| 労働者を守らない労基法「雇い止めの手引書」
by 厚労省
― パート、契約社員派遣などの雇用形態、名称にかかわらず、契約更新時が近づく頃になると、解雇(雇い止め)されそうで不安だ、という内容の相談が増えます。有期雇用で働く者にとっては、自動更新などと言われて何年働いていても、上司が代わったり、会社の経営方針が変更されたりすると、いつ雇い止めされるかわからない不安が常に付きまといます ―
◆ 経営難を理由とする整理解雇の場合は、「4要件」と呼ばれる、1.客観的な合理性 2.解雇回避の努力をしたか 3.人選の基準の合理性 4.労使間で誠実に協議したか、が認められないと簡単に解雇することはできません。それは、裁判の判例からも解雇権の濫用として無効であるとされています。いくら経営難とはいえ、その痛みを労働者のみに押し付ける解雇は許されないということです。またパート労働者では、相当回数更新を繰り返してきた場合は、実質的に期間の定めのない契約とみなされ、簡単に
解雇(雇い止め)はできないという、一定の縛りがあります。
しかし、経営者側から見れば、正社員と違って、いつでも簡単に首切りができる便利な雇用調整弁として雇っているのに、雇い止めでトラブルが起きるようでは、有期契約で雇っているうまみがありません。ここ数年、整理解雇の4要件を満たしていないのに雇い止めされたとか、何年も反復更新してきたのに突然雇い止めされたという労働者たちが解雇無効を訴える労使間紛争が急激に増えています。
そこで、厚労省は、雇い止めをめぐるトラブル防止のために、労基法第
14条第2項に基づき、「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」を策定しました(平成20年3月1日一部改正)。いくつか、労働者にとって不利なポイントを抜粋してみます。
| ◆ 更新の有無の明示
明示すべき「更新の有無」の具体的な内容については、例えば、下記の例を参考にして下さい。
・自動更新する
・更新する場合があり得る
・契約の更新はしない 等
◆ 判断基準の明示
明示すべき「判断基準」の具体的な内容については、例えば、下記の例を参考にして下さい。
・契約期間満了時の業務量により判断する
・労働者の業務成績、態度により判断する
・労働者の能力により判断する
・会社の経営状況により判断する
・従事している業務の進捗状況により判断する 等 |
◆ その実害がぼちぼち現れてきたのではないかと思われる相談がいくつかあります。しかし、そもそも更新時に、きちんと書面を取り交わしていない会社や、書面に書かれた内容をじっくり読ませない間にサインだけを書かせるような会社も多いので、心当たりのある方は、今後はくれぐれもご自
身の契約更新時に交わされる雇用契約書などの書類の内容を確認しておくようにお勧めします。
◆ ところで今回の相談内容は、もう15年以上、1年更新の契約社員として働いている方からの「更新時の労働契約書の内容について」の相談です。
今までは契約書には書かれていなかった賃金に関する項目に「昇給なし」が加えられ、退職に関する項目では、今までは「双方1ヶ月前までに誠意をもって協議する」と書かれていたのに、それは削除され、『本契約は契約期間満了後、更新する場合があり得る』そして、更新の判断基準は、『本人の成績、能力及び会社の経営状況とする』と書かれていました。今回の契約書には、労基法の改正どおりの例文がそのまま書き加えられていたのです。驚いた相談者は会社に抗議しましたが、「労基法どおり」と言い返されれば打つ手がありません。
うっかりすると見落としてしまいそうな小さな文字でしたが、内容はとても重大な問題です。15年以上、何の問題もなく更新されてきたのに、と相談者はカンカンです。怒りはごもっとも。気持ちはよくわかります。だいたい職種の違う人間に他人の能力を測ることができるのか。そこに恣意的な感情がはさまれることは全くないとは考えられないし、何よりも会社に対して何もものが言えなくなるのではないかと、それが一番恐いです。首切りしやすい法律を作ることが、厚労省の考える「トラブル防止」なのか!
今後、こういう相談が増えてくるのではないか、今はまだ気づいていない方がたくさんいるのではないかと懸念しています。つまり、「雇止めの予告」の対象外の方は、予告なく突然雇止めされる可能性もあり、派遣社員が3年を越えたので派遣先に直接雇用されたようなケースの場合、それが契約社員であったために、「部門廃止」を理由に雇い止めされたケースも実際ありました。
◆ この労基法一部改正のポイント(下表)は、雇い止めの理由に厚労省は"明示すべき「雇い止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です"とご親切にも例文を挙げて、経営側をうるさい労働者とのトラブルから守ろうとしている点にあります。ここには、労働者が自分の生活や生存権を守るための闘いは、ただのトラブル(クレーム)程度にしか扱われていません。行政の本音があからさまに表わされていて呆れます。
◆ 雇い止めの予告
使用者は、有期労働契約を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。
ここでの対象となる有期労働契約は、
- 有期労働契約が3回以上更新されている場合
- 1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
- 1年を越える契約期間を締結している場合
―1.が昨年3月に改正された部分です。
◆ 雇い止めの理由の明示
明示すべき「雇い止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。例えば、下記の例を参考にして下さい。
- 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
- 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため
- 担当していた業務が終了・中止したため
- 事業縮小のため
- 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
- 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため
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相談の中でも難しい問題は、営業職のノルマに関する事案です。営業職では、モチベーションを保つためにもノルマは多少必要なのでしょうが、しかし度を超えた高すぎるノルマを課せられ、達成できないと「本人の能力がない」などという理由で雇い止めされるとしたら・・・。
他の相談では、今まで、「君は優秀だ、店長の席が空いたらすぐにでも店長になってもらうよ」と言われ続け、店長資格にも合格し、人一倍頑張ってきた彼女は、店長の席が空いたにもかかわらず、手のひらを返したように理由も分からないまま、「能力に欠ける」と言われ、店長になれませんでした。「能力」を問題にされると、余程悪意が隠されているようなケースでない限り、部外者には全くわかりません。「納得できない」「おかしい」といくら主張しても突破するのは非常に難しいです。
◆ 有期労働契約に関する問題点も、この秋に行われる連続講座の中で掘り下げてみようと思っています。追ってご案内致します。皆さまのご参加をお待ちしています。
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