阿蘇山の話
阿蘇山は,だれもが「カルデラ」という言葉とともに、その火山としての存在を知っている山です。と同時に、阿蘇山は現在でも時折噴火する、活発な火山でもあります。広い阿蘇カルデラの中には多くの人が昔から住んでおり,そこにはたくさんの民話が伝わっています。それらをまとめた「阿蘇のむかし話」(長谷部保正,清潮社)という本も出版されています。その中から,阿蘇山にまつわる話を二つほどみてみましょう。
阿蘇山と九重山
(あらすじ)
むかし、阿蘇山が、九重山にお嫁もらいに行きましたが、九重山は即座に断りました。阿蘇山が全くの怠け者なので、ご飯やお汁を炊いたところをみたことがありません。九重山は、あの貧乏な阿蘇山に家の嫁はやれないといって一発で断ったのです。それで阿蘇山は夜も昼も、煙を上げるようになったのです。
-その解釈-
解釈というほどのことはありません。阿蘇山も九重山も九州中部の活火山です。熊本−大分県境を挟んで両者は比較的近い場所にあります。どちらも活発に活動するな活火山です。阿蘇山は昔話の通り、極めて頻繁に噴煙を上げています。九重山は、阿蘇山ほどは頻繁には噴火していませんが、1995年にしばらくぶりに噴火しました。どちらも九州を代表する立派な火山ですが、とりわけ阿蘇山の噴火頻度は日本最高クラスです。
高岳と猫岳
(あらすじ)
昔、高岳と猫岳が背比べをし、高岳が猫岳に負けそうになりました。そこで高岳は猫岳の頭を竹ぼうきで叩きましたところ、猫岳は頭がざらざらになって高さが止まってしまい、高岳は今のように猫岳よりずっと高くなりました。
-その解釈-
阿蘇山というと、カルデラとして有名であると同時に、いつも噴煙をあげる活発な火山としても有名です。さて、学校で阿蘇山について学ぶのはその程度のことですよね。ここで問題があります。地元の人ならともかく、ふつうはこのように学んでしまったら、「阿蘇カルデラ」が現在も噴火しているかのように誤解されると思います。実際に、そのように誤解している人も多いのではないでしょうか。阿蘇カルデラ形成に伴う噴火活動は、数万年前にすでに終了しています。現在噴火活動をしているのは,阿蘇カルデラ内の中央火口丘です。これはカルデラ形成の後に形成されたもので、いくつもの火山体からなるので、むしろ中央火口丘群と呼ぶ方がよいでしょう。ちなみに、中央火口丘という言葉は多くの人が使っているのでここでも使いましたが、私自身は滅多に使いません。このようにカルデラ内に形成された火山のことを、私は「後カルデラ火山」とよぶことが多いです。その理由は、中央にないことも多いことと、「火口丘」といっても実際には立派な成層火山であることが多いからです。
阿蘇山の中央の後カルデラ火山群は、高岳、猫岳、中岳、杵島岳、烏帽子岳、草千里、米塚などたくさんあります。現在活発に噴煙をあげているのは中岳の火口で、他の火山は活動していません。このうちの高岳と猫岳は、特に標高の高い火山ですが、その形状は全く異なり、猫岳はぎざぎざの山頂、高岳は美しい円錐形の山です。高岳の方が標高1592m、猫岳は1408mです。
参考文献 阿蘇のむかし話 (長谷部保正 清潮社)