あん摩・マッサージ・指圧のおはなし


あん摩・マッサージ・指圧は、術者の手指を用いて、生体に力学的刺激(おし・もみ・さすり・たたき・ふるわせ・引っ張る)を与え、身体の変調を整え健康を増進させる刺激療法です。あん摩・マッサージ・指圧は従来より伝統的に肩こり、だるさ、頭痛、頭重、めまい、耳鳴り、疲労、腰痛、便秘、不眠、食欲不振、冷えなど、いわゆる不定愁訴症候群や内因性の慢性病(神経痛、リウマチ、本態性高血圧症)などに対して治療効果を挙げ、国民の保健医療に貢献してきました。 いま癒しブームの世の中、巷に出ると、〜マッサージ、〜指圧、〜あん摩の看板をよく目にしますが、この三者は一体どう違うか、紛らわしいと思っている方も多いのではないでしょうか。
あん摩

あん摩は、中国に生まれて日本に渡来したもので、西暦285年に持ち込まれたといわれています。按摩導引、揉み療治、ともいわれ一般大衆に親しまれている手技療法です。按摩の按は「おさえること」で瀉法を意味し、按摩の摩は「なでること」で補法を意味します。すなわち東洋医学の基本的な理念である虚実に対する補瀉であり鍼灸・湯薬とともに医療施術として発達してきたものてす。生体の経絡流注系における気血の過不足を調整するもので、経絡に添って行います。これが古法のあん摩です。
明治時代に医学は西洋医学が主流になり、医療も西洋医学が主体となったため、按摩の理論も東洋医学の陰陽、虚実、経絡、気血の調整から、西洋医学の解剖、生理を基にした循環系、運動器系、神経系への調整術式にあらためられて今日に至っています。
あん摩は薄い衣服の上から主として遠心性の手技を強弱の刺激として生体に加え、生体の変調(疲労、肩こり、頭痛、頭重、耳鳴り、めまい、眼精疲労、不眠、神経過敏、食欲不振便秘、腰痛など)を整え健康を保ち、さらに増進させます。 ちなみに、現在は西洋医学をもとに遠心性の手技を行う治療院が多いですが、古法の経絡あん摩を行っている治療院もあります。


マッサージ
マッサージ(Massage)という言葉はフランス語で、この言葉の語源はアラビア語の「おす」(Mass)、ギリシャ語の「こねる」(Sso)という意味の言葉からきたものといわれ、またラテン語の「手」(Manus)と同一語源であるとされています。マッサージは「手を用いて、こねる、おす」という意味になります。
マッサージは、皮膚に直接行い、タルク、ワセリン、オイル、クリーム等滑剤を使います。求心性の手技を強弱の刺激として生体に加え、生体の変調を整え健康を保ち増進させる施術です。求心性の手技により血液、リンパ液の循環はよくなり新陳代謝機能は盛んになります。その結果組織の栄養は高まり機能は盛んになり、抵抗力は強くなります。また触圧刺激は皮膚知覚神経を介して内臓の機能にも影響を与えます。また「神経液性相関」の生体反応によりホルモン分泌にも影響を及ぼすことが明らかにされています。
マッサージはヨーロッパに起こり、明治20年フランスから輸入され、あん摩術の長所を取り入れ、日本独特のマッサージ手技を開発されて、医療補助として医療、保健衛生の面に応用されています。


指圧

江戸時代にはあん摩、導引、活法をあわせた経験療法として民間で行われていましたが、明治時代に輸入されたアメリカの整体術などを取り入れ、日本独自の手技に体系化され、大正時代に指圧法として統合されました。
指圧療法とは疾病の治療および予防を目的とし、原則として漸増、漸減の垂直圧の一点圧を主体とした、押圧操作を遠心性の方式で生体に加え、生体に備わっている自然治癒力の働きを促進し、疲労を取り除き、健康を増進させる手技療法です。


あん摩・マッサージ・指圧の違い

あん摩・マッサージ・指圧はすべて同じ生体反応を期待する刺激療法ですから、基本的には相違はありませんが、手技方法の差によりそれぞれ異なる点があります。
あん摩は薄い衣服の上から施術を行い、中心部から末梢の方向に筋肉を対象に揉捏法を主として筋肉の硬結を取り除き、筋肉組織の循環を良くし、新陳代謝を盛んにし栄養を高め機能も盛んにします。また目的に従って他の手技をいろいろに組み合わせてリズミカルな複合圧としての刺激を与えて生体の機能調節を図ります。
マッサージは皮膚に直接、滑剤を用いて施術するもので、あん摩とは逆に末梢から中心に向かって主に循環系を対象に軽擦法・揉捏法を施し、血液・リンパの還流を促し、また他の手技をいろいろに組み合わせて与える刺激に変化を加え多種多様の生体反応を期待します。
指圧は、薄い衣服の上から生体に現れる反応点を対象として主に一点圧の刺激を遠心性に与え、圧反射機転により神経・筋の機能を調節するものです。
生体に対してあん摩・マッサージ・指圧の手技は力学的刺激として作用し、その作用機転はあん摩・マッサージの複合圧は、直接的には循環機能を増進し、間接的には体表内臓反射機転により神経・筋の機能を調えるものであり、指圧の一点圧は直接的に圧反射機転により神経・筋の機能を調え、間接的には循環機能を増進させるものです。したがってあん摩・マッサージ・指圧手技の作用機転は循環機能の増進と、圧反射機転による生体の機能調節であり圧刺激により起こされる生体反応は、三者とも全く同じ基盤の上に成り立っています。


あん摩・マッサージ・指圧の治療効果

(1)興奮作用:病的に機能が減退している神経・筋に対してあん摩・マッサージ・指圧を行い、その機能を高め回復させます。運動麻痺、知覚鈍麻、知覚脱失などに対して治療効果があるのは興奮作用によります。
(2)鎮静作用:病的に機能が亢進している神経・筋の機能を抑え鎮静させます。神経痛、筋痙攣、筋緊張、知覚過敏、筋肉痛などに対する治療効果は鎮静作用によります。
(3)反射作用:疾病部位から離れた部位に施術して、圧刺激が反射機転を介して神経や筋、内臓などに刺激を与え、異常機能の調整を図る作用です。内臓の異常、血管運動神経系の異常に対する治療効果は反射作用によります。
(4)誘導作用:外傷・炎症などのため局所に炎症症状が著名な時や、脳充血、皮下出血などがあり直接患部に施術ができない時に、その部分より心臓に近い部分に施術して患部の病的滲出物や、出血等を誘導する作用をいいます。例えば、脳充血に際して頚部、肩背部に、四肢関節の炎症・挫傷に際し患部より中心部に対し施術して、まず患部の腫脹・疼痛を取り去り、次いで患部の直接施術を行います。打撲、ねんざ、充血、浮腫、滲出物の吸収促進などに応用します。
(5)矯正作用:関節部に障害があり関節運動が不充分な場合に、その部分の滲出物を細かく砕き、吸収を促進させ、拘縮を起こしている関節周囲の筋・腱・靭帯などの癒着を剥離し、短縮した軟部組織を引き延ばすなどの作用をいいます。関節の不動性拘縮、筋・腱・靭帯の短縮や癒着、斜頚、先天性股関節脱臼、X脚、O脚、内反足、外反足の整形に応用します。


あん摩・マッサージ・指圧の適応症

あん摩・マッサージ・指圧施術は、生体の全身または局所に対し、物理学的に作用して、血液・リンパ液の循環をよくし、新陳代謝を旺盛にし、運動器などの拘縮・癒着・硬結を砕き除くなど積極的に作用し、諸器官の機能を亢進させ、また神経機能と循環機能との相乗作用により自律神経を介して、内臓諸器官の機能を調節する作用がありますので、健康人にあっても健康度をより高度に維持することが可能であり、また次のような疾患に対して治療効果が期待できます。
(1)神経系疾患:神経痛、麻痺、痙攣、脳卒中後遺症、ポリオ、ノイローゼ、不眠症、ヒステリーなど。
(2)運動器疾患:慢性関節リウマチ、筋肉痛、筋萎縮、筋力減退、関節の拘縮・癒着・変形、骨折・脱臼・捻挫の後遺症、腰痛など
(3)消化器疾患:慢性胃炎、胃下垂、胃腸アトニー、慢性腸炎、便秘など
(4)呼吸器疾患:気管支喘息、慢性気管支炎
(5)循環器疾患:心臓神経症、局所性の充血、うっ血、貧血、水腫など
(6)泌尿・生殖器疾患:膀胱炎、膀胱麻痺、膀胱痙攣、乳腺障害
(7)新陳代謝疾患:痛風、脚気など
(8)その他:疲労回復、病後の体力回復


あん摩・マッサージ・指圧の応用分野

(1)医療マッサージ:治療マッサージと看護マッサージ
a.治療マッサージ:単独に疾病の治療法として、また治療の補助手段として内科、整形外科、産婦人科、神経科などの分野に応用されています。 b.看護マッサージ:慢性疾患で長期臥床の患者の褥瘡の予防、あるいは体力消耗の激しい疾患の回復期に疲労衰弱を回復させるために行います。

(2)保健マッサージ:健康の維持と増進(全身の新陳代謝を盛んにして老化を抑える)のために行います。

(3)産業マッサージ:労働衛生分野に応用され、健康管理の担当と協力して労働能力の向上を図り、産業能率の増進を目的とします。また労働者に対し、工場、事業場における各種の職業別労働から起こる蓄積疲労を除いて、工場災害の防止に寄与します。

(4)スポーツマッサージ:スポーツ選手の運動機能を高め、練習・競技による疲労を取り去り、疲労の回復を速め、それにより運動器の障害を予防するために行います。競技前、競技後はもちろん、競技中のわずかな時間でも利用してマッサージが行われます。

(5)美容マッサージ:施術により皮膚の健康状態を保ち、余分な脂肪を取り除き美しさを引き出すとともに不眠を治し、便秘を除くことも美容マッサージに通じます。

(6)乳房マッサージ:乳汁分泌不足の産婦に対して、乳腺を刺激して分泌機能を高めるために行います。

(7)結合織マッサージ:皮下結合組織への徒手刺激療法で、内臓体性反射を応用して内臓の機能を調節します。


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