ムクドリの巣立ち

 <目  次>


  まえがき

 

 最近庭に飛来する野鳥の種類も数も減った。ムクドリ・ヒヨドリ・スズメ・キジバトは常連の野鳥だが、季節によってはアオジ・アカハラ・ツグミ・ジュウシマツ・ジョウビタキ・ウグイス・シジュウカラ・メジロ・ウグイス・モズが餌を求めてやってくる。庭まで下りてこないが、ツバメ・オナガ・ヒバリも近所の空を飛んでいる。5~6年前は、20~30m先に竹藪や大きな樹木が鬱蒼と茂っていたので、ムクドリの塒(ねぐら)になったり、塒入りの中継点で数100羽が電線に止まったりして賑やかだった。しかし、最近は飛来しなくなった野鳥もいて、数は「稀に」のレベルになってしまった。
 そんな中で、ムクドリの生活力は旺盛である。10数年前に一階の雨戸の戸袋の中に巣を作られたことがあった。巣立ちまではそっとしておいたが、巣の後始末は容易ではなかった経験から、戸袋に簡易開閉自在の蓋をした。その後10数年間は何事もなかったが、自在蓋が風雨で壊れ、そのままにしていたら3年前(2006年)に二階北側の戸袋に知らぬ間に巣作りされてしまった。次の年は何事もなかったが、自在蓋を修復しないままにしておいたその2年後(2008年)には二階の北側と東側の二か所に、時期をずらせて作られてしまった。
 このコーナーは、ムクドリの巣立ちまでの記録である。

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    野鳥は住宅難


 近所にあった大きな樹木が伐採されるまでは、多分ムクドリも営巣していたのではないかと思う。いまでは用水路沿いの林が近所の唯一の営巣場所になったのではないかと思う。しかし、林の中も営巣に適した木がそれほど十分では無いのかも知れない。
 ムクドリはしばしば電線で羽を休めているが、春のお彼岸の前後の頃には、多分ペアと思われる2羽の姿を見ることができる。
 ムクドリが営巣に選ぶ戸袋は、戸袋の引き手用の孔が、必ず電線から見える方向の場所のものにしか営巣しないことが判った。これは巣立ちの際、親鳥が雛に巣立ちを促すため、声と姿が至近距離で、かつ直視できる必要があるためと推測される。「まえがき」の二か所はまさにその条件に合致した位置関係にある。図1に概略の位置関係を示す。

営巣関係図



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    巣の構造

 巣の概略図を図2に示す。戸袋の床面の寸法は奥行き91cm、幅15cmである。戸袋なので、内側の高さは約2mほどある。

巣の構造



 ベースになっている場所の材料は、松葉のような針状のものが含まれていて、嘴で器用に編んで作られている。巣の撤去の時に、多少引っ張る力が必要なことから、すごい技術の持ち主と言わざるを得ない。その上の中層では、稲藁のようなものがほとんどで、この層でも編む技術には、感心させられる。単に踏み固めたというのではなく、編んだように比較的固めである。藁のような長くてやわらかな材質のものが少ない場合は、紐状のビニールも材料になっている。抱卵の場所は、近い将来雛の住み家なので、藁でも先端近くの柔らかい材料で構成されており、その上には、拾ってきた鳥の羽毛が材料だ。よく知らない間に、これだけ集めたな!という感じである。それだけ人間社会が綺麗になっているわけだ。

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    卵と雛

ムクドリの卵

・卵の大きさ
 卵を取り出してサイズの計測をしたいところだが、
 いかにも野鳥いじめの感じなので目測計測は已む
 を得ない。正確さには欠けるが、おおよそ楕円体で、
 長軸が20~25mm、短軸が約15mmと推測。
 親鳥の体型は違うが、ウズラの卵より大きめの印象
 である。
・卵の色
 最初見たとき、トルコ石の色に似たヴィニールの
 切れ端かと思った。というのは、抱卵中の親鳥が食事?
 で外出している時は、放熱で冷えないように、
 巣の材料でカバーして出掛けていたようだ。気温が
 上がった日に偶然卵の上半分くらいが露出していた。
 その色はカナダのペイトウ湖やチベットのヤムドク湖
 の湖水と同じ色でトルコ石色だ。巣立った後まで残して
 くれればよかったが、そうはいかない。雛が孵ったと
 思われる直後に親鳥が始末してしまったようだ。



ムクドリの雛

・生まれたばかりの雛
 雛は誕生直後は、赤っぽい動くかたまりのようだ。
 目は勿論明いておらず、目の周辺は黒っぽく見える。
 頭も禿げた親父状でなんとも可愛らしくない。



雛の大合唱

・雛の大合唱
 巣の出入り口で親鳥の羽音が聞こえると、
 一斉に大きな口を開けて鳴き、餌を求める。
 雛の体長の割には大きい声だ。
 嘴や口を開けた時の色は、親鳥が餌を
 やらずにはいられないと感ずる色
 だそうだ。
   手前の中央に見える、長細く白黒の袋状の
 ものは、雛の「フン袋」で、親鳥が給餌を
 終えた後、くわえて外に捨てているようだ。



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    自然淘汰

 このHPの主体は、2008(H20)年の記録であるが、2006(H18)年に同じ戸袋で営巣されたときに目撃したことがある。「巣から落ちた雛は、落伍者」として、親鳥は面倒を見なくなってしまうようだ。
 雛が日増しに体長が大きくなると、巣の中は過密状態になる。体力のある雛は親鳥が給餌にくると、真っ先に巣の中央で入口に近い方に出て、きょうだいを押しのけるようにして、先に餌を貰う。そして、気温が高くなり、雛が育って来ると親鳥は雛の全部を抱き切れないので、夜間不在だ。その結果、雛同士は暖かい巣の中央に潜り込もうとして、きょうだいの体温に守られて夜を過ごすようだ。体力が遅れ気味の雛は、どうしても外側に出され勝ちで、フンをするときに出入り口の方に尻を向けるが、そのまま巣から落下して巣に這い上がれなくなるらしい。
 目撃したのは昼間だが、給餌のため餌を運んできた親鳥は、巣から落ちた雛を踏みつけて、巣の中の雛に給餌する。巣から落ちた雛には餌を貰えないようだ。給餌後、親鳥は落ちた雛をくわえて巣に戻す素振りは全くない。
 可哀そうなので、竹竿の先に手製のバスケットを取り付け、夜間掬い上げて巣に戻してやる。次の日に同じようなことが、また起こる。4~5日間、同じことが続いたが、ついに落ちた雛が動かなくなってしまった。親鳥が始末するかと思いきや、放置したままだ。腐って蛆虫でも湧くと困るので、取り出し、小さな墓に葬ってやった。
 親鳥の一連の行動を見ていると、まさに「自然淘汰」だ。2006年には、不幸にして?6羽の雛が孵ったことが、この結果となったようだ。子孫繁栄のためには、雛が多い方が自然だが、親鳥が給餌し切れない場合は、弱い子孫を残すことになる。自然界の厳しい摂理の一端を垣間見た出来事であった。

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    巣立ち前

ムクドリ3羽

・巣立ちが近づくと、親鳥は餌をくわえているが、
最初は巣に入ろうとしない、出入り口で顔を覗かせるだけ。
雛が出入り口に近づけるようになると
親鳥は戸袋の近くでしきりと、餌をくわえながら鳴く。
雛は出入り口に飛び上ろうと、一生懸命だ。
・居残り組
4羽のうち、1羽は巣立って行った。
残りの3羽もそろそろ巣離れしないと、
お腹はペコペコだし、親鳥も待っているし・・・・・・・・。




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    巣立ち

初めて人間を見たムクドリ

・生まれて初めて人間様とご対面
親ときょうだい以外の動く物を見るのは
初めてだ。




巣立のムクドリ

・さあ、親鳥の方に向かって




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    後始末


・立つ鳥跡を濁す
 巣立ち前に雛の動きを観察していると、羽虫がいるのであろうと思える動作がある。しきりと嘴で身体のあちこちを触っている。親鳥から移されたものであろう。いずれ水浴びを習得して、羽虫を減らす学習しなければならないだろう。
それにしても不気味なのは、鳥が居なくなった途端に、巣の出入り口に向かって、羽虫と思われる集団の行列である。ビッシリと言っても良い。まさに気味が悪い。すぐさま殺虫剤の噴射で退治しなければならない。戸袋の奥の方にも数回にわたって噴霧する。すぐさま退治できるが、放置しておけばいかなることになるのやら。
 巣の撤去も時間がかかる。しっかり編んで作ってあるので、直径3~4cmの棒にM4程度の木ネジを立てた道具を用意し、それを巣に引っ掛けて、少々力を入れて何回も繰り返し出入り口の方に引っ張り出さねばならない。
量的には、嵩ばった状態で20リットル程度ある。営巣のために、これだけの量の材料を集める仕事量は並大抵のことではない。とても都会では不可能だろう。

  あとがき

 生き物相手の記録なので、思うようには運ばなかった。雛をできるだけ驚かせないようにした積もりであるが、親鳥が危険を知らせる鳴き声が聞こえると、雛は一塊りになって静かになる。と同時に、出入り口と反対の方に顔をそむけてしまう。親鳥は雛が生まれた直後に、何らかの形で躾をしたのか、あるいは雛の本能的なものか判らないが、「自然界の不思議」あるいは「よく出来ている」と言っても良いかも知れない。
 野鳥の住宅難の一端は、人間が齎した自然破壊の結果でもあろうか。

・2008(H20)年の記録
  4月初旬? 営巣開始。
  4月29日 抱卵中の親鳥発見。
  5月 4日 親鳥抱卵休憩中、巣にトルコ石色の卵発見。
  5月 8日 親鳥抱卵休憩中、複数個の卵発見。
  5月14日 親鳥が餌を運んでくるようになった。雛誕生か?
        しかし、鳴き声は聞こえてこない。
  5月17日 親鳥が庭で餌をしきりと探している。雛誕生は確実。
        親鳥留守中、巣に裸状態の雛が見える。
  5月18日 親鳥が出入り口付近に近づく羽音で、雛は鳴き始める。
        給餌が終わると、親鳥は雛の「フン袋」をくわえて
        巣外に運び出している。
        雛はウッスラと羽毛が生えてきた。
  5月21日 気温上昇し、夜間親鳥は巣にいない。
  5月24日 親鳥2羽、給餌の餌運びに多忙。
        羽毛の色がかなり濃くなってきた。成長が早い。
  5月30日 親鳥が奇妙な色の餌を運んで来る。
         一つは黒っぽい塊、他は橙色の塊。
  5月31日 雛が出入り口近くに近づくようになった。
         他の雛より先に餌を貰おうとしている。
        体長はすっかり親鳥同等となった。
  6月 2日 ついに巣立ちの日を迎えた。おめでとう!!
         9:27 巣立ち1号
        12:01 巣立ち2号
        12:23 巣立ち3号
        12:25 巣立ち4号
        営巣開始から巣立ちまで、約2ヵ月間、お疲れさま。

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