鬼が笑う話

 曽爾(そに)村というたら、大和でも一番東の端の村、隣の伊賀の国の国境。この村でも

年越しが来たらヤッパリ豆まきをするそうや。

 最初に炒った豆は神様に、次は自分らが食べるために、最後は豆まき用の豆で真っ黒に炒ります。

これは庭にまいても芽が出ないようにするためですが、なせ芽が出るといけないのでしょう。

 むかし、鬼が村に時々やってきて、牛やニワトリをとったり、娘をさらって山に逃げ帰る。

それを村のもんは、都の殿様に申し上げました。賢い殿様で「鬼と喧嘩しても、はじまらん。うまいこと

いって、だますことじやな。」 それで使いを出して鬼に言った。鬼も沢山の軍勢と戦ってはと、素直に

条件を聞いた。「もし、今後村を襲わなかったら一国の殿様にしてやる。ただし、年越しの豆の芽が

出るのを見つけたら、と言う条件で」

鬼は嘘でなければと念を押して引き下がりました。

 それから毎年年越しのまめの芽を見つけて春先になる国中走りまわっておりました。

そんなある時、良く炒ったはずの豆がなんと、芽が出ているところがあったではありませんか。

鬼は喜び勇んで殿様のもとに、役人もびっくりして鬼と一緒に来てみると、影も形も無い。

村人がその間に引っこ抜いたのです。「確かに このあたりや」と 鬼は探すが一向に見つからない。

とうとう鬼は泣き出しました。それを見て役人も可哀相になって。

「なんでもええがな。来年も年越しがあるのや。その時又、探したらええねん。」

鬼は急に泣くのを止めて「なんや、来年のこと言うて・・・・・」いっぺに、わらいだしたそうや。

 

 「来年の事をいうたら、鬼が笑う」とは、これから始まったことわざやそうやけど。ほんまやろうか。

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つめでがふち
爪出ヶ淵

 一筋に室生寺を目指して谷の道を歩いていくと山鳩の鳴き声があちこちから聞こえてきます。

こうしてたどり着いた室生寺は駅からバスに乗るよりも、ズット印象深いです。(東海自然歩道)

 高野山が女人禁制であった時代にも、女性の信者を受け入れていたために、女人高野の別名を

持つ真言密教の聖地「室生寺」。ここは、あたりの山と清流のせいか、竜神信仰に彩られる寺。

 この寺の旧境内、室生川に爪出ヶ淵と呼ばれている場所があります。

 昔、慶円上人がここを通りかかると、淵の善女竜王が美女と成って現れ、名を明かして

即身仏の印明を授けてほしいと頼みました。上人はその望みをかなえてやった上で、竜王の本身を

あらわして見せるように、あらためて求めました。

すると竜王は、全身を見せると人々を驚かせるから半身だけ見せようと言って、黒雲を起こしました。

そしてその黒雲の間から、右の手だけを現して見せたのです。その爪は、長さが三メートルにも及び、

五色に輝いていました。

 それ以来、その淵に「爪出ヶ淵」という名がつけられたのです。

 室生寺では古来からしばしば竜神が現れ、龍神を祀って雨乞いを行っていますが、その竜穴と

いわれるものが、寺の周辺の山中に洞穴として残っています。室生寺から更に一キロほど川を

さかのぼった所にある竜穴神社の洞穴も、そのひとつです。

 

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