ハライソ風信第30号 − 日本の大学とハライソの大学の違い
ハライソの大学と日本の大学とでは制度がかなり違います。これはハライソと日本と言うよりも西欧或いは英国式大学と日本の大学の違いから来るようです。そこで、今回は、その違いを二、三紹介します。
日本の学問は賞味期限が短い?
いきなり場違いに映る話題かも知れませんが、間違いではありません。日本の大学では在籍できるのは8年までとされています。従って、日本では、一年目で取得した単位も8年以上経つと無効になるわけです。卒業証書は、卒業してから何年経っても有効でしょうが、取った単位は有効期限、いわば、賞味期限があるのです。
ところが、我が大学のタイロン事務局長は、ニュージーランド警察でハライソ人としては最高の地位まで上り詰めた人です。若い頃は、色々あって、勉強することをそれほど重要に思わなかったためか、オークランド大学中退です。その彼も、40才代中頃になって勉強することにしました。そして、二十数年前に中退したオークランド大学に、再度入り直し、以前取った単位に足りない分を取り直して学士の資格を取ったそうです。驚いたことに、昔取得した単位が一、二を除いてほとんどが有効だったのです。科目によって変化している場合は別にして、カリキュラムがさほど変わっていない場合は、何年経っても有効なのです。つまり、日本の場合は長くても8年経つと無効になる学問ですが、英国式の学問は賞味期限が長いのです。
ハライソ大学は設立が1984年、本格的に学部教育を始めたのが80年代後半ですから、それでも10年以上の歴史はあります。大学の規則には、3回以上同じ科目を取ることは禁じられていますが、何年以上在籍してはいけないとか、何年経ったら取得した単位は無効になると言う規則は見られません。
従って、10年以上前に取得した単位も希望する学科の単位として認められれば、未だに有効なのです。食べ物と同じで、日本の学問は生ものが多いのでしょうか、或いは、新鮮さが大切なのでしょうか?
競争率
ハライソに大学があると聞いて、必ず聞かれるのが競争率と就職率です。今では、偏差値と言うことがより幅を利かせていますが、それでも、日本人には大学のレベルを判断するためか、「競争率はどれくらいですか?」と聞かれるのです。
ハライソ大学のUPY(大学予備課程或いは教養課程)に入れるのは、13年生(小学校から数えて)の生徒が統一試験を受けて、その中の20%位が入れます。13年生に進学できるのが同一年齢のやはり20%位ですから、UPYに進学できるのは同一年齢の4,5%です。上記、南太平洋統一試験は、繰り返しが聞きません。浪人できず、一発勝負です。つまり、UPYに入学できるのは一生に一度の試験で同一年齢の4,5%の成績を取る必要があるのです。
それでは大学に入学できるのは、UPY修了者だけかというとそう言うわけではありません。3年制の学部(専門科目)に進むのは、UPYの修了者以外に、UPY相当の科目を受けるブリッジングコース合格者か当該分野の経験があると認められるマチュアーな学生(成人学級)の道が用意されているのです。
今のところ、大学のキャパシティーが許す限り、上記の資格のある人は誰でも入学できます。つまり、競争率はないのです。そのかわり、成績の悪い人は単位を取れないし、3回以上失敗するとその科目をとれなくなります。私の卒業した東京理科大学は、昔、物理学校と言って誰でも入学は出来るけれど、卒業は難しかった(単位を取るのが難しかった)事で有名です。NUSは、物理学校ほど落第が多いわけではありませんが、今の日本の大学に比べると卒業が難しいといえるでしょう。
いろいろな国の教育制度を調べてきましたが、大学毎に入学試験を行っている国は、むしろ少ないのです。ほとんどが、統一試験を行い、希望する大学に申し込むと、その成績によって合否が決まる国が多いのです。
アメリカの場合はSATという統一試験があり、偏差値のようにSATの成績の何点なら大体どこの大学に入れるかがわかるシステムになっています。つまり、日本のような競争率はほとんどないのです。日本のように大学毎の入学試験があり、厳しい競争率があるのが中国と韓国だそうです。やはり、儒教の国の特徴でしょうか。日本は、統一一次試験を行っていながら、それでも、大学毎に試験を行うのですから、よほど試験が好きな国民なのでしょう。
就職率
同じく、就職率の話があります。或いは、「ハライソ大学を出て就職するところがあるのですか?」と言う質問もあります。日本では、最近まで18才で就職するか大学に進むかが一般でした。大学を出ると一生を決める就職です。企業も途中採用を余りしませんでした。従って、各大学に取って就職内定率が大切な指標でした。もう少し細かくなると、大企業への就職率、マスコミへの就職率、公務員への合格率等の指標があります。
ハライソ大学には就職科と言うセクションがありません。これは、ハライソだけではなく、西欧社会では、就職を世話するのは職業訓練校であり、学問をする大学と職業につくと言うことは別物という考え方を持っているようです。従って、大学に就職を斡旋する役割を持つセクションはなかったのです。最近になって、アメリカでは就職も大切だという考えになる大学が増えてきたようです。
古い、英国式制度を比較的守っているニュージーランドを旧宗主国に頂くハライソは、未だに学問と就職を別に考えています。求人は新聞、テレビ等で募集広告が出ます。つまり、就職は個人の問題であって、大学はそれに関与しないという事のようです。
また、上記学問の賞味期限とも関係しますが、ハライソでは、在学中でもいい仕事が見つかると就職してしまいます。仕事に就きながら、パートタイムで勉強を続けるのです。資格と直接関係のある教員(教育学部)、看護婦(看護学部)等は、そうはいきませんが、商学部、人文学部等の学生は特にそういう傾向が強い事が最近わかりました。教育学部及び看護学部はその代わり、資格を取ればほぼ百パーセント就職が可能です。そもそも、この2学部の学生は、ほぼ全員、政府から奨学金勉強しているのです。
ただし、就職に関与する日本のシステムは、生徒にとっても教員のとってもメリットがあると思います。西欧のシステムは下記に示すように、非常に複雑です。学問は就職とは別という考えも否定はしませんが、将来自分のために有用な学問をするという観点で言えば、社会がどのような人材を求めているかを知ることは、大切なことです。大学は、或いは、教員は就職活動を通じて社会のニーズを知り、カリキュラムに反映する事が出来れば、と思います。
私は、残りの任期を通じて、何とか就職課を作り、各学部で就職担当の教員を任命する制度を作りたいと思っています。
卒業は申請する
日本の大学は、本人が何も言わなくとも、卒業式の前になると卒業者名簿に載ると思いますが、ハライソ大学では自分は卒業する資格がある筈であると申請します。そして、申請した資格を充分満たしている事が確認されると卒業名簿に載ります。ハライソの資格システムは非常に複雑です。と言うよりは、複雑な西欧のシステムをそのまま模倣しているためでしょう。
例えばBachelor of Arts major in English minor in Historyと言う資格を取るためには、3つに分かれるレベルの科目を20科目取る必要があります。その場合のメジャー(この場合は英語)の科目の取り方は一通りですが、マイナー(この場合は歴史)の取り方は二通り、選択科目のり方は3通りあります。従って、全部で6通りの取り方があるのです。生徒は在学中、この6通りのうちで自分の条件に合うように科目を選んで合格しないと資格がもらえません。つまり、生徒は手作りで資格を作り上げていくのです。
上記はBA English and Historyの例ですが、BAにはこのほかに、Double Major、或いは、Major
with two Minorsがあって、英語(外国語)、ハライソ語、歴史、地理社会の4分野の組み合わせになります。従って、本人の申請に従ってチェックするという方法になってしまうのです。
日本の場合、今はもう少しフレキシブルになっているかも知れませんが、これほど、自由になっているでしょうか?西欧の大学のシステムを導入するのは良いのですが、この様な複雑なシステムが、ハライソ社会のニーズに合っているのかどうか、疑問に感じます。複雑な西欧の社会では、この様なシステムは必然的に起こったことでしょうが、ハライソには、MajorとMinorの組み合わせがどのような意味を持つのでしょうか?
西欧のシステムをそのまま模倣することなく、自分のニーズにあったシステムに作り上げた我が国先達の知恵に感謝したくなります。
(ハライソ風信第30号 終わり) 2000年12月