ここでは、個人的におおハマリしてる作品等を順次ご紹介していきます。
コミックが主にはなっていくと思いますが、分野、年代、もろもろにこだわらず、気の向くまま挙げていきます。さあて。何が出てくるのやら。


6月 

『シャーリー』『エマ1〜4(続)』(森 薫))エンターブレイン

この作家さんの本は装丁が綺麗だし、メイドンの服装がバジル氏〜を思い出させて、かつ帯に「身分違いの恋」なんてあって、そそられていたのだが、「図書の家」のBBSで常連さんが薦めてくれて、よっしゃ買いだ〜と買ってみたら、やはり面白かったので、ここは一つ坂田ファンの方にも薦めてみようかな、と。
元来私は人の薦める本はお金が許せばなるべく読んでみたい質。そのお薦めで出会った好きなモノがたくさんあるから。だもんで、自分もつい薦めてしまうのだが。
それで好みが合う、合わないはまたそれぞれの人の問題だから別にきっかけの一つとして、でどちらでもいいのである。
さて、『シャーリー』は一冊で完結しているので、先にこちらから読んでみられるといいだろうと思う。イギリスの貴族社会におけるメイドンにこの上なく魅力を感じているらしい作者の好み爆発、という感じ。
働くには少し幼い主人公シャーリー(13歳)がそれでもけなげにメイドを募集している独身の女主人ベネット(28歳)の家を訪ねてきてなんとか雇ってもらう。それまでの経緯は分からない。幼いが賢いし、料理も掃除も一渡り以上のことがきちんと出来るし・・で、多少のことは目をつぶってベネットは雇った。それに自分が断ったらどこにも行くあてがなさそうだったから。幼いが賢く使える、というあたり、バジル氏のルイ君を思い出したりした。ルイもバジル氏に拾われる前の経緯は相当ひどかった・・。
シャーリーの過去は出てこないが、与えられたメイドのドレスの裾が広がるのに感動するシーンなど、可愛らしさと同時に、どんなに苦労してきたのか、、と切なくなったものだ。
ベネットは顧客をそこそこもつ(年齢層は高いが)カフェレストラン?の女主人で、この時代の女性として自分で生計を立てている女性というのはけっこう珍しいのではないか・・どうだろう・・。28で独身というのもこの時代では嫁ぎ遅れということで、招かれたパーティに出るのは非常に足が重いという話もあった。結婚しないのはツライ恋があったらしい、というのもそこで分かるが、さばさばして非常に美人でいい女、という役どころ。そんな自立した女主人とシャーリーの二人の生活はなかなかいい感じである。
『エマ』はやはりメイドで、貴族ではないが成功した大きな商家の息子と恋に落ちる。仕えていた女主人が老齢のため亡くなり、行くあてのないエマはツライ恋と決別するためロンドンを離れる。最初の方で、バジル氏の「月の階段」を思い出した。
が、坂田版身分違いの恋は、貴族である主人公が人嫌い、社交界嫌いという設定が最初にばちっとあったので、貴族とメイドの身分違いというのは読み手はあまり意識することがなかったと思う。
そういえば、「あしながおじさん」も孤児である主人公と結婚したが、この人も元々社交嫌い、福祉に打ち込む変わり者という設定だった。現代社会で一般人で過ごすとあんまし普段身分の差というのを感じることはないが、現代日本でも行くところに行けばちゃんと格の差で結婚できないってのはあるだろう;;そういう社会に住む人には、格下の相手と正式に結婚するというのは、周囲の反対にさらされ、困難を極める。玉の輿ストーリーはハーレクインなどではよくあるのかもしれないが、現実としてもし結婚してもそこからがまた大変だろうし・・。あ、話は脱線したが、エマの世界は、そうした恋のつらさだけではなく、当時の生活の雰囲気が非常によく画面から伝わってきて、作者のこの時代への思い入れが分かる。坂田さんがバジル氏の時代が読み手によっては時代設定より後に思われがちのようだ、それは画面が明るいせいだろうか、といった内容を以前にサカタボックスで書かれていたが、森さんの絵は確かにこの時代の光源の暗さまでよく分かる。勿論坂田さんは坂田さんの魅力で時代の雰囲気が伝わってくるのでイイのだが、坂田さんが嘆かれていた点はこういうことだったのだろうか、という具体例を見るような気がした。
たとえば、シャーリーが勤めることになって与えられた屋根裏部屋の描写。光源がランプ一つなので非常に暗く、狭いのがよく伝わってくる。シンプルで柔らかい線は坂田ファンにも受けそうな絵柄。興味のある向きはちょうど4巻が出たところ。店頭で手にとってみてください。(アンケートハガキが可愛いんで、このまま出すのがもったいない、と出さない私・・。これはこれで取っておいて別のハガキで出せばいいのかな(笑))


5月 

『秘密1〜2(続)』(清水玲子)白泉社 ジェッツコミックス

清水玲子さんの絵はともかく美しい。少女漫画の王道を、光の道をひたすら邁進している感がある。それでいて長編は私にはどこか入りきれないものがあるのだが、短編は好きなものが多い。ジャックの話がお気に入りだった。
「秘密」は死んだ人の脳に残ったデータを解析できるという近未来SFである。脳に残った画像を元に事件の解明に臨んでいく。その組織のエリート中のエリートの美青年が物語の主軸になっていくから、清水キャラならではの美形が出てきてキャラ萌えの人には眼福かもしれない。一方でこの繊細な美しい絵で描かれる脳の絵はなかなかインパクトがある。醜もまた美なりとはいうが、グロがグロにならない。同じ絵をエログロ派の作家が描けば生々しくてしょうがないであろう素材が、この線で描かれるとそれがない。良くも悪くも。
脳に残った画像が犯罪捜査の為に容赦なく分析される。
第一話は暗殺された大統領の脳の分析で、殺されるまでに残った画像が清廉潔白だった大統領の最後のゴシップになってしまう。秘められた恋心がビジョンに残ったがために。よく漫画家さんが主人公から見た恋の相手の絵で美化したコマを入れるが、感情の動物である人間、同じ場面で同じ人間を見ていても人によって画像が違っているのだ、と思うと、理屈では分かっていてももしそれを実際に画像で見せられたらとても不思議だろうなあ・・。SFとしても、もしかしたらこのくらいのことは将来的には出来るかもしれない、と思わせるし、物語としても非常に切なくも切れがよくお薦めできる。やっぱこの作家さんは短編がイイ、と改めて思う・・。(長編は、、、「輝夜姫」、まだ続いているのですね・・完結してみないとなんとも・・・)


4月 

『アンダー』『天使の顔写真』『グリフィン』(森脇真末味)ハヤカワ文庫

森脇さんのお薦めは過去にも一度挙げているのだが、最近ハヤカワさんが文庫を続けて出されているので、そのラインナップに感動して応援の意味もこめてお薦めに挙げます。ここに収録されている作品が今まで絶版で入手困難だったのだとしたら、まったくコミックの流通というのはどうしようもない。それだけに文庫とはいえこうして出版される編集さんの気概には感じ入ってしまうのでした。
未読の方は是非是非書店で手にとってください。下手な小説を読むよりもよほど読み応えのある短編集。
と・・こうやって書くと、いまだに私には小説の方が上でコミックの方が下という価値観の縛りがあるのだろうか;と逆に自分で思ってしまいますが。マンガにインスパイアされた映画、漫画的画像・展開の映画、文学が次々出てくるこのご時世に、TVをつければコミック原作のドラマが占め、ジャパニメが世界の人たちを魅了している昨今に。
とりいそぎ、だまされたと思って手にとって!と薦めておいて・・作品紹介はまた改めて。
・・ここまで先回書いておいてさて、改めて作品紹介を及ばずながら書かせていただきます。
まず『アンダー』これは森脇さんの初挑戦、長編近未来SFです。といってももう10年以上前の作品。面白いことに普通の女の子である主人公のファッションがまさに現在に通じるところがあって・・シフォン系のスカートをパンツスタイルに重ねるという・・当時はそういう服装は勿論一般にはなく、近未来として描かれたものが今まさに現実に似たようなかっこの女の子がその辺を歩いている。作中に出てくるフィギュアなんかも。SF作品というのは概して世俗・風俗の描き方で古さを感じてしまうものだが、画力の確かさと先見性がそれをさせない。
物語の舞台は近未来〜なんらかの原因で崩壊後(「極ジャンプ」後)再構築された世界=「アンダー」。そこでは一見現代と特に変わらない生活が営まれており、主人公ノヴァは学校に通うごくごく普通の女の子。親同士の結婚で義兄となったサラエ、ノヴァの前に現れたサラエによく似た青年、この3人を軸にした話と、元天才少年・圭が中央政府の特権階級となっていく二つの軸が錯綜しつつ展開する。
森脇版・マージナル?とも思うし、森脇版・ワンゼロ?でもある・・近未来の設定そのものは決して珍しいものではないが、親に売られたトラウマを抱え持つ永遠の少年・圭と彼をめぐる女性、子供達の話は森脇さんならでは。時間と人間関係が入り組む構築力もさすがだ。ラストのカタストロフィも見事である。二つの軸の錯綜していく感じは謎解きの要素も多く、SFファンもミステリファンも面白く読めるのでは、と思う。
脇のキャラでは特に古物商のキクゾー君がとてもユニークでお気に入りでした。どこからどうみてもヤンキーなのに、日本おたくみたいでなぜか胴着なぞ身に着けていて。そういえば今連載の萩尾先生の『バルバラ異界』に出てくるキャラ(日本おたく)にもつながってるかも。
『天使の顔写真』収録作品は「天使の顔写真」「空色冷蔵庫」「トライアングル」「サカナカナ」「週に一度のお食事を」「錆色ロボット」「鏡の前のポタルゲー」「山羊の頭のSOUP」「ナビゲーターから一言」。
『グリフィン』収録作品は「死神」「ぼくの電話 きみの午後」「アルバート・ガンツに騙されて」「コラージュ」「ユージーン」。
2冊は短編集。読者そのものをおちょくっているかのような小気味の良いネームが飛び交う時もにやりとしてしまう。饒舌でどうしようもない、したたかな女達はどこか憎めず、ナイーブで大人になりきれない男達は愛しい。
私は森脇さんのコミックスの殆どを持っているが、確かにその殆どが現在入手困難本であろう・・。今回文庫で読み直してみて、やっぱ好きだーと自覚しなおした次第。
新たに手に取ってくれる読者が増え、新作をどこかで読めればファンとしては幸福なのだが。