1914年から1918年にかけて第一次世界大戦が興りましたが、ラヴェルは戦時色が徐々に強まって来る中で、ピアノ三重奏のための「三重奏曲」を遺作のつもりで書き上げました(1914年)。この時ラヴェルは入隊を決意していたのです、既に兵役免除であったにも関わらず。ところが、志願兵として兵役検査を受けますが体重が足りない 身長が足りない 虚弱体質である などのいろいろな理由でなかなか入隊を許可されません。あげくの果てに友人である大臣ポール・パンルヴェに曲を献呈して、そのコネでなんとか空軍に(飛行士ならば体重が軽くてもOKだろうという思い込みから)入隊を許可されるように謀るのでした。その曲がこの無伴奏混声合唱のための「三つの歌」第2曲の“三羽の美しい天国の鳥たち”(1915年2月完成)なのです。詩はラヴェル自身が書いています。
結局のところ空軍は叶わず、やっとのことで1915年3月14日にトラック運転手として入隊し、1917年6月の仮除隊まで戦地に赴くこととなったのです。
私はこの執拗なまでの志願に対して疑問を感じていたのですが、今回、フルートの齊藤佐智江さんにお願いしてラヴェルが書いたこの曲の詩を新たに訳して頂いたのですが、それを読んで一瞬にして(一瞬でしたが)その謎が解けたような気がしました。
三羽の美しい天国の鳥たち
三羽の美しい天国の鳥たち
(私の大切な友は、戦場にひとり発ち)
ここを通って行った、三羽の美しい天国の鳥たち
一羽は、空よりも青く
(私の大切な友は、戦場に赴く)
二羽めは、雪のように白く
三羽めは、あざやかに赤く
「美しい天国の小鳥たち
(私の大切な友は戦場へ発ち)
美しい天国の小鳥たち
ここから何を運んで行くの?」
「私は紺碧のまなざしを届けます
(戦場に行ったのですね、君の大切な友)」
「雪のように美しい額に、私はいまもなお清らかなキスをしなければ...
天国の赤い鳥
(私の大切な友は、戦地にひとり)
天国の赤い鳥 何を運んで行くの?」
「深紅の美しい心
(君の大切な友は戦場に...)」
「ああ! 私の心が凍てついてゆく
どうか持っていっておくれ、私のこの心も」
〜「Bouquet des Tons Vol.18」当日プログラムノートから 061108