4通目の手紙
おじさん。
この前、超ジャンピング・シュートを決めた上級生のことを書いたでしょ。その人の名
前を知りたくて、サッカー部のことをいろいろと級友たちに尋ねてみたんです。
ところが級友たちは、口をそろえて知らないと言います。第一、田舎中のサッカー部ときたら、てんでだらしなくて、ジャンピング・シュートどころか、ふつうのシュートでもはいったためしがない、とこうです。近郷最下位という、ありがたくもない地位に居座り続けているというのです。
おじさん。興味が湧きませんか? おじさんの眼が、今キラリと光ったのではないかと想像しています。謎めいた上級生の正体やいかに!?
おじさんから聞かされた、例の「空前絶後の美少年」という存在には、今のところまだお目にかかっていません。僕の一級上ということですから、三年生ですよね。
三年生は、渡り廊下を越した向かいの校舎なので、そう簡単には覗きにいけないのです。
特に編入生の僕としては、少しためらいがあります。
上級生というのは、一種独特の雰囲気があって近寄り難いものです。それに「空前絶後」というほどの上級生とすれば、妙な噂にされないとも限りませんからね。前の学校でも、いろいろありましたから。
そのうち、それとなく探りを入れてみるつもりです。何しろ、これは僕の任務ですからね。ついでに、ジャンピング・シュートの人のことも。あの人も三年生かなあ。だとしたら、田舎中学の三年生は豊作!ですね。
都中学ではいつも「今年の一年はハズレだ」と各教科の先生ごとに言われてました。みんなくさっていましたが、知り合いの二年生に聞いたら、「僕たちもさんざんそう言われてきたよ。それが先生たちの手なんだよ」ですって。
そんな手なんか使わないでもらいたいと思ったものです。奮起させるのはいいけれど、あんまりだと思いませんか?
でも、田舎中学の三年生は(もし「超ジャンピング・シュート」の人も三年生だったら、という前提ですけど)、正真正銘「当たり」です。
ああ、そうそう。
この学校にも、都に負けず劣らずの妙な伝統行事があるようです。
なんでも、近在の中学校と決闘まがいのことをするというのです。
予め、日時も決まっていて、初等科(一年、二年)と中等部(三年)は、全員参加しなければならないといいます。参謀は高等部(四年、五年)から選ばれた猛者ばかりだそうです。
どうも、そういう野蛮な行為とは無縁な学校だと思っていたのですが、甘かったかもしれません。これから、ひとつひとつこの田舎中学の本性が暴かれていきそうで、ちょっと冷や冷やしています。
おじさんは喜んでいるのではありませんか。ひ弱な僕としては、敬遠したいのですが、どうも高等部の猛者というのが怖くて、そうもいかないでしょう。だから上級生は嫌いなんだ、僕は。
でも、三年生が混じると言いますから、ひょっとしたら、かの二人に・・・そう思うと、少しは嫌な気分も減ってきます。でも、もし、超ジャンピング・シュートの人が、あんがい高等部の猛者だったりしたら・・・ああ、幻滅だ・・・。
今日は、このへんで。
あ、決闘のことは、お祖父さんには内緒、です。むろんおじさんには、決闘のこと、逐一報告しますよ。ぶちのめされて都へ強制送還! ということにでもならない限りは。
5通目につづく
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