〜古本雑誌の山〜幻のCOM編〜

    ■はじめに■

    1964年生まれの私にとって、虫プロが発行していた『COM』というマンガ雑誌は名前こそよく目にするものの、まさに伝説の、とか幻の、とかいう冠がつく雑誌の一つであった。
    ところがある縁で、その幻の雑誌の山に接する機会が持てたのだ。それもひとえに共同運営サイト「図書の家」の主宰である小西が、ある方から段ボール二箱分のCOMを譲り受けたからなのだった。私はその小西との縁で、こういう機会でもなければ手に取ることも殆どなかったであろうお宝の山に触れることとなった。本当に縁とは大事で有り難いことである。譲って下さった某氏には感謝に堪えないし、貴重な雑誌群を自分が読むより先に長々と貸してくれた小西にも改めて礼を言いたい。

    私がコミックを読み始めたのは1970年代半ばではあったので、既に24年組作家と呼ばれる萩尾さん、竹宮さん、山岸さん…の数々の名作が生まれ、それぞれの多彩な才能が開花し、マンガというメディアの可能性を大きく広げつつあった。さらにはそうした作家陣に続く才能もどんどんデビューしていた、少女マンガ史にとって黄金期とも言われる時期にさしかかっていた時。そして私は一読者として、花開いた黄金期の少女マンガにどっぷり浸かって思春期を過ごした。
    そうした私にとっては既にそれぞれ独自の世界を築きつつあった作家達のデビュー前のまんが界というのは、遠い過去ではあったのだ。

    今回『COM』(全てではなく一部ではあるものの)を読んで触れることが出来たのは、まだ少女マンガが花開く前、まるで夜明け前のような時期の「まんが界」そのものーそこは既に手塚治虫氏、石森章太郎氏、赤塚不二夫氏…といった、日本の漫画史に金字塔を築いた方々が活躍する世界ーであった。
    "まんがエリートのための"と銘打たれた『COM』は、当時の先駆者達のマンガに賭ける情熱と、この表現メディアでしかやれない事をやってやろう!という高い志に満ちていた。一方で時代はまだマンガといえば子どもの読み物、"大学生がマンガを読むなんて!?"という偏見が一般的であったろう。それを跳ね返そうとする余りに、"エリート"という言葉にも現在の我々が見るとやや鼻白むところがない訳ではない
    。が、情熱は熱く漲り、ブームは来たれり、そこに群がるまんがマニア達の意欲も誌面から伝わってくる。その中で、高い指向性をもった男子向けのマンガに比して、少女マンガは"大きな目玉、ワンパターンのメロドラマ、無国籍の、"といった非難が目立つもののようであった。そして、手塚、石森、ちばてつや、といった方たちは少女マンガでも名作を描き、その世界を高く引き上げようとしていた、そんな時代。
    そこから徐々に、従来の少女マンガのパターンを脱却する作家陣が育ち翼を広げようとしていた、そんな時代。

    萩尾さんがデビュー前お好きで読んでいたと挙げられる矢代まさこ氏の作品も直に読めた。萩尾さんの初期の絵は矢代さんのタッチにかなり近い。誰にでも影響を与える先駆者はいたのだなーとここに実感する。同じように名前が挙がる岡田史子氏。岡田氏は『COM』の投稿者の中でも図抜けて評価が高く誌上でどんどん頭角を顕していた。その世界はどこか文学的、詩的で、萩尾さんの世界にも確かに与えるモノは多かったのかもしれない。

    そして「COM」1971.10月号。萩尾さんの「10月の少女たち」が掲載されていて、さらにその号は少女マンガ特集。萩尾さん、竹宮さんも参加されている少女漫画家達の座談会も記載。新人漫画家として中堅や大御所を前にやや遠慮がちながらも語られる意欲。新しい少女マンガを描いていくひそかな情熱がきっとあったに違いない。。。。
    そこに載っている辻真先さんの解説もすばらしく時代をつかみ、少女マンガの新しいうねりを的確に把握、予言されているものであった。当時、明らかに少年マンガの格下に思われていた少女マンガ。でも開花はすぐそこまで来ていたのだ。

    "まんがエリートのため"の雑誌は、誌面のあらゆる箇所で漫画家を志す若い才能に啓蒙的であった。しかも、既に一家を成している手塚氏、石森氏、…各氏はまださらなる表現世界の開拓に余念がなく、その姿勢そのものが後に続く才能にどれだけの影響を与えたか計り知れない。そして、闘わされるまんが論、座談会などの記事。不思議なことにそこで語られる問題点は現在の状況にも通じ、時代は変化しつつも、繰り返している、繰り返しながらも変化している、そうした事も思ったのだった。

    『COM』という雑誌のデータはより完璧な形で既にネット上に存在する。この雑誌はマンガ家を目指す人やまんがマニア向けではあった。既にこの時代の"まんがブーム"に到るまでの総括的な資料も多い。
    ここでは当時の少女マンガがどのように見られていたか、どのような評価があったか、といった、少女マンガに視点を絞ったメモを附記したデータを挙げる。覚書の文中、敬称を略していることも多いがご容赦願いたい。
    大事に保存されてこられた本を快く譲ってくれた方への感謝と、読ませて貰ったものの非常に記憶力の悪い自分の為の覚書ではあるので、データとしてはさほど見るべきモノもないかもしれないが、何かしらの参考になれば幸いと願う。

    2002.2 天野章生 記

    *補足*

    このデータにおける著作物からの引用部分について。
    当時を知らない私が特に関心を持ち、このデータを挙げる主眼としての少女マンガに関する記載について資料的に必要と感じて行っています。下手な要約をするよりも、その文章を書かれた方の文意を損なわない為に引用させて頂いています。典拠を明示しての部分的な引用は著作権を侵すモノではないということに基づいています。(引用されている箇所は該当欄の目次参照)。
    目次データも既にあるデータサイトからの転用ではなく、全て現物を確認してこちらで新たに打ち込んだもの。データの完全版ではなく、あくまでも実物を見て自分がどこに関心を持ち、資料としてどういう意味を感じたかを整理しようというのがこのデータの作成動機です。
    共同運営サイト『図書の家』での他のコンテンツ同様、少女マンガをマニアックに研究するという志の元に作成されていることをご理解頂いた上で、何か問題があれば下記のメールアドレスまでご連絡下さい。善処致します。

    VFF21101@nifty.ne.jp

    ■データインデックス■(歯抜けご容赦!!)
    1967.3
    1967.4
    1967.5
    1967.6
    1967.7
    1967.8
    1967.9
    1967.10
    1967.11
    1967.12
    1968.1
    1968.2
    1968.3
    1968.4
    1968.5
    1968.6
    1968.7
    1968.8
    1968.9
    1968.10
    1968.11
    1968.12
    1969.1
    1969.2
    1969.3
    1969.4
    1969.7
    1969.8
    1969.9
    1969.10
    1969.11
    1969.12
    1970.1
    1970.2
    1971.2
    1971.10

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