7月12日(土) 王宮家具博物館、マイヤーリンクツアー


 王宮家具博物館に行くため、地下鉄に乗る。昨日、ウィーンカードというものを買っていたので、それでフリーパスのはずだ。最初だけ、改札の機械に通す。
 ところでウィーンの地下鉄、あと路面電車もそうだったが、切符をチェックする機能が無いのである。改札といっても、公園の車止めみたいな柵が並んでいるだけで、人はいない。車内も検札なんか来ない。降りる時も、ただ出ていくだけなのだ。その気になれば、キセルし放題だ。もう、建設費の元はとれてるということなのか。面倒臭く無くていいけどね、旅行者にとっては。

 駅を出て、地図を見て歩いたはずなのに、何故か反対方向に行ってしまい、鉄道の駅らしきものが見えた。うーん、次は列車にも乗ってみたいものだ。地下鉄の方へ戻ると、実はすごい近くに、目指す建物はあった。
 普通の街中の建物の入口を入ると、すぐ中庭があり、随分モダンな感じの建物が、中庭を囲んでいた。チケットを買って、いざ!

 時間が早いせいか、私達の他に人気は無い。そして、いきなりのフランツ・ヨーゼフのお出迎えである。パネルと、扉がそのまま展示されている。ふーん、と思いながら扉をくぐったりしていたら、スタッフの人が「あっちから回った方が、いいと思う」と教えてくれた。あ、扉をくぐる前に、パネルを読めってこと?と思った(が、後に大間違いだったことがわかる)。

 ちょっと進むと、いきなりエキゾチックな空間が現れた。これが、ルドルフ皇太子の有名な、ターキッシュルームだ。結婚の年(1881)に作られた部屋で、その前のエジプト旅行で集めたものたちで構成されたそうだ。

ターキッシュルーム  それにしても。赤い絨毯の上にペルシャ絨毯が敷かれ、金色っぽい幾何学模様の長椅子。背後には一段高い所にやはり赤いソファー(?)。背後には木製の棚、さらにその後ろの壁は緑。そして、このコーナー全体を天蓋が覆っているのだが、その布地が、黄色と赤の斜めストライプだ。このストライプカーテン(?)が、かなり派手。ルドルフ様のご趣味は…ちょっと私とは合わないかも(^^;)。

 でも、このペルシャ絨毯の上を、歩いたのよね。あの長椅子に、座っていたのよね。と思うと、やはり格別だ。写真を何枚か撮る。この部屋は、皇太子の「private study」の為に使われたとのことだ
が、読書とかしたんだろうか。少しはくつろいだ気分に、なれたのだろうか。

 ターキッシュルームを後にして、進んでいくが、どうやら時代を遡っている。16世紀くらいまで遡った後、またフランツ・ヨーゼフの時代の物が展示された大部屋に来た。ルドルフ様は座ることの無かった、皇帝の玉座とか、メキシコのマキシミリアンゆかりの物などを眺めながら行くと、たくさんの肖像画が飾られた一角に、小さなピアノと椅子が。よく見れば、肖像画はルドルフ様のものばかりだ(1枚だけ、シュテファニーのだったけど)。おおおお、これが噂の、ルドルフ様コーナー!メイ様と写真を撮りまくる。

ルドルフ皇太子コーナー  小さく作られたピアノや、超高級ベビーチェアもかわいかったが、2、3才くらいの、まだ赤ちゃんぽさが残っている肖像画が、めちゃくちゃかわいかった。あー、この頃は健康そうだ。
 東京大丸でのエリザベート展で見た、16歳の肖像画もあった。中央には、ルドルフとシュテファニーを、神話っぽく讃えた風の絵があり、そうよね、皇太子夫妻だもんね、ロイヤルカップルだもんね、と改めて思う。今で言えば、かつてのイギリスのチャールズ皇太子/ダイアナ夫妻のような、あるいはそれ以上の存在だったんだよね。
 この部屋には他に、エリザベートの大きな肖像画や、マリア・テレジアのお母さんが晩年使っていた車椅子、あとルドルフ様のゆりかごも、あった。

 と、ここへきて、何組かの見学者とすれ違った。ん?すれ違うって事は…。きゃー、私達、しっかり順路を逆に回ってた!最初のおじさんは、このことを言っていたのだわ、と気付く。どうりで、新しい時代から始まる展示って、珍しいなとは思ったのだ…。本来は最初にこの部屋に来るはずだったのだ。それから、古い時代に戻り、徐々にまた19世紀に戻ってくるのだ。

 何はともあれ、見終わった。…と思ったら、なんと2階もある。きゃあ、大変、と駆け足で回る。さらに3階もあった。2階、3階は、現代に続く新しい時代の家具、また王家に限らず、一般の人々の生活様式の移り変わり、といった感じだった。
 ビーダーマイヤー風のインテリアで統一された部屋が、何パターンも展示されている廊下があり、そこにはやはりビーダーマイヤー期に作られた椅子が、一列にずらーっと並んでいた。これが結構、背もたれのデザインや布の柄が1つずつ違っており、どれもおしゃれで、思わずいくつか写真に収めた。そしてまた、2階も順路を逆に回っていた…学習しないなあ。よく確かめないのも悪いのだが、「回る」感覚が、日本とは逆なのだろうか。
−カワイイ椅子たち−
椅子1
椅子2
椅子3


 王宮家具博物館を後にして、旧市街へ戻る。お昼を軽く食べたら、ウィーンの森半日ツアーだ。今日はカフェ、デーメルへ行ってみる。土曜日ということもあり、通りも店も観光客でいっぱいだ。
 中に入り、並んでいる料理を指差して、小さなハンバーガーみたいなパンに、ローストビーフらしきものが挟まっているものと、海老とアボカドのサラダを頼む。飲み物は、ゲシュプリツター。
 ところが、海老サラダが、でかい〜!ちょこっと、付け合わせ程度にあれば良かったのに、背の高いガラスの食器にぎっしり詰まっていて、まるで「海老パフェ」。おいしいけど、こんなに海老ばっかり食べられないよう。ということで、半分近く残してしまった。値段も高かった。ぐすん。


修道院らしい?ハイリゲンクロイツ

 さて2時、ウィーンの森ツアーの集合場所に来た。この前のメルクツアーと同じ場所だ。
 晴れていたのに、何だか曇ってきた。風も強くなり、時々雨がパラつく。本当に、変わりやすいんだからなあ。まあでも、マイヤーリンクに行くにはもってこいの天気かもしれない。今日のツアーは、20人くらいだろうか。バスに乗り、この前と同じように、オペラ座前を経由して、ウィーンの森に向かう。

 シューベルトが「菩提樹」の曲想を得た所、という場所を経由して、ハイリゲンクロイツという修道院に着いた。ガイドさんに続いて中に入ると、そこはメルクとは随分違い、質素な雰囲気のまさに「修道院」という感じがするところだった。

回廊

石造りの回廊が続き、中庭に面した窓には、色の着いていないステンドグラスがはめられている。色が無いと言うものの、その模様が繊細で、とても綺麗だ。

 ここはシトー派の修道院で、清貧を理想とする修道院の原点に帰ろうと、ベネディクト派から分かれた一派だと言う。アルフレートには、メルクよりも、こっちの方が似合うなあ。
色無しステンドグラス

 現地で買った「見学の手引き」によると、「ステンドグラスは無色で、絵画を一切入れてはいけない」という、シトー派の決まりがあったそうだ。そういえば、無色のステンドグラスは、唐草模様や幾何学模様みたいなものばかりで、人物などは描かれていなかった。
 時代が新しくなってくると、色付きの美しいものも、人物の絵が入ったものも登場するが、なんかこの質素な感じが良かった。

 ここには、バーベンベルク家の最後の王様も眠っている。フリードリヒ闘争公というこの王様の死後、ハプスブルク家の栄光への一歩が始まったと聞くと、その名前が単なるカタカナの羅列から、息を吹き込まれたかのように、意味を持ってくるから不思議だ。学生の頃にこの位ハマっていたら、歴史の勉強も苦にならなかったろうなあ…。

 教会も、華美な印象はない。ロマネスク、ゴシック、バロックと、時代によっていくつかの様式が混ざっているそうだ。こういうことも、もう少しわかるといいなあ。この旅行で、なんとなくイメージはつかんだ気がするのだが。
 メルクのような、装飾ごてごて、天井画どどーん、というのがバロック。
 ゴシックは、真直ぐな柱に支えられた、高―い天井。
 ロマネスクは、外から見ると、小さな窓が特徴らしいが、中の感じは、ゴシックとの違いがよくわからない。たいていの建物は、バロックが混ざっていて、どこがロマネスクなのか、私にははっきりしなかった。

 そういえばここは、かのマリー・ヴェッツェラが埋葬されている所ではなかっただろうか。少し前、彼女の墓が荒らされていて、話題になったそうだ。メイ様がガイドさんに聞いてくれたが、彼女の墓は、ここからは少し離れた、山の中なのだそうだ。ミサも挙げられずに埋葬されたから、修道院内には葬ってもらえなかったのかしらね。17歳、恋に恋する年頃、本人はやっぱり幸せだったのかな?(いや、天愛では最後で不幸なんだけど)
 ※後になって、「うたかたの恋と墓泥棒」という本を読んで知ったが、マリーの墓が暴かれ、遺骨が盗まれたことが1992年に判明し、オーストリア中で大騒ぎになったそうだ。今なお謎の残る、マイヤーリンク事件の真実を知りたいと思いつめたマニア(?)の犯行で、なんとこの人、自分の先祖の骨だと偽って、大学で遺骨の鑑定までしてもらっている。まあねー、遠い日本にも私のような人がいる位だから、本国オーストリアにそんな人がいても、おかしくはないかも…。
 100年前くらいなら、調べようと思えば調べられる…時間的にも、空間的にも手の届く所にいたら、知りたくなるのがヒトというものよね。
 …って、理解してどうする!墓泥棒はいけないことです、もちろん、はい。


マイヤーリンク

マイヤーリンク
 ハイリゲンクロイツを後にして、いよいよ本日のメイン、マイヤーリンクである。
 ガイドさん、マイヤーリンクまでのバスの中で、その後のケーキの注文を取りはじめる。こうして連絡しておけば、後で行くカフェで、待たされずにお茶が出来るということだ。「ザッハトルテがいい人ー」「はーい」…ってすっかり遠足ムード。段取り的には良し、なのだが、マイヤーリンクまでの道のりで少し感傷に浸ろうか、などと思っていたんだけど、まあ、仕方ない。それに、夏のウィーンの森は、緑にあふれていて、そんなに寂しいという感じはしない。やっぱり浸るなら、冬がいいかも。

 マイヤーリンクに着く。バスを降りて、ちょっと小道を入ると教会の建物がある。道も建物も、きちんと整えられた印象で、当たり前だが、そんなに悲劇的な雰囲気はない。中は撮影禁止なので、教会の正面を撮らせてもらう。屋根のすぐ下にある、「1889」という年号が、何かもうそれだけで切なくなってくる。

 中に入ると、小さな礼拝堂だ。正面に祭壇とステンドグラス。ガイドさんが、小さな声で「マイヤーリンクの悲劇」の説明をした。礼拝堂から脇の廊下に出ると、説明パネルが何枚か、それから当時の家具などを展示した小さなコーナーがあり、すぐに出口だ。本当にあっと言う間。出口の所で絵葉書を売っている。
 興味のある方はどうぞ、とのことなので、遠慮なく見せてもらうことにした。私達以外のツアー客は、いつの間にか降り出した雨の中を、バスの方へ向かった。

 私達は、じっくりと絵葉書を物色。その中に、母エリザベートが作らせたという、マリア像の絵葉書があって、「そういえば、この像、どこにあったんだろう」と思い、聞いてみると、じゃあちょっと戻りましょう、と、ガイドさんが礼拝堂の方まで一緒に戻ってくれた。他のお客のこともあるのでどうかと思ったが、いいんですよとおっしゃってくれたので、お言葉に甘える。

 礼拝堂の左側に、さらに小さな礼拝堂があり、中には入れないが、柵ごしにエリザベートのマリア像を見ることが出来た。これは、何故か左胸にナイフが突き刺さっている姿で、その後のエリザベート自身の死に方(左胸を刺されて暗殺される)を暗示しているようで、ちょっと怖い。どうして彼女は、そんな姿の像を作ったのだろう。

 さらにガイドさんは「さっきは、あまりにも生々しいので話さなかったのだけど、このメインの礼拝堂の2階部分が、皇太子が実際に自殺した部屋で、あそこにちょっと見える所が、その部屋に続く扉だったんですよ」と教えてくれた。
 今は、礼拝堂が1〜2階ぶち抜きで作られているため、その部屋自体はもう存在しない。祭壇上部の空間だ。祭壇に向かって右上の所に、ちょうど扉くらいの開口部があり、手すりで仕切られ、その向こうに廊下のような所が見えるのだが、その開口部がかつて、扉だったとのこと。
 うーん、少し臨場感が湧いてきたかな。私達2人の為に、ここまで戻って下さったガイドさんに、感謝である。

 最後に、出口の所で絵葉書と、これまた日本語で書かれた「マイヤーリンク」という小冊子を買って、バスに戻った。ガイドさんは「マリー・ヴェッツェラの絵葉書は、ここ位しか置いてないですよ」と勧めてくれたのだが…うーん、マリーはやっぱり買わなかった。
 ほんの5分くらいの差なのに、私達がバスに戻る時には、雨はすっかりやんでいた。ほんと、変わりやすいのね。

正面上部

うーん、スキャンしたら読めなくなってしまった、「AD1889」のレリーフ。


 少し山道を走って、ドライブインのような感じのカフェで、ケーキとコーヒーをいただく。「甘さ控えめ」と言われたので、ザッハトルテにしてみたのだが、やっぱり甘いー。コーヒーは、日本で言う「ウィンナーコーヒー」に一番近いとされている、「アイン・シュペンナー」で、ブラックコーヒーにホイップクリームが浮かんでいる。ていうか、クリームの量が、コーヒーと同じくらいあって、コーヒーを飲むと言うより、コーヒー風味の生クリームを食べると言う感じだあ。…そろそろ普通のブレンドコーヒーが懐かしくなってくるなあ。

 今日はこの後、ホーフブルクでのコンサートに行く。チケットの引換えで、ちょっと気になることがあったので、ガイドさんにちょっと聞いてみると、わざわざ主催者の事務所に電話して、確認してくれた。
 メルクツアーのガイドさんも、今日のツアーの方も、とても親切だ。今日のガイドさんなんて、ウィーンに向かうバスの中で、「何でも質問タイム」を設けて、わざわざ1人ずつ回ってくれていた。現地ツアーも悪くない…というか、自分達で行くには地の利が悪いような場所だったら、かえっていいかもな、と思う。
 もちろん、一度では満足しないので、繰り返し訪れることが前提だけど。


カフェ・ツェントラル

 ホテルに戻り、コンサートなので一応ワンピースに着替え、珍しくヒールのある靴など履いて、ホーフブルクに向かう。こんなキレイな格好で海外の街を歩くのは、初めてかも。
 軽く夕食を「カフェ・ツェントラル」で取ることにする。ミヒャエル広場から、図書館とかとは逆の方向へ少し行った所にある。中に入ると、評判通り、とても雰囲気のよい店で、その内装はやはり…ルドルフ様がアルフレートを連れていったカフェ、そのものだと感じた。ただ、帰り、王宮まで馬車で帰るほどの距離ではないぞ(歩けないほど泥酔していた、という説もありますが;)。

 ほろ酔い気分でコンサートに行こうと、白ワインを頼み、あとはグラーシュに初挑戦してみた。メイ樣も、ザッハーに続き、2度目のグラーシュ。グラーシュ、美味しい〜!ビーフシチューに一番近くて、パプリカを使っているので色は赤い。体も温まり、お腹にも程よくたまる。メイ様によれば、ザッハーのグラーシュはまた、格別に美味しかったそうだ。私のレバー団子スープもそうだったから、きっととろけるように美味しいに違いない。次回はきっと試そう…!

 そうこうしている内に、中央のピアノの所で、バイオリンやアコーディオンも加わっての生演奏が始まった。お決まりのウィンナ・ワルツの他、アヴェ・マリアやシャンソン、ロシア民謡(カ〜リンカ、カリンカ、カリンカ、マヤってやつ)などが次々に流れ、とってもよい雰囲気〜♪このまま聴いていたいと、とても思ったが、もうコンサートの時間が近いので、店を出て再びミヒャエル広場へ向かった。次は、もっとゆっくりと来たいお店だなあ〜。
 

ホーフブルクコンサート

コンサートチケット
 コンサートチケットです。
 日によって、会場がいろいろらしいのですが、今日の会場は「フェストザール/祝祭の間」といって、王宮広場を抜けて、新王宮の手前の建物だ。観光バスがたくさんのお客さんを乗せて来ている。マイヤーリンクツアーのガイドさんは「とても会場が広いので、そんなに前の方じゃなくても大丈夫」と言っていたが…。

 
 うーん、たしかに広かった。天井も高く、席もたくさんあって、そんなに早く着いたわけでもないのに、まん中より少し前くらいの、中央に近い席に座ることが出来た。

 1曲目の「皇帝円舞曲」が始まる。あー、幸せ(涙)。こんな所でこんな音楽を聴いていられるなんて。
 それから2時間あまり、ヨハン・シュトラウスやモーツァルトの曲が続いた。途中、コミカルな演出も多く、客を飽きさせない。どこかで聴いた(という程度なのが悲しいが)、オペラの曲も多い。このコンサートは、観光客向けながら、割と本格的な雰囲気を味わえる、とのことだったがその通りかもしれない。
 アンコールの最後はやはり、「ラデツキー行進曲」。とても楽しいコンサートだった。会場の雰囲気も素晴らしく、このコンサートは結構お薦めだと思う。

 ライトアップされた新王宮やスイス宮、図書館などを写真に収めながら帰った。
 とうとうウィーンも残す所、あと1日だ。


back
index
next

夜の新王宮