持っている漫画などについてつらつらと。ヨコハマ買い出し紀行は舞台になった場所も訪ねてきました。
【ヨコハマ買い出し紀行】
著者 芦奈野ひとし 単行本1〜14巻 完結
今まで読んだ漫画の中で最も好きで、不思議なこれにしかない雰囲気のある作品です。
舞台は近未来の”かながわの国”(神奈川県にあらず^^)、三浦半島の先っぽにある西の岬。周りに何もない
穏やかな風の吹く岬に一軒ぽつんとある喫茶店、「カフェ
アルファ」。ここで一人切り盛りしているアルファさんは
お茶目で天真爛漫な一見20代前半くらいの女性です。しかし!彼女は実はアンドロイド。物語はこのカフェ
アルファを主な舞台に、海面上昇が進み人口が減少し、かつての県や市が国や村になり・・・といった穏やかに
滅びつつある世界の日常を描いていきます。ジャンル的には日常SFですね。
滅び行く世界を描いた終末世界ものは多々ありますが、大半は例えばナウシカのようにドラスティックな変化を
起こした混沌の世界を描いています。ところがヨコハマの場合、海面が10m以上も上昇して日本の主要都市は
水没しあちこち廃墟だらけ、アンドロイドが生活し・・・といった舞台設定があるにもかかわらず、文明が自然に
ゆったりと退行していく世界にする事で徹底的にのんびりとした”てろってろの時間”を描いています。
日常SFとは言いつつも、アルファさんをはじめとしたアンドロイド(作中ではロボットと呼称)の方々は人間と
ほとんど変わらない事もあって実質「日常”ちょこっと”SF」みたいな感じ。
のんびりとした日常描写の暖かさ、その中にある滅びの侘しさ、アルファさんが帰りを待ち続ける”オーナー”
の存在、高高度を飛ぶ地上に帰れない飛行機、「ターポン」・・・。
ストーリーが基本的に起承転結の形を取っているわけでもなく、前述したように日常描写がほとんどなので
話の筋を追いたい方、普通のSFものが読みたい方には必ずしもお勧めできません。でも、はまる方は徹底的に
はまる奥の深い話でもあります。美しい水彩画のカラーイラストも魅力的。
また作者が三浦半島出身で、近未来の話ながら作中にも実在する三浦の景色をベースにしたところが数多く
出てくるので、現地を訪ねてみるとさらに感慨深く美しい景色を堪能することができますよ。
ツーリングに行って写真を撮ってきた物を少しだけ公開しています。下の方からどうぞ。(^_^)
ヨコハマ買い出し 写真紀行
≪アルファタイプ製造の謎とターポンについて≫
謎の多いアルファタイプとターポンの私的仮説です。
追記.2006年、140話で惜しまれつつも完結しましたが、連載中の12年間一度も原稿落ちがない完全毎月
連載で、しかも最初から最後の最後まで高いクオリティを保ち続けた。これは何気に凄い事だと思います。
これだけの長期連載になると原稿落ちや休載は決して珍しい事ではなく、作品の質も連載が伸びるに従って
落ちるのもよくある事。手元にあるのだと冬目景作品がいい例で、モノは良いけど不定期連載を繰り返していつ
まで経っても単行本が出ない、完結しない。そして質がどんどん落ちていく。「イエスタデイをうたって」なんて、
例えるなら1巻は素晴らしい切れ味の名刀。それが2巻以降どんどん質が落ちて、今でははっきり言ってなまくら
以下の摸造刀みたいな感じになってます。(^^;)
名作、宮崎駿「風の谷のナウシカ」すら休載を繰り返してやっと完結まで持ち込んでいますから、ヨコハマは
まさに「継続は力なり」の最たるものでしょう。作品の終わり方については賛否両論あったけど、個人的には
余韻を残しつつ完璧なフィナーレを迎えた。そう思っています。
アニメ版について
ヨコハマは過去に二度、OVA化されてます。一度目(以下旧作)は安濃高志監督作品でコミック初期、1巻〜3巻
辺りまでの全6話を映像化。二度目(以下新作)は望月智充監督作品、7巻〜8巻あたりを映像化。どちらも
台詞・絵柄・カメラアングルなどコミックを模写するように忠実に映像化するスタイルで、メインキャストは新・旧
ともにアルファ/椎名へきる、ココネ/中川亜紀子。
全体的なクォリティはは旧作の方が新作を大きく上回っており、旧作は明るくコントラストも彩度も強い色味、
写実的で細かい背景、徹底的に細かく表現される説得力のある日常芝居、動感を重視した演出が特徴です。
この仕上がりの良さはただのOVAレベルではなく、ジブリ作品に匹敵するといってもいいかもしれません。
例えば画面の中で何かしら物が動いている、何て事ないシーンでも風が吹いていたり、水面が煌めいていたり
キャラクターの演技が絶えず続いていたり。原作を極めて忠実に再現しつつ、アニメの利点である表現の
豊かさを生かしてコミックの予備知識が無くても単独作品としてちゃんと見られる物になってます。
頬をなでる風の肌触りまで感じ取れるリアリティと感情移入のしやすさを持つのがヨコハマの特徴ですから、
そこをきちんと押さえた上でアニメにコンバートした旧作はやはり上手い。最終話の「ヨコスカ巡航」なんて、
映像化されて良かった!!と心から思える傑作だと思います。原作の再現性が高いのはもちろん、
臨場感もすごい。(ホームシアター環境で見ると本当に凄い)
対して新作は、絵本的な背景、止め絵の多く緩慢な演出、あっさりした色使いが特徴。5.1chドルビーデジタル
採用、プレスコ方式の音声収録などスペックは高く、原画にもジブリ作品で多く活躍している近藤勝也氏が参加
していて一見出来が良さそうに見えるのですが、根本的に原作の読解力不足。
動きも無ければ面白みも無い。場面説明に終始して、本来そこにあるべき場の空気感やキャラクターの感情が
まるで伝わってきません。必要以上にスローテンポで、キャラクターの性格すら変わってしまっています。
アルファさん、こんなおっとりした性格じゃないぞ。
ココネ、危ないシスコン娘になってるぞ。(爆)
ファンサービスのつもりかやたらと下半身ばかり写しているのも×。コミックの予備知識が無ければ理解できない
ところも多く、単独作品としては成立していないような。
OVAとしてはごく一般レベルの出来だと思うんですが、旧作と比べてしまうとあまりにショボイ。
音楽は旧作のゴンチチ、新作のショーロ・クラブ共に良かったです。アニメだとどうしても声の印象が焼き付いて
しまうのがコミックのファンとしては好き嫌いが分かれるところだと思いますが、その点を意に介さなければ
旧作はぜひ買うべし!!新作は・・・まあ中古で安かったら損しないかな。(笑)
ちなみにどちらもDVD・VHS両方で出てます。
【あずまんが大王】
著者 あずまきよひこ 単行本1〜4巻 完結
アニメにもなったりしてるので比較的有名な作品ですね。
関東(?)のとある高校、そこに入学してきた女子高生たちの、卒業までの3年間を4巻完結で描く
学園ギャグマンガ。
ヨコハマに負けず劣らずアクの強い話で、4コママンガでありながらオチがちゃんと落ちていなかったり、
8コマ、12コマ目でやっと落ちてたり、タイトルがオチだったりと話の作り方が変則的なので普通の
4コママンガを見慣れているとつまんねーと思うかもしれません。
あと、キャラデザインがモロ、萌え系オタクマンガ美少女・・・。(^^;;;
しかーし!独特の"間"の取り方とネタが絶妙かつリアルでものすごく面白いのです。
見た目ステレオタイプな美少女&美女揃いなのに、それをほとんどネタに取り込まず等身大の人物として
描き切っていて、各キャラクターがまた強烈に個性的。エロなし、恋愛なしの日常劇に終始しているのに
ここまで面白いっていうのはほんと凄い事。話をダラダラと引き延ばさず、卒業できっちり終わるという
潔さも良いですね。
「ああ、学生時代ってこんなノリだったよなぁ」と思い返しながら読むも良し、これからこんな学園生活を
送りたいと思いながら読むも良し。ゆかり先生の「大人の本音」に爆笑しながら読むも良し。
見た目に引かず、手に取ってみて下さい。(^^;
【よつばと!】
著者 あずまきよひこ 単行本1〜5巻 月刊電撃大王で連載中
夏休みの前の日、とある地方都市(?)に引っ越してきた少女、小岩井よつばとそのとーちゃん。
天真爛漫、純粋無垢で元気いっぱいのよつばちゃん、さっそく引っ越し先から脱走してブランコを
180度漕ぎしたり電柱に登ってみたり・・・。暑くて、長くて、楽しい夏休みが始まります。
あずまんが大王に続く、あずまきよひこ先生の現在進行中のハートウォーミングストーリー。
4コマ形式ではなく通常のストーリー形式の話なんですけど、参りました。進化してるよあずま先生!
あずまんが大王も良かったけど、今作は更に良い仕事してます。キャラクターの作り込み、
ストーリーのテンポの良さ、日常芝居の細かさ。どれを取っても一流だと思います。正直、
ここまでの良作は滅多にお目にかかれませんよ。
よつばちゃん以外は登場人物どの人もどこにでもいそうな普通の人たちばかりで、起こる事も
プールに行ったり、セミを取ったり、雨が降ったり洗濯物を取り込んだりと他愛もないことばかり。
けど、見るもの全てを楽しんでしまうよつばちゃんにはそれが楽しくて仕方ないのです。飛んだり
跳ねたり、泣いたり笑ったり。コロコロ変わる表情がもう楽しくて仕方ありません!(〃∇〃)
本のキャッチコピー「ただ、ここにいるだけのしあわせ。」「いつでも今日が、いちばん楽しい日」
まさにその通りの子供の頃の楽しかった夏休みを見事に描くこの作品、素晴しすぎる。
【ポストガール】【ポストガール2】【ポストガール3】【ポストガール4】
著者 増子二郎 角川書店 電撃文庫
これはコミックではなく、小説です。
舞台は近未来、戦争が終った頃のお話。MMF108-41
シルキーは、戦争で通信システムが崩壊した地域へ
郵便物を届ける、メルクリウスと呼ばれるタイプの人型自律機械の少女。戦争で疲弊した人々を癒すため、
彼女たち108タイプに搭載された自意識システムは声や表情を操作することで感情を表現する機能だった。
ところが、シルキーは自分にプログラムで表現されるものとは違う、まるで人間そのもののような感情が
芽生えていることに気付いていた・・・。
上記の「ヨコハマ買出し紀行」と同じ路線の話ですね。有機体で作られた外見を持ち、見た目は人間との
区別がつかないところなど設定上はヨコハマとの共通点も多いのですが、体が人工物って事以外は人間と
ほとんど変わらない生活をしているアルファタイプと違って108タイプは所有者があり備品として管理され、
行動や食事も任務・プログラムと構造上の制約で縛られています。それなのに、シルキーの中でどんどん
広がっていく人の心や感情。この心は不具合(バグ)だというのに、時には発動する行動プログラムと
真っ向からぶつかる感情。それでも彼女は、人間に近づいていくことを止められない・・・。
ストーリーもシリアスな展開になることが多いのですが、むしろアンドロイド物としては正統派でしょう。
最初は「人間は好きだけど、私は人間になりたいとは思わない」と言っていたシルキーが話が進むにつれ
様々な出会いと別れを通して人として成長していく様が好印象でした。こういう話を読んでしまうと改めて
ヨコハマの設定の特異さに気付かされます。心を持ったアンドロイドは「物」なのか「人」なのか?
有名なロボット三原則のアイディアを発表し以降のSF作品に多大な影響を与えた作家アイザック・
アシモフの原作を映画化した「アンドリュー
NDR114」という作品がありますが、人の心を不具合で
持ってしまったところまでは108タイプと同じながら、その後人間になる事をひたすら求め続けた
アンドリューと対照的です。
そうそう。文庫本のイラストは可愛いんですけど前記のようにほのぼのとした話じゃないので(そういう話も
ありますが)見た目に騙されないように。(笑)
※余談&個人的見解ですが、ロボット三原則はロボットのみならず人が扱う道具・機械など全般に
当てはまります。で、このロボット三原則が適用されているか否かがアンドロイドを物か人かに分ける
一つの判断基準になるんじゃないでしょうか。この場の話で言えば、作中には明確な定義としては
出てこないもののロボット三原則に従って動く108タイプは物、明らかにロボット三原則に関係なく
社会的にも一個人であるアルファタイプは人という具合。
ただし、シルキーをはじめバグを持つ108タイプは往々にしてロボット三原則に反する行動を取ります
が・・・。良くも悪くも、これが人に近付きつつある何よりの証拠と言えるでしょう。
【みずいろ】
著者 大石まさる 単行本1〜2巻 完結
夏!夏200%!!お色気30%?(笑)
夏が来るとこれを読みたくなります、大石まさる先生の全編に夏色があふれたこの作品。
家庭の事情で田舎に引っ越してきた高校生、川上清美と地元で音大を目指す同級生で清美に
ほのかな恋心を抱きつつ、彼女と隣人たちにぶんぶん振り回される主人公(^^;)加藤猛の二人の
夏休みから卒業までを描いたお話です。
田舎でも都会でもない(いや?十分田舎か?)な場所で育った自分もそうでない方も、こういう田舎
生活には憧れるのではないでしょうか?豊かな緑に気さくな隣人、半農生活で生活には困らない
程度の収入と食べ物を手に入れて、ゆったりと生きる。そして隣には美少女ぉ!(笑)
実際の田舎暮らしはこんな理想的にはいかないのが実情だったりしますが、それはそれ。
沈下橋のある川は四万十川のイメージかな?
清美の家庭の事情、このあたりは「海がきこえる(/氷室冴子)」と同じような設定でドロドロな
展開なんですけどね。決定的に違うのは清美もその両親も求心力が田舎に向いているコト。
これがハッピーエンドにうまくつながっています。(^^)
【空からこぼれた物語】
著者 大石まさる 単行本1巻 完結
「田舎生活」「SF」「爽やかな色気」+不良中年。これが大石作品の4大構成要素なのだと実感。(笑)
そして、これらがうまくバランスを取ってまとまっている短編集です。
ヨコハマ好きな人で大石作品も読んでいる人は意外と少ないような気がするんだけど、これなんて
一度読んでみてください。直球ど真ん中すぱーん!とストライクゾーンだと思う、マジで。
収録作品どれも良いんだけど、個人的には特に「LETTERS」「Manta」「夏色の銀輪」「はあるよこい」
あたりが好き。(^^)
良作・名作ライトノベル10選!
をご紹介したいと思います。なお、順位は付いていません。付けようかと思ったけど、どれも良いので付けられませんでした。| タイトル | 著者 | レーベル | ジャンル | コメント |
| 図書館戦争シリーズ | 有川浩 | アスキー・メディアワークス (ハードカバー) |
アクション・ラブコメ | 言論の自由を守るため図書館を守る!異色の作品。本を狩るメディア良化隊とのバトルに燃えろ!ラブコメに萌えろ! 「別冊 図書館戦争1」はライトノベル史上最も甘いと断言できるほど激甘です。悶え死に注意!! |
| 狼と香辛料 | 支倉凍砂 | 電撃文庫 | 経済・ファンタジー | 行商人ロレンスと狼の化身の少女・ホロが織り成す中世が舞台のファンタジー。経済がテーマの珍しいライトノベルで、頭脳戦に毎回手に汗握ります。 ホロとロレンスの息の合った掛け合いも見所。 |
| 文学少女シリーズ | 野村美月 | ファミ通文庫 | ミステリー | 本を食べる少女、天野遠子とその後輩、井上心葉が主役の学園ミステリー。 ええっと、これライトノベルといっていいんでしょうか?愛憎劇や主人公たちの背負った業が次々と展開していき、かなりの重量級本格小説となっております。 |
| さよならピアノソナタ | 杉井光 | 電撃文庫 | 音楽・学園 | 高校生が集まってバンドを組んでいる。ただそれだけなのに、こんなに美しいとは! 音楽を知らなくても楽しめる青春音楽小説。 |
| 付喪堂骨董店 | 御堂彰彦 | 電撃文庫 | ミステリー・ラブコメ | 年月を経て不思議な力が宿る小物たち。それを扱う骨董店。そんな小物"アンティーク"を手にしてしまった者達の姿を描く上質な短編集。 クーデレ娘のヒロインに悶えまくりのラブコメパートも強力です。シリアス&ラブコメのバランスが秀逸。 |
| 旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 | 萬屋直人 | 電撃文庫 | SF |
喪失症が蔓延し、少しずつ記憶と記録が失われる時代。少年と少女は遥か遠い世界の果てを目指して、一台のスーパーカブで旅に出た。 |
| ある日、爆弾がおちてきて | 古橋秀之 | 電撃文庫 | SF | 時間がテーマの全7編の短編集。空から降ってきた自称50ギガトン爆弾の少女、引くと記憶が若返る阿呆風邪の話など、不思議な感覚のボーイ・ミーツ・ガールが楽しめます。 |
| 俺の妹がこんなに可愛いわけがない | 伏見つかさ | 電撃文庫 | コメディ | 美人で成績も優秀、その上俺を平気で見下してくる。そんな妹を持ってしまった兄貴が偶然知った妹の秘密から自体は思わぬ方向に転がって・・・。 ツンデレツンデレ。いや、兄貴がね?(笑) 口コミで評判が広がった傑作ですが、当然早売りで購入してました。 |
| とある飛空士への追憶 | 犬村小六 | ガガガ文庫 | 架空戦記 | 「美姫を守って単機敵中翔破、やれるかね?」 立場が違う二人が惹かれあう様と迫りくる危機、全てを昇華させるラストシーン。誰もが胸熱くさせる冒険小説。 敵戦闘機の設定が震電まんまで航空ファンとして失笑したけど、その一点を除けば非の打ちようがない作品。 |
| ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ |
虚淵玄 | ガガガ文庫 | アクション | コミック「ブラック・ラグーン」のノベライズ作品。 原作者が書いたのかと錯覚するような再現性と、硝煙の匂いが漂ってくるド派手なアクション、たまりません。 原作未読でも、この作品からハマり込むのもありだと思います。 |
これだけ持っていても、厳選するとなるとなかなか難しいものです。機会があればぜひ読んでみてください。