5通目の手紙
おじさん。
僕はだんだん不安になってきました。というのは、例の決闘のことです。
今日、昼休み時間に、五年生代表とかいう見るからに頑丈そうな生徒数人がやってきて演説をぶっていったんです。
「連戦連勝を誇る我が母校の歴史」云々が長々と語られましたが、要するに彼らの言わんとしたことは、今回の決闘の主役は二年生の君たちであるから心して戦え、ということでした。
連戦連勝というのは眉唾だなと思います。サッカー部が万年最下位ということからして、そんなことありっこない。でしょう? 決闘とサッカーをいっしょにするなと言われたらそうですが。
僕は正直なところ、他人事のような気持ちで演説もどきを聞いていました。ははぁん、これがよく話に聞く上級生の弁舌口調というものか、と。
前にいた都中学にはこの種の演説はなかったから、ちょっとおもしろかったのです。
ところが、そんな僕の心を見透かしたかのように、突然、上級生が僕をギョロリと睨んだんです。僕は、思わず体を引いてしまいました。迫力です。やっぱり、五年生です。
その五年生が、見かけない顔だな、と言いました。僕が四月からの転校生です、と答えたら、しばらくジイッと僕の顔を見て、それから、後ろに控えていた同僚に何やら目くばせしたのです。
直感的に、マズイナ、と僕は思いました。何か言われるな、と思いました。ところが、何もありません。これは、もっとマズイナ、と感じました。さらにその思いを決定的にしたのは、五年生たちの帰り際のひとこと。
「山椒は小粒でもピリリと辛い。新入り君、まあ、頑張ってくれたまえ。大いに期待しているからな」
そして、ニヤリ・・・
クラスのそこここで忍び笑いのような気配が走りました。山椒のたとえで笑ったのかもしれません。五年の猛者の注意がチビの僕ひとりに当たってほっとしたのかもしれません。でも・・・
これが一体何を意味するか。おじさんには、わかるでしょう?
今度の決闘では、僕はきっと一番の被害者にされます。
喧嘩とか団体競技とか、とにかくからっきし意気地のない僕にとって、これは一大事です。もう、今から気が滅入って滅入って。
そして、もっと滅入るのは・・・こういうことに気を滅入らせる自分という人間を思い知らされることです。
世の中に、男の資格の中に、「強さ」という項目がなかったら、どんなに心静かに楽しく日々が過ごせるだろう・・・と、僕は、何かこういうことが起きる度に憂鬱になります。
いつもは忘れていても、何事かあると、この憂鬱が頭をもたげてくるのです。
運動万能のおじさんには理解できないかもしれません。きっと、あの超ジャンピング・シュートを決めたあの人なんかにも、わかりっこない、と思うのです。そして、そう思うと、急に憧れが憎しみに変わっていきます。
僕は、本当に狭量なひがみっぽい嫌な男です。おまけに、こんな愚痴を人にぶつけて相手まで巻き込んでしまうのですから。
今日は、全然いい所なしの手紙になりました。でも、このナイーブな甥の心を察してお許しください。
6通目につづく
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