られてきました。
 ポカラのG.P.O(中央郵便局)で受け取った小包は検査・検疫の為か包みが破られ、開けられたあとがくっきり残っていました。小包はガムテープでグルグル巻きにされており最初何のことか分かりませんでしたが、検査のため開けられたことに気付きました。それでも、無事届いたと喜んでホテルに持って帰って子供達と開けました。
 娘と息子は「何が入っているのか」と目を輝かせて包みを開けました。そしてぬりえの本やクレヨン、色鉛筆など久しぶりに包装がきれいな日本製品に大喜びではしゃぎまわっていました。

 でも、ふとあることに気が付きました。色鉛筆もクレヨンもワンセットしか入っていないのです。
 姉弟二人にワンセット、というのはケンカの元でしょう。絶対に取り合いになるのは目に見えています。その辺のことは充分承知しているはずの祖母が可愛い孫に送るのに、その辺の事を考えないはずがないのです。
 姉弟二人にワンセットではなく、姉弟二人に2セットのはずなのです。
 帰国後、その事を祖父母に確かめると確かに2セットづつ送ったとのこと。やはり、途中で抜かれたのです。
 郵便局員が包みを開けると子供の喜びそうなクレヨンや色鉛筆が入っている。彼には子供がいて喜ぶ子供の顔を見ると思わず手が出てしまった・・・。そんな光景を想像しながら、どうせ盗むなら全てを盗んでしまえば分からないものを(ネパールでは荷物が届かないことは日常茶飯事のことで、どこで紛失したのか調べようもないのに)、わざわざ少しだけ抜き取って残りをきちんと届ける人の良さ(「盗んだよ」と言っているようなものです)を滑稽に思い、あまり憎めなくなりました。

 ネパールに手紙を送る場合、中を開けられることは多いようで、金目のものが入っているとまず届かないようですし、写真もなかなか届きません。だから送るなら葉書がベターです。配達時に盗まれるのを防ぐために、手紙は直接相手先に送るよりG.P.O留めにするのがベターです。ネパールの郵便局員を犯罪者にしないためにも。

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車は足

 私にとって車とは「人や物を運ぶ道具」でそれ以上でもそれ以下でもないとしか思えませんが、毎日のように洗車したり土禁にするなど車にとても愛着を持っている人はたくさんいます。
 私のように「車は足」と割り切った考え方をするのはアメリカ的な思考でしょうか。「車に輸送手段以上の価値を見出す」人はたぶん日本的な思考の人ではないでしょうか。かつて侍が日本刀に武士道精神を求めたのと同じように。たぶん日本人ほど車に手をかけている国民はいないでしょう。ちょっとこすっただけで修理に高いお金をかけるなんて、他の国の人から見れば異常に見えるでしょう。イタリアやスペイン・ポルトガルなどサイドミラーの付いてないのは当たり前でしたし、ヨーロッパでも日本で走っているようなピカピカの車は少なかったと思います。

 さて、ネパールの中古車市場について。
 たぶんネパール以外でも自国で車を生産できず、中古車を輸入している国に共通のことかも知れませんが、オートマチック車よりもマニュアル車が人気で高く売れます。新旧は問いません。
 どちらかというと部品の入手しやすい車種、つまり生産・販売・流通台数が多いマニュアル車が人気なのです。最先端技術満載の新車の人気はいまいちなのです。日本のように「古くなったら買い換え」ではなく「故障してもとことん修理して乗れるだけ乗る」のがネパール流です。マニュアル車なら部品交換(部品がなければ部品を作ってしまう)も簡単ですが、電気制御のオートマチック車になると故障に対応できません。
 道路事情の悪い国では故障は付き物で、複雑な電気制御の車は修理できません。メカニックの技術者はたくさんいるのですが、電気系の技術者の数は少なくレベルも低く部品も手に入りません。つまり最新のオートマチック車は無用の長物になってしまう危険性が高いのです。だからネパールやインドではボロボロのメーターが何回転したのか分からないような年代物の車がたくさん走っています。旅の車に洗車も土禁もありません。
 「車は足」と思っている私は「車は走ればいい」となんの違和感もありませんが、「車が命」の人はどう感じるのでしょう。

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ロイヤルネパールの安全神話

 子供を連れてのネパールは、子供の体調を考えると少々チケット代が高くても関空からカトマンドゥへ直行のロイヤルネパールを使いました。これが一人だとバンコク経由で安いチケットを探して行くところなのですが、子供連れの場合価格優先というわけにはいきません。利便性が優先となります。
 さて、ロイヤルネパール。国内線の航空会社はたくさんありますが、この航空会社はネパール唯一の国際線航路を持つ航空会社です。その航空会社が国際線に使用する飛行機の数はわずか2機です。使用している飛行機も日本やアメリカではとっくにお払い箱になっていそうな、あるいはお払い箱になった飛行機をもらい受けたといった感じのものです。
 この2機をうまくローテーションさせて週2回の関空やバンコク、ニューデリーやボンベイ(ムンバイ)などのインド方面の国際線をまかなっているのです。

 そう考えると過密日程で「メンテナンスは大丈夫か?」とか「故障するとどうなるの?」とか安全面が心配になってきます。
 その事を知り合いのネパール人に尋ねると「No Problem、心配するな、ロイヤルネパールは絶対墜落しない。」と言い、その理由を教えてくれました。
 もし、2機しかない飛行機が墜落すればロイヤルネパールは倒産してしまう、だから意地でも墜落はしないし、させないはずだ、と。それに、「下手に点検すると要らないところまでいじってしまって逆に故障の原因になるから、飛び回っている方がいいんだ」。説得力があるのかないのか変に納得させられました。
 「ロイヤルネパールは墜落しない」という安全神話はいつまで続くのでしょうか。

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