神秘の湖・摩周湖。
摩周湖は火山の噴火によってできたカルデラ湖で、世界有数の透明度を誇る美しい湖です。夏は霧に包まれ湖面を見れるのは運が良いときだけ、冬は氷に閉ざされ、春の早朝は雲海に覆われます。
そんな美しい湖は摩周岳に代表される外輪山に囲まれ、ごく一部・第一から第三展望台まで車の通れる道路がありますが、後は裏摩周展望台への道路と摩周岳につづく登山道があるだけです。
ある晩秋、一人の美しく若い女性が摩周湖で姿を消しました。その女性の泊まっていたホテルの一室から彼女の遺書が発見されました。恋に破れた彼女は思い出の摩周湖を死に場所に選んだのでした。
すぐに捜索が始まりましたが、それを待っていたかのように初雪が降り積もり彼女の消息も痕跡も全てその白い雪の下に隠してしまいました。
そして、その冬のある日、別の女性がやはり摩周湖に死に場所を求めてやってきました。彼女も同じように遺書を残し、夕方ホテルを出ました。彼女の様子のおかしいことに気付いていたホテルの従業員は深夜になっても彼女が戻ってこないことに不安をおぼえました。
「またか・・・。」
でも、一年に何度も同じ様なことが続くはずがない・・・、従業員はそう自分に言い聞かせるしか不安な気持ちを落ち着かせることはできませんでした。
翌朝になっても、とうとう彼女は戻ってきませんでした。従業員は彼女の部屋を調べました。女性の一人旅にしては少なすぎる荷物は広げられることなく、部屋の隅に置かれ、机の上には遺書が・・・。
すぐに捜索が始められました。真冬の摩周湖で一晩たっているので、見つかっても命が助かる見込みは少なく、救助より遺体発見の意味合いが強い捜索でした。幸い、その晩は新たな雪は降らず、彼女らしき足跡もすぐに見つかりました。足跡は摩周岳の方へ続いていました。足跡をたどっていくと、途中で湖面の方へ何かが滑り落ちた跡がありました。注意深く斜面を降りていくと、小さなくぼみがありました。
そのくぼみに若い女性が倒れていました。すぐに担ぎ出された彼女は息もあり、奇跡的に一命をとりとめました。
彼女は死に場所を求めて摩周湖をさまよったのですが、夜になり急に死ぬのが怖くなり引き返そうとしたとき、足を滑らせ斜面を滑り落ちたのです。運良く引っかかった木の横に小さなくぼみがあり、そのくぼみ入り寒さに耐え、捜索の来るのを待ったのでした。
彼女が救出され病院に運ばれた後、警察によってそのくぼみが検証されました。そのくぼみは狐の巣になっており、穴の奥から晩秋に消息を絶った女性の遺体が発見されました。その女性の遺体の顔半分は狐に食べられていました。
その冬以来、摩周湖近くのホテルでは女性の一人旅は歓迎されざる客となりました。 |