『まっすぐにいこう。1〜25続』 きら 著  集英社

群馬に転居してきてしばらく、車の運転もまだまだ初心者の時だったが、さすがにちょっと仕事に出るかと高崎まで事務のパートに行っていた。その時仲良くなった人が薦めてくれた本が「まっすぐにいこう。」だった。当時私は33歳くらいだったと思うが、私よりちょっと年上で独身の、気持ちの優しいいい人だった。漫画マニアという感じでは全然ないその人が好きな漫画だといってその頃出ていた7,8巻くらいまでを貸してくれて、なるほど、こういう漫画をマニアじゃない人は好んで読むのだな〜と変な感心をしたのを覚えている。
というので、この漫画が人気があるのは認知していたのだが、ごく最近25巻が出て平台に並んでいるのを見た。まだ続いていたのかーーと驚いた。かなりな巻数になってるのは知っていたが、まだ続いていたとわ。そして掲載誌でもちょうど読みきりのように単発で載ってるのを見た。・・・はあ、凄いわ、ここまで長く支持されるというのも、とさらに感心。アニメにもなっていたらしい。賞なんかも貰っておられる。この作者さんは若いうちに殆どこの作品でデビューして、それがそのまま当たってシリーズ化してそのまま大人の漫画家になっておられるわけだ。凄いことだ。
で、わけあってこの作品を全巻読む必要がでて、古書で取り寄せて一気読み。高校生の恋愛話がここまで長く続いたのはどうしたのかな、と思ったら途中巻で主人公達の時間は止まっていた。長い連載では致し方ないが、皆サザエさん化したのである。主人公達は永遠の高校三年生に。脇役の浪人生は永遠の浪人生に。まあ、その中でリアルな恋愛の揺らぎを描かれて読者の共感を得続けられたのだ。凄い。
恋愛物語からだいぶ遠く隔たってきていた私にはかなり新鮮ではあった。というより私は高校生の時だってこうした素直な恋愛譚は読まなかったのだから、今この年だから読み物として読めたような感じ。作者の瑞々しい感性と、一方でどこかしっかりと地に足の着いた達観したものの見方、人間観察みたいな部分、作家性に対しては素直に尊敬を感じる。
この物語がここまで受けたのは、人間の視点と、主人公が飼ってる愛犬の視点と二つの視点をうまく絡み合わせたところ。その発想自体は別に目新しくはないが、マメタロウと恋人のはなちゃんのキャラも非常に立っていていいのである。近作「シンクロオンチ」も読んだが、主人公の恋の戸惑いがやっぱり初々しく、さすがに上手いな〜と思う。ポストくらもちふさこさん的な方かもしれない。常に恋愛の心理から離れることなく描き続けるというのは、少女マンガの王道ではありましょう。 年をとると忘れてしまうようなそうした切なさ、初々しさを持ち続けられるということ、これは確かに大した才能だと思う。

『暗黒神話』『孔子暗黒伝』 諸星大二郎 著 集英社

諸星作品は前からちらちらと拝見してはいつかまとめて読んでみたいものだ、と思っていた。が、これまたなかなか手が出なかったのである。読むには気力が要りそうな、やや難解な印象を持っていたせいもある。が、これもまたゴラムさんからお薦めを受けて読む機会を得ました。
いやー、こういう世界、好きですー、自分でちゃんと買ってもっと早く読んでおけば良かった〜〜。儒教や記紀を始め、いろんな文献の知識がうまーく諸星さんの中で発酵して哲学的なファンタジーとして昇華されてる傑作です。元ネタ好きとしては、こういうのを読むとまた文献まで読みたくなってしまうのだけど(もしかしたらそれが分かっていたから手が出なかった部分もあったかも;)、読む端から忘れてしまうようなトリ頭ではもう文献読んでもしょうがないなーという気持ちにもなってるので、この壮大なファンタジーを独特の土臭いような、物語に非常に合ってる絵柄とともに堪能いたしました。